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「――俺たちは何だ?」

『機界戦隊ゼンカイジャー』感想・第40話

◆第40カイ!「とーちゃん奪回、ワンチャン一回!」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:香村純子)
 クリスマスを前にした街を蹂躙していく謎の巨大怪獣ロボは、圧倒的な攻撃力によりゼンカイオーを一撃で合体解除に追い込み、その名を、ハカイジュウオー!
 ……この期に及んで、ネーミングからそのままなのがさすがイジルデ!
 独創性は全く無いが、技術力だけは抜群です。
 ハカイジュウオーの正体は、ボッコワウスの力により強化改造された、黒マントのハカイザー(人間大サイズ)であり、因果は巡るというか、五色田功博士に関しては、若干の自業自得感も漂います。
 ……或いは、男のロマンの達成。
 「ハカイザー、やれ!」
 「全力で破壊」
 笑いの一切なくなったハカイザー(アクターさんの立ち方も変えているのでしょうが、見た目では黒マント一枚でガラリと変わるのが秀逸)はゼンカイジャーに襲いかかり、容赦の無い銃撃から、ガオーンが咄嗟にフリントをかばうのは、キャラ特性も出てナイスアシスト。
 横から跳び蹴りを放った金が先輩にレボリューションすると、白虎真剣・騒音公害の術を用いて一同は辛くも撤退。
 「……どうしてこうなった? 僕はこれを望んだのか?!」
 絶壁のパワーによって冷酷な戦闘ロボと化したハカイザーの姿に、僕の心の隙間に建てられた二世帯住宅のローンはどうなるの?! と苦悶するステイシーは偶然なにやらデータを発見し……アース-45では珍しく、明確に大規模な破壊と被害描写。
 「ごめんたーさん。……こんなんなっちゃって」
 「なに言ってんだ。ゼンカイジャーが守ってくれたから、こんなもんで済んでるんだ」
 「……ごめんね」
 すっかりセミレギュラーのキカイたこ焼き屋(たーさん)が危機一髪を乗り越え、今作あまりゲストキャラとの絡みは多くないのですが、すーさん・たーさん、といったセミレギュラーの配置により、「世界」との繋がりを成立させている、また、拠点であるカラフルそのものが「外と繋がる場所」になっているのが、手堅い作り。
 介人は瓦礫の下敷きとなったクリスマスツリーを真剣な表情で見つめ、一つの覚悟を決める。
 「父ちゃんの事なんだけど……次で最後にしようと思って」
 「……介人? 最後って……?」
 「次が……父ちゃん取り戻す最後のチャレンジ。全力全開の一回に賭ける」
 父の救出と被害規模の拡大を天秤に乗せて、これ以上、世界を危険にさらすわけにはいかない、と介人は決断。
 ハカイザー(実の父)相手にこれをするならば、ステイシーに対する一線も改めて示す必要が出てきますが、このあからさまに見えているでっかい落とし穴を、華麗に回避してくるのか、真上を走り抜けようとしてくるのかは、今後の気になるポイントです。
 「最後の一回というのは……まさか?!」
 「……もしそれで、駄目なら……ハカイジュウオーをどっか……宇宙の果てとか、世界の狭間とかに連れてけないかなって」
 「……それは俺に言ってんの?」
 父の救出は諦めても、ハカイザーを「倒す(殺す)」とはいえない介人とヤツデの気持ちをゾックスは汲み取り、率直に介人は、凄く都合の良い妥協策を口にしていて、僅かでも希望を繋いでおきたい気持ちもあるのがわかる一方で、ゾックスに非常に辛い仕事を要求している(ゾックスからすれば、介人の心中の一部にあるだろう「ゾックスがトドメを刺してくれ」と受け取れる頼みなわけで)のですが、それを受け止めるゾックスの愛が、重くて深い。
 「……わかった。もしもの時は、あいつを、俺が――」
 だが――
 「もしもなんてあるかよ! 介人、おまえがもしもの時なんか考えんな! つーか、おまえが諦めたって俺は諦めねぇぞ」
 それを止める1つの、そして、4つの声。
 「そうっス! てか、介人もヤッちゃんもセッちゃんも、3人で勝手に決めんなって話で」
 「介人の家族は、僕らにとっても、大事な家族に決まってるじゃん!」
 ジュランを皮切りに、それまで固唾をのんで見守っていたキカイノイド達が一斉に声をあげ、画面手前に家族写真が写っているのが、手堅く上手い。
 「最後の一回という事なら、それは次で必ず取り戻すという意味の一回です!」
 「みんな……」
 「おい、忘れたか? おまえには俺たちがついてんじゃねぇか。5人揃って、機界戦隊ゼンカイジャー、だろ?」
 自分の手で「助け抜く覚悟」も、「倒す覚悟」も、どちらも決められないのなら、それってヒーローじゃないじゃん?
 俺たちはなんだよ?
 5人揃って、機界戦隊ゼンカイジャーだろ?
 ゼンカイジャーのヒーローとしての在り方を、揃い踏みの決めぜりふを持ち込んで示したのは、実に鮮やか。
 1人1人は小さくて、出来ない事も多いけれど、5人が一つになればきっと無敵だから……ここで遂に、ゼンカイジャーが本当の意味でスーパー戦隊になった、のかもしれません。
 「……うん!」「うん!」「はい!」
 「……うん。……そうだ。そうだよな」
 「……ありがとう! あんた達」
 「チュン」
 かくして再び、チームは功博士奪還の為に一致団結。
 「さー! そうと決まれば作戦会議といこうぜー!」
 「よーーし! ハカイジュウオー、なんとかするぞー!!」
 5人は伝統のスクラムで手を重ね、諸般の都合で「ゼンカイジャー」に加わっていない為、こういう時、ちょっぴり蚊帳の外にされちゃうゾックスは、最近もはや“介人らしければオールOK”な人なので、笑顔を浮かべて外に出たところで、寒空の下、店外で待機していたらしいステイシーとばったり遭遇。
 ステイシーは、「これを分析しろ」と歯車型のデータチップを投げつけると姿を消し、鉢植えの花越しにアンニュイな表情を見せるステイシーの切り抜き方は、ちょっと長石多可男っぽい見せ方でしたが、記念作品でありますし、渡辺監督による師匠オマージュだったりしたのかも。
 それはそれとして、あくまで通りすがりの界賊であろうとするゾックス(達)も、もう少し一致団結に加えてあげても良いのではと思うのですが、SDトピア絡みで年明けに一波乱は待ち構えていそうなので、それ待ちの部分はあるでしょうか。
 「さあゆけ! ハカイジュウオー!!」
 「……みんな、よろしく全開!!」
 一夜明け、微調整を終えたハカイジュウオーが再び出現すると、ゼンカイジャーはお笑い無しの揃い踏みで変身から、挿入歌に乗せて全力全開王を繰り出し、まずはミラクルパワーで郊外へと強制転移。市街地の破壊を防いだところで、“とある筋”から情報を得たツーカイザーが、内部システムに接続されたハカイザーを奪い取るべく怪獣の体内へと乗り込んでいく!
 「ゾックス……ステイシー、ありがとう」
 バレてる(笑)
 今作この辺り、折りに付けステイシーが偶然重要な情報を手に入れるのは楽な作劇をしている、といえるのですが、根本的なところでステイシー、主人公の星の下に生まれているのだろうなとは(笑)
 全力全開王と破壊獣王が戦っている間に、怪獣内部の防衛部隊との立ち回りで金のアクションを入れ、東映名物:悪い機械はとりあえず撃ってみる、によりコア部分からハカイザーを引き抜いての脱出に成功する金だが、コアを失った壊獣王は暴走を開始。
 「父ちゃんのやらかしの後始末」の為に、白と金はゼンカイジュウオーとなってそれに立ち向かい、てっきり赤黄桃青が足止めをしている間に白がハカイザーとマッチアップするのかと思いきや、ちょっと面白い一ひねりになりました(そして最終的に、余り物感を出さずに綺麗にまとまる形に)。
 「いいかおまえら! いちんち遅刻したが、介人への誕生日プレゼント、ぜってぇ渡すぞ!」
 地上に降りたジュランたちは功博士奪還ミッション:フェイズ2を開始し……
 「1980年5月30日、五色田功、誕生!」
 「ん?」
 「はぁ?!」
 おもむろに、フリップを取り出した(笑)
 4人はハカイザーと攻防を繰り広げながら強制回想モードに突入。五色田功の人生のイベントをCGもとい写真と共に振り返りながらハカイザーへと突きつけ、洗脳されたキャラクターへの思い出説得は定番ですが、こんなにダイレクトかつわかりやすい形は始めて見たかも(笑)
 ただこれにより、家族のメモリーの中に、この場には居ないヤツデの存在が感じ取れるのが素晴らしく、またそれをキカイノイド組が担当する事で、4人の「介人の父を助けたい想い」も強調されて、画は面白だけどそこに確かな真心がある、『ゼンカイ』流クライマックスとしてお見事。
 4人はハカイザーの脳内を思い出で領空侵犯していき……一部、撮影されているのが不自然な写真が混ざっているのはきっと、何らかの戦隊ギアの能力によるものに違いありません。
 「貴様らさっきから、いったい、何の真似だ?!」
 「おまえの……あんたの心に呼びかけてんだよ!」
 「君は、介人のお父ちゃんで! ヤツデの子供なんだ!」
 「あったかい家族の記憶、絶対ある筈!」
 「どんなに心の奥に封じ込められていても、ある筈なんです!」
 「最後に賭けるとしたら! ぶっちゃけ愛だろうが!!」
 理屈を飛び越えるパワーを清々しく言い切り、一歩間違えると色々台無しなのですが、ハカイザーとの対話に一定の時間をかけてきた事に加えて、ジュランがこれを力強く言ってもOKなキャラとして成立しているのが、大きい。
 背後では、これはやっておかないとの怪獣対決が続き、ジュランたちはハカイザー功に、後の妻との出会いや結婚、そして介人の誕生などを次々とフリップで叩きつけ……フォ○ショップ、凄い。
 「こんな大事な事を、忘れてしまったんですかー!」
 ハカイザーのセーブデータが上書きされそうな勢いに慌てたイジルデは、呼びかけに応じないステイシーに代わってクダイター部隊を送り込むが、これはフリントが空からワニ型宇宙船で爆撃を仕掛けて焼却。
 破壊獣王は月光蝶を発動して、シン・ハカイジュウモードで大技を放とうとするが、こんな事もあろうかとフリントが開発していクロコダイルバスターが承認され、SD双子とワニ型宇宙船が変形合体した巨大砲台をゼンカイジュウオーで放つ事により、界賊一座も使い切られたのは、お見事でした。
 「そしてー」
 「「「「2021年、11月14日! 成長した息子、介人と再会!」」」」
 「う……あぁぁぁ……!」
 「そして今日! 息子介人が、トジテンドから功を奪回!」
 と、二つの台詞が、サブタイトルの「かい」縛りにかけてあるのも、お見事。
 「父ちゃん見ろよ! これが父ちゃんの作った――ゼンカイザーだ!!」
 そして子は、受け継がれた魂をもって、父の中に眠る魂に呼びかける!
 「ゼン、カイザー…………父ちゃん……違う……俺は、ハカイザーーー!!」
 「違う! あんたは五色田功だぁ!!」
 向かい合った両者は、仲間達が見つめる中、全力で銃を撃ち合い、吹き上がる火柱。
 「受け取れ、父ちゃんの、全力・全かぁい! ちょわぁぁぁぁぁぁ!!」
 息子だけでも、その仲間たちだけでもなく、最後の最後に、ギアトリンガーと全力全開キャノンを象徴として父自身の持つ正義の魂が一押しとして示されるのは、功博士(そして誰しも)が「ヒーロー」を心の中に宿している証として印象深く、遂に吹き飛んだハカイザーの充電が切れて装甲が消失すると、ハカイの鎧から解放された博士は、五色田功、としての意識を取り戻す。
 「……介人…………でっかくなったなぁ……」
 「……はたち。……ううん……もう21だからね」
 ここで前回冒頭の強調が効いて、「時の流れ」と「成長」と「誕生日」の要素が綺麗に結合するのが、上手い!
 父子は念願の再会を果たし、自らの行為の落とし前として一連の戦いを見つめていたステイシーは歩み去り、壁王様は怒り心頭。
 「ここはそろそろ潮時かな……げっげっげ……」
 そしてゲゲはまたも怪しさ全開の言葉と共に羽ばたき……この世界観からすると、単独で並行世界を移動可能な悪意の根源、とかありそうですが(考えてみれば独創性の無さには定評のあるイジルデが並行世界間ゲートを作れたのは、誰かの入れ知恵の可能性はありそうで……)、やはり壁王様は、ラスボスにはなれないのか?!
 一方、10年ぶりにカラフルに帰還した功はヤツデと固く抱き合い、父(功)と息子(介人)だけではなく、母(ヤツデ)と息子(功)の再会もきっちり尺を採って描くのが、本当に手堅い。
 積み重ねてきた物語に対して、非常に誠実です。
 ……気にかかるのは、しばらく意識不明とか療養モードに入るかと思われた父が案外と普通に帰宅できた事ですが、ハカイザーに対してステイシーが「おまえの体、改造されまくってるけど大丈夫なの?」とコメントしていたのが、嫌な布石になるのかどうか……作風としては、ここから悲劇が、とは持って行かない気はしますが、カラフルに常駐させるには押しが強くて厄介そうなキャラなので、ステイシーの動静ともども、年明けの扱いが気になるところです(独自に母親探しに向かって一時離脱、とかもありそうですが)。
 盆・正月・そして怪獣、と渡辺監督3話持ちで緩急激しい怒濤のハカイザー決着編でしたが、前後編にしてもよさそうな内容をギュッと1話に凝縮した上で、余りもはみ出しもせずにきっちりと箱に詰め切って、お見事でした。
 特に、第23カイ!「三大合体 地球最大の戦い!」(この回も渡辺監督)が巨大戦の一山としては消化不良になってしまっていたので、今回、それを払拭できる出来の、手札を使い切った巨大戦だったのは良かったです(フリントのイカサマはいつもの事なので、双子が余らなくて良かったなと)。
 かくしてヒーロー達は残酷な運命を全力で乗り越え、父、帰る
 次回――きのこ? たけのこ? よろしい、ならば戦争だ。