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ざっくりドライブ

仮面ライダードライブ』感想・第41-42話

◆第41話「黄金のドライブはどうやって生まれたのか」◆ (監督:山口恭平 脚本:長谷川圭一
 チベットスナギツネみたいな顔をしたバンノドライバー(-|-)が宙にふわふわ浮かんでいる絵面がほぼギャグで、登場シーンの緊迫感を軒並み灰燼に変えていくのですが、もう少しどうにかならなかったのか。
 それ以外でも、顔芸からブレンの扱いから効果音の入れ方から画面処理から、至るところで演出がくどすぎて心が萎えるレベルで、話がどうこう以上に、映像が辛い。
 この後、『魔進戦隊キラメイジャー』(2020)ではメイン監督としてビシッとはまった演出を見せてくれた山口監督ですが、今作に関してはどうにもこうにも、ブレーキを見失っている感があり……これは前回、ストーリー展開について触れた部分とも繋がるのですが、『ドライブ』全体の見せ方として、これ以上は崩さないという一線、作品としてのボトムラインといったものが見えず、結果として悪ふざけが際限なく侵食していく事で、後になるほどに作品の底が抜けてしまっているように思えます。
 グローバルフリーズの夜、一度はプロトドライブにより全滅したロイミュード(ええー)が、白い女神――メディック?――によって再生されていた事が明らかになる一方、006の体をあっさり奪い、黄金のバンノドライブが誕生。
 超進化体に限りなく近付いていた006の体を奪ったから実質超進化体だ! という理屈はさっぱりわかりませんが、金色なのは超進化カラーという事の模様。
 「家族の、愛? そんものはない」
 「え?」
 「私にとって家族とは、支配すべきものでしかない。愛などというものは。存在しない」
 そんなバンノドライブとマッハが対峙するのですが、そもそも劇中で、かつての蛮野(詩島)家の姿とか1ミリも描かれていないのに、いきなり「家族」語られてもきょとんとします。
 「ちょっと待てよ……じゃあ俺はなんだよ? あんたにとって、俺はなんなんだよ?!」
 「ふふふふふふ、決まってるだろ。研究材料だよ」
 酷い人なのは間違いありませんが、3クール分の積み重ねとほとんど関係ない酷い人でしかないので、最強最悪の敵めいて描かれるには、あまりにも空疎。
 1クール目にベルトさんの口から名前が出た時点で、(細かい扱いは決まっていないなりに)ロイミュードの開発者とは生前いかなる人物だったのかについて触れておくとか、せめても途中で歩み寄りたい剛がバンノタブレットに「家族」についてどう思うか聞いておくとかあれば多少は違ったと思うのですが、「情報を提示した上でサプライズを積む」のではなく、「サプライズを起こす為に情報を出さない」を繰り返した挙げ句の、物語としては残念すぎる末路です。
 ・ロイミュードはなんの為に生み出されたのか?
 ・ロイミュードの生みの親とは何者だったのか?
 ・かつての剛は父親についてどう思っていたのか?
 この全ての要素が欠落しているので、屋根を置こうにも壁も柱もなく、壁や柱を立てようにも土台がなく、家屋倒壊以前のレベルで、更地に転がったパン屋の看板を指さして、ここは最高級パン屋です、と強弁しているような状況。
 つくづく、進ノ介が「ロイミュードの開発者(開発の経緯)」についてベルトさんに突っ込んで聞かなかった問題は根深く、しかるべき疑問を問い質さない主人公と、それをいい事にだんまりを決め込むその相棒、その二人の曖昧な対応が生んだ傷口が巡り巡って物語の多臓器不全を引き起こす事に。
 個人的にはこの一点を持ってして、進ノ介はキャラクター以前の「ストーリーの傀儡」としか受け止められず、向ける感情でいうと「無」としかいえない主人公になってしまいました。
 中盤以降、進ノ介が何を言っても響かないな……愛着を持ちにくい主人公だな……とは思っていたのですが、理由が言語化できてやっと納得。
 「ふふははははは! 脆弱だな。さっきの言葉を撤回する。研究材料として、おまえの役目は、終わった」
 バンノドライブに攻撃をコピーされたマッハが爆散して、つづく。

◆第42話「女神の真実はどこにあるのか」◆ (監督:山口恭平 脚本:長谷川圭一
 ロイミュードを治療するほどに、治療したロイミュードの感情を吸い取る副作用を持っていたメディックは、その影響で黒衣の魔女と化して性格が歪むに至り、素体となった人間から感じ取った、純粋な愛の感情を求めていた。
 その為に、素体となった人間の意識を取り戻そうと画策していたメディックの目的を知った進ノ介は、意識不明の被害者を救うためにも協力を申し出るが、そこにバンノドライブが出現。
 「これからは、ゴルドドライブと呼べ」
 いきなりトライドロンで轢きにいくベルトさんだが、それを片手でガードしたゴルドドライブは、縦横無尽のコピー能力でドライブとチェイサーを軽々と蹴散らすと、ブレンとメディックを連れて姿を消し、雑に瞬間退場。
 「蛮野はあっさり否定しやがった。家族の愛を……奴は俺たちの父親どころか、人間ですらなかった」
 大荒れの剛、あれこれと積み重なった上での数え役満という事なのでしょうが、台詞だけだと、「家族の愛を否定」=「人間じゃねぇ」とも取れて、物凄い過激派(笑)
 「やっぱり……倒すしかないんですね」
 「辛いだろうが、それが現実だ」
 「覚悟は出来てる」
 ……いや、そんな葛藤、これまでどこにも無かったですよね?
 前回同様、蛮野家の事情が1ミリも描かれていない為に「打倒・父」に特段の重みのない月並みなやり取りだけがかわされ、そこに固有の意味を持たせるのが「物語」だと思うわけなのですが。
 進ノ介も進ノ介で、「父」の影響を深く受けているというのなら、何故もっと早くに剛に親身にならなかったのか、今この状況で霧子&剛と向き合わないのか、それならなんの為の主人公なのか? となるのですが、ストーリー展開に都合の悪い感情や疑念はオフにされる仕様です。
 バンノの改造手術を受けたメディックが超進化に成功するが、同時にバンノの細工により瞳からハイライトが消えると、ハートへの忠誠心を肥大化したままバンノの操り人形と化し、ハートの事を想いながら、バンノの命令通りにハートを攻撃。
 ゼンカイメディックの攻撃から進ノ介たちをかばったハートはバンノに連れ去られ、ロイミュードのリーダーとなろうとするバンノは、自分も含めて4体で“約束の数”を宣言すると、やるぞ第二のグローバルフリーズ! と盛り上がるが、事態を予測していたハートは一手早くブレンを逃走させていた。
 今作にしては貴重な、初期から生きている伏線である“約束の数”ですが、「約束」という事は誰か“約束した相手”が存在するのではと思うのですが(……ロイミュード同士の努力目標なのか??)、今以て全く触れられないまま、つづく。
 あ、後、「家族の愛」を理解したチェイスが、今度は「個人間の愛」に興味を持ち始め、次回――霧子さんの無自覚乙女ゲーライフに激震走る。