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大一番! 逆襲のスペース力士

ウルトラマンコスモス』感想・第53話

◆第53話「未来怪獣」◆ (監督:石井てるよし 脚本:荒木憲一 特技監督:佐川和夫)
 突然各地で発生する、時間停止現象。その原因はアンモナイトの殻を背負ったような人間大の怪獣であり、激しく衰弱した怪獣の遺伝子を分析した結果、アラドスと名付けられた怪獣は、なんと時間を超越する能力により5000年後の地球から来た事が判明する。
 「なあムサシ。5000年後の未来でも……こうして怪獣は生きてるんだな」
 人類が生きているかはわからないですけどね!
 「俺たちアイズの怪獣保護が、無駄じゃなかったって事をこいつは教えてくれた」
 人類が生きているかはわからないですけどね!
 「……絶対死なせるもんか」
 治療に励むSRCだが、現在の地球環境に適応できない怪獣の容態は思わしくなく、容態は刻一刻と悪化。そんな折、突如としてノワール星人からの通信が届き、声が稲田徹さんで私が得。
 アラドスの譲渡を求めるノワール星人が、我々の科学力なら怪獣の治療が出来るし、交換条件として地球から手を引こう、と持ちかけてくるのはなかなか面白い流れで、選択を迫られたアイズと防衛軍は、揃ってこれを拒絶。ノワール星人が信用できない点では一致する両者だが、防衛軍には防衛軍の思惑があり、アラドスが死亡した後に、その死骸を解剖・分析する事で時間に干渉する能力の解明を考えていた。
 「防衛軍はアラドスより、アラドスの能力が大事なんですか!」
 それはそうでは、とこの辺り露骨に、自分の価値観第一で他者のそれを毛ほども考慮しようとしないのはムサシの好きになれないところなのですが、不幸にしてカッパキノコ案件の直後であり、2話前の自分たちにも問いかけてほしい。
 加えて、「殺して解剖」と言わずに、「死んだら解剖」と言っているだけ凄く穏便だと思われ、これが、「どうせ死ぬんだからノワール星人に介入される前にとっとと殺して我々の物にしてしまえ」まで言うなら、ムサシの反発も理解できるのですが。
 更に言えば、鏑矢諸島で保護している怪獣がもし何らかの原因で死亡したら、まず間違いなくSRCは(今後の保護・捕獲に役立てる為にも)解剖・分析を試みるとは思いますし、現実問題としても人類の医学の発展と解剖には密接な関係があるわけで、ムサシは“そういう主人公”であり『コスモス』が“そういう作品”とはいっても、さすがに子供の理屈すぎるのでは。
 防衛軍による解剖・分析が、露骨に軍事目的だから……という部分での忌避感を表現したいのもわかりますが、物語の都合上、アイズも軍事力を有している(少なくとも戦闘機のスペックは防衛軍より上)、な事が『コスモス』の根本的にして最大の矛盾点として今回も浮き上がってしまいます。
 で、『コスモス』という作品は、主人公サイドがその矛盾と向き合わずに目を逸らしがちなところが、どうしても肌に合いません。
 「……それじゃ防衛軍も、ノワール星人と一緒じゃないですか!」
 そしてここで、「地球人もノワール星人と一緒」と言えず、人間の業を防衛軍に押しつける事により、アイズをあくまでも善玉サイドに退避させてしまうのが、今作の不誠実に思える部分。
 それは従来シリーズで繰り返し行ってきた事として『コスモス』では意識的に外したのかもしれませんが、宇宙的視野から主人公たちの価値判断さえ相対化する事で、新たな“気付き”を引き出す事が可能な、《ウルトラ》シリーズの魅力を削いでしまった気がしてなりません。
 「同じ利用されるなら……アラドスが助かる可能性があるなら! ……ノワール星人に引き渡した方が……まだマシです!」
 地球人の手で死後に解剖されるより、異星人の手で生体メカ改造された方がマシだ、と錯乱した事を言い出したムサシは基地を飛び出していき、ムサシの怪獣保護カルト暗黒面が大噴出。
 ノワール星人に命を救われたって改造怪獣にされるに違いないならば「せめて故郷の地球で死なせてやりたい」のだと、さすがにキャップが諭してホッとしましたが、これも作風といえば作風ではあるものの、もう少しムサシの横っ面をはたく(物理ではなく)展開があってもいいのに、と思うところ。
 ここまで精々、太田脚本による「時の娘」前後編と、力に頼って怪獣を殴り倒してしまうイクリプス前編ぐらいの印象ですが、青臭い主人公が悪いのではなく、青臭い主人公が無批判に聖人になってしまうのが問題なのであって、これは完全に私の好みの話ですが、基本的にムサシの横っ面をはたきにいかないのは、今作の物足りないところです。
 交渉決裂と見たノワール星人は実力行使でアラドスをさらおうとするがテックスピナーによって阻止され、電磁ネットから解放されて地面に叩きつけられるアラドス……実質的なトドメを今、チームアイズが刺してしまったような。
 そしてテックスピナーは、悪い異星人は消毒だー、とノワールUFOに向けて攻撃開始。


「あなたと青い巨人は、異星人や怪獣を、容赦なく攻撃する、地球人の手先でしょ」
「それは誤解だ! コスモスも地球人も、意味もなく異星人や怪獣を、攻撃したりはしない!」

 ……まあ先に戦端を開いたのはノワールですが、前回の今回で異星人に対しては鉄拳制裁を旨とする『コスモス』魂が火を噴き、今作では珍しい、円盤とテックスピナーのドッグファイト(この辺り、「ただ生きている怪獣の行動」と「知性と意思に基づく侵略活動」は全く違うもの、という理屈はわかるのですが、序盤の内に『コスモス』世界のルールとして明確にしておいた方が良かったと思いますし、『コスモス』の積み重ねを考えると、前回の台詞はシリーズ従来作に意識が向きすぎていて、やはりちょっと筋が悪かったと思うわけです)。
 地上にはマシン改造によりチャージアップした超電子ラグストーンが送り込まれ、フブキ機とリーダー機はノワールUFOに撃墜され、ムサシはコスモス変身。
 メカニカルな装甲を纏った超電子ラグストーンの光線攻撃から未来怪獣を守ったコスモスは、コロナ……は、はい、スキップスキップ、でイクリプスすると、気合を入れた関取のぶちかましをがっぷり四つで受け止めて、上手投げ。
 だが、ウルトラカラテと互角のパワーを見せるスペースメカ相撲の前に苦戦を強いられ、顔面に強烈な飛び蹴りを見舞うも戦意喪失しない関取の、エドモンド本田直伝スーパー頭突き(←→P)がコスモスに直撃!
 更にノワールUFOからの支援攻撃も入り、頭上のUFOと関取のぶちかましの連携に、遂に地面に倒れるイクリプス。
 このまま、空手は相撲に負けてしまうのか! と思われたその時、不思議な事が起こった。
 ナレーション「アラドスが最後の力を振り絞り、ラグストーンを時空の彼方へ飛ばしたのだ!」
 スペース関取は次元の狭間に飲み込まれて強制引退処分となり、アラドスがコスモスの危機を救うのは予定調和として、時間停止能力でさりげなく助けるとか、もう少し巧くやりようは無かったのでしょうか……冒頭、時間停止の映像表現が面白かっただけに、その要素を使い切れなかったのは勿体なかった点。
 それはそれとして、ノワールUFOとの連携もあったとはいえ、真っ向勝負でもイクリプスと互角の一番を演じた超電子ラグストーンは、現時点で劇中最強怪獣の座に躍り出し、来場所は大関陥落したカオスヘッダー関の奮起に期待したいと思います。
 力尽きたアラドスの姿に怒り心頭のイクリプスは、大地をがっちり踏みしめると、諸羽真空正拳突きでノワールUFOを破壊し、悲しみをたたえながら空へと飛び去っていくのであった……。
 コスモスさん、防衛軍に手出しされないよう埋葬でもしていくのかと思ったらそのまま飛び去っていき、どうするのかと思っていたら突如として時空間ゲートが開いて3体の巨大なアラドス成体が出現。その力で息絶えたと思われたアラドスを甦らせ(まあ、5000年未来の生物なので、そもそも生物学的に死亡していたわけではない可能性もありますが)、それぞれが元の時間へ帰っていくハッピーエンドで、つづく。
 ラストは、後味が悪いよりはマシ、といった感じであり、コスモスさんに生命に関するあまり出鱈目な奇跡は起こさせたくない、というのは一線があるので、美しさは微妙なものの『コスモス』の糖度からは納得できる範囲、といったところ。
 次回――今明かされる、SRC誕生の秘密! ……最近の『コスモス』次回予告は、最後にやたら大げさに話を広げて締める路線。