『地球戦隊ファイブマン』感想・第29-30話
◆第29話「合身vs合体」◆ (監督:蓑輪雅夫 脚本:曽田博久)
今回は格好いいサブタイトル。
「ふふふ、貴様等も、このバルガイヤー初代艦長シュバリェ様にかかれば、敵ではない。ここにまた一つ、不敗の神話が生まれるのだ」
初代艦長シュバリエは、無重力シャボン玉を吐き出すカニギンを星川兄妹にけしかけ、さすがにオペラ調は継続しなかったものの、ちょっと抑揚に癖を付けて独特の台詞回しは維持。
ファイブマンが変身すると、「抹殺」の声に合わせてギンガマンが5人に襲いかかってコーラス要員だけではないアクションを見せるが(同時に、シュバリェとの直接戦闘を安売りしていないのが上手い)、そこに現れたアリギンが何故かカニに溶解液を浴びせると、弱ったカニをバルガイヤーへと拉致していき、冒頭から早速、内輪もめ。
「帰ってきたぜ、バルガイヤー」
それを追ったシュバリェが歌いながら基地内に現れてガロアと睨み合いつつ、背後にウインクを飛ばすとドルドラとザザがメロメロになり、ドルドラさんは、ちょっと可愛い路線でも許せます(笑)
「シュバ様~」
その一方でシュバリェとガロアの無言の対峙は格好良く、現役艦長はシュバリェの投げたタロットカードを目にも止まらぬ剣の一閃で両断し、強烈な存在感を放つ悪役の登場により、それと衝突する艦長の株価が急上昇するミラクル(笑)
……いやホント、無能な負け犬として徹底的に情けなく描かれたりしなくて良かったです。
「そんな怖い顔してると……女にモテないぜ」
シュバリェの挑発をいなしたガロアは、ファイブマン殲滅の為の最後の作戦に取りかかると宣言し、生み出される合身銀河闘士カニアリギン!(意識していたかはわかりませんが、左右非対称デザインは、『デンジマン』のベーダー怪物を思わせるところ)
「既にマグマベースの位置はわかっている! 行けカニアリギン! 総攻撃だ!!」
あ、カマキラーギンの情報が、役に立っていた(笑)
「お手並み拝見と、いきますかな」
名前の語呂も良くなったカニアリギンは、合体能力・強酸シャボン玉を使ってマグマベースを強襲し、溶解していく内部機構。
「「もはやこれまでの銀河闘士とは」」
「違うガニー!」「アリー!」
見た目は凶悪になるも微妙にギャグの抜けない合体銀河闘士だが、そのパワーにファイブマンは大苦戦。辛うじて基地の外に叩き出すも、待機していたドンゴロスがゴルリン24号を召喚し、早くも巨大化。
「マグマベースを溶かしたれー!」
巨大カニアリを迎撃しようとするファイブロボだが超次元ソードを折られてしまい、その間にマグマベースに侵入したドンゴロス部隊の破壊工作により、スターキャリア発進不能。
「銀河皇帝メドー様ぁ! ファイブマンの基地の運命はもはや時間の問題。銀帝軍ゾーンの勝利間違いなしです!」
「これまでの賭け金、返してもらわねばな」
ここまでがAパートに詰め込まれる怒濤の展開で、史上最大の窮地に追い込まれるファイブマンだが、ドンゴロス部隊の前に立ちはだかったのは、アーサーG6!
「こっから先は一歩も通さないぞ! アーサーフラッシュ!」
飛び道具、仕込まれていた(笑)
ま、まあ、子守ロボットとしては、不審者への威嚇・迎撃用に銃火器を携帯しておくのは、世紀末TOKYOでは当たり前ですね!
別働隊のベース突入を知った赤は、単身で基地へ向かうとアーサーを助けてドンゴロスを叩き出すが、続いてザザとドルドラに襲われて、変身解除。
アーサーをスターキャリアーへと向かわせた学は、咄嗟に落とし穴のスイッチを発動し、基地の中にダストシュートを用意しておくのは、スーパー戦隊では当然のセキュリティです!
手動でロックを解除してキャリアーは発進するも、学は気絶。青黒桃黄はスーパ合体を発動するが、必殺の高速パンチを回避され、内も外も続く大ピンチ。
「俺を忘れてもらっては困るな」
意識を取り戻した学の前にはビリオンが現れ、ゾーン幹部総出の波状攻撃で、一難去ってはまた一難! と畳みかける危機は盛り上がるのですが、最後の難敵! というよりも、一番弱ってから出てきた! になるのが、ビリオンとてもビリオン。
「無駄な抵抗はよせ。潔く刀の錆になったらどうだ」
「黙れ! マグマベースをただの基地だと思っているのか」
「なに?」
「父さんと母さんの作った基地を、けがした奴は許さん!」
ここでベース(星川兄妹にとっては「ホーム」でもある)と両親の思い出を接続するのは手堅く、学、怒濤の反撃に説得力がしっかりと乗り、飛び蹴りからの猛ラッシュをビリオンに食らわせた学は、体勢を入れ替えると可燃性の極めて高いガスをビリオンに浴びせて爆発と共に排出し、身内を殺さんばかりのセキュリティは、東映では当たり前!
ブリッジに辿り着いた学はマグマベースの武装を解放してファイブロボを砲撃支援。そして……
「合体! マックス・クロス!」
……唐・突。
せめて、ブリッジに辿り着いたら緊急システムが発動したとか、シュバリェの登場に戦力強化を思案していたら隠しプラグラムを見つけたとか、このエピソード内でも良かったので、前振りは欲しかったところ(合体にSFロボが必要=第20話以前の星川兄妹はこのシステムについて知らなかった筈なので)。
ビリオンに向けた「マグマベースをただの基地だと思っているのか」が、気持ちの問題ではなく火力の問題だった、というのも随分と身も蓋もなくなってしまいましたが、気持ちで勝てるならスーパー合体なんていらないですよね! と浮上したマグマベースが分離変形して上半身パーツと下半身パーツに分かれると、その間にSFロボが収まって、ゴーグルロボ似の顔が飛び出し――
「完成!」
「「「「マックスマグマ!!」」」」
…………とっても、箱だった。
忘れた頃にやってきた圧倒的箱感・マックスマグマは、戦艦がそのまま巨大ロボに、のノリで肩の46センチ砲をカニアリに撃ち込むと、続けて全身の砲門を開いての一斉発射で、アリカニギンを木っ葉微塵。
20年前、星川博士は学んだのです。
そうだ、私の植物再生プロジェクトを邪魔する者が現れたなら、圧倒的火力で消し炭にしてやればいいんだ!
「おのれぇぇ……」
乾坤一擲のマグマベース突入作戦に失敗したガロア艦長の頬を、シュバリェの投げたタロットカードが薄く切り裂き、交錯する、白と黒。
ナレーション「シュバリェの出現で、ガロア艦長の闘志は、いやが上にも、燃え盛る。今と昔、二人の艦長が競い合い、地球を巡る戦いは、いよいよ、風雲急を告げるのだった」
前作のスーパーターボビルダーの流れと思われますが、登場時点からそれらしいデザインであったマグマベースの変形により、スーパー合体を越える3体合体ロボが誕生。ロボといっても箱ですが、内蔵した箱に顔があって手足が付いていれば十分に3体合体の人型ロボだよね! という理屈で……いいのか……?
基本的に要塞ロボの系統は好きなだけに、肝心の合体のところでえらく唐突になってしまったのは、物語としては残念でした。
一方で、シュバリェに引っ張られてガロアが浮上し始めたのは好材料。ナレーションもそれを補強してくれたので、ガロアの奮戦には期待したいです。
◆第30話「黒ゴルリン」◆ (監督:東條昭平 脚本:曽田博久)
星川兄妹は子供達とドッジボールを楽しみ、超人的な跳躍から大回転ボールを小学生に思い切り叩きつけた健は、日頃の恨みとばかりに学と文矢に超変化球を投げつけ……ドッジボールで、蹴りを、使うな。
元体育教師として色々ギリギリな健は、「ドッジの帝王」と呼ばれていた過去が明らかになり、激しく大人げないが、小学生には大人気だった。
そんな折、増殖を続ける卵爆弾が街を次々と破壊していき、今回も「HERO」を口ずさみながら、シュバリェが登場。
「では紹介しよう、悪魔の卵の生みの親、合身銀河闘士、イカタマギン!」
どうしてそうなったのーーー?!
右半身が焼きイカ、左半身が手足の生えた卵、という二体目にして随分と珍妙な見た目のイカ玉闘士の放つ悪魔の卵に対抗心を燃やすドッジの帝王だが、敢えなく敗北。卵は爆発する度に2倍に増えていき、2つの卵は4つの卵に、4つの卵は8つの卵に……
「「「「2ばーい! 2ばーい!」」」」
なんだか、こんなCMが、あったような……と思ったら、高見山でしょうか。
ねずみ算式に増えていく爆発卵を前に苦戦するファイブマンの元へ自ら飛来するアースカノンだが、イカ玉はアースカノンのダメージをものともせずに再生し、イカスミ爆弾で吹き飛ばされるファイブマン。
「ガロア艦長、ぼやぼやしていると、バルガイヤー艦長の座、シュバリェに返すことになるぞ」
「ぬぅ……」
「心配するな。その時は雇ってやるぜ」
これは、ム・カ・つ・く(笑)
「おのれぇ、言わせておけば!」
シュバリェの絶妙な挑発にガロア艦長はまなじりを吊り上げ、シュバリエの登場によって摩擦の発生する対象が生まれたガロアがキャラクターとして彫塑されていくのは思わぬ化学反応となりましたが、ここでファイブマンよりもむしろガロア艦長が面白くなってしまうのが、曽田先生らしさでありましょうか(笑)
逆にいえばこれは曽田戦隊の限界であったのでしょうが、悪役サイドは今でも十分に魅力的な一方で、今日的な視点からはヒーロー側の個性が足りない印象は(中盤以降になるほど)どうしても足を引っ張る部分はあり、そこには勿論、当時の“求められているヒーロー像”の問題もあったのでしょうが、シリーズとして突破しなくてはいけない壁になっていたように思われます(個人的に、曽田戦隊で戦隊メンバーの個性が一番印象的なのは、初期作品の『ダイナマン』)。
そう考えると、次作『ジェットマン』から90年代の戦隊ヒーローの描き方の“変化”の質が見えてくる気がしますが、特に『ジェットマン』において「恋愛」という要素を一種の劇薬として持ち込む事により、“否が応でも人間性を剥き出しにせざるを得ない”状況を作り出したのは、けだし慧眼であり、ロジカルであったなと(「恋愛」という感情は、誰かの前で格好つけたいと思ったり、その逆に、弱さをさらけ出してもいいと思う事なので)。
マグマベースに一時撤収したファイブマンだったが、ドッジの帝王のプライドに懸けて単独で悪魔の卵に挑んだ青は、あっさり敗北。……した後、子供達にも敗北して帝王の座を剥奪されるが、それがきっかけで学と健は悪魔の卵の攻略法を見出す。
「健、やっぱりドッジだったな」
「いや、兄貴の言った通りさ。やっぱりチームワークだったんだ」
子供たちとのドッジ対決への流れなどは強引極まりないのですが、二人のかわす爽やかな笑顔もあって、妙にいいやり取りに(笑)
反撃の活路を見出したファイブマンに対し、今回もシュバリェは「抹殺!」コールでギンガマンをけしかけ、一当たりのあと、イカ玉への雪辱戦。
「見せてやるぞ。ドッジボール兄妹の必殺技」
からスーパーファイブボールを取り出すと、どこかで見たような恒例のパス回しが始まって、5人のパワーを込めたボールを叩きつけてイカ玉は大爆発。……もともと、これまでの曽田戦隊の残像が見え隠れする作品ではありましたが、この辺りはテコ入れ策の一貫として、シリーズ過去作品の要素を意図的に盛り込んだ形でしょうか。
シュバリェは勝手にゴルリン25号を召喚すると巨大イカ玉を誕生させ、更に姿を見せる、パワードアーマーめいた姿の、黒ゴルリン! 二対一で追い詰められるスターファイブだったが、アーサー搭乗のファイブロボが救援に駆け付けると、鉄球ドッジボール勝負に持ち込んで、主題歌をバックにしたエンドボールで巨大イカ玉を倒すのであった。
シュバリェは、今日のところはほんの挨拶代わり、と黒ゴルリンの肩に乗って去って行き……やたら強調されたドッジボール要素ですが、マンガ『ドッジ弾平』(こしたてつひろ)の連載が、1989-1995年、アニメ版の放映が1991-1992年であり、どうやらスーパードッジボールのブームたけなわだった模様。
でも、蹴りは使うな。