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さらば、ギンテイジャー!(前編)

地球戦隊ファイブマン』感想・第45-46話

◆第45話「敵基地突入」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
 星川兄妹が不眠不休でSFロボの修理に励む一方、土俵際からの大逆転で艦長の座に返り咲いたガロアをこぞって持ち上げるギンテイジャーの面々だが、一足先に打倒ファイブマンの切り札となる謎エネルギーを利用したシュバリェが、銀河化石よりイワカセキギん(いわ/じめん)を誕生させる。
 「ガロア、おまえがトドメを刺し損ねたファイブマンは、この俺、シュバリェが倒してみせる」
 「なにぃ?!」
 「――銀河にヒーローは、一人。ふっ」
 立場が悪くなっても徹底してキザを貫き、あくまで銀帝軍のヒーローと自らを見立てるシュバリェの矜持は、仇役として実にいい味。
 「シュバリエ、この星の長い歴史の中で、悪が栄えたためしはない!」
 「ふっ、その歴史を今、造り替えてやるのだ」
 どこまでも憎々しげかつ冴えた台詞回しでファイブマンとの決戦に望んだシュバリェは、岩化石ギンの能力により鉄壁を誇る岩石生命体ロックマンを作り出し、その必殺攻撃“いしのなかにいる”により、ピンクが石化。
 「みんな俺の戦いの記念碑になるのだ! 花ぐらい添えてやるぜ」
 ロックマンにより桃が岩塊の中に投げ込まれると、石化した頭部が表面に浮かび上がる映像がなかなかにショッキングで、これまで散々ファイブマンを苦しめてきたシュバリェ渾身の作戦として十分なインパクト(そしてもしかして、後のあの人はこれのオマージュだったのか?)。
 残った4人はテクターパンチでロックマンを粉砕……するが、なんとそれは即座に再生し、青黒黄も次々とテレポート失敗攻撃の犠牲に。
 ――これぞまさしく、銀河ヒーロー流・“勝手にお墓”返し!!
 ただ一人残った学もロックマンに拘束されて風前の灯火のその時、地球に落下した謎の岩塊が学の窮地を救い、その人型を思わせる塊の正体は、銀河の困った暴れん坊、グンサー(あく/かくとう)!
 予告で見せる事により唐突感の減じるメタ力技でしたが……強引に解釈するなら、シュバリェがバルガイヤーに銀河化石を引き寄せた際に、ついでに牽引されてしまったのでしょうか。
 バールギンが倒された事で呪縛が弱まっていたのか、力尽くで石化から復活したグンサーは、前回登場時に言い損ねた「おまえたちの両親は生きている」と衝撃の情報を伝え、友情パワーで学を援護。
 「貴様いったい何者だ?!」
 ……そういえば、知らなかった。
 「宇宙の暴れウルフ、グンサー!」
 あまりにも違う芸風に、ペースを乱されそう、と判断したのか、シュバリェはパラボラ宇宙船に学を回収するが、グンサー、ひとっ飛びで宇宙船の外壁に掴まった(笑)
 「学、今伝えてやる。両親の事を……!」
 暴れん坊・武器が棒・鬘と化粧の方向性・岩から復活・改心してからは頼れる仲間に……となんだか孫悟空めいてきたグンサーが貼り付いているとは夢にも思わず、学を捕虜にしたシュバリエは高笑いでバルガイヤーへと帰還。
 「最後のモニュメントは、やはりメドー様の御前で作ろうと思ってな」
 ガロアらの前で勝利に酔い痴れるシュバリェだが、バルガイヤーに乗り込んだグンサーは次々と戦闘員を蹴散らし、やたらに活躍(笑)
 更に、勢いよく謁見の間までズカズカと乗り込むも、一足遅れで学が岩の中に放り込まれてしまうと、えいやっと学岩にチェーンを巻き付けて背負って逃走(笑)
 第19-20話登場時の行動(実質小学生への暴力行為からレー・バラキ案件まで)があまりにもイメージの悪かったグンサー、復活するや怒濤の大暴れにより悪いイメージを払拭、とかそういった段階を越えた別次元の面白さに到達してしまっているのですが、思えばシリーズ枠消滅の可能性も取り沙汰されていた時期であり、デンジロボより約10年、《スーパー戦隊》の一つの顔といえる巨大ロボを演じ続けてきた日下秀明さんのスペシャルタイムの意図もあったのかもしれません。
 学岩を背負って脱出を試みるも謎の触手に掴まり追い詰められるグンサーだが、
 「学、幸運を祈る!」
 蹴った(笑)
 果たして銀河のヒーローは誰だったのか……苦し紛れのひと蹴りはまさかの6ゾロクリティカルを叩き出し、ゴロゴロと転がった学岩は、なんと例の穴の中に吸い込まれると、謎の溶解液を浴びた事で石碑コーティングが溶け、学復活。
 辺りの様子から何かに気付き、変身したレッドが床を突き刺すと野太い男のような叫び声が響き渡り、穴の中から弾き飛ばされたレッドは、必殺ファイブテクターにより岩化石ギンを撃破。そして、居並ぶギンテイジャーの前で艦内の壁に向けて剣を投げつけると、崩れ落ちた内壁の下から、まるで生物の内臓のように脈打つ肉塊が!
 銀河戦艦バルガイヤーは、これ自体が、一つの巨大な生命体なんだ」
 アイデアそのものは、某ラスボスの縮小版といった感もあり今ひとつの面白みでしたが(もう少し布石も欲しかったところですが、これは当時の作劇の限界を見るところ)、明かされた正体の描写に『バトルフィーバーJ』の怪人製造カプセルを思い出して少し懐かしかったです。
 「おまえ達は騙されていたんだ!」
 自分たちが乗り回していたものの異様な姿におののくギンテイジャーは、再び赤が鼻息に吹き飛ばされたところで、メドー様にお伺い。
 「メドー様、一体どういう事なのですか?!」
 「おまえ達が一つの星を滅ぼした時、その星には、死のエキスが溢れる。バルガイヤーはそのエキスを密かに吸っていたのだ」
 「我々はバルガイヤーの為に、星を滅ぼしてきたとおっしゃるのですか?!」
 「そうだ。バルガイヤーを育てる為にだ。そして今、バルガイヤーは脱皮して、自ら大変身を遂げるのだ」
 バルガイヤーが要塞モードで地表に“突き刺さって”いた理由が明らかとなり、バルガイヤーを発進させたメドー様は、地上に大攻勢。
 「バルガイヤーは自らの力で地球を滅ぼす。そしてその暁にこそ……あはははは! あはははははは! あはははははははは!!」
 爛々と瞳を輝かせたメドーは狂笑をあげ、その迫力に飲まれるギンテイジャー。
 ナレーション「驚くべきバルガイヤーの正体。果たして、バルガイヤーはどうなるのか。そして、学とグンサーの運命は如何に」
 とうとう、学と同列に扱われたぞグンサー! どういう扱いの良さなんだグンサー! でも、次回予告で力強く殺されたぞグンサー!

◆第46話「父母の行方」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
 迫り来るバルガイヤーによりニュータウン小学校が再び消し飛ぶかと思われたその時、子供達の育てていたシドンの花から花粉が舞うと、それを浴びたバルガイヤーの中でメドー様が凄い顔で苦しみ出すのは、おお! という展開。
 「あれは! あんなところにシドンの花が」
 メドーが苦悶の声をあげると地球を瞬く間に蹂躙するかと思われたバルガイヤーは地表に墜落し、ゾーン幹部まるまる残った状態で、バルガイヤーの正体判明により忠誠度大幅減の雰囲気・バルガイヤー直接攻撃が始まってギンテイジャー用済み感MAX、でどう始末をつけていくのかと思ったら、意外な弱点を物語の始まりと繋げながら、ギンテイジャーが動くに足る状況に持ち込むのは、実に鮮やかな流れ。
 そして、傾いだ状態で地面に突き刺さったバルガイヤーから、枠線付きのメドー様が逆さまに虚空に映り……あ、あれ? 配信始まっちゃってる?!
 「ふふふふふ、遂にバレたか」
 「誰だ?!」
 「バルガイヤー」
 そう、銀河に名だたるカリスマ、麗しの銀河皇帝メドー様の中の人は、中年の引きこもり男性(イメージ)だったのです!
 「こんなものに騙されていたとは! こんなものに、我が人生の全てを懸けてしまったとは! 私の……私の人生はなんだったのだ?! …………銀河博士ドルドラ……いったい何をやってきたのだ!」
 あまりにあまりな推しの正体を受け入れられないドルドラは、パニック状態で中の人に罵声を浴びせると座り込み、この辺りはどうしてもアハメス様の二番煎じっぽくなってしまうところがありますが、兜を投げ捨てると甲高く笑い続けながら髪を振り乱すのは、まさに、狂女、といった演出。
 「ふふふ、おまえの悩む姿を見るのは忍びない。可愛いドルドラよ、今楽にしてやるぞ」
 ドルドラに向けて艦内の触手が伸びると、思った以上に忠誠度の高かったザザがドルドラを助けようと駆け寄るが、二人まとめて銀河エネルギーを注ぎ込まれ、合体銀河闘士バラドルギンが誕生する!
 どうせならドルザザギンでも良かったのでは、と思いましたが(ザザ分は、ボディカラーに採用)、長石監督らしい見せ方により凄惨さの中にどこか色気を漂わせていたドルドラが、一瞬で無機質でメカニカルな姿へと変貌するギャップに加え、前頭部から薔薇が生えているのが操り人形感を増して、非常にえげつない誕生シーン。
 シドンの花を人食い花に変えろと命令を受けたバラドルは出撃し、天井裏に潜んで一部始終を目撃していた学はそれを止めようとするが、その前にはビリオンが立ちはだかる。
 「貴様の行く手に出口は無い。地球と人類の未来にも出口などないのだ!」
 ドルドラの末路を目の当たりにした事で学との一騎打ちにこだわるのは納得のいく流れであり、台詞回しは相変わらず格好良く、クール系ライバル剣士としてデザインも悪くないのですが、いったいビリオンには何が足りなかったのか……ブルーか、ブルーが悪かったのか……?
 「貴様等こそ、こんな化け物が神となる世界に、未来があると思っているのか?!」
 「ふん! 俺は酒と剣に生きるのみさ」
 酒かぁ!!
 だいたい、酒に手を出す悪の幹部は碌な事にならないと相場が決まっているのですが、実力はそこそこのビリオンが学を足止めしている頃、バラドルがデビル化したシドンの花が子供達を襲うが、そこに駆け付ける青桃黒黄のファイブマン
 「早く、シドンの花を始末しろぉぉ!!」
 ファイブマンの血を吸ってデビルシドンの花弁は赤く染まっていき、地面に突き刺さった状態で、ピクピク羽を動かす戦艦、はなかなか珍しい画(笑)
 ビリオンに追い詰められていた学は墜落の衝撃で触手の拘束を逃れた銀河ウルフに助けられ、ニュータウン小学校ではシドンの花の最後の一鉢を手に駆け出した教え子の少年をバラドルが追い、少年の窮地を救ったのは、スピンキック学。
 「タツヤとシドンの花には、指一本触れさせんぞ!」
 辛うじて教え子を救う学だが、バラドルの蔦に拘束されたところに迫る、ビリオン必殺の白刃!
 ――だがその時、グンサーが友情カバーリングでその一撃を受けると、「両親の事を伝えるまでは死ねん!」と、土手っ腹と口の端から血を流しながらもビリオンを殴り飛ばし、学を解放すると、崖から落下。
 学、そして合流した星川兄妹は瀕死のグンサーを助け起こし、グンサーが「銀河系P16惑星」で星川夫妻と出会い命を救われるも、夫妻が開発していたスターファイブに目がくらみ、それを奪って逃走した大変駄目な過去を告白される。
 「俺は悪い男だ……」
 そうですね!
 「グンサー、そのスターファイブのお陰で、俺たちは助かったんだ」
 「……そう言って貰えると嬉しい。……祈ってる。両親と、会える日の来る事を」
 直観と欲望で動きすぎのグンサー、最終的には、無法者が惚れた兄貴分の為に命を懸け、自らの仁義を通して散るという、銀河任侠な感じで、死亡。
 基本的に大変困った人をなんかいい感じにまとめようとして、このロジックが出てくるのが東映のDNAといったところでありましょうか。
 ……それにしても、地球帰還の為の宇宙船を、戦闘ロボットとして作成していた星川夫妻、シドン星の悲劇とか、ゾーンの支配する宇宙の危険度の高さとか、妻を取り戻すまでの大冒険とか、スターファイブ完成にこぎ着けるまでに人格が変わっても仕方のないような事が色々あったのでしょうが、今頃、銀河系P16惑星で、現地で確保できる生体パーツをメインにした宇宙戦艦とか作り出していないか心配です(つまり、メドー様のモデル=星川緑説)。
 「……ありがとう。……ありがとう、グンサー……」
 そんな大宇宙の新たな悪魔を解き放ってしまったかもしれないが、己の過ちを認め、命がけでレー・バラキ案件を克服したグンサーの生き様に星川兄妹は惜別の感謝を述べ、そこにしつこく現れるビリオンとバラドルギン。
 「……グンサーも一人じゃさびしかろう。おまえたちもグンサーの側へすぐに送ってやるぜ」
 「グンサーの死は無駄にはしないぞ。この星に生きとし生けるもの、花一輪さえ守り抜いてみせる! ――ファイブマン!」
 ここの啖呵は大変格好良く決まり(「花」の意味づけの重さがまさに『ファイブマン』なので)、5人は変身。それを子供たちが目撃するが、特に正体を隠していた記憶もないので、これはまあ、なんとなくレベルのフレーバー。
 赤はビリオンと激しい一騎打ちを繰り広げ、残り4人はその背後で蔦につるされ、前回今回と、青以下の4人の扱いが悲惨ですが、何もかもグンサーが悪い。
 今日は絶好調のビリオンだが、炸裂する星川流スピンキックに吹き飛び、事ここに及んでも特に因縁はないので、命のやり取りの真っ最中に笑いながら酒瓶を呷る剣鬼の姿を徹底する事で、盛り上がりを捏造(笑)
 熾烈な死闘は続き、不意にマントを外すと赤の視界を奪う必殺の奇襲戦法を放つビリオンだが、振り下ろした剣はファイブレッドの骨を断つには至らず、逆にその腹部を赤の剣が貫く!
 ビリオンが赤に巻き付けたマントを外すと、赤はファイブテクターを装備する事でビリオンの斬撃をギリギリで受け止めていた! のは、互いの小道具を活かして大変格好良く、因縁は薄いなりに、魅せる一騎打ちとなりました。
 「レッドめ……」
 致命傷を受けながらもなお戦意を喪失しないビリオンだが、レッド渾身の飛翔斬りがその剣ごと土手っ腹を貫通し、己の折れた剣を目にするビリオン、の後に頭上に三日月月のカットが挟まるのが、実に長石多可男
 「いい月だぜ…………酒を!」
 インパクトのある断末魔でギンテイブルーが散ると、残ったバラドルはゴルリンに吸収されて巨大化し、修理の終わったスターファイブが到着。なんだか、いい話風にグンサーとの出会いを振り返ると、結界ビームからの二丁拳銃でさくっと撃破され、ギンテイイエロー&パープルも、地球で最期を遂げるのだった。
 本家本元“勝手にお墓”に手を合わせた5人は、銀河系P16惑星に思いを馳せ……急げ星川兄妹、真のラスボスは父親かもしれない!! いよいよ地球の運命を賭けた決戦の気運が高まる中、シドンの花の鉢植えを受け取って、つづく。
 前回ラストの時点では、ゾーンの幹部が残りすぎてどうなる事かと思われたのですが、幹部3人&ゲストキャラを1エピソードでまとめて退場させる、まさかの離れ業。
 その上で、〔序盤(ドルドラ&ザザ)-中盤(グンサー)-終盤(ビリオン)〕と、退場キャラのクライマックスを三つに分ける事で全体にバランス良く緩急をつけてみせたのが、お見事。
 結局、渡辺脚本回(第40話)の要素は拾われなかったビリオンの最期ですが、第40話を拾うならビリオンを合身銀河闘士にする方がふさわしく、しかし同じエピソードに詰め込むのならば、ビリオンにはそのまま一騎打ち、ドルドラはじっくり苦悶を描いてからザザとセットで処理、の方が画として面白いのは納得で、この辺りは戦隊シリーズの難しいところでありましょうか。
 ドンゴロス辺りはさすがに雑になりそうな気配濃厚ですが、残りメンバーとの決着を、どう盛り上げてくるのか期待したいです。
 次回――空はひび割れ太陽は燃え尽き、ヒーローになる時、それは今。