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「なんだ…………社交辞令か」

『機界戦隊ゼンカイジャー』感想・第35話

◆第35カイ!「ダイヤモンド◇ユカイ?!」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:香村純子)
 みんなの様子がおかしい、と、友達(ゾックス)の一家に相談を持ちかける介人……ハカイザーの正体を知ったジュラン達は煩悶のあまり揃って挙動不審になっており、脳がオーバーヒートした末に介人に対して敬語に戻るマジーヌ、は納得度が高くて面白かったです(笑)
 「あ、あれだ……サプライズパーティとか、考えてんじゃねぇの?」
 ……だからそういう、ごくありきたりな単語を、血まみれの鉄球みたいな鈍器にして使うの、やめて下さい!!
 凄く嫌なサプライズの気配が膨れ上がっていく中、海賊双子に心当たりを問われた介人は、ひらめキングしてしまう。
 「あ! もうすぐ俺の誕生日!」
 地獄の予感しかしなーい!
 ……凄いよ、開始1分、表向きは軽いお悩み相談で場の5人中4人笑顔なのに、実態はコールタールよりなおどす黒い、血の池地獄だよ!!
 なおゾックスは気のない態度を装って駄菓子をむさぼりつつ、介人が笑顔になると途端に嬉しそうで、これが、噂に聞く「後方彼氏」……!(机一杯に駄菓子が山積みなのは、介人が持ってきた「相談料」でしょうか)
 「そっか……それかーー! ……気付いちゃ駄目じゃん俺! どうしよ~、知らないフリしないと!」
 笑顔を取り戻し、軽やかになる介人の語尾に重なる形で、悩めるジュランたちの手のアップ(で落ち着かない心境を表現)と溜息に切り替わり……20秒に一回ペースで、ご唱和下さい、我の名を!
 香村さん、鬼か!
 ご唱和下さい、もう一人!
 中澤監督も、鬼か!
 左ジャブばりのスピードで顎狙いのえげつない右ストレートが次々と放り込まれ、計算され尽くした激しい落差のラッシュを受け、アバンタイトルの内に見ているこちらのMPが尽きそうですが、この約1分間だけでも、大変いいものを見させていただきました。
 「言おう言おうとして、今日まで結局、言えずに来ちまったなぁ……」
 相談の末、覚悟を決めて介人に衝撃のサプライズを伝える覚悟を決めるジュランだが、そこに、あらゆるものを、固く・硬く・堅く・難くしてしまうダイヤワルドと、ハカイザーが出現。
 ハカイザーとの戦いを躊躇している内に赤黄桃青はダイヤワルドのかたくなるフラッシュを受けてしまい、口が堅くなって「ダイヤ」以外の言葉を喋れなくなってしまう……落差は実に『ゼンカイ』です(笑)
 まあこのワルド、アース-45を侵略できるのだろうか、という気は凄くしますが。
 そこに白と金がダブルで駆け付け、慌てる赤黄桃青は武器を放り出して白を止めようとするが、口から出るのは「ダイヤ」「ダイヤ」「ダイヤ」ばかりで、OPの今回予告で何度か行っている劇中キーワードの連呼が、本編を侵略しているような気がしないでもなく(笑)
 混乱の末にダイヤワルドには逃げられてしまい、要領を得ないダイヤ連呼にちゃんとキレるゾックス、それは事情がわからないと怒るよね、を行動で見せられるのは、おいしい役割。
 ヤツデの発案で筆談を試みるが……書いてもダイヤ。ジェスチャーで意思疎通を図ろうとするも……全部ダイヤ。
 ……まあ、恐ろしい能力ではあります。
 ひたすらダイヤを繰り返すジュラン達はダイヤワルドの下僕にされてしまったに違いない、と誤解した介人は、いつになく怒りを燃やして出撃全開し、その後を追おうとするもゾックスから戦力外通告を受ける赤黄桃青。
 一方、ダイヤワルドの嫌がらせを遠くから見守るハカイザーに接触したステイシーは、カボチャ事件による心境の変化から共闘を持ちかけ、それを快く受け入れるハカイザー。
 「組むも何も、俺たち最初っから、チームじゃないか。だろ?」
 嗚呼これはあれだ……「俺たちとっくに友達だろ?」って攻略されるやつだ……!
 「君の相手は僕…………僕たちだ!」
 かくして初めての友達が出来たステイシーはハカイザーと共に介人の前に立ちはだかり、紫&ハカイザーと、スーパー白が商店街で激突し、全力で、ちょわーーーーー!
 他方、ダイヤワルドには本日は踊りに笑顔の無いゾックスが襲いかかり、割と状況を厳しいと捉えているのか、介人を傷付ける奴は許さない後方彼氏全開なのか判断に悩むところですが、よっほほーい!
 二対一で苦戦するかと思われたスーパー白だが、連携の取れていない悪の即席タッグの隙を突くと、ハカイザーにお面キャノンをぶち込む寸前、意を決して駆け付けたジュランたちが懸命に発射を阻止。
 「ダイヤ、ダイヤダイヤー!」
 「……みんな……」
 「ダイヤ」「ダイヤ」「ダイヤ」「ダイヤ」
 「……うん、わかった! 絶対助けるから!」
 「ダ?!」
 勿論、ダイヤ語は通じなかった。
 (※ところで、ここでゼンカイザーが見せるハンドサイン、多分ダイヤモンドを現しているのでしょうが、『光戦隊マスクマン』の「メディテーション!」の印に見えて仕方ありません(笑))
 なんとか父子対決を止めようとする赤黄桃青は、久方ぶりのダーク先輩ズをけしかけられ、割と深刻な状況で、真っ当に苦戦もしているのに、「自由に喋れない」の一点で喜劇性を持たせた上で、その喜劇性こそが悲劇性を引き立てるのは、実に見事な切れ味。
 ツーカイザーも久々に先輩にレボリューションすると、水中に逃げ込んだダイヤワルドを渓流の王者の力で釣り上げ、レベルが違うんだよぉ!
 その間もゼンカイザーの激闘は続き、ハカイザーのブースター機動、シーザーの飛び蹴りからの大きな反転宙返りなど見応えのあるアクションが続き、充電が心許なくなってきたハカイザーと紫が、一気のW大技。
 ゼンカイザーの危機にダーク先輩ズを叩きのめすジュラン達だが紫ミサイルを受けて倒れ、ジュランに迫るハカイザーの攻撃を阻止せんと、キャノンを手にスライディングで割り込むゼンカイザー。懐に飛び込んだゼンカイザーの零距離キャノンが発射寸前、ダイヤワルドが金に倒された事でジュラン達のダイヤ縛りが解けるが、その言葉が届くよりも早く、放たれてしまう全力全開キャノン――
 直撃弾で吹き飛んだハカイザーは装甲こそ無事だったものの急速にエネルギーを消耗して充電が切れると仮面が消滅し……土手っ腹に風穴を空けようとした直後にご対面……て、え、あの、ただでさえ酷い状況設定なのに、初めての友達が出来て数時間のステイシーザーも同時にご対面とか、邪悪すぎる……。
 素顔を明かしたハカイザー――五色田功博士が意識を取り戻し、零距離射撃に関しては結果オーライとなるが、父子の再会を思わず妨害したステイシーザーが、功の身柄をさらってトジテンドへと強制帰還し……辛い、アバンタイトルから介人に辛いと見せかけて、隠して持っていた本命の鈍器でステイシーの後頭部を殴ってきて辛い……。
 これをやる為に前回の介人からステイシーへのアドバイスだったのは少々無理が出ましたが、乱入するステイシーの慟哭が痛切すぎて、ちょっと引くレベルのえげつなさ。
 冷静になって考えると、主人公の生き別れの父親との10年ぶりの再会が、悪のライバルの受ける衝撃のおまけ扱いになっている物凄い作劇ですが、すっかりW主人公の扱い。
 事態と感情を整理できないまま介人たちが取り残されている内に、巨大ダイヤワルドが誕生。ところが金は渓流の王者の副作用により「俺には、巨大ロボになる資格は……ない」と体育座りしており、戦闘不能
 深刻な精神汚染の発現に、本当に戦隊ギアに不備は無いのか、このタイミングで微妙に、五色田夫妻への不信感が再浮上します(笑)
 「……介人、行けるか?」
 「……うん」
 ショックを受けながらも介人は再び変身し、全力全開王が誕生すると、本調子ではない白を、ジュラン達が懸命にサポートしようとするのはいいところ。ブルーンのひらめキングによりダイヤモンドの剣を連続ラダーパンチの震動で打ち砕くと、45周年フィーバーにより、キラッと参上、カラッと爆発。
 カラフルに戻ると、ジュランたち4人はハカイザーの正体について伝えられずにいたことを真摯に謝罪し、戦場では結果オーライとなったものの、それとこれとは別の話として謝罪が丁寧に描かれるのが、物語として誠実で好感が持てます。
 キャラクターの心情の掘り下げに加え、構成として父子対決のサスペンスで盛り上げていた事のフォローにもなっていますし、こういった目配りと気配りも、香村さんの光る部分。
 「そっかぁ……サプライズじゃなかったか……」
 冒頭のやりとりもしっかりと拾い、家族写真を見つめる介人。
 「いや、でも……ある意味サプライズ全開だったなぁ……。………………うん、もう大丈夫。……悪い事だけじゃない。……だって! 父ちゃんが生きてるってわかったんだし!」
 サプライズを消化して前向きに受け止め直すのは実に介人らしさ全開で、みんなで父ちゃんを取り戻そう、と拳を合わせる一同で、つづく。
 今作の特徴である声優陣のウェイトの大きさを逆手に取った、“同じ単語しか言えない”離れ業に、次々と繰り出される精神的鈍器、力の入ったアクションシーンの数々も素晴らしく、一つの山場にふさわしい濃密な内容で、文句無しの面白さでした!
 ここまで『セイバー』コラボ回を除いて休み無し、疲れの気になる香村さんですが、今回は鋭い切れ味で、それだけに使い方を……という面と、もうここまで来たら……とあって複雑ですが、いよいよ終盤戦へ入っていくピースが揃ってきた感じで、ステイシーの行く末はどっちだ?!