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獣に連なる者たち

恐竜戦隊ジュウレンジャー』感想・第3話

◆第3話「戦え絶望の大地」◆ (監督:小笠原猛 脚本:杉村升
 前回、ドーラスケルトンにあっさり武器(考えてみると、副葬品……)を破壊されてしまったゲキ達5人は、アジトの武器庫をひっくり返してみるが整備不良でどれもこれも使い物にならず、バーザへの怨嗟と共に、血を吐くような呻きをもらしていた。
 「新しい武器が欲しい」
 バンドーラの連中と戦争するにもタマが足りんのじゃぁぁと歯がみする古代恐竜人類たちだが、そこに吉報を以てゴウシが姿を見せる……闇帳簿によれば裏の世界にある絶望の大陸に、税金対策として隠された伝説の武器が眠っているというのだ!
 だが絶望の大陸はその名の通りに呪われた土地であり、数多くの戦士たちが伝説の武器を求めて向かうも、いずれも絶望の呪いによって石と化し、無事に帰ってきた者は誰一人として居ない場所だった。
 それでも5人は、試練を乗り越え絶望の大地にそびえる城の中に眠る、伝説の武器を手に入れなくてはならない! と、いきなり出てくる裏の世界とか、城の中で輝く武器の描写とか、どことなくロールプレイングゲームを思わせる話運び。
 エピソードに絡むゲスト少年・宏が勉強しなさいと口うるさい母親に不満をもらす姿も合わせて、視聴者との“距離の近さ”への意識が立ち上がりから強く見えますが、そこに波乱をもたらすのは、平穏な日常に忍び寄る甦った悪夢・バンドーラ。
 宏少年とその母親を絶望の大陸へと突き落としたバンドーラは、恐竜人類のアジトへとホットラインを繋ぎ、ザルすぎるセキュリティ。
 武器の管理といい、事務所の隠蔽工作の不手際といい、バーザの伯父貴はマンションの管理人に身をやつしている間に、腑抜けすぎなのでは。
 伯父貴よぉ、俺らの戦争はまだ終わっとらんのじゃぁ、とゲキたち5人は絶望の大地へと飛び込んでいき……前作『ジェットマン』とは打って変わって、開幕当初から両手の赤黒い汚れを幾らこすっても落ちない感が濃厚なジュウレンジャーですが、「戦争」が終わるまで「青春」が取り戻せない(手に入らない)のかと見ると、80年代曽田戦隊イズムがどこか漂うのは、戦隊史の流れとして面白いところ。
 伝説の武器も手に入れる、子供も助ける、両方やってこそヒーローよ、と大陸に降り立ったゲキたちは、24時間のタイムリミットを考えてゲキ・ゴウシ・ダンと、ボーイ・メイの二手に分かれ、道中ところどころにある石化した戦士像が、チープさゆえにかえってグロテスク。
 ダンは初めての斜面落ちから怪人の襲撃を受け、真面目そうなメンバーが多いジュウレンジャーの中で、お調子者のトラブルメーカーぶりを発揮。
 そのダンを助けようとしたゲキは、転がっていた岩を掴むや地中から伸びる怪人の腕に叩きつけ、古代恐竜人類の躊躇ない戦闘姿勢に戦慄。
 たまらず瞳のつぶらなドーラミノタウロスが地上に姿を見せ、ジュウレンジャーが伝説の武器を求めるであろう事を察知するや、子供を餌に分断を仕掛けて撃破を目論むバンドーラ様が超有能ですが……昔の人は言いました。
 武器が無ければ素手で殴ればいいじゃない。
 全く物怖じせずにステゴロでミノタウロスへと挑みかかるゲキ・ゴウシ・ダンがあえなく崖落ちする一方、宏少年を探すボーイとメイも行く手を泥人形軍団に阻まれていたが、こちらはベルトのバックルを外すとメリケンサックの要領で握り込み、二度と煎餅を食べられない体が望みかと言わんばかりに拳を振るい、古代恐竜人類の躊躇ない戦闘姿勢に戦慄。
 後のビーストアーツは、古代恐竜人類の戦闘スタイルを始祖としているのではないかと疑惑が浮上する中、5人はそれぞれ変身。分断された状態は続いて互いに大ピンチの中で、自分たちの身を顧みずにとにかく少年を助けようとする姿で手堅くヒーロー度をアップしていくが、バンドーラ様が放った莫大な魔力により絶望の大地が裂けると、それを浴びた牛が早くも巨大化してしまう。
 対する5人は守護獣を召喚し、大地を揺るがして姿を見せるティラノザウルス! ジュウマンモス! トリケラトプス! サーベルタイガー! プテラノドン
 しばらくメカバトルとなるも、母が見つからない不安から絶望に落ちた宏少年は石化。戦力の整わないジュウレンジャーは巨大ミノタウロスに追い詰められ、大ピンチのまま、つづく。
 次作『ダイレンジャー』の第1-2話では、シリーズ他作品になかなか類例を見ない力業(第1話の巨大戦の決着が第2話の冒頭で付けられると間を置かずに次の怪人が登場する)が用いられていましたが、フォーカスをしたい要素と尺のせめぎ合いの中で、とにかく伝説の武器を! 宏少年の悪夢を! どーんと守護獣を! と、それぞれのポイントを目立たせる事を優先しており、限りない圧縮を仕掛けて熟練の技で1本のエピソードを成立させていた80年代後期戦隊と比べると、多少水で伸ばしてでも具材を目立たせて前後編にしてしまいましょう! という別方向の作りが見て取れます。
 80年代戦隊が、長く曽田メイン体制が続いていた事もあってか良くも悪くも独特の進化を遂げていたのに対して、それとは違う道へ進もうとしていたのが一つ、90年代前半におけるシリーズの変化であったのかもしれません。