『ウルトラマンコスモス』感想・第61話
◆第61話「禁断の兵器」◆ (監督:市野龍一 脚本:増田貴彦 特技監督:鈴木健二)
カオス会長を退け、合成に成功したカオスキメラだが培養が上手くいかず……毎度の事ですが相手がカオスヘッダーになると「カオスヘッダーを一掃するには自己増殖機能が必要」と言い切る姿勢には、やはりもう少し段取りが必要ではなかったかと、思うところです。
劇中の心理としてはわからないでもないのですが、カオスヘッダーが出てくると急に論法が従来シリーズそのままになってしまうのは、序盤の内に処理しておくべき要素ではなかったかなと(そこに生じる矛盾を見ないフリをした感がどうしてもあり)。
一方、独自に対カオスヘッダー兵器を開発していた防衛軍は、カオスキメラの培養が難航している事を知ると、プロジェクトを最終段階に進める事を決断。
「そんなものをこっそり開発していたなんて……」
「信用しちゃいねぇんだよ俺たちを」
……いやだってあなた方、信用されようとしていないじゃないですか……。
憎まれ口を叩きつつ、キャップ・フブキ・ムサシの3名は、月面で採取された高エネルギー鉱石(以前のエピソードで出てきた覚え)を防衛軍の依頼で搬入し、それが組み込まれたのは、防衛軍が密かに残骸を回収して修復再改造を施していた、侵略ロボット・ヘルズキング。
「どんな攻撃にもビクともしない耐久性。そして……」
エネルギー鉱石を組み込んだ事によって放たれる、原子分解光線で、カオスヘッダーも殺戮だ!!
「ヘルズキングは人類にとって、唯一の希望だ」
防衛軍の対カオスヘッダーの切り札は、かつてコスモスも苦しめた元侵略兵器であり……宇宙から来たオーバーテクノロジーを我が物とする事により、その存在が、防衛軍にとってのウルトラマンの意味を持つのは、面白い仕掛け。
「本当に……本当にこれでいいんですか?! こうするしかないんですか?!」
「……君の懸念もわかる。ヘルズキングを使うという事は、悪魔の力を振るう事にもなるだろう」
「だったら……!」
「我々には責任がある。我々の肩には、何十億の地球人類の未来がかかっているのだ。たとえこの手を汚しても、背負い続けなければならんのだ。それが我々防衛軍の責務であり、覚悟だ。……これまで我々人類は、コスモスに頼りすぎていた。彼の負担を少しでも、軽くする事が出来るのなら、私は……喜んで悪魔と手を組もう。思いは、君たちアイズと、同じではないかね?」
さすがにムサシも頭ごなしには否定せず、途中からはある程度、立場は違うが話の通じる余地のある一廉の人物として描かれている佐原司令(代わりに西条のブレーキが消滅していますが)への直談判を通して、“アイズに対する悪役”ではない防衛軍の立ち位置が改めて言明される事によってようやく、では防衛軍は、それを言い訳にしていないか? と問いかける事が可能になったのは、物語として大きな前進。
「…………汚した手で……汚した手で、自分の首を絞める事にはなりませんか?」
「ハルノ・ムサシ隊員、だったな」
「はい」
「覚えておこう」
メタ的な作品事情もありますが、なんだかんだ今作ここまで、ムサシがギリギリまで怪獣保護にこだわれたのは、最終的にはコスモスを呼び出せるから、という大きなアドバンテージが存在しており――勿論、コスモスが力を貸しているのはそんなムサシの志に対してであり、ムサシも安易に呼び出しているわけではないし、呼び出せるわけではない事も序盤のエピソードで描かれていますが、その部分の掘り下げを実質オミットしてきた事により無意識的なものになっていた――、そのムサシがコスモスの限界宣言を受ける事で、「力」について改めて真剣に考える状況が生まれたのは、前回からの流れを、非常に上手く受けました。
またそこで、それを掘り下げるきっかけになるのが、魂を持たない“機械仕掛けのウルトラマン”である事も効果的で、最後の最後に来て、行方不明だった歯車が何個か見つかった感じ。
「防衛軍は……いや、防衛軍だけじゃない。僕たちアイズも……みんな、力で勝つ事だけを考えてる。力と力の争い……今までだって、その繰り返しだった。もっと……もっと別の何かがあれば」
そしてとうとう、チームアイズ=イノセントな善、の構図を脱・却。
「別の、なにか……?」
だがその時、侵略異星人が仕込んでいた隠しプログラムにより、コントロール不能になったヘルズキング2世が暴走。
(ムサシ、自分を信じるんだ)
「……コスモス」
(その勇気が、私たちの力だ)
ヘルズキングを破壊していいのか躊躇うムサシに対し、触れるべきでないと思ったものを否定する勇気が力となる、と告げるコスモスは格好良く、ムサシは変身。コロナはいつものように広告をスキッ…………失礼しました。敵がロボットなので、勇躍、コロナの出番です!!
……まあ特に活躍しないまま、追い詰められてエクリプスを発動するのですが(笑)
ヘルズキング2世に連続パンチを叩き込むも、ガード不能の原子分解光線を受けてしまうコスモスだが、コスモスの攻撃により反応炉が露出。キャップは防衛軍の制止を振り切って攻撃を決断し、テックスピナーとコスモスの連携攻撃により、ヘルズキング2世は木っ端微塵に吹き飛ぶのであった。
そして現場に飛び出してきていたドイガキの閃きにより、エネルギー鉱石がカオスキメラの培養に利用可能な事が判明して、つづく。
……とにかくこれまで防衛軍が出てくると、「チームアイズを徹底的に善玉として描く為に、比較対象として防衛軍が必要以上に雑に悪玉にされた上に、“人類の業”を全て防衛軍に押しつけて、チームアイズをそこから切り離そうとする」のが、大きな歪みになっていたのですが、今回ようやく、主人公が防衛軍の在り方に耳を貸した上で、その業は決してチームアイズにも無縁ではないと認めてくれたのは、良かったです。
今作4本目の参加(第38話以来)となった増田さんが、物語に欠けていた歯車の幾つかをはめた事でムサシが歩みを前へと進め、地球人類とカオスヘッダー、高まる最終決戦の中で、ムサシの心が見出すものは、果たして何か。