『仮面ライダードライブ』感想・第45-46話
◆第45話「ロイミュードの最後の夢とはなにか」◆ (監督:柴崎貴行 脚本:三条陸)
前回ラストで吹き飛んだドライブ等は行方不明となり、その間にピットが直接攻撃を受け、追田とりんなが追い詰められたところで挿入歌と共にD・M・Cが助けに現れる映画っぽい構成ですが(映画だったらここでタイトルが入る)、今更、死神ミュード軍団を3ライダーで一斉フルスロットルしなくてもな感。
全員の車とバイクを駆使しての立体キックは格好良かったですが、合体攻撃を見せたかったけど、それに見合う敵がいない、という悲しさ。
“約束の地”らしき特防センターがバンノ一派によって占拠され、何故そこ急にメルヘンな言い回しなのか以前から気になって仕方がないのですが、このセンスは、ハート様でしょうか……?
ピットを破壊された特状課はセンターへの突入手段を失い、この局面で「強化ってな……ピットがこんなになっちまってて、どうすりゃいいんだよ?!」と泣き言を洩らす主人公、どうしてそうなった。
ところが課長に連絡が入って一同は密かに用意されていた仮説ピットに移動し、特殊車輌課の人員を集め、ピットを作業可能な状態まで整備したのは、進ノ介の元相棒・早瀬!
「……おまえ……俺の為に」
今作の主題からすると、怪我で職務に復帰できなくても「市民の為に」となりそうなのに、ナチュラルに「俺の為に」と解釈する進ノ介、霧子さんに対するよりもむしろ、胸がきゅんとした表情しているな!
霧子さんはこの緊急事態に、クロスカウンターを打ち込む事が出来るのか?!
「あれが……本当のダチ」
夜を徹してのトライドロン改造作業が行われ、並んで変身した進ノ介・剛・チェイスがトライドロンとバイクに乗り込むと、最後のひとっ走りの突入作戦がスタート。
画的には頑張って盛り上げようとしており、柴崎監督によるかなり映画を意識したと思われる構成になっていますが、その結果、薄っぺらい事には定評のあるバンノが、映画限定のラスボスだと思えば飲み込めない事も無いような気がちょっとだけしてくるマジックが発生。
今作では、3-4、39-40、に続いて5本目の参加となった柴崎監督ですが、この一手を持ってして今作ベスト演出に選出してもいいような。
蛮野はシグマに特防センターのエネルギーを吸収させ、グローバルフリーズによる地球の完全静止と、人類全てのデータ化による支配を目論んでおり……まさかの、ドクター・ヒネラー……!(笑)
「シグマの進化完了まで後わずか。いよいよ私の理想世界の誕生だ!! あーははははは、わはははは!」
「……はははははは。ははは……もっとさ、極悪科学者、ぐらいの奴だと思ってたよ。俺も甘いや。おまえこそ、人間を滅ぼす正真正銘の化けもんだよ、蛮野天十郎!」
剛が頑張って蛮野の格を上げようとしてくれているのですが、なにぶん背景の積み重ねがないので、急造の手抜き工事具合は如何ともしがたく。これをやっておく事で、剛の憎悪の対象をロイミュードから蛮野へとスライドする作業も行われているのですが、横で黙って突っ立っている泊進ノ介さんにも何か一言ぐらいコメントをいだきたいところです。
「俺は霧子を愛している」
バンノドライブのゴールデンスピアが剛を貫く寸前、ハートとメディックが剛を守って004の自爆から救われた借りを返すと、蛮野に辛酸をなめさせる為にシグマを破壊してやると宣戦布告。
一時共闘と相成った5人は揃って変身し……絵面が完全に、『獣拳戦隊ゲキレンジャー』です(笑)
間合い的には、皆で名乗り始めて欲しい感じ。
マッハとチェイサーがゴルドドライブを相手取っている間に、ドライブ・ハート・メディックが上層へと向かうが、004の自爆から仲間を救う為に負傷していたマッハは、バンノスピンキックを受け、変身解除。生身となった剛を助けようとするチェイサーもまた、バンノの猛攻によりドライバーーを破壊されてしまう。
「おまえは私の恥だ……醜く、死ぬがいい!」
(ごめん、姉ちゃん……)
信号アックスを振り上げて剛にトドメを刺そうとするバンノ、血を分けた実の子供も研究の成果物も悪い意味で同列に扱い、それを含めて他者を従属物としてしか見ない悪逆無道さを、“子”を支配しようとする“歪んだ父性”などにまとめ上げるなりすれば、まだキャラクターとしての立体感が出たのですが、とにかく、「この物語における“悪”」としての意味(位置)づけが与えられていないので、その場その場に応じて酷い事を言う、ただなんとなく“悪い人”にしかなっていないのが、つくづく残念。
これならまだ、変質的なこだわりで一点突破とかの方がキャラクターとして成立するのですが、ケタケタ笑うにしろ癇癪を起こすにしろ紋切り型にしかならず、前回ラストからは、とにかく高笑いを続けていれば悪役っぽく見えるだろうレベル(その幼児的な薄っぺらさ、底の浅さこそが蛮野天十郎である、という解釈は親切に過ぎると思いますし)。
そんなバンノに無惨に薪割りされそうになる剛だが、飛び出したチェイスが咄嗟に魔進チェイサーになるとその身で斧を受け止め、剛をかばって致命傷。
「……これでいいんだ、剛。霧子が愛する者達を守れるなら、本望だ」
プロトドライブではない、仮面ライダーチェイサーとしての“生きる意味”が繋がる事そのものは悪くなかったのですが、なにぶん、前回の今回で用が済んだのでお片付けみたいなペースで風情皆無この上なく、チェイスの主題をぶつ切りにしてしまったのも悔やまれます。
顔は好みだったし、持っている主題も好き方面で期待していたのですが、キャラクターのポテンシャルを活かし切れなかった感があって残念。
「人間が俺にくれた……宝物だ。俺とおまえはダチではないが……持っていてくれ。燃えてしまうと……もったいない」
免許証とシグナルバイクを剛に託したチェイスは、金ドライブにしがみつくと自爆し――ナンバー000、消滅。
◆第46話「彼らはなぜ戦わなければならなかったのか」◆ (監督:柴崎貴行 脚本:三条陸)
「ふざけんなよ……こんな死に方迷惑だろ……馬鹿野郎。……誰もこんなこと望んじゃいねぇよ……」
チェイスの死に打ちひしがれる剛だが、当然無事だったゴルドドライブが、爆炎をかきわけて登場。
「プロトゼロは無駄死にした。愚か者のすることは全て――無意味なのだ」
「だったら……てめぇの存在も無意味だな」
「あぁ……?」
「人間じゃねぇ奴が、こんなに優しいのによ! ……腐りきったおまえの心こそ、一番愚かだ!」
チェイスを「人間」として扱うのではなく、あくまで「人間じゃねぇ」が人間に向けた「優しさ」に心を打たれ、元人間ではあってもバンノこそ「腐りきった」存在だと改めて指摘するのは台詞回しも良く、剛の感情の乗り方は悪くないのですが……同時に、この盛り上がりの波になぜ進ノ介は居ないのか、という気になります(笑)
病院を抜け出した霧子は降り始めた雨に嫌な予感を覚え……ゴルドドライブに蹴り倒されたマッハは、ダチと認めたチェイスの遺したシグナルバイクを用いると、紫色の怒りの炎を纏った、仮面ライダーマッハチェイサーへと変身する!(チェイサーのボディに、マッハの上装甲の組み合わせ)。
追跡! 撲滅! いずれもジャスティス!
マッハチェイサーは、バンノドライブさえ捉えられない超高速で移動すると、怒りのラッシュ攻撃を浴びせ、苦し紛れに金ドライブが手にした信号アックスとチェイサー銃を「返せよ! それは俺たちの武器だ!」と取り戻し、更なる攻撃。
「許さん……許さんぞぉぉぉ!!」
「俺もだ!」
両者の必殺キックが空中で衝突すると、守護霊チェイサーの後押しが拮抗を崩し、消し飛ぶ006、そして吹き飛ぶバンノドライバー。
勝負あったところで駆け付けた霧子がチェイスの死を知る一方、上層組の3人は立ちふさがる死神ミュード部隊を撃破。更に、追田&りんなが外部からバリアを解除した事でシグマへの道が開けるが、何故か一息ついて変身を解除し、メディックの再生能力が失われている話とか、チェイスの死を伝える霧子からの電話をのんびり受けている内に、案の定、最終進化を遂げてしまうシグマサーキュラー(笑)
……いやまあ、悪い意味でありがちな展開とはいえますが、前回から、事態は一刻を争う! とやってきたのに、のんびり立ち話を始めるのはあまりに酷く、もう少しどうにかならなかったのか。
前回前半の映画的構成マジックは悪くなかったのですが、突入後はどうも平板な画面構成が目立ち、画面上に持て余した人数が居心地悪そうに立ち尽くす、《平成ライダー》の良くない演出パターン。
「これは、まさか……!」
「ふふふ、ひゃーはははははは!!」
地下では剛と霧子も事態の変化に気付き、半壊したドライバーの中でけたたましい笑い声をあげるバンノ。
「間に合ったようだな。シグマは私の意志を継ぎ、計画を実行する」
データの再構成による再生を目論むバンノだが、剛が信号アックスを手に近付くと見苦しく命乞いを繰り返した末に、薪割り返しを受けて木っ葉微塵に砕け散り、これは良い最期でした(笑)
「さよなら、父さん……俺の未練」
どうやら剛の中には、ロイミュードを徹底的に悪とみなす事により、父親を「被害者と捉えたい」心理もあったようで、その未練を断ち切り人類悪として父を倒す最後の後押しをしてくれたのが、人外の存在ながらダチとなったチェイス、と一回りするのは、トドメの武器がアックスなのも含めて綺麗に決まりましたが、やはり肝心のバンノが書き割りのような悪役なのが致命的に足を引っ張り、物語を劇的に跳ねさせるには、諸々の助走が足りませんでした。
上層組はシグマの元へ突入しようとするが、メディックがシグマどんよりに対応できず、突撃したドライブとハートの前にその姿を見せる、大怪球サーキュラーーーーーー!!
「プログラム・シグマ、完全起動、完了」
「こいつは!」
サーキュラーがそのまま巨大化していたらどうしようかと思いましたがそんな事はなく、超進化シグマは機械じかけの天使めいた、途中でSF設定が出てくる系ファンタジーRPGのボスっぽいデザイン。
「シグマの、最終進化体だ! 一歩遅かった!」
ただでさえ、無駄な立ち話問題が発生しているのに、どうしてわざわざ、台詞で念押しをしてしまいますかね……。
「自分の子供もロイミュードも、失敗作と切り捨てた蛮野が、最後に生んだ跡継ぎが、この化け物か!」
超進化を遂げたゼンカイシグマは全世界の静止と人類全てのナンバリングとデータ化を開始し、第二のグローバルフリーズの中で、人類は次々とデータに変換されていく……剛から託されたデッドヒートを手に上層を目指す霧子に、データ化の恐怖がフラッシュバックするのはいい趣向で、次回に効いてほしい要素です。
ドライブとハートはゼンカイシグマの動きに翻弄され、敵が超進化ロイミュード4体分のパワーなら、二人で全力を二倍ずつ出せば合計で4人分だ! と脳細胞がガス欠だぜな事を言い出すドライブだが……勿論、勝てませんでした。
そこに遅れてやってきたメディックが残り全てのエネルギーを用いて“白い女神”の姿となると、床に倒れる進ノ介を治療。
「今ならわかる……ブレンの気持ち。……ハート様と、あなたの勝利を信じます。…………ごきげんよう」
力を使い果たしてメディックは消滅し……すみません、『ビルド』以来、死者の体がキラキラ光に包まれる演出されると反射的に噴き出す癖がついてしまって、本当にすみません。
「メディックーーーーー!!」
「……うぉぉぉぉぉ!!」
絶叫した進ノ介は瞬間変身でシグマの攻撃をガードし、散華したメディックを象徴するがごとき白い花びらが舞い落ちる中、純白の輝きに包まれたドライブTRが立ち上がる姿は格好良かったのですが……
「見せてやる――俺たちのオーバードライブを!」
メディックと?!
病室でケーキのドカ食いをしている間に、足下が流砂のように崩れ落ちていく霧子さんの明日はどっちだ! これが、勝ったと思う時が負けた時なのか!
物語がまとめに入って退場者がザクザクと出ていくのですが、この最終盤、テロップを乱発し、いい所を全部流し、ここが泣きどころです! とアピールしてくる次回予告にうんざりしつつ、ラスト2話。