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「あるよ。――曲なら」

『機界戦隊ゼンカイジャー』感想・第39話

◆第39カイ!「無限あけおめ誕生会!」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:香村純子)
 12月12日は介人の誕生日で、21歳になりましたー!
 キカイノイド4人は手作りの誕生ケーキを贈り……界賊のアニキは、一曲作ってきた。
 何故そこで、過去ゴールド要素(『炎神戦隊ゴーオンジャー』須塔大翔)が久々に放り込まれますか(笑)
 ……思えば香村さんの《スーパー戦隊》デビュー作は『ゴーオンジャー』GP-20「兄妹バトル!?」(荒川稔久と連名)で、キラキラ兄@カレーキングのメイン回でありましたが。
 超ノリノリのダンスを見せるゾックスだが、いざ歌い出そう、としたところで、正月ワルドが活動開始。楽しいパーティーを中断して駆けつけた介人達から猛抗議を受けた正月はステイシーとハカイザーに助けを求めるが、前回の一件で思い悩むステイシーは物陰から状況を窺うばかりで、ハカイザーは何故か現れない。
 早くも正月崩壊、かと思われたその時、正月ワルドが放った年越しフラッシュを受けた6人はおもむろに新年の挨拶を始め、嫌な事は全て去年に置いて、心機一転、新しい1年を始めてしまう。
 メタ的には、「日本人以外にも効くのだろうか、これ……?」が気になりますが、介人たちは楽しい誕生パーティを中断して駆けつけたワルド怪人とのバトルを去年に放り投げてカラフルに戻ると、トジテンドの存在を気にも留めずにパーティを再開。
 その様子に首をひねるヤツデ・フリント・セッちゃんだが、正月ワルドの反応に再び出現した6人は、またも新年の挨拶を行うと、戦いを忘れてカラフルへと戻ってきてしまう……そう、年越しフラッシュとは、一度浴びたが最後、1時間に1回、強制的に年越しと年明けを体感する事によって記憶の一部が消去されてしまう、恐るべき能力だったのだ!!
 一部始終を見ていたフリントから指摘を受けた6人は既に敵の術中にはまっていた事を知り、注目は、フリントにいきなり顔をはたかれると、さすがの介人とゾックスもムッとする(笑)
 新年の挨拶の繰り返しは完全にギャグであり、特殊能力の効果も大変酷い一方、能力の効果範囲外に居る人物の存在や、往来の飾り付けなどでクリスマス前を強調する事による時間軸の確認などが非常に自然なのが地味に上手く、表層が凄くハチャメチャな一方で、そのカオスを成立させる為の目配りが細かいのが、改めて『ゼンカイジャー』の強み。
 凡百の作品だとメインディッシュの大胆さに引きずられて細部も荒っぽくなりがちなものですが、散りばめた要素を細かく繋げて素っ頓狂な物語をスムーズに動かしており、香村さんの脚本力の高さを感じます。
 その頃、ハカイザーを探すステイシーは、壁王様とゲゲから余計な詮索は無用、と言い渡されるが、ラボを確認しているところに現れたゲゲは何故か「格納庫に居るよ」とイジルデとハカイザーの居場所を伝える。
 「覗き見るかどうかは君次第。これからトジテンドでどうなりたいか、よーく考えてからにしなよ」
 「どうして僕にそんな事を」
 「げっげっげっげっ……」
 引き続き怪しさ全開のゲゲは質問には答えずに飛び去っていき、それをバラシタラも見てた。
 「…………あの鳥、先ほどとは真逆の事を」
 一方、正月ワルドの能力を把握した介人たちは、除夜の鐘が鳴る前に全力ではかーーい! と正月ワルド反応に爆速全開するも、遭遇前に年が明けてさっぱりした気分でカラフルに帰還し、着実に人間性を破壊していくのがきつい(笑)
 果たして自分はこの3時間の間に何回の誕生日を迎えてしまったのか……いや21歳は21歳でしょ、のやり取りを経て、たとえパーティが明日まで延びても祝ってくれる人たちが居るなら嬉しさ全開、と状況を前向きに捉えた介人は、“消える記憶”と“消えない記憶”がある事に気付いて一計を閃き……
 「今度の獲物は、と~……お! 居た居た。みんなを将来的に困らせてやるショウガツ」
 本当に嫌な怪人です(笑)
 一般市民を追い回す正月だが、そこにトナカイのかぶり物や三角帽子、巨大な蝶ネクタイやきらびやかなモールに各種鳴り物などを全身に身につけ異常にテンションが高いゼンカイジャーもといエンカイジャーが到着。
 「正月ワルドだーーー!!」
 「「「いやっほー!!」」」
 歓喜の絶叫をあげて戦いを挑もうとするも、再び年が明けてしまうが……
 「ちょわーーーーーーー!!」
 「よっほほーーーい!!」
 新年の挨拶と共に戦いへの意識がリセットされるどころか、これが本当のお年玉、と介人とゾックスは満面の笑顔で鉛弾の雨を降らせ、ひゃっはー! 油断しているワルド怪人を撃つのは最高だぜ!
 つまり、サツリク=ゴラク
 正月ワルドの年越しフラッシュは新年と共に嫌な事を強制的に忘れさせてしまうが、楽しい事(=介人の誕生パーティ)は忘れないならば、戦う事を楽しみにしてしまえばいい!
 逆転の発想により年越しを乗り切った6人は、狼狽する正月ワルドへ向けて、おまえのハンティングは超楽しいパーティの余興だぜぇ! と高らかに宣告し……今、私の中で機動刑事ジバンが歌い始めています。


 心に愛が なかったら
 ただのゲームさ 戦いも

 「前向き、ぜんかーーーい!!」
 ……まあ、なんというか、一種の自己暗示ではあるのですが、怪人の酷い能力と、ヒーローの酷い解決手段がぶつかり合った結果、「(一時的とはいえ)戦いをホビーとして積極的に行うヒーロー」が誕生し、完全に一線を越えた狂気が溢れ出してしまいました(笑)
 発想としてはちょっと、超光戦士シャンゼリオン入っています(メインライターに井上敏樹、メイン監督に長石多可男、メインプロデューサーに白倉伸一郎、といった錚々たるメンバーで1996年に送り出された東映ヒーロー作品。一言でいえば、主人公がC調。全盛期の井上敏樹のテクニックが全編に渡って冴え渡り、“悪の怪人と戦う非日常”を“それもまた人生”であり、“人生ならば楽しまなければ損”だから“ふんわか行こうよふんわか”に落とし込んでしまった怪作で、『ジェットマン』から『クウガ』『アギト』への中間点として、割と重要な作品だと思っています)が、歌って踊っていれば何やっても許されるわけじゃないからなそこ!
 闘争の快楽に身をゆだねるゼンカイジャーとツーカイザー(こちらは普段とそこまで差が無かった)は正月ワルドがたまらず召喚したクダック部隊を皆殺しにするべくキョウリュウジャーギアの力を発動してサンバでカーニバル。
 助けを求める正月の悲鳴に、仕方がないので口笛BGMで上書きをしにステイシーが現れ……頑張れ、君が、あらゆる意味で最後の砦だ。
 金の方はシンケンフォームとオーレンフォームを発動し、
 「めっちゃ久しぶりじゃない?!」「俺も久しぶりぃ!」
 と、双子から鋭いコメントが突き刺さります。
 双子は冒頭でも「あいつだいぶ前からもうすぐ誕生日って騒いでいなかった?」とツッコんでおり、視聴者を代弁(笑)
 超力金の、秘拳・バラノイア百人殺しを紫がシールドで受け止めている間に逃げる正月はゼンカイジャーが追い込み、くかかっ、逃げろ逃げろぉ! おまえら弱っちいワルド怪人どもをじわじわと嬲り殺しにしていくその時が、俺たち戦隊にとって最っ高の快感なのさぁ、ぐぇっげっげっげっげぇ!!
 画が藤田和日郎になったゼンカイジャーは、ゴーカイジャーギアを発動して武器交換攻撃を決め、「俺、余ってるだろ」な白はチャンバラパワーで刀持ちのイマジナリー先輩ズ(だいたい忍者)を召喚すると、めでたさ全開から烈火大斬刀。
 「きさまら~! 盛り込みすぎショウガツぅ……」
 トドメはスーパー白金と赤黄桃青の一斉射撃による、一足早い殺意のクリスマスプレゼントで大全壊。
 巨大戦は、ジュラガオ&マジブル&痛快力が並ぶ年末仕様に対して、巨大正月ワルドが獅子舞と虎の着ぐるみを召喚。3vs3マッチとなってジュラガオが鏡餅にされる失態で戦闘不能に陥ると、唐突にバトルシーザーロボ新型まで投入されて、予想外の大ピンチ。
 哀れ粉々に粉砕されて雑煮の危機に陥るジュラガオだったが、白が全力全開キャノンを戦闘機形態・イーグルモードで単独使用(2回目)する事で窮地を切り抜けると、痛快刀も参戦しての連続必殺技から、巨大ロボサイズでの全力全開キャノンで、どどどどーん。
 ギミックてんこ盛りの戦闘で派手に締めたのも束の間、轟く雷鳴と共に謎の怪獣ロボが出現して、つづく。
 予告でお馬鹿そうに見せてとんだサプライズが待ち受けているに違いない! と構えていたら、素直に年末決戦前の箸休め的なエピソード……が後半にとんでもない宙返りを炸裂させ、誕生日パーティの余興としてワルド怪人を狩るヒーローは、ここまでの今作一番の問題作なのでは(笑)
 そこからイジルデの最新作が戦場に投入され、展開次第ではステイシーに痛烈な因果が巡ってきそうですが、次回――破壊神、降臨!