東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
旧ダイアリー保管用→ 〔ものかきの倉庫〕
特撮作品の感想は、順次こちらにHTML形式でまとめています→ 〔特撮感想まとめ部屋〕 (※移転しました)
HP→〔ものかきの荒野〕   Twitter→〔Twitter/gms02〕

『恐竜任侠伝』第9話「大いなる盃」

恐竜戦隊ジュウレンジャー』感想・第31話

◆第31話「復活!究極の神」◆ (監督:小笠原猛 脚本:杉村升
 「おのれぇ……なんとしてもサタンフランケを倒し、大サタンを追い払うんだ!」
 サブタイトル直後から、柱に塗り込められた子供たちの「助けて」大合唱なのが大変えげつなく、その声に応えようとする大獣神だが、サタンフランケのサタンブレストビームにあえなく倒れてしまう。
 そこへ駆けつけた緑が笛をぴーひゃらし、大獣神とドラゴンシーザーはタッグでサタンフランケへと戦いを挑むが、炸裂するサタンドロップキック、からの、サタンハンマーナックル!
 「さあ! サタンフランケ、大獣神とドラゴンシーザーに、トドメを刺すのだ」
 サタン溶解液を浴びた二大ロボは大地に倒れ、コックピットから強制排出されたジュウレンジャーと緑が放り込まれたのは、精神と時の独房。
 そこで6人は、クロトと出会い……
 「やめろ!それを言うな!」
 「……ヤマト族のプリンス・ブライ! なぜ彼がドラゴンレンジャーに変身できたのか。なぜ同居を拒むのか。なぜ助っ人に来てはそそくさと帰ってしまうのかぁ! その答はただ一つ。へはぁー……ブライ! 彼が、冷凍睡眠中の事故で本当は一度死んでおり、追加で与えられた残りの寿命が、あと15時間だからぁ!! わはははは、わーははははははは!!」
 開口一番、ゲンムコーポレーション社長・黎斗、じゃなかった、命の精霊・クロトからゲキたちにブライの寿命問題が暴露され、公式配信のタイミングが酷いシンクロを起こしました。
 ブライはコールドスリープ中の事故で一度死んだのだが、大獣神会長の依頼を受けたクロトによって仮初めの命を与えられていた事が明らかになり、〔弟が本家の跡取りとして養子に → 何を思ったのか父が叛乱を起こすも失敗 → 反逆者の一族として追われる身(多分)に → 膨れあがった復讐心に翻弄される青春時代を過ごす → 復讐を誓ってコールドスリープコールドスリープ中に事故死 → 神的存在により生命の尊厳を奪われる〕で、あまりにも不幸。
 正解の選択肢は、ゲキたちがコールドスリープに入った後、機会を見て冷凍睡眠カプセルを崖から落とす、だったのではないか。
 大獣神がブライの命を繋ぎ止めたのは、遠い未来、バンドーラに続き、大サタンが復活する事を予期していたからであり、クロトは6人に、かつて大サタンと戦った究極の大獣神の存在を告げる。
 「兄さん……」
 「悲しまないでくれゲキ。俺の命はあとわずかでも、俺は最後までジュウレンジャーの一人として戦う」
 現在の大獣神は、かつての大サタンとの戦いでその力を失った姿であり、クロトの言葉に従った6人は、究極大獣神の力を取り戻すべく、北へと走る。
 道中、サタンガスを浴びて苦しむ子供たちの姿が描かれるのと、それを無視して進めない、と時間が無い中でペンションに運び込むのは実に『ジュウレンジャー』で、大獣神とドラゴンシーザーが真夏のアスファルトに落ちたアイスのようにどろどろに溶けるタイムリミットが迫る中、子供たちを助けようとするジュウレンジャーを襲撃する黄金夫婦。
 今回もしばらく生身アクションの後、ゲキを北へ、ボーイを医者を呼びに向かわせ、自然とブライが残りメンバーのセンターに入ってダイノバックラー!
 「負けるものか! 勇気だけは、人一倍あるんだ!」
 メイは高熱に苦しむ子供たちの看病を続け、青は伝説だった気がする武器を振り回し、黒はサンダースリンガーを用いた落石の計でラミィを潰走させ、緑は1億7千万年前、いつか一人で城攻めする事もあるかもしれない、と修練を積んできた丸太を掴んで振り回し、戦力不足の中で、それぞれが奮闘。
 ボーイはその脚力で医者を連れて戻り、ひたすら北へと走るも滝に行く手を阻まれたゲキが、クロトの言葉を思い出して果敢に滝壺に向けて飛び込むと、一同揃って滝の下にドンブラばりの強制招集が行われ、6人はそこに、定礎……もとい、碑文を発見。
 「6人の戦士が現れ、一人ずつ、自らの使命を叫び、メダルをはめこむ時、究極の大獣神が甦る」
 前年の戦隊だとここでゲームオーバーになりそうな最終試練が課され、碑文の意味に戸惑いが広がる中、いちはやく進み出たのは、メイ。
 「わかったわ! 私の使命は……プテラレンジャー・メイ! 愛の戦士!」
 子供たちを看病していた際に自身を突き動かした自然な想いをメイは口にし、ジュウレンジャーの明解なヒーロー性を示す&ままあるトラブルかと思われた子供関連イベントが、こう繋がってくるのは成る程でしたが、クリア条件が「自分で叫ぶ」なのが大変タチが悪く、この試練を考案した存在には人の心が無い!
 「タイガーレンジャー・ボーイ! 希望の戦士!」
 「マンモスレンジャー・ゴウシ! 知恵の戦士!」
 「トリケラレンジャー・ダン! 勇気の戦士!」
 「ドラゴンレンジャー・ブライ! 力の戦士!」
 ゴウシは自ら長所は知力、と口にする羽目になり、武闘派ヤクザ脳のブライ兄さんは完全に、暴力こそ崇高なるパワーな位置づけにされ、
 「そして俺は……みんなの力を一つにまとめる、ティラノレンジャー・ゲキ! 正義の戦士だ!」
 最初期に持ち込まれるもガタガタだった「リーダーとは何か」が改めてふんわりと拾われ、碑文に填め込まれる6つの恐竜メダル(この小道具の使い方は良かった!)。
 「愛……希望……知恵……勇気……力! そして正義。大獣神よ、6つの光で甦り、究極の大獣神となるんだ!!」
 碑文から放たれた虹色の光が大獣神とドラゴンシーザーに降り注ぐと、本来の力を取り戻した二大ロボは、サタン溶解液を消滅させ、雄々しく復活!
 今作ここまでどうしても、変身パワーの源(従来作でいえば、バードニックウェーブやアースフォースにあたるもの)が具体的な形と意志を持った超存在として、適宜、手も口も出してくる為に、戦士-力を与えるもの、のパワーバランスが悪い点が目立っていたのですが、ここで、“神もまた、人の心を必要としている”事が組み込まれて互助関係が成立。
 大獣神大獣神で、この時の為に、戦士たちを勇者に育成する必要があったのも、これまでの言行の背景として、綺麗に収まりました。
 …………まあブライに関しては、〔究極の力を取り戻す駒にする気満々で仮初めの命を与える → そんな事実はおくびにも出さずにしばらく泳がせる → パンドーラ一味と決裂したところを見計らい、裏から手を回して軟禁 → 下準備として獣奏剣を与えた上で力に溺れての暴走をしばらく放置 → ゲキへの試練に利用 → 最初から手下だったドラゴンシーザーを叩きのめす芝居から、感動の手打ちを演出 → 頃合いを見計らって真相を暴露〕と、檀黎斗も真っ青の暗躍で、一度死んでいるのをいい事に好き放題に扱っていますが、そもそも、気候変動による天変地異で冷凍カプセルが潰れたのは、本当に、“ただの偶然”だったのでしょうか……?
 人の心など最初から無い神の所業への疑念はひとまずさておき、ジュウレンジャーがコックピットに乗り込むと獣帝合体が発動し、半分に割れたドラゴンシーザーを雨合羽のように頭からすぽっと被った(今見ると、ひところからマスコット系ぬいぐるみの世界などで流行っている、別のキャラの皮を被った姿に見えます)、獣帝大獣神が誕生する!
 シルエット的には、キノコみたいでもあるのですが、古来、傘は広げる事でその下に“聖なる空間”を作り出す道具であり、また、かぶりものとしての「蓑」「笠」は外界から隔離された空間を作り出し、神霊がその身を隠して移動するのに用いる性質を持つ事から逆説的に、ドラゴンシーザーを「笠」として被る事により、異界として形成された内部空間に存在する大獣神の神霊としての性質が高まる形態なのかもしれません。
 つまりドラゴンシーザーを頭から被る事によって、移動する山(異界)と化した大獣神は、シーザーのZ印を巨大な光球として放つ必殺技でサタンフランケを消滅させ、バンドーラ様は思わず口をあんぐり。
 「……はぁ?」
 「バンドーラ、まだ終わりじゃないぞ!」
 更にキングブラキオンが召喚されると究極合体が発動し、フォートレス形態となったブラキオンの背中に獣帝大獣神が乗り込む、要塞ロボの新パターンとでもいった形(いつの間にか、どこかに飛んでいったシーザーの胸部も合体している気がする)で、究極大獣神が誕生する大盤振る舞い。
 まさに、地上に降臨した戦神の巨峰、究極大獣神は大サタンへと一斉砲撃を浴びせ、大サタンはたまらず退散。サタンの柱に囚われていた子供たちは無事に元に戻り、バンドーラは苦悶とともに撤収し、地球は最大の危機を乗り越えるのであった!
 そしてゲキとブライはがっちりを握手をかわし、ここに、愛・希望・知恵・勇気・力、そして正義を胸に宿した、究極のジュウレンジャーもまた誕生したのだった!
 後半戦開幕、強化展開に合わせて、ジュウレンジャーと守護獣たちの関係性は、ステップアップも含めて綺麗にまとまり、獣帝そして究極大獣神は、割と納得殿高い強化合体ロボとなりました。『ターボ』『ファイブ』と、要塞メカ(戦隊基地)との合体例はありました、今後も諸作に登場する移動要塞形式の全合体は、今作がはしりになるのでしょうか。
 あまり役に立たなかった獣戦車ダイノタンカーはつまり、究極大獣神の物凄く弱体化した形態だったのだな、と納得しつつ、次回――知恵の戦士こと若頭補佐ゴウシ、凶弾に倒れる?!