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使命vs願いvs秩序

蛮族 騎士vs快盗vs警察』感想(前編)

◆『劇場版 騎士竜戦隊リュウソウジャーvsルパンレンジャーvsパトレンジャー』◆ (監督:渡辺勝也 脚本:香村純子/荒川稔久
 2020年2月、いわゆる戦隊冬映画として、『騎士竜戦隊リュウソウジャー』終盤に公開された劇場版(同時上映は『魔進戦隊キラメイジャー エピソードZERO』)。
 ――週末・男の隠れ家を探して山奥に分け入ったスライムキノコ、もといクレオンが発見した手頃な洞窟には、先客が。それは牢獄に閉じ込められたギャングラーであり、クレオンはその膨大なマイナスエネルギーに目を付ける。
 一方、川で騎士竜ティラミーゴを洗おうとして揉めるリュウソウ族の青年・コウの姿を見つめてほくそ笑み、喧嘩別れとなったコウめがけ、山道を連続バック転で近づいてくる超不審者。
 お巡りさん、こっちです。
 「僕は高尾ノエル。気軽にノエルと呼んでもらってかまわない」
 私服ジャケット姿のリバーシブルXこと高尾ノエル(逮捕歴:過去1回)が、リュウソウ族であるコウに何かを問いかけようとしたところでティラミーゴの悲鳴が響き渡ると、そこにはティラを拘束した翼を生やしたマイナソーと、その生みの親といえるギャングラー怪人の姿が。
 ぼろぼろのマントを脱ぎ去ると、なんと五つの金庫を持っていた謎のギャングはティラを金庫の一つに収納してしまい、既に残り4つの金庫には他の騎士竜が囚われの身となっていた!
 「気をつけて。奴らは金庫に入れたお宝の力を使える。金庫の数が多ければ多いほど、強敵なんだ」
 謎のギャングの正体は、ギャングラーのマッドサイエンティスト・ゴーシェの実験台となって金庫を増やされた改造ギャング、ガニマ・ノシアガルダ
 フランケンシュタインの怪物的な継ぎ接ぎ怪人を、声の力(CV:大塚明夫)で大物っぽく見せるアプローチで、職場の福利厚生に不満を抱くキノコは、ギャングラーに転・職。
 その場に集ったリュウソウジャーは、いずこかへ飛び去ったマイナソーを黒緑が追い、赤青桃がガニマに立ち向かうが、騎士竜の力を振るうガニマはリュウソウ赤を景気よく吹っ飛ばして姿を消し、街中で段平振り回していたバンバ(リュウソウ黒)&トワ(リュウソウ緑)の兄弟は市民から不審者を見る視線を向けられ……お巡りさん、こっちです。
 「動くな。国際警察だ」
 朝加圭一郎と陽川咲也に銃を突きつけられた黒緑兄弟はすんなりと剣を下ろし、あ、意外と話がわか……
 「……違ったか」
 「じゃあね、お巡りさん」
 ってなかった。
 「そんなものを持ってどこへいくつもりだ?」
 「答える必要は無い」
 「国際警察の権限により現行犯逮捕する」
 職務質問を完全無視して立ち去ろうとするバンバとトワはさっくり手錠をかけられ、ハイ、逮捕一丁あがりましたー。
 パトレンジャーと絡むとだいたい逮捕される伝説が着々と歴史に刻み込まれ、東映警察ヒーロー(ロボット刑事K、香川龍馬、シグナルマン……)vs東映逮捕歴のあるヒーロー(津上翔一、万丈龍我、ラッキー……)大戦の開戦に向けての気運が着々と高まっていく中、力強く吹き飛ばされたコウは、道ばたで気絶しているところを夜野魁利に発見され……
 「……ただ事じゃない感じ?」
 で、タイトルイン。
 本編では控えめだったパルクールアクションをこれでもかと披露しながら、メルト(リュウソウ青)とアスナリュウソウ桃)に事の次第を語るノエルは、ギャングラーの残党を追っていた「国際警察の捜査官」を名乗り、相変わらず、面の皮が厚かった(笑)
 リュウソウ族については、ノエルの恩人であるルパン家当主アルセーヌ・ルパン(故人)が、かつて友人となったリュウソウ族と互いの宝を交換して手に入れた“始まりのリュウソウル”を取り出して「ボク、アヤシクナイ」と説明するが、陸のリュウソウ族にはアルセーヌの名は伝わっておらず……跡目争いによる抗争を繰り広げていた、別のリュウソウ族の話かもしれません。
 そんな抗争相手の婚活王子ことリュウソウ金のカナロ(逮捕まではいかないが、職質は何度か経験していそうで、違います、強引なナンパじゃありません、僕と彼女は運命で結ばれて君ちょっとそこの交番まで来てくれるかな? …………後で妹さんが引き取りに来る)が、レアじゃがとんのアクリルキーホルダーを求めてガチャにかじりつく明神つかさと接触していた頃、コウは「カイ」を名乗る魁利の元で目をさますが、大事なリュウソウ剣は魁利の手の中にあり、勿論、素直に返すわけがなかった(笑)
 「なんだよ。返せよー」
 「まあまあ~。こんなもん持ってると、めんどくさいお巡りさんに、捕まっちゃうよ」
 国際警察日本支部の取調室では、明らかに反社絡みの気配がする黒い人がそのめんどくさい圭一郎にも物怖じせずに(数百歳でしたか)非協力的な態度を取り続ける一方、メンタルモンスター咲也はじわじわと緑弟の心の隙間をこじ開けており……咲也、恐ろしい奴。
 一方、掃除用具を構えたコウと一触即発になる魁利だが、コグレからリュウソウ剣はルパンコレクションではないとメールが来ると探偵を名乗って勘違いを詫び、それを素直に受け入れる姿で、コウのキャラ付け。
 正直、リュウソウメンバーのキャラクター性に関しては、(前半で視聴リタイアした事もあり)だいぶ誇張したポイントでしか覚えていないのですが、今作としてはひとまず、色々ひねくれまくっている魁利と、色々ストレートなコウ@209歳、を対比する構造に。
 「ふーん、金庫のついた怪物ねぇ」
 「騎士竜たちは俺たちの大事な仲間だ。友達だ。……なのに俺、つまらないことで喧嘩して……このままティラミーゴと会えなくなるなんて……絶対嫌だ」
 「……そっか。じゃ……何が何でも取り戻さないとな」
 そして冒頭の喧嘩別れを、魁利と兄の関係にそれとなく重ねて魁利に動機付けを与えてくるのですが、本編から間を置いて見ると、要素と要素を繋ぐにしても、その間の距離が長すぎる印象はあり。
 『ルパバトvsキュウレン』と比べると、“その後”のルパンレンジャーを描く為に『ルパパト』本編との関係性が密接なのですが、それを『リュウソウ』冬の劇場版でやるのはやはり射程範囲からはみ出している印象が付きまとい、1時間弱の映画としては、話のテンポもかなり重め。
 そこはスタッフの意識にもあったのか、冒頭のノエルを始め、やや過剰気味にアクションを盛り込む事で画面に動きを入れて、映像そのものでリズム感を出そう、という工夫は見えるのですが。
 「あんた運がいいよ。俺、金庫開けるの得意なんだ」
 「え? 本当か!!」
 大変不審な事を言い出した魁利の言葉に快哉を叫ぶコウだが、そこに突如として現れた翼マイナソーが魁利へと襲いかかり、その求めるのは、「オタカラ」?
 その頃、髪型を少し変えて雰囲気の大人っぽくなった早見初美花は書店でフランス語の本を購入しており、つかさはカナロと向かったレストランで、割と堂々とオーナーシェフしていた宵町透真とばったり遭遇。
 「あの……知り合い? は?! まさか…………恋人……」
 「「違う」」
 ノエル経由の情報を元に魁利から招集を受けていた初美花は、偶然にもカナロの妹・オトと出会うが、そこに現れたのは、初美花の持つルパンコレクションを狙う緑のキノコ。凄んだクレオンにオトの地獄突きがクリティカルヒットしている間に仲良く二人が逃亡する一方、レストランでは透真とつかさの間に、見えない火花が散りまくっていた。
 「こんなところに店を構えていたとはな……」
 「お陰様で。ま、ここも今日で終わりでしょうけど」
 その後の『ルパパト』を描く上で避けては通れない難問であるルパンレンジャー3人の日常は、国際警察から身を隠しつつそれぞれ独自に生活中、という事になり、堂々と陽の当たる道を歩めない透真は現在、婚約者とは距離を取っている事が判明。
 「心配してくれてるんですか?」
 「現場で鉢合わせる時は、こんな話出来ないからな」
 そして国際警察サイドとしては、ルパンレンジャー側の事情に一定の理解を持ち個人としては助けになりたい一方、法の番人としての一線は保たざるを得ないジレンマを抱えており、ある意味では、ルパンコレクションをコンプリートさせてしまう事が、魁利たちが日常に戻る道を開く手っ取り早い手段であると認識しつつ、反社会的快盗組織に積極的に協力するわけにはいかない、本編における快盗たち以上ともいえる二律背反を抱える事になっているのですが……やはりクロスオーバー劇場版に放り込むには、どうにもややこしさが目立ちます。
 蚊帳の外になっていたカナロに透真が話を振ると、ヒートアップした婚活王子が、つかさの手を握って「結婚する運命」をわめきだしたところに、翼マイナソーが乱入してリュウソウチェンジ。
 続けてつかさも変身し、マイナソーに狙われている透真は逃走。謎の怪物出現の報が国際警察にもたらされると、それに気を取られた圭一郎に背後から襲いかかったバンバは、押収されていたリュウソウ剣を奪還すると、これまた逃走。
 「……兄さん」
 それを知って天を仰ぐ弟は、兄に比べると現代社会にだいぶ適応していました。
 警察桃&騎士金に追い詰められていた翼マイナソーが空を飛んで逃走したところに、抜き身の真剣かついで出入りじゃ出入りじゃ、と反社の黒い人と、それを追ってきた圭一郎が合流。バンバはカナロに騎士竜誘拐事件の顛末を知らせ、それに「金庫の怪物」が関わっていると知った圭一郎は、これまでとは逆に、バンバへの協力を申し出る。
 「いったい何があった。頼むから教えてくれ。取り返しがつかなくなる前に。必ず俺たちが力になる。約束する」
 圭一郎の翻心には、自分の知らないところでギャングラー被害に遭い、道を踏み外す前に手を伸ばせなかった魁利たちへの悔恨も込められていそうであり、真っ直ぐなその視線を受けながらも言いよどむバンバだが……
 「兄さん! 話せばわかってくれるよ、この人たちは」
 緑コンビも遅れてやってきてトワが間を取り持ち、『ルパパト』本編でも恐るべき成長を見せたメンタルモンスターでしたが、なんか咲也の方が、刑事として有能になっている(笑)
 「いよいよ俺様の出番と行くか」
 一方、姿を隠していたガニマが街に現れると、騎士竜の力を使って大規模な破壊活動を開始。
 「見たか、新生ギャングラーのボス、ガニマ・ノシアガルダ様の力を」
 リュウソウ赤青桃が到着して戦闘となり、戦いをビルの上から見つめる魁利とノエルは、金庫を開けるダイヤルファイターの頭数を揃える為に透真&初美花の到着を待っていたが、警察戦隊とリュウソウ黒緑金が先に到着。
 リュウソウ赤が強化変身すると、とりあえず血祭りに上げようぜ! の蛮族ムーヴに慌てたノエルが警察チェンジして必殺攻撃を受け止め、先にガニマを倒すと、金庫の中の騎士竜たちも道連れになってしまう仕組みを説明。
 「騎士竜ごと金庫をぶっ壊すか、街がぶっ壊れるか、どっちかな?」
 ここで、『ルパパト』本編とも繋がる“葛藤と選択”が『ルパパト』の基本ルールを用いながら明示され、魁利の姿に気付く警察戦隊。
 「ノエル! 俺たちが盾になってガリマを抑える」
 「あと二人を待っているんだろ」
 「来たらすぐ動けるよう、ノエルさんは待機してて下さい!」
 騎士竜救出の為、警察戦隊は快盗戦隊到着まで体を張る事を決断し……問題の二人は、クレオンの呼び出した戦闘員軍団と交戦中。生身で軽々と構成員を蹴散らしていった透真&初美花は、クレオンをダブルキックで軽々と吹き飛ばし……脅威でも、なんでもなかった。
 「あの……お二人はいったい?」
 通りすがりの、武突参流古武術の使い手です。
 「通りすがりの料理人だ」
 「じゃあ私は、通りすがりの専門学生ってことで」
 二人はワイヤーで飛び去っていき、オトに、なにか悪影響を与えた!
 マッスルボーイ! マッスルボーイ!
 「噂には聞いていたが、しぶとい警察どもだ」
 「我々の防御力をなめるなよ!!」
 格好いいかどうか微妙なアピールでガリマに食らいつく警察戦隊だったが、ガリマがティラミーゴの力を発動すると、なんと5つの金庫が全て金色にパワーアップ!
 ようやく合流するルパン3人組だが、ゴールド金庫を開けるにつきダイヤルファイターが2つ……つまり合計10個のダイヤルファイターが必要な事態に硬直。
 「前代未聞の力を手に入れた俺様は、いよいよ無敵! 残すはこの世界の覇権のみだぁ!」
 3警察+6騎士竜+1ノエルの合計10名を吹き飛ばしたガリマは、明日は地球を半分にしてやると宣言して瞬間退場し……知力にはだいぶ、問題のありそうな感じであった。
 「……覚悟を決めるしかない」
 地球真っ二つへのタイムリミットは半日あまり、金庫を開けて騎士竜解放は絶望的……ならば箱でも石でも金庫でも両断あるのみ! と蛮族の中の蛮族、すなわちエリート蛮族であるバンバが率先して覚悟を口にし、成る程ここで、『リュウソウ』と『ルパパト』の要素が一つの線で繋がるのか、というところで、感想後編に続きます。