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「これからは私の――いや、私達のターンだ!」

『機界戦隊ゼンカイジャー』感想・第47話

◆第47カイ!「パレス突入!ボスの前でも頭が高い!」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:香村純子)
 「すっげぇ……神っぽさ全開」
 そんなわけで、「自称神を本物の神と信じるか?」と「自称神の打倒トジテンド宣言を信じるか?」は別物にも拘わらず、「自称神を神様と認める」事と「神様そのものを信用する」事をすっかり混同したまま、ゼンカイジャー一同は自称神の導きでトジテンドパレスへ突入する事になり、敵本拠地への突入経緯が、黒幕に全力で踊らされながら謎の超パワーを手段とする、という極めて盛り上がりに欠ける展開。
 せめて、パレスへ急ぐ切羽詰まった事情があるとか、全面的に信用しないが少なくとも超空間ゲートを開く能力は認める……とかで、罠を覚悟で自称神の提案に乗っかる、ぐらいだったらまだ飲み込みやすかったのですが、自称神を本物だと認める理由も弱ければ、神の助力を信用する根拠はゼロに近く、パレス突入の為の手段を探す能動的努力も放棄してしまい、目の前のゲートに飛び込んだ途端に、「はっはっは! 貴様たちはこれから、その虚数空間の檻の中を永劫に彷徨い続けるのだ!」とかやられても、文句を言えないレベル。
 着ぐるみ×声優要素を神憑依で活用するのは、ならではの面白さにはなりましたが。
 成り行きに不満は多いですが、これといったトラップもなくゼンカイジャーはトジテンドパレス突入に成功し……そういえば、スパイ、本当に居た(笑)
 元掃除係の案内もあり順調にパレスを突き進む中で、さすがにジュランらの台詞により、圧政打倒のチャンス! とキカイノイド側の事情に触れられるが、いつの間にか憑依を解いていた自称神は、ゼンカイジャー不在のアース-45でお掃除を進行。
 そして、公園で黄昏れるステイシーは、心の隙間にハンドドリルでねじ込まれてくる「優しい」に必死の精神抵抗を試みていた。
 「……優しくなんかない。僕は――」
 一方、反政府テロリストの侵入を許したパレスでは、ボッコワウス大王が残り全てのトジルギアを自らに取り込もうとしていたが、早くもその眼前に辿り着いてしまうゼンカイジャー。
 「やっと会えたぜ、悪の大王!」
 「僕たちが、ぼっこぼこの、ぼっこボコワウスにし」
 「来るのが、早いわ!!」
 で、ふりだしに戻されるのは面白かったです(笑)
 ボスの準備不足によりバトルの調整が終わっておらず、パレスの外へ放り出されたジュラガオマジは、そこで自称神により強制送還されたターさん達と遭遇。だが事情を確認する前にバトルイジルデロボ、もといイジルデストロイヤー4世が出現して交戦を余儀なくされ、アース-45では、ゼンカイジャーの無事の帰還を待つしかないヤツデとセッちゃんの元を、ステイシーが訪れていた。
 ヤツデの悲痛な祈りを耳にしてしまったのがまた辛いステイシーは、パフェの勧めを断り、優しくなどない筈の自分の正体を告白する。
 「…………あなたに……謝らなくてはいけない事があります。……僕の名前はサトシじゃない。本当の名前は――ステイシーです」
 「……ステイシーって……あのトジテンドの?!」
 「はい。あなたの孫を……五色田介人の命を狙っていました」
 そもそもの行動理由に始まり、ヤツデに説明をする形でステイシーの事情を整理し、少々、言葉にしすぎたきらいはありますが、調整・修正を含めてステイシーの心情を実質的に自ら解説させる事により、この後の説得力を引き上げようとするやむを得ない手段であった感。
 「その内、介人の事が羨ましくなりました。真っ直ぐに親を信じていられて……こんなに暖かい場所を持っているあいつが。……僕の勝手な嫉妬で、介人を……倒そうとしていました。……本当に、すいませんでした!」
 とはいえそこから、環境の不幸は確かにあったかもしれないが、悪行に走ったのは己の狭小な視野と醜い妬心の産物に過ぎない、と「自らの嫉妬心を認める」のは、“変化の象徴”として劇的に機能。
 厳しい視線を向けたヤツデがしかし、頭を下げるステイシーを叱りつけると固く抱擁し、
 「まったく! 馬鹿な事をする子だよ!」と
 「……でも、優しい子だ」で、
 ステイシーにおける“親の不在”が強調され、「嫉妬を認めて謝罪する」&「背伸びしていた子供が、ようやく道をただしてくれる存在と出会う」の合わせ技で、なんとか落としどころとして、納得できる形に。
 また、ステイシーに対しては介人が一方的に甘い(仲間たちの賛同すら得ていない)のが歪みを生じさせていたのですが、ここで当事者の一人であるヤツデが謝罪を受け入れる形で、それも部分的に修正。
 正直、ここ数話の出来と展開から、ステイシー周りをなし崩しでなぁなぁにされるのではと不安でいっぱいだったのですが、環境の要因と内心の要因をステイシー自身に切り分けさせ、己の中の悪意と向き合い、その克服の第一歩を自ら踏み出す「変化」――そして踏み出した事によりヤツデの伸ばした手が届く形で、一定の筋を通して及第点には収めてくれました。
 キカイトピアでは、暴れ回るバトルイジルデロボを相手に赤黄桃が変身巨大化し、分断されていた介人は、ジャンク置き場にはまっていたブルーンを救出。ジュラン達の戦いを目にして救援に駆けつけようとするが、そこにミサイルが撃ち込まれ、直接出馬してきたバラシタラが姿を見せる。
 「貴様らとはもっと遊びたかったが、ボッコワウス様がキレてしまっては、仕方ないのでアル。ここで仕留めさせてもらうのでアル!」
 本気を見せたバラシタラは、初手からギアトリンガーをはたき落とす巧妙な戦術で介人とブルーンを一方的に追い詰め、ジュラン達もイジルデロボに苦戦を強いられ、メンバー個々が巨大ロボサイズで戦える要素が、序盤以来で活用されている気がします。
 今作の巨大戦における一つの失敗は、「メンバー個々が巨大ロボサイズで戦える」にも拘わらず「ゼンカイオーに特別な意味を与えなかった」事にあると思うのですが、合体する事で明確に強さがアップする印象付けが弱いので、巨大化できるメンバーが合体ロボになる必然性が薄く、逆にその段取りを踏まずに問答無用で合体するのでメンバー個々が巨大化できる意味も薄くなり、互いを引き立て合ってこその要素がむしろ互いを潰し合うという不幸。
 おまけに、合体+ゼンカイザーが乗り込んで制御する事がより強い力を引き出す為の必要条件ならまだ説得力があったのですが、「ゼンカイザーが乗り込まなくても合体&戦闘できてしまう」ので、「巨大化の意味」と「合体の意味」と「ゼンカイザー搭乗の意味」が全て薄れてしまう致命傷となったのは、大きな失策でした。
 あまりにも見え見えの落とし穴にはまってしまっていたのですが、「メンバー個々が巨大ロボサイズで戦える」最大の利点は、チームが分断されていてもスムーズに(時間稼ぎの)巨大戦が可能なところなのに、そういった要素の取り込みよりもむしろ、巨大戦で余るメンバーが戦えない理由を作る方に意識が向いていたのは、なにか、実作が進んだところで初期構想からの変化があったのだろうかと勘ぐりたくはなるところです。
 で、この“チームの分断”を如何に面白くスムーズに取り込むのか、はコロナ禍の撮影事情もあってか前作『キラメイジャー』で洗練されていった作劇なのですが、それに対して今作は集団ドタバタ路線を軸に置いているので、企画段階と事情が変わった部分もあったのかも、とは。
 巨大ジュランたちが苦境に陥ったその時、ターさんらキカイノイド市民がイジルデロボの足下に投石を浴びせ、《投石》すなわち地球人類の得意スキルであり、これこそ、キカイノイド達がアース-45で受け取った果てなき戦隊スピリッツ!
 「きーーーーーーー! 愚民どもが詰まらん真似をぉ!」
 イジルデが気を取られた隙を突いて攻勢に出るジュランらだが、クダイストが増援襲来。一方、変身不能となり地下道へと逃げ込んだ介人&ブルーンにはバラシタラが迫り、狭い地下水路の中でのミサイルパーティは面白い画でした。
 「終わりでアル」
 「だそうです。どうしましょう?!」
 だがその時、頭上から別口のミサイルが降り注ぐと目くらましになり、セッちゃんの案内で逃走に成功した介人らの前に、目線を逸らしながら現れたのは、セッちゃんをキカイトピアへと連れてきたステイシー。
 「……おまえが一緒にトジテンドを倒そうって言ったんだろう」
 「え? でも…………いいの?」
 「ヤツデに全部話した。……僕はずっと、トジテンドの常識で動いてきた。今ここで寝返ったからって、罪滅ぼしにはならないのかもしれない。でも……今度は胸を張って、カラフルに行きたいから」
 幾つもの世界が交差し、多くの出会いと別れが生まれ、そして、殻を破った者たちは、居場所も、ルールも、決してたった一つではない事に気付く――ここ数話、出したい料理に対して、素材と仕込みが足りてない感が強かったのですが、なんだかようやく、やりたかった事が繋がった感。
 「ステイシー……」
 「全然大丈夫ですよ! 私も元トジテンドですが、カラフルに住んでますから!」
 「……え? おまえ、トジテンドだったのか?」
 今ようやく知る、衝撃すぎる事実(笑)
 「ハイ!」
 「……なんだよそれ。悩んでた僕が馬鹿みたいじゃないか」
 ……まあブルーンは好奇心無罪の人なので、参考にはしない方がいいと思います。
 「え?! 悩んでたんですかー?!」
 そしてブルーンは割と、人の心が無い部門でもありました。
 「でも俺、そういうステイシーの真面目なとこ、好きだよ」
 「おいらもチュン!」
 多少強引ですが、セッちゃんもステイシーを認める事により、介人だけがステイシーに甘すぎる問題も是正を図られ、およそ一ヶ月ぶりに、香村脚本らしい目配りが冴え渡ります(補正能力が高いのは香村さんがメインライターをこなせる理由の一つかなと)。
 「僕はおまえの……そういうところが嫌いだ」
 「これが終わったら、一緒にカラフル帰ろう?」
 「……ああ。そのつもりで来た」
 トジテンド、という閉じた世界の軛を脱したステイシーは、笑顔を浮かべながら盛大にフラグを立てまくり、バラシタラが追いついてくると足止めに一騎打ちを買って出るが、そこに朗々と響き渡るよほいほいほい。
 「この歌は?」
 「よほほい!」
 なんか今回、セッちゃんがやたら積極的に細かい合いの手を入れてくるのですが、最終回も近く、珍しく現場出動でもあり、隙間が合ったら好きに入れていいですよ、とフリー行動の許可が出たりしたのでしょうか(笑)
 「俺は界賊 お宝もとめて 海から海へ~」
 「「「俺ら界賊 自由もとめて 世界から世界~」」」
 気持ちはわかる、と行動原理を飲み込んでいたら直後にそれを盛大にぶち壊す事で、史上まれに見る一時離脱騒動で株価を大暴落させた界賊一座が歌いながら合流し、享楽主義者の理由付けはあるものの、バラシタラに背中を向けてのお喋りが盛り上がりそうになったところで、ギリギリ許せるタイミングで「話は後だ」とゾックスが武器を向けてくれたのは、ホッとしました。
 「まずは、バラシタラをぶっ倒す!」
 「ほぅ、わざわざ死にに戻って来たでアルか」
 「おまえ……」
 「俺もあいつには借りがあるからな」
 家族を守るのがゴールドツイカー一家の長の役目であり、そして――
 「……介人、おまえもイジルデに借りがあんだろ?」
 介人の背中を押す台詞としては最高で、少ない因縁を上手く縒り合わせて劇的な瞬間を生み出してみせたのは、お見事。
 「行くぞ、ステイシー」
 「ああ」
 「チェンジツーカイ!」
 「暗黒チェンジ!」
 さすがにぶっつけ本番の創作ダンスこそ披露しませんでしたが、隣で踊るよほほいに併せる形で、ステイシーもたっぷりとタメを効かせてポーズを取り、頷き合ってから同時変身とかしていますが、たぶん界賊は、現状を把握していない(笑)
 「海賊のパワー――ツーカイザー!」
 「暗黒のパワー――ステイシーザー」
 ただ、流れの巧さでダブる名乗りは劇的に決まり、クライマックス2対1でも、相対するバラシタラが強敵として全く格落ちしていないのも、良いところ。
 死闘の続く地上では、介人とブルーンの落としたギアトリンガーを拾ったターさん達が援護射撃を行おうとして……暴発(笑)
 第1話のセルフオマージュかと思われますが、流血革命への狼煙をあげたところに介人とブルーンが合流し、ここに来てターさんが大暴れをしつつ、初期の要素と細かく接続してきます――つまり、銃弾が俺たちの絆だ!
 「拾ってくれてありがとう。……こっからは――俺たちがやる!!」
 キカイノイドたちの声援を受けながら介人とブルーンも変身し、全力カイザーストーム! から、全力全開王ではなく、どうしてゼンカイオージュラガオとブルマジ? と思ったら、



「秘密のパワー! ゼンカイザー!」
「恐竜パワーと!」 「百獣パワー!」
「「ゼンカイオー・ジュラガオーン!」
「魔法パワーと!」 「轟轟パワー!」
「「ゼンカイオー・ブルマジーン!」」
「と、セッちゃんチュン!」
「6人揃って!」

「「「「「「機界戦隊・ゼンカイジャー!!」」」」」」

 とロボット&合体状態で揃い踏みをする趣向で、「人間×ロボ×戦隊」という今作コンセプトが、第47話にしてようやく一つの理想型に辿り着いたというか、どうも道中で、この路線は一度放棄したのではないか、という気はしてきます。
 ……それにしても、本人の意志もある問題とはいえ、ツーカイは頑なに入れなかったのに、セッちゃんはあっさり6人目に入ったな……(笑)
 「貴様ら~~!」
 「全員揃ったんだ。おまえなんかにゃ負けねぇぜ!」
 意気上がるゼンカイロボット軍団は、クダイテストを瞬殺すると、イジルデロボへと突撃。
 「イジルデーーー!!」
 「貴様らぁ、いつもいつも吾輩の邪魔をしおってぇ!」
 「邪魔してるのは、そっちだ! 父ちゃん母ちゃんさらって、ギアの技術奪って! 他の世界閉じ込めて、その力酷い事に使って! 父ちゃん改造して、洗脳して! みんなの平和を、邪魔しまくってるだろ!」
 思った以上に復讐スタンプ帳が一杯に貯まっており、イジルデ様、1200ゼンカイポイントです。
 「あなたは勉強が得意かもしれませんが、知識はみんなのために使うのだと! 私は学びました!」
 知る事によって世界は広がり――
 「……ぶっちゃけ一つだけ感謝してんだわ~。俺らをあっちの世界に連れてってくれた事だけはなぁ!」
 行き止まりに思えた道に光を当て――
 「おかげで介人やヤツデ、たくさんの人間ちゅわんや、可愛い生き物たち、それに――大事な仲間と出会えたから!」
 出会いは無限の可能性に変わる――
 「でも! それ以外はぶっちゃけ、ハチャメチャのギタギタにグヌヌ全開、許せなさブルンブルンっスからねー!」
 引っ込み思案で友達の出来なかった私も、この開運ギアトリンガーを手に入れてから、こんなに力強く殺意を表明できるようになりました!
 直前にメイン回っぽい何かをねじ込まれたマジーヌを除く各人の心情がきちっと組み込まれて、監督他の領分もあるかとは思いますが、久方ぶりに香村脚本らしい切れ味が見えて、心底ホッとします(笑)
 「まだだぁ、吾輩の発明が、貴様らに負けるわけにはぁぁ!」
 「父ちゃん母ちゃんの発明は、おまえなんかに負けない!」
 そして介人にとってはそもそもが、父ちゃん母ちゃんの正義を証明する為の戦いでもあった、と遺された者であり受け継いだ者の魂にも接続され、怒りのWゼンカイオーが放つ怒濤のラッシュ攻撃、全力フルブレイクがイジルデロボを打ち砕き、イジルデ、遂に大爆死。
 諸悪の根源に近く、目的の為ならどんなえげつない事も平気でやる精神性は悪辣ながら、コミカルな味付けと全身から放出する小物臭さに加え、五色田夫妻を失ってからの凋落ぶりの為にあまり宿敵感のなかったイジルデですが、その分、復讐スタンプ帳の読み上げが効果的になり、いい散りざまとなりました(笑)
 Wゼンカイオーはそのままパレスを目指すが、金と紫はバラシタラの頭どかーんを食らい、変身解除。兄貴たちの危機に慌てるカッタナーとリッキーだが、気がつくとフリントがその場から姿を消しており、自称神に憑依されたフリントが、第1話以来となる気がする謎の大型機械を見つめて、つづく。
 予告からは次回でトジテンドが撃破されそうですが、ラスト1話で自称神と一定の決着が付くのか、或いは『ドンブラザーズ』への繋ぎ回のような形になってしまうのか……とりあえず気になるのは、描写からは記憶を後追いで共有していると思われるゲゲ本体が、ゲゲ神に協力的(トジテンドに敵対的)に見えるところですが、どういう立ち位置に落ち着くのやら。
 ここ数話の低調な流れから突入の経緯はどうにも盛り上がりませんでしたが、中盤以降は盛り返し、後半は面白かったので、残り2話、綺麗にまとまってほしい。