『仮面ライダーエグゼイド』感想・第10話
◆第10話「ふぞろいのDoctors!」◆ (監督:諸田敏 脚本:高橋悠也)
「このままでは大勢の人々が消滅する! ゼロ・ディの再来だぁ!」
謎の感染症が大々的にニュース報道される中、ドラゴンエグゼイドを制御しきれなかった永夢は、ポピ子に連れられてCRに帰還。
「僕の命は、先生が救ってくれたものです。……先生を救う為なら、僕はどんな事でも!」
「それがドクターを志す者の言葉か!」
元凶であるグラファイトを倒そうと焦る永夢が無謀ともいえる行動を日向審議官に一喝されていた頃、ブレイブとスナイプはクロファイトと(ずっと?)戦っていた。
「目障りだ。LV2のてめぇは失せろ」
言われても仕方が無い実績のブレイブは、背後からスナイプにフレンドリーファイアをかますが、そこにレーザーが参戦して横回転(見るからに重そうなので、変身者の性格的になるべく軽快に動いている感じを出そうとアクションに一工夫が見えます)。
「大切なのは、チーム医療だ」
一方、日向はオペとはドクター一人で行うものではなく、様々な分野に精通した医者や看護師が力を合わせておこなうものだと永夢を諭し、衛生省はもう少しドクターライダーの仕様について考えた方が良かった事がくっきりと浮かび上がりますが、制作責任者があの人なので、仕方ない……のか……?
「16年前、おまえを救えたのは、私一人の力ではない。救急隊員、麻酔科医、それに助手や看護師まで、多くの人たちの助けがあったからこそ。ドクターに必要なのは、チームの信頼関係だ!」
倒れかけた日向は病室に戻っていき、永夢はその場で廊下にがっくりと横たわる。
「……何が天才ゲーマーだ……ゲームなら、誰にも負けないって……ただうぬぼれてただけだ。……だから…………誰とも……信頼し合おうとしなかった……」
たまたま、ライダーオペに「ゲーム」の要素が存在し、永夢の適正が非常に高かった為にこれまでやってこれたが、永夢自身は“医者”としては未熟だった……と、永夢の持つ二面性のあぶり出しと摺り合わせの意図は見えるのですが、この台詞だと結局、「患者の命」「患者の命」と言いながら、永夢自身がオペを「ゲーム(の延長線上)」として捉えていたように聞こえて、“ゲーマー”としての増長が“医者”としての致命的問題まで広がってしまうのが、厄介なところ。
この辺り、ホビー物というかある種の部活物というか昨今流行りのジャンルというか、「異分野のスキル」が思わぬ形で役に立って大活躍! の話法なのですが、今作の場合、名古屋撃ちでバグスターを切除しているだとぉ?! まで突き抜けているわけでなく、バトルにおける「ゲーム」要素はフレーバー程度な事に加え(故に、ゲーマースキルで無双から増長している感が弱い)、なにぶん人命に関わる医療従事者なので、医者としての重大な認識不足を若さゆえに落とし込んでしまったのは、永夢先生に対する好感度の持ちにくさを加速させてしまう事に。
……改めて見ると、今作は「医療」と「ゲーム」という基本設計時点の“分裂”を、「医者」にして「ゲーマー」という主人公・永夢の“分裂”と重ねる事で物語を通して消化していこうという節が見えるのですが、現時点だと、それぞれの素材と調味料の味がおのおの激しく自己主張して全く調和していないものを、「仮面ライダー丼」という形で無理矢理、皿の上に乗せている感じ。
私の好みからすると、リアルタイム時にこの辺りで限界が来たことに納得です(笑)
戦闘中の3ライダーはクロファイトに切り刻まれ、スナイプが取り落としたガシャットを、よっしゃラッキー! とブレイブとレーザーが懐に収めた事で、再び繰り広げられるグリードばりの内輪もめ。
いらだつクロファイトのドドド剣を受けて3人まとめてゲームエリアから弾き出され、地べたに転がりなら罵り合う3人……小さい……器が……井戸の中の猫の額ほどに小さい。
そこに現れた永夢は、3人に謝罪。4人同時プレイでオペをしようと和解と協力を持ちかけるが、これまでの言行が言行だけに全面拒否を受け、逆に適合手術について問いただされる羽目に。
その点については、みんなもっと、後ろに立っているポピ子(バリバリの衛生省関係者)を問い詰めた方が良いと思うのですが、メタ的にマスコットポジションな事もあって、ポピ子がほぼアンタッチャブル化しているのが、ベルトさんの轍を踏まないと良いのですが。
「このままじゃ……有効な実戦データが、取れないね」
パラドと社長はそんな不揃いのドクター達を見つめ(まあ、ゲーマドライバーにGPSぐらいは普通に仕込んでいそうですね……)、えんじ色のジャケット着てる奴も居るし、あいつら全員役立たずなら、総取っ替えでも構わないと悪い笑みを浮かべ、グラファイトはグラファイトで、儂のバグスター軍団で天下取りじゃぁ! と、すっかり独立開業気分で盛り上がっていた。
日向の病状は深刻化の一途を辿り、永夢は信頼関係構築失敗に打ちひしがれ…………仮にあの場で謝罪を受け入れられたとしても、それと「信頼関係の構築は別物」なのですが、本気でわかっていなさそうな辺りに、なにか根本的なところで人間として駄目な子感が迸ります。
……この辺り、狙ってやっているのかどうかが今作の場合、信用しきれないのでありますが。
適合手術関連についてはだんまりを決め込むピパ子が急にお母さんモードを発動し、励ましを受けた永夢が取った手段――それは……
ザ・土下座外交。
飛彩先生こそ日本一の天才外科医! ドラハンガシャットは飛彩さんにこそふさわしい! へっへっへ……と、飛彩を呼び出す永夢だったが……待ち合わせの場所に現れたのは、飛彩、大我、九条のドクター3名。
「おまえ……どういうつもりだ」
「ガシャットが欲しいなら……力尽くで俺から奪ってみせろよ」
一瞬、瞳の赤く輝いた永夢は、口角を釣り上げると不遜な態度で3人を挑発。
(まだゲームをやってないのに、永夢の性格が変わった?)
自動車に乗るとスピード狂になるとか、拳銃を握るとハッピートリガーになるとかいったものとは一線を画す形でその変化が強調され、おニューのガシャットを手に立ち上がる永夢。
「それとも、俺に負けるのが怖いのか?」
基本的に煽り体制の低い面々は永夢の挑発に乗ってそれぞれガシャットを手に握り、4人が一斉に変身、そしてレベルアップでアーマー装着。
「それがおまえの攻略法か、天才ゲーマー・エム」
その光景を見つめてパラドはニヤニヤと笑い、今のところひたすらにエムのストーカー、というか、推しへの愛をこじらせすぎた厄介なファン。
「大・大・大・大・大変身!」
「これより、エグゼイド切除手術を開始する」 「ミッション・開始」 「ノリにノってるぜぇ! Fuu!」
ブレイブの台詞に割と本気でこの世から抹消してやるという殺意を感じる一方、レーザーのなんかとってつけた感(笑)
ドラゴンエグゼイドを中心に激闘が始まり、3ライダーの大技を受けるとドラゴンアーマーが解除。LV5欲しさに分離したドラゴンに全員が一斉攻撃した結果、ドラハンガシャットが4人プレイ用の4つの仮想ガシャットに分離し、その場の全員が共闘プレイヤーとなる事に。
「狩りのターゲットは――グラファイト!」
エグゼイドの叫びに合わせ、強制的にグラファイトがゲームエリアへと召喚され……な、何その機能?!
以前のバイクバグスターのように、プロトガシャット使用時点で『ドラハン』のゲームキャラとして設定されているという事なのかもしれませんが……説明の筋道があまりにも不足しており、こういった部分の雑さ加減がどうにもノりにくいところ。
ただ、個人だと暴走してしまうドラゴンアーマーを、4人同時プレイにより各自が分割装備する事で制御するのは面白いアイデアで……か、かっこい…………い……?
見物のピパ子さんが解説であれこれフォローを入れる中、ドラゴンドクターズは4人がかりでクロファイトを袋だたきにし、最後は一斉クリティカルストライクにより、哀れクロファイト木っ端微塵。
「で? これって誰の勝ちになるわけ?」
「俺が一瞬早かった」
「いや、急所を突いたのは俺だ」
スモールキャパシティドクターズの言い争いは、ポピ子の仲裁虚しく物別れに終わり、再び離れていく4人の道。
「はぁ……チーム医療って……難易度高いな……」
土下座外交で持ち上げてから、本気にするとかばっかじゃねーの? のコンボで、人間同士の信頼関係を根本から破壊した永夢がなにやらのたまい、必要なのは、適合手術ではなく、心の手術なのでは。
まずは、朝顔の観察辺りから始めるべきでしょうか……。
海を見ながら飛彩が黄昏れ、飛彩と大我にとって因縁の相手だったグラファイト、さすがにこれで完全退場とは思えませんが……ゲンムコーポレーションでは社長とパラドが悪巧みを次の段階に進めようと動きだし、つづく。