『ウルトラマンコスモス』感想・第38話
◆第38話「オヤジ星人」◆ (監督:市野龍一 脚本:増田貴彦 特技監督:鈴木健二)
SRCの研究エリアに宇宙から落下する怪物体。時を同じくして、市街地でキャッチされる微弱な怪電波。そして、未成年者略取の罪で逮捕寸前に陥る怪人物――ムサシ。
押しの強いゲスト父娘に振り回されて、これが《平成ライダー》だったら取調室行きだった!×2を体験するムサシ受難の回で、どちらかというと誰が相手でも物怖じしないムサシが、マイペースな中年男性に翻弄され、ベテラン赤星昇一郎さんとの絡みで右往左往するのは、役者さんの芝居の幅を広げて、良かったポイント。
巨大なテトラポットのような怪物体は研究施設の地下からエネルギーを吸収すると姿を消し、続けて発電所から電力を強奪。
テーマ的にはどうも肌に合わない『コスモス』ですが、無機物系の怪獣デザインは全体的に好みに合い、今回のテトラポットも良い感じです。
面識を得た草野が防衛軍特務部隊の監視対象と知ったムサシは独自に尾行をするが、怪電波の発信源である工場に忍び込んだところ侵略宇宙人に拘束されてしまい、敵がコスモスの事を知っていたり、まんまと主人公が捕まったりと、今作では珍しい、正統派の侵略もの。
ムサシを捕まえた宇宙人は草野と親しい警察官であり、コスモステッキを失ったムサシが絶体絶命のその時、割って入って警察官を射殺したのは、草野。
「頼む……私の家族を、守ってくれ……!」
草野もまた、地球人に紛れ込んで地球侵略の為の情報収集を進めていた宇宙人だったが、地球で暮らす内に家族への愛情に目覚めてしまい、非常にオーソドックスな展開ですが、冒頭で確執の描かれた父娘の関係が、「思春期の娘への距離感が掴めない父親」「そんな父親に鬱陶しさを示すも本心では愛している娘」で、特に劇的な出来事もなくさくっと解決してしまったのは、少々肩すかし。
草野からステッキを受け取ったムサシはコスモスに変身し、侵略生命体は撲殺だぁぁ!!と、いきなりコロナ。
人型となり、両腕に火器を持った侵略ガンマン兵器との、一ひねりした西部劇風バトルとなり、未使用のBGMありきだったのか、この戦闘の為にそれっぽいBGMを用意してもらったのか。
射撃戦でコスモスを圧倒した侵略メカは、なんと自ら火器を収納すると、来いよ? と、まさかの格闘戦を持ちかけ、謎のキャラ立ち。
調子くれてんじゃねーぞオラぁ! と殴りかかるコスモスだが侵略メカの装甲の前にも手も足も出ず、いよいよ大ピンチのその時、草野から侵略メカの弱点が首と教えられ、渾身の空手チョップ! そして飛び蹴り! たまらず苦悶する侵略メカにトドメのフライングウルトラパンチが炸裂し、コスモスは辛うじて、かつてない強力チャレンジャーを打ち破るのであった。
母星の裏切り者となった異星人は草野の体を解放して宇宙に去って行き、それをにこやかに見送るムサシですが……それなりの期間(「家族への愛情」を「母星への忠誠」より優先する程度には)「草野の人生」を奪っていた事と、同じく地球人が憑依されていた可能性が高い警官を射殺した事を考えると、愛を知って改心した侵略者が地球を守ったいい話、として笑顔で終えて良かったのかは、ちょっと疑問が。
まあ、裏切り者としての逃避行の未来も明るくは無さそうなのですが、草野の肉体は解放されるも、異星人はなんらかの形で消滅する方が、帳尻としては納得が行き、着地のバランスが引っかかってしまいました。
次回――今始まるスペース番長対決! 本当のワルって奴を教えてやるぜコスモスさんよぉ!!