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『恐竜任侠伝』第6話「絆の兄弟剣」

恐竜戦隊ジュウレンジャー』感想・第22話

◆第22話「合体!剛龍神」◆ (監督:東條昭平 脚本:杉村升
 よくよく考えてみると現代社会についてしっかり把握していない可能性があるので、東京都の制圧=全世界の帝王! ぐらいの気持ちなのではという気もしてきたブライの笛に操られるドラゴンシーザーが、バンドーラの送り込んできたゴールデン夫婦と激しい戦いを繰り広げ、なすすべもなくそれを見ている事しかできないジュウレンジャー
 だがその時、バーザの祈りに応えるかのように激しい地震が発生するとダイノバックラーがまばゆい輝きを放ち、地の底から壮大なBGMと共に守護獣が復活する!
 守護獣は血だまりもといマグマの海に沈んだのではなく、むしろマグマを吸収する事によりエネルギーを回復して甦ったつまり、守護獣を倒したと思ったのがそもそも幻想だったのだ!
 とされるのですが……ジュウレンジャーが守護獣復活に全く能動的に関わらないので、完全に受け身の“奇跡”になってしまい、大変残念。
 バンドーラ様の練りに練った策謀を、諦めずに戦い続けるジュウレンジャーが上回る事で奇跡を呼び込む、などあればまだヒーローの姿が劇的になったのですが、バンドーラ様を上回ったのはジュウレンジャーではなく守護獣のスペックであり、


 「あれはアースフォースだったんだ……俺達にはアースフォースがあるんだ! 苦しい時には、 必ず俺達を助けてくれるアースフォースが!」
 「こんなところでやられて、たまるか! 俺はアースフォースを、浴びるんだ! アースフォースさえ浴びれば、 アハメスなんかに、負けないんだ!」
 「アースフォースが呼んでる! アースフォースが俺を呼んでるんだー!」
(『電撃戦隊チェンジマン』第35話「地球よ! 助けて!」)

 と叫びわめいていたら(なお、叫んで喚いて「うわぁぁぁぁ! アースフォース! アースフォース!」と錯乱するに至った大空勇馬を演じていたのが、ブライ役の和泉史郎さん)、二度目のアースフォースがポンと出てきたみたいになってしまいました。
 基本的に、
 〔悪夢の具現たる強大な魔女vs未熟な勇者たち×バックの守護獣〕
 という構図にしても、既に中盤の一山になるわけですし、


 「……たぶん……一度しか出ないんだろ!」
 「そうだ。アースフォースは、二度と出ないんだ。苦しい時に頼っていたら……俺達はいつまで経っても!  真の戦士になれないだろう!?」
(同上)

 といったステップアップ――守護獣の存在を外せない作品構造はわかりますし、現時点での完全な巣立ちは無理にしても――その入り口ぐらいは、見せて欲しかったなと。
 『チェンジマン』はシリーズ史で見ても一種オーパーツ的な傑作なので直接この出来を求めるわけではないのですが、せっかく前回、巨大戦力が無いもシーザー大暴れに対して救命活動に飛び出す姿を描いたのだから、そういった行動をジュウレンジャーの在り方から大獣神復活へと持って行く仕掛けに繋げてほしかったところ。
 この辺り、瓦礫の下敷きにしろ幼稚園バスにしろ、「子供を事件に巻き込む」のが、手段ではなく目的化してしまっている気配があり、持ち込んだノルマが物語の前後と噛み合わずに上手く活かせていないのを感じます。
 ゴールデン夫婦が撤収するとブライは守護獣へ向けてシーザーを進撃させ、共に戦おうとするゲキたちだが、乗車拒否。
 もはや貴様らは戦士失格、と廃棄物の烙印を押されるのかと思ってドキドキしましたが、ティラノは、そこの若造に業界の仁義ってもんを教えちゃるけんのぅと単騎でドラゴンシーザーへと殴りかかり、それに背中を押されるように、ゲキもブライとの一騎打ちを決意。
 「俺は貴様が憎い! 父を殺され、王になれなかった恨み、今思い知るがいい!」
 「こんな事で負けてたまるか! ……俺には……地球を守る責任があるんだ!」
 逆恨みのパワーと勇者のパワーが激突して見応えのある一騎打ちとなり……《スーパー戦隊》では80年代中盤ぐらいからレッドを中心にヒーロー像の試行錯誤が繰り返され、今作の前後にあたる『ジェット』『ダイレン』ではいずれも“ヒーロー性の低減”に切り込む事で戦隊作劇の新たな地平を拓いたのですが、ゲキに関してはむしろ、強い使命感と公の大義に対する自発的な責任感を併せ持ち、積極的に正義を唱える正攻法ヒーローに戻っている(一応、若き戦士としての「未熟」要素は与えられていますが)のは面白いところ。
 ブライとの激突においては、そんなゲキが肉親の情に惑う部分に一つポイントが置かれていたのでしょうが、あまりにも(ゲキにとっての)唐突な肉親すぎて「どんなに切りつけられてもブライとのポジティブな関係を築こうとする」姿勢そのものが、「正攻法ヒーローのセオリー的行動」に収まってしまったのは、惜しまれます。
 飛び道具をアーマー強化技で防がれる赤だが、先輩ヒーロー曰く――銃など所詮は目くらまし。油断した相手に剣を投げればいいじゃない。
 秘剣ティラノボールを直撃させた赤は、一気呵成の反撃に転じて緑を滅多斬りにし、ティラノもまたドラゴンシーザーにくぐってきた修羅場の違いを見せつけると、大獣神へと姿を変え、徹底的に痛めつけて上下関係を教育し、前回、完全に悪役ムーヴで大破壊を引き起こしていたので、仕置きとしてこれぐらい必要という判断だったのかとは思われますが、無抵抗の恐竜を執拗にたたき伏せる大獣神がちょっと感じ悪くなりました(笑)
 「ジュウレンジャーのリーダー、ゲキよ。悪は、元から絶ちきらねばならない。おまえもブライに、トドメを刺すのだ」
 そして会長は、後に禍根を残さぬよう、きっぱりとケジメを要求。
 「やれゲキ! トドメを刺すのだ!」
 剣を振り上げ、身動きできないブライに近づくゲキ、だが……
 「……駄目だ、大獣神……俺にはやっぱり、兄の命を奪うことはできない!」
 ゲキは剣を下ろしてブライに背を向け、その甘さが命取りよぉ! とブライが隠し持っていた拳銃から放たれた鉛玉がゲキの背中の入れ墨を真っ赤に染め……たりはしませんでしたが、ドスを掴んで斬りかかろうとはしたので、ブライはだいたいヤクザ。
 「……地獄へ堕ちろぉ!」
 「――兄さん! そんなに俺が憎ければ、斬るがいい! それで憎しみが消えるなら、俺は……! 斬れ……斬れぇ!!」
 運命のボタンの掛け違いから、父の怨念と王家への嫉妬を糧に生きてくるしか出来なかったブライの憎悪を否定するのではなく受け止める事をゲキは選び、まさにヤマト族のプリンスたるにふさわしいその器を前に、ブライもまた、ゲキを刺す事のできない自分に気付く。
 「出来ない……何故だ……! ……許してくれ、ゲキ。……俺が悪かったぁっ! 許してくれ……。両親を失い、俺は誰かを憎まずにはいられなかった。だからおまえを……。でも、それは間違っていた」
 膝をついたブライが涙をこぼすと、それに触れた魔剣ヘルフリードは消滅し、彼女(候補)の座を獣奏剣に奪われた!
 「ブライの心から、悪が去った。憎しみが消えたのだ」
 以前に「ゲキとブライの果たし合いの場」を予告していた大獣神、独房の看守によると獣奏剣をブライに与えるのは「頼まれた」事だったので、全てワシの計画通り……感が物凄いのですが、とにかくこれにて手打ち。
 今日からブライとドラゴンシーザーは、関東守護獣会の傘下に加わり大和組の盃を受けるのじゃ!
 「これで、ジュウレンジャーは、6人になった。さあ、伝説の戦士・ジュウレンジャーよ、変身するのだ」
 6人はその場で変身すると固めのフル名乗りで、恐竜戦隊・ジュウレンジャー
 (『恐竜任侠伝』-第1部・完-)
 スーパー戦隊》史における大きなターニングポイントが、刻み込まれるのでありました。
 「ドラゴンレンジャー! 今日からおまえは、ジュウレンジャーの新しいメンバーだ! 獣奏剣を奏でよ、ドラゴンレンジャー!」
 緑が笛を吹くと倒れていたシーザーにエネルギーが充填され、シーザー・マンモス・トリケラ・タイガーの4体が合体する事で、新たな巨大ロボ、龍神が誕生。
 膝当て部分が大きく出っ張っている関係で、ラストの膝から上を映したカットが、体育座りしているように見えて一瞬ぎょっとしました(笑) そして今更ながら、スーパーゼンカイザーは思い切りドラゴンシーザー×剛龍神だったと知る事になりましたが、武器とかほぼそのままだったとは……。
 予告で登場した新ロボは戦いが一段落した後にお披露目だけされて終わる驚きの構成でしたが、当時としては、「これで、ジュウレンジャーは、6人になった」こそが最大の焦点で、今回のクライマックスという意図でありましょうか。
 「残り時間は、あと、25時間と10分よ」
 独房に戻ったブライは看守の少女から冷徹な通告を受け、ブライの立ち位置が6人目のジュウレンジャーになった事により、その意味合いが前回から大きな変化を遂げる事に。
 「なぜだ……なぜ俺の命は後それだけしかないんだ!?」
 ブライの問いに、運命の精霊クロトを名乗る少女は答を与えず、ブライの寿命問題が大きなミステリとサスペンスとして物語の軸に加わって、つづく。
 ブライ登場編から6話をかけての和解と新戦力加入、となりましたが、恐竜のタマゴは大きな意味を見せないまま再び川を流されていき、大獣神ジュウレンジャーと関係ないところで復活し、ゲキが大義と私情の間で揺れる姿は詰め不足……と、かけた話数にしては仕掛けがはまらず、物足りない内容。
 ただ上述したように、「これで、ジュウレンジャーは、6人になった」に現在よりも大きな意味があったと思われるので、リアルタイムと、30年後に見るのとでは、どうしても印象の変わるところではあるのかな、と。
 で、こうなってみるとブライの寿命問題は、6人目の戦士を常駐させずに物語をスムーズに動かす為のアイデア、という部分があったようですが、それを兄弟のドラマ、サスペンス&ミステリ、に繋げたのは面白く、上手く転がっていってほしいです。
 次回――一段落から恐らく平常運行に戻って、恋の魔球はミラクルザウルス。