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邪悪そして邪悪

ウルトラマンコスモス』感想・第39-40話

◆第39話「邪悪の光」◆ (監督:根本実樹 脚本:大西信介 特技監督:佐川和夫)
 最新鋭機テックスピナー1号のテスト飛行中に迫り来るカオスヘッダーさん。その狙いはウルトラマンコスモス――ムサシ!
 いよいよコスモスを明確な“敵”と認識したカオスヘッダーが直接攻撃に出る一方、ヒウラ、シノブ、ドイガキは、防衛軍のカオスヘッダー対策会議に出席し、様々なデータを提供していた。
 「気になるのは、彼らが人間に乗り移る事を覚えてから、意志を持ち始めたように思うんです。得た情報を交換しつつ、なんらかの目的を持って動いているような」
 「目的? どんな?」
 「……残念ながら、それについては、まだわかっていないんです」
 あくまでドイガキの見解、という形ですが、これまで不明瞭だったカオスヘッダーについて、意志を持って活動をし始めたのは最近になってから、という事にされ、そのカオスヘッダーはトレジャーベスに侵入すると再びムサシを襲撃。
 「ウルトラマンコスモス、おまえの力を貰う」
 遂に自らの意志を明確にしたカオスヘッダーがムサシの体に取り憑くと、コスモスをコピーした偽のウルトラマン、赤い瞳で青黒ボディでトサカ頭のカオスウルトラマンが誕生。
 今作単位でも、ルナvsルナはやっていますし、20年後の現在に見るとウルトラマン対決のインパクトは弱いのは仕方のないところですが、カオス番長のトサカに対し、こちらもリーゼントを整えたコスモスの、スペース鶴拳とスペース鶴拳の対決となり、互角の攻防の末にカラータイマーが……カオスの方も鳴った(笑)
 弱点までコピーしていたカオス番長に荒ぶる鶴の構えから必殺光線が炸裂するが、トドメの一撃を回避されたコスモスは、反撃を受けて電池切れ。変身の解けたムサシはカオス粒子に飲み込まれ……つづく。

◆第40話「邪悪の巨人」◆ (監督:根本実樹 脚本:川上英幸 特技監督:佐川和夫)
 フブキは囚われのムサシを発見し……どうしても『ガイア』の、「次元の彼方へキャプチャーされていく我夢の、売られていく子牛のような表情」(第41話「アグル復活」)を思い出してしまいます(笑)
 一方、地底から新たな怪獣が出現すると、再び姿を見せたカオスウルトラマンは怪獣をカオス化して手駒とし、更に鏑矢諸島へと飛ぶ最悪の事態が発生。チームアイズがこれまで保護してきた怪獣を一挙に不良軍団にしてしまおうと鏑矢諸島上空に現れる悪のウルトラマン、は物語の反転として面白い構図……だが、カラータイマーが鳴った!(笑)
 明らかに不必要な弱点までコピーしてしまったカオス番長は、コアとなっているムサシ球体の元へと帰還し、アイズと防衛軍はこの事態への対応を迫られる。
 ウルトラ拳50倍を身につけたカオス番長の存在により、鏑矢諸島の全怪獣が地球人類の脅威となる事が指摘され……防衛軍の対応が物凄く冷静かつ丁寧になっているのですが、裏で凄い額のお金が動いたのでしょうか。
 もはや、侵略宇宙人に成り代わられているレベルですが、トーンとしてはこれぐらいの方が安心して見られます(むしろ今までが、侵略宇宙人の擬態だったのか……そういえば、前々回、異星人の侵略を阻止したような……)。
 (このままだと……ムサシも、鏑矢諸島の怪獣たちも……救う事はできない。どうすればいいんだ……)
 24時間の猶予を勝ち取ったキャップの葛藤が珍しく描かれ……
 「ドイガキが、何か考えついてくれればいいんだが」
 丸投げされた(笑)
 その頃、囚われのムサシはイメージ空間の中でコスモスさんから状況の説明を受けていたが、そこにカオスヘッダーが乱入。
 「怪獣は仲間。怪獣を助ける。全ての怪獣を仲間に」
 「なんだと?!」
 カオスヘッダーは、コスモス封じの為にムサシを取り込んだ事で妙な影響を受けてしまっており、カオスヘッダー人格の不完全な形成状況を具体的に示すと共に、主人公を支えてきた行動理念が、そのまま敵性存在に行動目的を与えてしまう皮肉は、面白い流れ。
 ドイガキの手により完成した新型抗体弾をムサシ球に撃ち込むフブキだが、怪獣が再出現。カオス怪獣は防衛軍が処理する、と一方的に通告されるも、あくまで保護を優先しようとするアイズだが、なんかもう、発電所が派手に吹き飛んでいるし、処理が妥当じゃないですかね……。
 とはいえ、シリーズのカタルシスとしては致し方ない面もある、というところで抗体弾の効果によりカオスヘッダーから解放された武蔵はさっそくコスモスに変身し……シリーズ従来作においては、怪獣災害(異星人の侵略)こそが、時に人類自身の愚かさを原因とするも「不条理な悲劇・やむをえない犠牲」として個人や社会に降りかかった時、それを覆す力こそがウルトラマンであったわけですが、それを踏まえて『コスモス』では「災害として怪獣を処理する事」が覆すべき「不条理な悲劇・やむをえない犠牲」として設定されており、だからこそ、超越的な力に翻弄される怪獣が人類文明にとっての災害となる時、チームアイズの諦めない心に応えて運命を覆す存在が現れる、のは、ここまでの今作で最も納得の行くバランスのコスモス登場シーンでした。
 付け加えるとここに、コスモス/チームアイズが侵略宇宙人には厳しいロジックが含まれていて、「外敵による暴力の打破」は、覆すべき不条理な犠牲ではなく、むしろ推奨。
 かくして降臨した勇者だが、怪獣とカオス番長に挟み込まれ、地面に転がった怪獣を踏み台にしての飛び蹴りは、悪のウルトラマンならではのアクションに。
 形勢不利のコスモスだが、そこにキャップの乗ったテックスピナーが投入され、ドイガキが将棋の成り駒から閃いた捕獲フォームにより、対カオス光線を発射。続けて怪獣にカオス抗体ミサイルを撃ち込むとカオス成分が漂泊されて沈静化した怪獣をレーザー檻で確保し、ようやく、捕獲システムが改良されました。
 3クール目を締める山場という事で、コスモスとアイズの“共闘”もしっかり描かれ、新型戦闘機の存在感も出せましたが、メンバーのリアクションを挟む度に、リーダーとアヤノが基地で棒立ちなのが、惜しい。
 残るカオス番長とコスモスが激突し、今こそ見せよう、ウルトラカラテの秘奥!
 満を持してのイクリプスから、空中で全身の筋肉を細かく震わせるウルトラ超震動により周囲の空間を歪ませる事でカオス番長の攻撃を無効化したコスモスは、超震動三段蹴りにより、カオス番長を撃破。かつてない強敵を打ち破り、怪獣保護にも成功するコスモスとチームアイズだが、フブキがコスモスの正体に疑念を抱き始め……迫り来るローストチキンの危機で、つづく。
 いやまあ、特に秘密契約ではないのですが、ただ今作世界だと、隠しておいた方が無難だし、バレると大変厄介な事態になりそう、なのは割と頷けます(笑)
 脚本の川上さんには、劇中の要素を拾い集めてまとめていくのが巧いイメージがあるのですが、その巧さが出て、山場の前後編の後編としては、満足の出来でした。
 次回――まさかの再登場から、またも侵略破壊メカ、来る。