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就職試験みたいな第1話

ウルトラマントリガー』感想・第1話

◆第1話「光を繋ぐもの」◆ (監督:坂本浩一 脚本:ハヤシナオキ)
 個人的な前提として、『ティガ』は放映当時に前半を少し見たぐらいで思い入れが無く、オマージュ要素でわかったのは、植物の名前にクトゥルフ神話ネタが盛り込まれていたのと、トリガーが巨大な石像として登場する事ぐらい。
 『ティガ』関連要素がプラマイどちらにも働かなかった上で、率直にいまいちノれない第1話でしたが、とにかく主人公の独り言が多すぎで、もうちょっと見せ方の工夫が出来なかったものかと。
 まあ主人公、植物に話しかけながら水をやる子(そしてベラベラ喋っていても周囲の同僚が完全スルー)なので、そういうキャラ付けで行くつもりなのか、或いは地球でガッツに所属するまでの非常措置なのかもですが、作劇としては感心できない手法。
 人類が火星への入植を果たしている未来――火星開拓を主導するシズマ財団の会長が火星で発見された超古代遺跡を訪れたその日、くしくも宇宙空間に封印されていた、ウルトラ族似のフォルムでセブン顔の宇宙人・妖麗戦士カルミラが目を覚まし……“悪の女ウルトラマン”は新機軸でありましょうか。
 カルミラは火星の地底に眠っていた怪獣を呼び起こして遺跡とそれを取り巻くドーム都市を襲撃させ、超古代闇怪獣とか、妖麗戦士とかのセンスはツボです(笑)
 「君が、夢見る未来はなんだ?」
 遺跡の落盤に巻き込まれた主人公ケンゴは、突如として両腕が光に包まれると落石を跳ね返し、一時避難所でシズマ財団会長から放たれる、大物実業家ムーヴ。
 ふわっとした問いかけで大物感を出す会長に水を向けられて、ケンゴは火星の大地に植物を根付かせる研究をしている事を語り……場の空気が完全に「あなたが学生時代に打ち込んだ事を教えて下さい」になっているのですが、どうして、主人公の行動理念を視聴者に初めて示す重要な場面が、就職の面接みたいになりましたか(まあ、話の組み立てとしては、実際にそういう要素も含んでいるにしても)。
 場面が硬直して坂本監督の持ち味も活きませんし、独り言の多さとも相まって“語り”から入る作りが、用意された場で青年の主張を言わされている感も強めてしまい、主人公の意思表明としては、極めて劇的さが不足して残念。
 「僕は……みんなを笑顔にしたい!」
 一度は会長が迎撃した闇怪獣が再出現すると、会長とお母さんに促されて駄目押しを入れ、就職の面接どころか、保護者同伴で作文の発表みたいな事に。
 「ならば、光をその手にするんだ」
 会長はおもむろにトランクの中の武装を主人公に押しつけ、受け取った主人公は何故か怪獣そっちのけで遺跡の奥へと走る素っ頓狂な展開が続き(せめて会長が負傷して、まともに動ける若い男が主人公一人とかだったら説得力も上がったのですが)、謎の巨大遺物の前で地下へと落ちた主人公は、遺跡の最奥に鎮座していた巨人の石像、そしてそこに入り込んだ異星人カルミラを目撃する。
 「もっと情熱的な再会を想像していたんだけどねぇ。三千万年分の想い、受け取ってくれるかい? トぉリガぁぁ!」
 ……あ、これ、猫師匠案件?(正義と悪の戦いにかこつけて、昔の女を封印)
 カルミラは光の鞭でトリガー像をびしばしと叩き、それを止めようとする主人公が「僕は……みんなを笑顔にしたい!」と叫び、ここで主人公を突き動かす行動理念の核を口にさせるなら、就職面接は全くいらなかったと思うのですが、全く劇的でないシーンで意思表明をさせてしまった事で、劇的になる筈のシーンまで空疎になってしまう、ダブル大惨事。
 これだったら、序盤の内に日常の中で軽く口にさせておいて、それを改めてクライマックスに持ち込むオーソドックスな手法で十分に効果的だったと思うのですが、演出・脚本ともにどうも冴えません。
 「未来へ続く、希望の光! ウルトラマントリガー!」
 ケンゴは会長から預かった光線銃にウルトラメモリを装填し、銃身が展開するとY字型の変身ステッキになるのは、おお成る程、の面白いデザイン。
 「光の巨人……やはりこの世界にも、ウルトラマンが」
 「ケンゴ……」
 火星の地表に現れた巨人――ウルトラマントリガーの姿に、会長とケンゴ母が思わせぶりな事を呟き、闇怪獣とトリガーのバトルスタート。一当たり後のアクションはカメラを目まぐるしく動かしすぎて個人的には酔いそうで辛く、今後に向けてはもう少し控え目になってくれるのを祈りたいところ。
 怪獣に立ち向かうトリガーだが、いきなりカルミラが巨大化して参戦し、デビュー戦から2対1の苦境に。
 「今日は16時から雨の散布」が伏線……というほどの伏線ではなく、単に坂本監督が泥だらけのキャットファイトをやりたかっただけ(風評被害)なのは物足りませんでしたが(主人公が植物学者で、そこに雨が降るなら何らかの関連づけを期待するわけで)、もう一つおまけに、「雨が降る」事で否応なくドーム内である事が意識されるにも拘わらず、上空や背景にドーム感が全く無いのは、大変残念。
 折角、火星の居住ドーム内での戦闘というシチュエーションなのだから、ドーム感はもう少し欲しかったなと。
 背後から馬乗りでの執拗な攻撃を受け、絶望的な状況に陥るトリガーだったが、ケンゴは脳裏に浮かんだ記憶から謎の遺物の正体がトリガーの剣であった事に気付くと、それを召喚。
 「やはり、ケンゴくんは……」
 その姿に会長とお母さんは何やら視線を交わし、二人揃って訳知りらしい事を仄めかして一連の面接シーンの素っ頓狂さを多少は減じるのですが、情報の出し方の手順が悪くて、話の構成に“見え方”への配慮が足らない印象。
 怪獣を切り倒したトリガーは、カルミラの鞭攻撃も凌ぎきると必殺光線で怪獣を撃破し、カルミラが指を鳴らして怪獣を盾に使うのは、キャラクター性が出て良かったです。
 「ははは! そうじゃないと、つまらないねぇ!」
 カルミラは余裕を見せたまま姿を消し、ケンゴは各種装備を会長に返そうとするが、それを押しとどめられる。
 「ケンゴくん、私と一緒に、地球に来てほしい。……GUTSセレクトの、一員として」
 なんだか面接に合格したものの、希望部署と違うところに配属されそうだった。
 『タイガ』途中脱落・『Z』未見で、久々に見た新作《ウルトラ》ですが、話の作りに首をひねる箇所が多く、掴みの印象としては、黄色信号。次回以降の展開次第になりますが、ひとまず、見出しカテゴリ作成は保留ぐらいな感じ。
 装備品として自然な銃と兼用の変身アイテムや、トリガーの剣は格好良いので、舞台が地球に移って、メカニック関係を活かす展開になってくればまた印象が変わってくるかもですが……後カルミラのキャラクターは面白かったですが、坂本浩一監督の持て余された煩悩を注ぎ込まれてブーストされていた感が強いので、他の監督の時はどうだろうかみたいなのは(笑)