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遊園地の怪

ウルトラマンコスモス』感想・第45話

◆第45話「遊園地伝説」◆ (監督/特技監督八木毅 脚本:右田昌万
 「――僕の家は、遊園地の中にある」
 役者としては3回ほど登場した右田さんが、脚本としては初参戦。
 閉園の決まった遊園地・ファンタジーランドの管理人(?)一家の少年、思い出の遊園地を閉園前に訪れたアヤノとムサシ、宇宙に出現した巨大ワームホール、の三つの状況が同時進行し、アヤノとムサシが「子供の頃の同じ地元の思い出」を語り合うみたいになっていますが、いいのか(笑) ……まあ、そこまで困りませんが。
 「ファンタジーランドが無くなったら、ムゲラ、どうするんだろうね?」
 「アヤノちゃん、ムゲラが本当に居ると思ってるの?」
 任務中に「ちゃん」呼びは本当にどうかと思うぞムサシ、はまあともかく、ファンタジーランドには、ムゲラ、という不思議な生き物が住んでいると語り伝えられており、幼い日にムゲラの起こす奇跡を見た記憶のあるアヤノと、遊園地の少年のムゲラへの想いが重なり合うのは、完全に妖怪譚の作り。
 ところが、ワームホールから出現した超巨大UFO(話の仕掛けの都合で外観が靄のようなものに包まれている為、最初はエネルギー波かと思いました)がテックブースターとテックスピナーを蹴散らすと瞬く間に地球へと飛来し、ファンタジーランドの上空に静止。防衛軍は急遽ファンタジーランドを接収してUFOと対峙し、物語は妖怪譚からファースト(じゃないけど)コンタクト物へと急転換。
 「攻撃なんてやめて下さい! こっちが危害を加えたからUFOは反撃しただけで」
 ワームホールから姿を見せた異邦人にカオスヘッダー同様の脅威を危惧する防衛軍はUFOへの攻撃を決断し、それに抗議するチームアイズですが、その言い分だと、最初に戦端を開いたのはチームアイズなのでは(真顔)
 自分たちがやらかしたので防衛軍には慎重な対処を、と殊勝な態度を見せるのならまだわかるのですが、どうしてこの人達は、自分たちの迎撃活動は棚の上に上げて、他組織の指揮所に怒鳴り込みに行くのか。
 「領空侵犯は、防衛軍の管轄だ。こいつらをつまみ出せ!」
 わざわざ現場まで出てきている佐原司令の対応は全く正しく、防衛軍は防衛軍で短慮で引き金の軽い傾向はありますが、チームアイズの、我々は正しいので他人の裁量権など知った事ではない、という態度はどうしても鼻につきます(笑)
 ……この辺り恐らく、硬直化した軍隊(国家的組織)に対して、時に肩身が狭く、時には横紙破りを行いながらも、フレキシブルに動いて“正しさ”を貫ける民間組織、みたいな位置づけでアイズを描きたかったのだろうとは思われ、物語構造としては「“権威”に立ち向かう“信念”」の形を取ろうとしているのですが、劇中の実際では「チームアイズの方がよほど“権威”」なので背景と構造が全く噛み合っていないまま、4クール目に入っても依然そのままという事に。
 遊園地が潰れたらムゲラが住む場所を失ってしまうのではないか? 戦いが始まったムゲラの命が危ないのではないか? 心配のあまり遊園地に忍び込んだ少年だが、それをきっかけに騒動が拡大し、防衛軍の砲撃とUFOからの自動反撃が衝突寸前、ムサシはコスモスに変身。迫り来るビームとミサイルの双方を無効化し、珍しく、人類に対して力を誇示するようなムーヴ(ニュアンス的には、話を聞かない防衛軍に一泡吹かせる、みたいな意識を含んでいたのかもですが、私の中では、防衛軍とアイズはどっちもどっちなので……)。
 コスモスとUFOの間になにやら光通信がかわされ、ベールを払い天空に浮かび上がったUFOの姿は、まるで巨大なテーマパーク。ムゲラがファンタジーランドに棲みついていた理由が明らかになり、星からの迎えを受けてムゲラはUFOへ。
 ワルツのメロディに乗ってファンタジーUFOは宇宙へと去っていき、毒気を抜かれた防衛軍の偉い人達も一緒に明るく手を振り見送って、大団円。
 ナレーション「誰にでも、忘れられない場所がある。たとえそこが無くなっても、その場所を思い出す度に、輝きはますます強くなるだろう。君の心の、宝石となって」
 今作では珍しくナレーションさんによる締めとなり、《ウルトラ》っぽい幻想譚としては可も無く不可も無くぐらいの出来でしたが、「場所」を「物語」に置き換えると個人的に好きなテーゼであり、そしてこのエピソードそのものが、「場所の意味を描く物語」である(地球人にとってもムゲラにとっても)とすると、良いオチでした。