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『機界戦隊ゼンカイジャー』感想・第32話

◆第32カイ!「怒るサカサマ、まさかサルかい?」◆ (監督:山口恭平 脚本:香村純子)
 「テニスの時は助けてくれてありがと!」
 「あれは忘れろ」(被せ気味に)
 「え?」
 このやり取りだけで面白くて、ステイシーの破壊力の高さに、もはや、戦慄(笑)
 テニスのサトシ様は残暑の生んだ幻、とさっそく暗黒チェンジした紫は介人に襲いかかり、アクロバット変身……に失敗した白と殴り合いに突入するが、響き渡る人々の悲鳴を耳にして、一緒に動きを止めるのが駄目だと思うんですよ、サトシーザー。
 一般市民を追い回していたサカサマワルドを、勝負の邪魔だと追い払おうとする紫だが(普通に紫に背を向けてワルドを倒そうとする白と、ひとまず背中から撃つが、追い打ちせずに勝負にこだわる紫)、怒った逆さまワルドの逆さまビームを食らってしまい、なんと介人とステイシーの中身が入れ替わってしまう事に!
 かくして、終始シリアスな表情の介人(声:ステイシー)と、ハチャメチャで明るいステイシー(声:介人)が誕生し、人格転換アイデアから期待させてきた通りの面白さで、アバン4分で既に大満足(笑)
 「俺とステイシーが……逆さま全開だーーー!!」
 事態を把握している間に逆さまワルドは姿を消してしまい、逆さまワルドを確保する為にトジテンドパレスに戻ろうとする五色田サトシだが、並行世界間ゲートの認証失敗。
 という事は、自分が行ける? と思いついた介人シーがおもむろに大ジャンプを決めると雑な仕組みのゲートが開いてしまい、それを止めようとしたサトシ、ゴミ捨て場にダイブ(笑)
 介人シーは首尾良くトジテンドパレスに侵入するが、気絶したサトシはカラフルに運び込まれて目を覚まし、ゴミ捨て場で拾われる悪役を、こんな形で見る事が出来るとは(笑)
 「カラフル……? …………カラフル?!」
 跳ね起きたサトシはヤツデの姿に動揺し、何をどう説明して切り抜けるべきかと口ごもっている間に、ワルド怪人に襲われて記憶喪失になったに違いない! と早合点したジュランらが出撃していき、牛乳……牛乳……はまあさておき、介人を心配するジュランたちの距離の取り方や声の掛け方が、非常に良かったです。
 なお、介人ボディの頭部負傷の原因であるところの介人シーは、父の情報を求めてトジテンドパレスを徘徊する内に、牢屋に囚われた人々を発見して牢番に開放を命令するも殴り飛ばされ、
 (ステイシーって、そんな偉くないんだ)
 今、肌で感じる、衝撃の真実。
 うん、まあ、介人視点だと、やたら偉そうだし、なんか好き勝手に行動してるし、ステイシーはトジテンドで割とお偉いさんに見えていたんだな……というのが、こんな筈じゃ無かったのに……と合わさったしみじみとした感慨としてやたらツボに入ってしまい、咳き込むレベルで大笑い。
 一計を案じた介人は、サイエンスパワーで爆発を起こして牢番の注意を引きつけた際に、牢屋の鍵を破壊して囚われの人達を解放し、トロールパワー=チャカ。
 カラフルでは店内に転がる五色田サトシが、子供達に声をかけられたり、思わずスーさんを助けて感謝されたりで、人情に触れていた。
 (あいつはいつも……こんなに大勢の人達に思われたり、感謝されたりしてるんだな。…………本当に、僕には無いものばかり持っている。……もしも僕が……このまま……元に戻らなければ)
 鏡に映った自らの姿を見つめ、すり替わりの誘惑にサトシの心が揺れていた頃、引き続き功博士の手がかりを求めてパレス内部を彷徨う介人シーは謁見の間に迷い込み、こんな形で壁王様とまさかのご対面から、ハイ、ゲゲさん気付くの早かった。
 ……余談ですが、ボスキャラとの思わぬ遭遇、というと未だに『超人機メタルダー』第19話「夏休みはゴーストバンクへ冒険ツアー」(監督:小笠原猛 脚本:高久進)における、夏休み水着回だと思って油断していたら迷子を捜している内に敵組織の本拠に乗り込むどころか首領との対面イベントを実績解除してしまう、が忘れられません。
 さすがの介人シーも、ちょわーーー、とダイビングヘッドを決める事なく回れ右して一目散に逃走していた頃、介人を襲って記憶を奪った推定ワルド怪人(冤罪)を探し回っていたジュランらは、逆さまビームを受けて中身の入れ替わった界賊一座と遭遇。
 「あー、ぶっちゃけおまえらの違いはそこまでねぇわ」
 カッタナーとリッキーの入れ替わりへのツッコミが面白く、ここで、様子のおかしい介人は何者かと入れ替わっているのでは、と気付く事に(なお、演出上の表現ではなく、劇中の実際として、声は精神に付随している模様)。
 折良く逆さまワルドが現れると、中身ゾックスのフリントがキザな仕草で戦隊ギアに口づけからよほほいし、見たいものを期待通りに見せてくれる安心感。
 そして背後では、中身フリントのゾックスが超ハイテンションで応援ダンスを踊り狂い、期待以上のものも見せてくれる嬉しい満足感。
 山口監督は、怪談・恋愛・バカンス、とややアベレージが下がり加減だったのですが(日時計回は面白かったですが)、今回、入れ替わりアイデアとノリの合致に加え、介人とステイシーが抱く繊細な感情も丁寧に描写されていて、良い仕事。
 ガオーンとマジーヌがカラフルに駆け戻り、金赤青がトジテンドとの戦闘に突入していた頃、トジテンドを逃げ回る介人シーの前にゲゲが現れるとゲートの場所を教え、今回も激しく怪しい立ち回り。
 なお、多分大きいが、シーンによっては小さく見える……と大きさに首をひねっていたゲゲは、通路に並んだ事で、ステイシーより二回り大きいぐらいと判明。恐らく、壁王様と幹部を一緒の画面に収めたい都合で互いに微妙なスケール感の映像になったのかとは思われますが、開始当初からの疑問が一つ解決しました(笑)
 割と素直にカラフルから連れ出されたサトシは、ガオマジと共に戦いの場に到着。
 (もしも、サカサマワルドが勝てば、僕はこのまま……)
 合法的にヤツデの孫になれる、と揺らぐサトシだが、そこにゲートを通って介人シー、そしてそれを追ったバラシタラが出現。
 (このまま……何を僕は生ぬるい事を)
 欲しい物は自分の手で掴み取る! とサトシは迷いを振り払い、介人シーはさっそく仲間と合流。
 「介人! 言いたい事は色々あるけど! まずは、こいつ倒すぞ!」
 「うん。チェンジ全開! ……じゃない。暗黒チェンジ!」
 凄いな、君は、ホント、躊躇ゼロだな……。
 「暗黒の、パワーー! ステイシーザー!!」
 とても爽やかな名乗りから、まさかの紫センターで揃い踏みを決め、定番系アイデアの『ゼンカイ』的処理として秀逸。
 「――チェンジ全開」
 続けてサトシも、ゼンカイザー史上最高にクールな変身を決めると、バラシタラも参戦しての乱戦に。
 「おまえを倒し、僕はバラシタラを越える」
 作戦を妨害して嫌がらせをする、を格好良く言ったゼンカイサトシは逆さまワルドを襲い、カイトシーザーはファイティングパワーで格闘戦士を送り込み、更に白紫コンビネーションキック。
 から、なんか勢いで並んでW必殺するとステイシーザーのお面でどどどどーんし、全力全開キャノン、割と柔軟。
 山口監督好みと思われる派手な爆発を見つめ、中身サトシらしい格好良い残心を決めた白の中身は介人に戻り、キャノン回収の都合(が支え無しによる砲撃の反動で説得力が出るはお見事)で思い切りよく吹き飛んでいた紫の中身も、無事にステイシーに。
 干殺し・文明崩壊、と続いた後に、これといって大きな被害は出せないまま逆さまワルドは星となり、シーザー、そして、赤黄桃青を軽く圧倒していたバラシタラは揃って帰還。
 この際、距離を取って睨み合いながら、お互い別方向にゲートを出して右と左に去って行く画面構成が格好良く、近くても良し、遠くても良し、と今回は総じて演出が冴えていました。
 ニュークダイテストが逆さまパワーに充ち満ちると、中身ゾックスで戦っていたフリントが疲労困憊という理由で全力全開王が出撃。
 逆さまパワーにより天地にズラリとビルのならんだ逆さまフィールドは出来が良く、フルCGの全力全開王に合わせて、ならではの戦場とバトルを用意したのは非常に良かったです。
 重力方向の変換に苦戦する全力全開王は、警察系車輌メカを召喚してピンチを乗り越えると、逆さまフィールドがスペースコロニー内部のように筒状に繋がったのを利用して、ダッシュ切りからトドメ全開。
 これにて一件コンプリートの後、連絡なしにトジテンドパレスに飛び込んでしまった介人は一同からお叱りを受け、実に目配り。
 「ごめんなさい。……つい焦っちゃって」
 冒頭、ゾックス達との美都子探しが空振りが終わった後にチラリと浮かべた辛そうな表情と繋げて両親に対する介人の気持ちをしっかり掘り下げていくのも抜かりがありません。
 「でも、せっかくトジテンドパレス行けたのに……なんも出来なくて」
 「かーいと、そこは謝んなくていい」
 「そうチュン。一番悔しいのは、介人チュン」
 「あんな世界で一人、よく頑張ったよおまえ」
 そして、配慮不足で皆に心配をかけた事は謝るべきだが、結果として何も得られなかった事に関して気に病む必要は無い、と諭すジュランの案配が実に絶妙で、物語が上下左右に派手に飛び回りながらも、締める所をきっちり引き締めてくれるジュランの存在が、ホームとしてのヤツデさんと合わせて、実に良く出来たキャラ配置です。
 それ故にこそ、出来れば終盤、ジュランの過去なり脆い所を引きずり出して欲しいな、と期待しますが。
 「……あんな世界で一人、か……」
 介人は、入れ替わりによって知ったステイシーの境遇に想いを馳せ、雷鳴轟くパレスの外壁に佇むステイシーの姿で、つづく。
 以前のコピー回は悪介人と悪ゾックスの扱いがいまいちで、人格変化パターンとしては物足りない出来だったのですが、今回はストーリー上の布石も含め、介人←→ステイシーの入れ替わりに焦点を絞ってキャラクターと役者さんの魅力を存分に引き出し、大満足の内容でした。
 単発エピソードとして見ても十分な面白さでしたが、今後に繋がりそうな要素では、囚われの人々をステイシーの顔と名前で助けたのが後で効いたりすると痺れるので、期待したい要素。