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ウルトラマンコスモス』感想・第46話

◆第46話「奇跡の花」◆ (監督/特技監督八木毅 脚本:林壮太郎
 「正直、人の幸せを目の当たりにしたくないわね」
 先日の海神ダイナミック事件を経て交際を始めた吉井ユカリからのビデオメールにドイガキは相好を崩し、若手組はそれを囃し立て、リーダーは氷点下だった。
 そんな折、吉井が調査している霧隠山の付近に、突如として巨大異星人が出現。暴走したドイガキを追ってアイズ若手組が出撃するが、攻撃を受けて小型化すると、地球人そっくりの姿で逃走した異星人は、何故か村人たちに必死にかばわれる……実は、異星人――キュリア星人――は何百年もの間、地球人と暮らしを共にし続けており、隕石と共に飛来して霧隠山に自生してしまった宇宙植物の毒花粉を、その身で浄化していた村の守護者といえる存在だったのである。
 キュリア星人と村の関係については納得するムサシ達だが、巨大化騒動に巻き込まれて診療所に担ぎ込まれた村井が目を覚ますと記憶を失っており……この後、「記憶を失った村井とドイガキのラブストーリー」と「地球に隠れ住むキュリア星人の話」が、同時に進行するが相互に繋がらない大変困惑する構成となって、どうしてそうなってしまったのか。
 アイデアA(吉井の話)とアイデアB(キュリア星人の話)を、話数や再登場キャストの都合などで無理矢理同じ鍋に入れてみた結果、程よく混ざり合った物語Cが出来上がるのではなく、ドロドロに崩れ去ったAとBの残骸になってしまった感じ。
 お陰で、キュリア星人の地球への思い入れは全く掘り下げられないまま、村人がこんな感じだからいいのでは、とアイズは大雑把にその存在を認め(認める事そのものはアイズらしいのですが、それに付随するキュリア星人と村の関係になんのドラマも発生しない)、村井は村井で「自分とは何者なのか」に全く懊悩を見せないまま記憶喪失の自分をマイペースに受け入れ、挙げ句トドメに、両者の身に起きた問題やその心情が全く別の地平を走っていて物語の中で交わらないので、互いにノイズと虫食いになっているだけで同時進行する意味が見当たらない、紛う事なき大惨事。
 毒花粉の吸収浄化に限界が来ていたキュリア星人は、ムサシの中のコスモスに次に暴走した際の介錯を頼むが、その場合は当然、残った花については丸投げ。
 村井の記憶喪失については、ドイガキの心情としてはわかるものの“ドイガキを忘れた事”に焦点を絞りすぎて、村井の家族や知人、考古学者としてのキャリアなどには一切触れられない為、登場3回目の継続ゲストにも拘わらず、「ドイガキの恋人」でしかなく、「考古学者・村井ユカリ」が抹殺されてしまっているのは、率直に言って最低だと思います(過去のエピソードには触れていますが、メタ的なキャラ紹介にしかなっていない)。
 嘆くドイガキを乙女のロマンで慰めるアヤノもほぼ別人になっていて、どうしてこの二つのアイデアを一つのエピソードに詰め込み、詰め込んだ上で混ぜる気が見えないままなのか、大量の疑問符が視界を飛び交うばかり。
 結局、再び暴走したキュリア星人は、コスモスイクリプスにより体内の毒素を浄化され、コスモスはその勢いで宇宙植物の毒素を浄化し、暴走キュリアのビーム攻撃から逃げ回っている内に海神ダイナミック事件がフラッシュバックした村井は記憶を取り戻し、互いの要素が何も連動しないまま、特に人の想いの積み重ねとかなしにコスモスが奇跡で問題を解決してしまい、実に全く以て美しくありません。
 一応、自分の事を忘れてしまっても僕がユカリを守る、とドイガキがナイトに徹する見せ場はあるのですが……ではそんなドイガキが愛する村井ユカリとはどんな女性なのか? の掘り下げが甘い、というよりも、無視されてしまっており、ここで必要だったのは「村井ユカリの人間性」だったと思うのですが(それがあってこそ「ドイガキの決意」が輝くわけで)、何故かそこが「キュリア星人の事情」に侵食された上で、二つの要素は特に重ならない支離滅裂といっていい構造で、本当にどうしてこうなってしまったのか。
 ゲストキャラの継続的な登場そのものは好きなのですが、その3回目にして、これまで2回に積み重ねてきたものを活かすよりも粉々にする大悪手で、とにかく残念な出来でした。
 もろもろ丸く収まって、ムサシ達に背中を押されたドイガキがユカリにプロポーズし、それが承諾されて、つづく。