東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
旧ダイアリー保管用→ 〔ものかきの倉庫〕
特撮作品の感想は、順次こちらにHTML形式でまとめています→ 〔特撮感想まとめ部屋〕 (※移転しました)
HP→〔ものかきの荒野〕   Twitter→〔Twitter/gms02〕

吼えろ! 吼えろ! 吼えろ! ギンガマン

星獣戦隊ギンガマン』簡易構成分析

 あれもこれも貯まりすぎているので、ひとまず、データだけ集めておいて総括と構成分析の叩き台にする作業をしておこうシリーズ。
 感想記事はこちらにまとまっています。→■〔『星獣戦隊ギンガマン』感想まとめ1〕(以下、8まで)。

◇演出
 辻野正人:〔3.4.9.10.15.16.21.22.27.28.33.34.39.40.46.47〕:16本
 長石多可男:〔5.6.11.12.17.18.23.24.29.30.41.42.48.49.50〕:15本
 田崎竜太:〔1.2.7.8.13.14.19.20.25.26.43.44.45〕:13本
 小中肇〔31.32.37.38〕:4本
 諸田敏〔35.36〕:2本

 年間通してローテ2番手として活躍した辻野監督が最多演出。
 今作前半は基本、田崎監督が新展開を立ち上げ、 長石監督が節目を締め、その間に辻野監督が比較的フリーな演出でアクセントをつけるといった形で進行しているのですが、辻野回はエピソードに合わせた色々なアプローチが楽しく、大きな縦軸のドラマ以外で一話完結的エピソードの面白さをどう見せるのか、において演出ローテの差配も含めて、面白い工夫であったと思います(『オーレン』のジニアス黒田編とか、小林靖子の戦隊デビュー作となった『メガ』毒ガス回とか、辻野監督は割と好き)。
 ラスト3話を締めたベテラン長石監督は、上述したローテの関係により、サンバッシュ・ブドー・バットバスの軍団長3人に加え、ゼイハブ・シェリンダ・ブクラテスにダイタニクス、更にはモーク、と大量のメインキャラを葬り去る事に(笑)
 初のパイロット版監督となった田崎監督は黒騎士ブルブラック退場編で渾身の演出を見せ、辻野監督はイリエスとビズネラを葬り去り、田崎監督の抜けていた3クール目に、小中監督と諸田監督が参加。
 『超光戦士シャンゼリオン』(1996)で本編デビューした諸田監督は、今作が《スーパー戦隊》デビューとなり、00年代以降の中心的演出家になっていく事になります。

◇脚本
 小林靖子〔1.2.3.4.5.6.7.10.11.12.13.16.17.18.19.20.22.23.24.25.26.29.30.31.33.34.35.36.37.38.40.41.42.44.46.48.49.50.〕:38本 ※第46話は村山桂と連名
 武上純希〔8.9.15.28.32〕:5本
 荒川稔久〔14.21.27.45〕:4本
 きだつよし〔39.47〕:2本
 沖田徹男〔43〕:1本
 村山桂〔46〕:1本 ※小林靖子と連名

 90年代《メタルヒーロー》で育成され、前年『電磁戦隊メガレンジャー』での《スーパー戦隊》初参加から、今作でメインライターへと抜擢された小林靖子は、初メインにして怒濤の38本担当で、後の片鱗を物量面でも窺わせます。
 武上さんと荒川さんが前年から続投し、小林さんが初メインなので保険も兼ねてメインライター級の人をサブに配置する思惑もあったのかとは思われますが、完全に、スポット穴埋めといった立ち位置。

 メイン回(判定は筆者の独断によります)は、以下の通り。 ※()内は、コンビ回。

ギンガレッド/リョウマ
 〔5.10.12.15.17.18.19.20.24.25.26.32〕:12(7)回
ギンガグリーン/ハヤテ
 〔4.10.16.21.24.31.36.46〕:8(4)回
ギンガブルー/ゴウキ
 〔3.11.21.24.28.35.44〕:7(3)回
ギンガイエロー/ヒカル
 〔4.8.15.22.29.40.47〕:7(4)回
ギンガピンク/サヤ
 〔9.14.18.22.27.33.39.45〕:8(3)回
黒騎士/ヒュウガ
 〔26.27.29.38〕:4(3)回
青山勇太
 〔6.17.28.31〕:4(3)回
モーク
 〔13〕:1回

 メイン回の配分から見るとリョウマは歴代でもかなり特殊で、第17話~第26話、黒騎士編からヒュウガ復活そして炎の兄弟、に半分以上が集中しており、黒騎士との対話、ヒュウガとの再会を通して、リョウマの戦士としての成長を描き真のギンガレッドに至る姿があまりにも美しくてもはや最終回レベルの集約。
 同時に『ギンガマン』の背景に横たわる「復讐」とは何か、をもって「正義」と「悪」を分けるものを描き出すのは、非常に見事な構成でした。何度か書いていますが、こと「復讐」テーマの扱いとしては、《スーパー戦隊》に限った話ではない名品。
 「ここであの子を見捨てれば……どう戦おうと、それは、バルバンと同じだ!」
 逆に第26話で一つの完成を見た以後は、個人にスポットを当てた回はほぼ無くなるのですが、全体の配分(最終決戦を前にキャラ回一巡)を見ると決戦ダイタニクス前後編(第41-42話)はリョウマ回の意識ではあったのかと思われます。また最終的には物語全体が、リョウマとヒュウガ、炎の兄弟に再び集約されるので、存在感が薄れるという事はありませんでした。
 初期メンバー4人は概ね均等で、最終盤にもしっかり割り当てがあるなど印象よりもサヤが健闘。
 コンビ回の配分は、赤は全員コンプリート。緑は桃黒なし。青は黄桃黒なし。黄は青と勇太なし。桃は緑青と勇太なし。黒は緑青と勇太なし、となっており、主人降格の赤と追加戦士枠の黒を除くと、年長組はサヤとじっくり関わらず、年少組は勇太少年とじっくり関わらない、のが見て取れる部分。
 ゴウキに関しては中盤以降、ゴウキ回=鈴子先生回であり、特に後半は岸本が2回出てくる関係もあったと思いますが、青黄回をやるよりも、これで良かったと思います(笑)
 ヒュウガは追加戦士作劇のセオリー成立以前に加えて途中離脱もあり、メイン回として数えられるエピソードは少なめなのですが、4クール目は実質全て、ヒュウガ回のようなものといえばもの。
 全体としては、2クール目をリョウマ編に注ぎ込みながらも、他のメンバーにもきっちりと目配りの効いたメイン配分になっていますが、ハヤテ(婚約者の話とシェリンダとの因縁)・ゴウキ(鈴子先生)・ヒカル(成長枠)、とそれぞれ縦軸が用意されていたのと比べると、サヤだけ確固たる縦軸が無かった――そこに使えそうな「ヒュウガとの関係」が使いにくかった……のが、キャラとしては不憫だった部分。

 主なイベントは、以下。

◆プロローグ(1-2)
 第2話 星獣の再来
◆第1部(3-12)
 第5話 自在剣・機刃を取り戻す
 第7話 ギンガイオー完成!
 第11話 鈴子先生登場
 第12話 サンバッシュ退場
◆第2部(13-26)
 第13話 獣撃棒完成
 第17-19話 黒騎士ブルブラック復活、重星獣ゴウタウラス&重騎士ブルブラック出現
 第23-24話 獣装光ギンガマン誕生、ブドー退場、超装光ギンガイオー誕生
 第25-26話 黒騎士ブルブラック退場、黒騎士ヒュウガ誕生
◆第3部(27-34)
 第29-30話 闇商人ビズネラ登場し、ギガバイタス・ギガライノス・ギガフェニックス仲間に
 第32話 ライオンバイク登場
 第34話 イリエス退場、樽爺捨てられる
◆第4部(35-50)
 第37-38話 復讐の樽爺復活とヒュウガ離脱
 第41-42 魔獣ダイタニクス復活そして撃破
 第47話 ビズネラ退場
 第49話 地球魔獣誕生、樽爺&バットバス様&シェリンダ退場
 第50話 バルバン壊滅

 4人の軍団長がそれぞれの個性的な軍団を率いておおよそ1クールずつを担当するのが《スーパー戦隊》としては珍しい構成ですが、ここでただ敵の指揮官が代わるだけではなく、軍団によってバルバン側の雰囲気が変わる・それぞれ目的が少しずつ違う、と映像面でもストーリー面でも明確なアクセントを加えて、ただの繰り返しにしなかったのが、何より上手かったところ。
 またこの「敵の行動目的が少しずつ変わっていく」事により、「敵サイドが毎度同じ目的を果たそうとして失敗する」作劇の回避も図っているのですが、さすがに第3部に入った頃には苦しくなってくる事に。
 そして2クール目に単独2号ロボの登場から追加戦士の新生と、戦隊と連動した1号ロボ強化を行った後で、30話台には要塞メカ&ロボ2体と、追加必殺兵器を投入してくるのですが、どちらも物語との接合が弱くて浮き加減になってしまい、3クール目の追加装備をどう落とし込むのか、の難しさが窺えます。
 ただ今作はそこから、復讐鬼となって帰還する樽爺というウルトラCを繰り出すと、樽爺とヒュウガを繋げる事により黒騎士編のフレーズを低く奏で続けながら『ギンガマン』の核にあるテーマを深化させて全体を包括し、魔獣ダイタニクスを復活させた上で撃破してしまう事により最後のカンフル剤を注入すると共に星獣に対する「魔獣とは何か」までを物語の中に収めてみせたのは、本当にお見事でありました。
 n部構成は割と、一見わかりやすいが盛り上がりのエスカレート構築に失敗する諸刃の剣の印象があるのですが、今作は第3部で少し落としたものの、第37-38話をターニングポイントとした最終章で見事にそこからの再浮上に成功しており、返す返すも大きかった樽爺の存在(笑)