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「さあな、風に聞いてくれ」

『機界戦隊ゼンカイジャー』感想・第43話

◆第43カイ!「風見鶏の頭は風の真向かい!」◆ (監督:山口恭平 脚本:香村純子)
 ムカイカゼワルドのアゲンストライクを食らった者は、常に強力な向かい風にさらされるようになってしまうのだ!
 能力源となったトピアが謎すぎますが、地味に嫌な能力だ!!
 「俺の向かい風は一人一人にカスタマイズされるムカイカゼ」
 気象庁・震撼!!
 「貴様らの行く手を、いつまでもどこまでも邪魔してやるムカイカゼぇ!」
 冒頭から檜山怪人の登場に変なテンションになりましたが、ワルド怪人の例に漏れず知力控えめそうなのに、「向かい風」という言葉の宿す寓意性により、サブタイトル含めて台詞が妙に詩的になるのが、新しい面白さを切り開いていて凄い(笑)
 どっちを向いても向かい風、地味に身動き取れなくなる危地に陥るゼンカイジャーだが、勝利を確信する向かい風ワルドに頭上から銃弾を放ったのは……にんまり笑うステイシー。
 召喚されたダークサンバ先輩に蹴散らされた向かい風ワルドは、先生に言いつけてやる! と一時撤収し、父救出への助力について礼を言われたステイシー(? 以下→ゲゲイシー)は、記憶を検索して事情を把握。
 「君たちに手を貸した事がボッコワウスにバレて、トジテンドでの出世が望めなくなったんだ。だったらもう、バラシタラの居るトジテンドごと、倒しちゃおうかなーって。だからさ介人ー、僕を、君たちの仲間に入れて欲しいんだぁ」
 ゲゲっぽいどこか甘えたような口調でゲゲイシーは笑みを浮かべ、想定されていた軟着陸ルートの一つを、乗っ取り状態で口にさせる、邪悪!
 ヤツデの名を聞いたゲゲイシーは、またも記憶を検索すると、向かい風に苦しむ介人たちを放置してカラフルへと向かい……一方トジテンドでは、ステイシーの脱獄と裏切りを聞いたボッコワウス様が大激怒。
 「あの状態から一人で脱獄できるとは思えん。誰か、手引きした者が居るんじゃないか?」
 若干、口調が鋭く声の低い気がするゲゲ(印象的には、ゲゲ兄、みたいな)が火に油を注ぎ、弁明に追われるイジルデだが、戦場や謀略が絡むと毎度鋭いバラシタラはゲゲへと視線を向け……ゲゲイシーの人格は、明らかに「ステイシーを装っているゲゲ」なのですが、そうすると現在、「ゲゲとして振る舞っているゲゲ」は何者なのかの謎が発生。
 二つの人格を持った精神寄生体なのか、或いは鳥ゲゲは元から精神ゲゲと協力関係にあるのか……トジテンドが様々な世界を侵略している組織なので、滅ぼされた世界の出身者が内部に居る、というのは充分にありうるとは思いますが、もし初期からある程度の構想があったとすれば、声優交代で若干わかりにくくなった布石とかもありそう。
 向かい風に抗いながらカラフルを目指すゼンカイジャーでは、ステイシーを信じるかどうかで意見が分かれており、それ自体は実に香村脚本らしいのですが、キカイノイド差別主義を捨てたガオーンの、ニンゲンちゅわんへの甘さが極端になっている感があるのは、キャラとしては少々苦しいところ(愛でるのと、判断が甘い、のは微妙に違うわけで)。
 マジーヌはガオーンと共に肯定的、ジュランはいつものように慎重派で懐疑的、ブルーンは考えすぎで態度を保留し、ブルーン回をやるならばブルーンのこの、あれもこれもと考えた結果(それ自体は悪くないとして)決断をできずに中途半端な態度になってしまう部分が、鉱脈だったかもなどとも思うところです。
 「介人の気持ちが届いたんだよ! 嬉しくないの?!」
 「嬉しいよ! もしそうなんだったら、全開で嬉しい! けど、何か違う気もする! 俺と話すステイシーは、あんなんじゃない! あいつはもっとこう……なんか…………そう、この向かい風みたいな感じだった!」 (※「!」が多いのは、風に逆らいながら喋っている為です)
 介人にとっての向かい風、というより、ステイシーが常に向かい風を受けているような人物だった、という感じですが、介人が強く違和感を覚えたゲゲイシーはカラフルに辿り着いており、サトシとしては訣別を覚悟したカラフルを、乗っ取り状態で訪問させる邪悪! あまりにも邪悪!
 見ているこちらがMPをガリガリ削られていると、セッちゃん経由で連絡を受けた界賊一家がゲゲイシーをカラフルから連れ出して詰問し、SD兄弟にさえ変だと言われる上、フリントからは「薄気味悪い」扱い(笑)
 「信じて欲しけりゃ、俺の望みをかなえろ」
 「望み?」
 「俺を、トジテンドパレスに連れてけ」
 家族の為、敢えてゲゲイシーに取引を持ちかけようとするゾックスだが、そこへ兵隊率いた向かい風が現れて成り行きで一時共闘となり、そうとは知らない介人たちはようやくカラフルに到着。
 「あんたたち、今度は何が起こってんだい?」
 ヤツデさんの対応もすっかり慣れきっていますが、画面左手ではいつも通りのヤツデ、画面右手では店内に入っても向かい風に苦しむ介人たち(風を示すエフェクトと、どこからともなく湧いてきては舞う紙くず)の映像は面白く、なにかと過剰傾向のある山口監督の演出ですが、こういう工夫をやらせると実にはまります。
 事情を説明しようとしたところで、セッちゃんが向かい風ワルドの反応をキャッチし、思わず力の抜けたマジーヌが派手に吹き飛ばされて路地の壁にぶつかるが、それを見た介人はひらめキーング。
 一方、紫金は戦闘員を蹴散らしていき……マシュマロ邪面以来、ちょっと太めのスーツアクターさんの存在が、気になって仕方ありません(笑)
 言うこと聞かないマシュマロボディな戦闘員(中の人がマシュマロ邪面と同一人物かはわかりませんが)を蹴散らしたところに、今度はバラシタラまで現れ、全く意図されていないのに、どんどん真実っぽくなっていくステイシーの裏切り! ……いやまあ、トジテンド側からすると事実なのですが。
 「ステイシー、本当にトジテンドに刃向かうつもりのようでアルな」
 「ふふ、おまえも僕を倒しに来たのかい?」
 「まずは褒めてやるのでアル。おまえにこんな度胸があったとはな!」
 ゲゲの雰囲気の変化は敏感に感じ取るのに、ステイシーの事になると全く気付かない恒例のダメ父ムーヴが炸裂し、両者は激突。ゲゲイシーザーはダークスーパーシンケンレッド先輩を召喚すると、斬撃と銃撃の巧みなコンビネーションでバラシタラと拮抗状態を作り出し…………大変残念なお知らせですが、本物より装備の使い方が巧い!(笑)
 金は隙を突かれてアゲンストライクを受けてしまい、戦闘員に囲まれながら向かい風に襲われて身動きが取れなくなる大ピンチに陥るが、その時、響き渡るちょわーーーーー!
 「バック速ぜんかーーーーい!!」
 ゼンカイジャーが来た。
 後ろ走りで。
 つまり向かい風は今、俺たちの追い風だ!!
 「「はぁ~~~?!」」
 向かい風で前に進めないのを逆手に取った介人達が後ろ走り(一部、盆踊りみたいなのが居ますが)で駆けつけて、頓知で解決・おふざけスレスレ(たまにはみ出す)ライン際を爆走するビジュアル・当人たちはいたって真面目、と揃って、これは凄く、『ゼンカイ』らしくて良かったです(笑)
 「貴様ら一体なんのつもりでアルか?!」
 「向かい風がヤバすぎたもんでねー!」
 「前に進めないなら、後ろに進めばいいんだ!」
 そのままバックダッシュ変身そして名乗りから背中で揃い踏みを決め、火牛の計よろしく混乱する敵陣を切り裂くと、対策を飲み込んだ金も向かい風に乗ったエルボーをワルドに叩き込み、その様相に嬉しげな声をあげるバラシタラ。
 「ハッ! 奴らまたも奇妙な真似を」
 やはりバラシタラにはどうも、侵略の成功よりも、奇想天外な対抗手段を繰り出してくる敵の存在に心躍らせている節が見え……妻の数を考えても、この世の贅も快楽も試し尽くし、残ったのはスリルとロマンだけ、みたいな本質なのでは。
 「やっぱりこっちの方が面白そうだね」
 ゲゲイシーザーも腕組みして頷き、ここまでで一番納得できる裏切りの理由です。
 自動車関係のイマジナリー先輩二人を召喚した白は、バックオーライ轢殺攻撃から映像は後ろ向きだけど気持ちは前向き全力全開キャノンを放ち、迫り来る巨大な後頭部でどどどどーん!
 「なんか来たーーーー!!」
 は、大変酷い、断末魔でした。
 向かい風から解放されたゼンカイジャー&金は6対1でバラシタラを取り囲むも、全方位キャノンであっという間に変身解除レベルまで蹴散らされ、前回、コタツ猫アタックで割と雑に株を下げられたバラシタラが、まだまだ強くてホッとしました(笑)
 「さすがは軍隊長だねぇ」
 「ボッコワウス様には悪いが、俺様としては楽しみが増えたのでアル!」
 バラシタラが高笑いしてゼンカイジャー達を見逃した後、巨大向かい風ワルドが誕生し、あまりの向かい風にジュラガオとマジブルが合体失敗。更に、風見レボリューションにより風向きを自由に操れるようになった巨大ワルドにバックダッシュでも近づけなくなってしまうが、超力痛快王が風の影響を受けない宇宙空間からの超長距離狙撃を成功させると、まさかのそのままフィニッシュ。
 そして――……
 「わかってくれたかなぁ。僕が君たちの味方だって」
 「……やっぱりわかんない。おまえは俺の知ってるステイシーじゃない。ステイシーならバラシタラと戦う時、あんな感じじゃないと思う。もっとピリピリして、譲れなくて、手を出すなとか、これは僕の戦いだとか言う筈だもん。……ステイシーのバラシタラへの思いは、あんなものじゃない」
 実に本当に言いそうなのが、キャラの積み重ねであります(笑)
 「なぁ、ぶっちゃおけおまえさん、なにもんだ?」
 「……僕が何者だろうと、トジテンドを消そうと思っている事は本当さ。つまり僕は、君たちの味方だよ」
 ゲゲの言動を素直に受け止めると、飽きた玩具であるトジテンドを見限り、ゼンカイジャーを利用して崩壊を目論んでいるようですが(サブタイトルの「風見鶏」の含みが秀逸)……大変いやらしく介人たちの心を乱したゲゲイシーは大ジャンプで満月の向こう側へと消えていき、壁王様は、本当にただの壁のまま終わってしまうのか?! 不安ゲージがますます高まる中、つづく。
 いよいよ最終章突入、といった展開で、これまで物語を引っ張ってきたステイシーと、物語を引っかき回してきたゲゲが合体する事により、立っているだけで嵐の中心となるゲゲイシーが波風を立てまくり、もはや割り切った寄りかかりぶり(笑) 終結へ向けた物語のキーを二人で一人の王子様に丸投げする形となりましたが、あと6話ほど?と残り話数に割と余裕があるので、ここからの更なる盛り上がりを期待したいです。