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「うらめしましてございます」

『機界戦隊ゼンカイジャー』感想・第37話

◆第37カイ!「恨みダイコン、根が深い!」◆ (監督:加藤弘之 脚本:香村純子)
 ここ数話、ハカイザー=五色田功、に焦点が絞られていた流れから、前回のあらすじ部分で美都子博士にも触れ、美都子探しの帰還シーンより幕開けするのが、手堅い作り。
 好奇心ブルンブルンで恋愛トピアより戻ってきた介人・ブルーン・フリントの面々は、少女が落としてしまった大事な人形を探すマジーヌと出会うが、そこに響き渡る、奇っ怪な悲鳴。
 「「ダイコンだー!!」」
 「「「ダイコン?」」」
 ダイコン?
 悲鳴の方へと駆けつけた介人たちが目にしたものは、歌舞伎役者調のダイコンワルドに大根おろしをかけられた人々が、「「捨てるなー」」と声を上げる、妖物というか付喪神というか、捨てられた物の怨念に襲われる光景で……『重甲ビーファイター』第27話「甦るトラ刈り魂」(監督:坂本太郎 脚本:扇澤延男)を思い出さずにはいられませんでした(笑)


 「ゴミとして捨てられた事への、怨念だ」
 「怨念!?」
 「その怨念が、イカリボンバの体に入り込み、奴を突き動かしているんだ」
 「バリカンに、怨念なんてあるわけ?!」

 再生と自爆を繰り返す強力怪人の復活中に、燃えないゴミの山からバリカンが混ざって組み込まれてしまい、
 (バリカン、おまえに託す!)(積もり積もった、私たちの悔しさを、涙を!)(その全てを今、おまえに託す!)
 とゴミ達の怨念のパワーを受けて怪人の肉体を乗っ取ると、バリカンの怪人が道行く一般市民の髪を次々と刈っていくトンデモエピソードなのですが、しばしば無機物がナチュラルに意識を持つ不思議コメディ時空に慣れ親しんだ坂本太郎監督の演出と、“社会の落伍者の諦観と悲哀”を作家的テーマとして持ち90年代《メタルヒーロー》を支えた天才・扇澤延男の脚本が絶妙な科学反応を起こし、戸惑う悪の組織サイドがバリカン怪人の利用法を思いついてきちっとヒーローフィクションとしてまとまってしまう、『ビーファイター』屈指の傑作回。
 ……傑作回なんですよこれが。


 「どうして俺に頭を刈らせない?! かなり錆びてるさ、電気じゃないさ、凄く古いさ、それでも俺は、バリカンなんだ」
 「ガオーム様、どうかあの大馬鹿者の回収を」
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 「バリカン、教えてやるんだ貴様の実力を。今まで誰一人として刈る事が出来なかった頭を、 貴様のバリカンで見事に刈れ!」
 「俺はバリカンだ。最高のバリカンだ。人間どもに教えてやる。俺に刈れない頭などない事を!」

 今回『ゼンカイ』としては、ゴミワルドやリサイクルワルドと被っている部分がありましたが(この辺り今作はもう、開き直っている感じ)、個人的にはこのエピソードが浮かんだ事で、その点はあまり気にせず楽しむ事ができました(笑)
 「……ダイコンとなんの関係が?」
 「ダイコンに聞いてみよう」
 ワルド怪人の能力に首をひねるゼンカイジャーは、実力行使、しかるべき後に尋問だ! とダイコンに襲いかかるが、奸計に引っかかってブルーンが恨み大根おろしをかけられてしまった上、ハカイザーの代役を務めるステイシーの妨害を受けて、ダイコンワルドには逃げられてしまう。
 「おまえ、随分とあの人形を気に入ったようでアルな」
 「違う。彼は、僕の仲間だ」
 「ふん! そうだったでアルな。イジルデの人形同士、せいぜい仲良くするがいい」
 バラシタラがえぐみを出す一方、カラフルに戻った介人たちはブルーンに張り付いたゴミを引きはがしながら、ダイコンワルドについて検討を再開。
 「もしかしたらダイコンは捨てるところが無いからじゃないかな」
 ヤツデの閃きに料理担当のガオーンが納得し、
 「だから……捨てられた者達の、逆襲なんだ!」
 と妙に格好良い表現で話を広げる介人の台詞が実に上手いのですが、大量のゴミの恨みを買っているお掃除担当のブルーンが、ゴミに追われて戦線離脱。
 「これ意外とやべー能力なんじゃねぇのー?」
 「ま、面倒な事になる前に、さっさとダイコンワルドを倒せばいいだけだ」
 ……どうして君、寝起きみたいな感じでカラフルの奥から出てきてるのゾックス…………とまたも思ってしまいましたが、そうでした、美都子探しに宇宙船を提供している間は、カラフルで寝泊まりしているのでした。
 ……というシチュエーションを平然とこなしているのが面白すぎてズルいゾックスはダイコン探しに乗り出し、一同手分けして捜索中、マジーヌとフリントは人形を探していた少女が、ダイコンワルドに狙われようとして、わざと道にゴミをばらまいている姿を目撃。
 「ホントは人形、自分で捨てたんだろ?」
 最初からなにやら思うところある様子だったフリントが指摘すると、作ってはみたものの、出来の悪い人形を友達に見せられずに思わず川に捨ててしまった事を少女は告白。
 「……あたしもさ、やった事あんだよねー」
 フリントは、幼い頃、初めてハンドメイドで作ったオルゴールを誰かに見せる前に捨ててしまった過去を語り、今回フリントにスポットを当てるに際して、大雑把な天才開発者であったフリントの、作り手の面を掘り下げてくれたのは良かったポイント。
 「……みんな、そういうのあるんスね。好きだし、大事だけど、自信なくて、うわーーってなるもの」
 そしてそこからマジーヌの“占い”に繋げて、人の想いを描いたのが鮮やかで、介人たちとの出会いを思い返しながらの言い回しがまた素晴らしく、マジーヌ回としては会心の一撃
 中盤以降、キカイノイド組の扱いに関する物足りなさは気になるところでしたが、今回これを引っ張り出せた事で、マジーヌに関しては一定の満足を得られました(ジュランとガオーンはどうにかしてくるでしょうから、後はなんとか、ブルーンを……ブルーンを)。
 セッちゃんからのダイコン発見の連絡に揃って駆けつけ、背後の歩道橋の上に余裕たっぷりに姿を見せたり、子供の頃にフリントの捨てたオルゴールを見つけていたり、格好いい兄ポイントをゾックスがちゃっかり稼ぎ、
 「四人と心はもう一人!」
 「「「「「機界戦隊・ゼンカイジャー!!」」」」」
 ゴミの山に埋もれたブルーンは、リモートで参加しました(酷いけど新しい……)。
 捨てた人形と再会して謝りたい……少女の願いをかなえるべく、あえて恨みおろしを少女に被らせた桃は人形探しの為に戦線離脱し、迫り来るゴミの群れをフリントと共にバンバン迎撃ババババーン。
 一方、今回は自宅待機かと思われたハカイザーが戦場に現れ、それを止めようとするステイシーザーだが……
 「俺だって動けるんだ。一緒に戦うよ。仲間だろ?」
 勇気を出した気遣いに対し、ハカイザーからすれば恐らくごくごく自然な、フレンドリーな対応に胸が一杯となって言葉に詰まり、バールでぐいぐいこじ開けられた心の隙間に電動ドリルが突き刺さって急ピッチでリビングルームが完成に近づいていき、見ているこちらの心が痛くなってきます(笑)
 なんだかもう、こうなってくると、ハカイザーのスーツアクターさんが鬼畜に見えてきますね……(広がる香村被害)
 両者の援護を受けたダイコンワルドの恨みおろしフェイズ2を受けた赤黄には、蘇ったクダックがゾンビムーヴで襲いかかり、大根のパワーが見せる命のやり取りと生死の境界がだいぶ洒落にならない事態に。
 「さーらに~」
 ダイコンが指し示した場所に浮かび上がるのは、序盤以来となるトジテンドパレスの姿。
 「「キカイトピア?!」」
 「貴様らに捨てられた、ふるさと~ダイコン」
 ……なんか今回、凄く扇澤延男成分がするのですが(笑)
 「捨てたわけじゃねぇんだよ!」
 「この世界ごと飲まれてしまうがいい」
 冒頭の美都子博士に続き、キカイトピアとジュラン達の関係性にも触れて終盤へ向けた手札が場に揃え直されつつ、スーパー白金は父と紫に足止めされ、赤黄はゾンビに群がられ、バトルとしては純粋にピンチ!
 「おや? 今日は人数が少ないなー」
 「父ちゃんならわかるだろ! トジテンドと戦うだけが、ゼンカイジャーじゃないんだよ!」
 「ふーん……わかんないなっ。だって俺は父ちゃんじゃ、ないんだからー! はっはは!」
 この局面で人助けどころではないのでは、を守りたいもの“全てを握る”ゼンカイジャーのあり方だ! とスライドし、マジフリ側では計画通りに捨てられた人形が少女の元に現れて、きちっと玩具の包丁を持って襲いかかってきたのが、手抜きが無くて良かったです。……まあこちら側は、マジフリが食い止めている間にダイコンパワーが切れて、力勝負の解決になるのですが(変にファンタジックないい話にまとめようとすると的外れになる可能性が出たと思うので、少女が謝罪をした後は気の持ちようなのは妥当な落としどころかなとは)。
 ゾンビパニック中の赤黄はセッちゃんのアドバイスを受けて29バーンを発動すると、マジレンジャー先輩の魔法で強化……されたのは、何故かクダック。ところが怨霊クダックたちは切り捨てた自分たちを強化してくれた事に感動して成仏を遂げ、さあ! 野球やろうぜ!!
 赤黄が自由に動けるようになって形勢逆転し、ワルドの危機に気を取られたハカイザーを拘束した白は、赤黄と合流するとお面バスターでどどどどーん!
 勝利に沸く赤黄がすっかり親しげに触れ合っていますが……知ってるこれ、上げて落とすやつだきっと。
 ダイコンパワーが消滅して全員合流から全力全開王となると、背中から突然飛び出したミサイルをおろし金に跳ね返された上、山盛りの大根おろしを浴びて消化されそうになるが、シークレットパワーの発動により「謎の力業。さすがマジック」で窮地を切り抜け、ビッグバン。
 かくしてゴミゴミの叛乱は、終幕を迎えるのであった。
 「なぁ~、儂の可愛いゲゲ。ステイシーがワルドのガードをするというなら、ハカイザーには更なる発展を期待したいところだが……んー、どう思う?」
 「へ~、面白そうだね」
 「んふふふふふ……はははははは……!」
 「いっひひひひひひ……」
 一件コンプリート後、トジテンドでは小指を立てた壁王様がなにやらほくそ笑み、そうだこの人、悪の組織のボスだった! と怒りのトントン相撲以外の一面を見せたところで、つづく。
 次回――またも投げつけられるえげつないボール!(ステイシーの顔面狙いで)