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長石監督二度目の3話持ち

仮面ライダーアギト』感想・第31-32話

(※サブタイトルは存在しない為、筆者が勝手につけています。あしからずご了承下さい)
◆第31話「暖かな手」◆ (監督:長石多可男 脚本:井上敏樹
 成り行きで連携するアギトとG3-Xだが、アギトの飛び蹴りをカニのハサミでガードされた拍子にまとめて川に落とされ……G3-Xはそのまま沈みませんか大丈夫ですか。
 その辺りの顛末は華麗にすっ飛ばされ、沢木の指示を受けて真魚をさらった相良は、将来的な超能力者コミューンの形成を示唆。
 孤独をかこう超人類、というのは古典的なSFテーマでありますが、この辺りは、石ノ森章太郎的な要素への意識もありそうでしょうか。
 「翔一くん、私、探してみたいんだ。私の居場所を」
 自分が父親を殺したのかもしれない、と思い悩む真魚は、しばらく美杉家を離れて自分自身を見つめようと考え……特殊なコミュニティ・「家」探し、の2点は後の『555』に広がるものも感じます。
 真魚の意志を尊重しようとする翔一くんだが、二人の様子を物陰から窺っていた相良がカニアンノウンの襲撃を受け、きゅぴーん。
 「見つかるといいな、おまえの場所が」
 重傷を負った相良は、真魚によって妻と暮らした家に運ばれると、一連の念動騒動は真魚の力の暴走ではなく、全て自分の仕込みであったと告白し、思い出の場所で絶命。
 ここまで超回復能力で粘っていた割には非常にあっさりと死亡しましたが、どこまで行っても大切なものは過去にしかない事に疲れ果てた末に、生命力というよりも気力・精神力が尽きた、といった感じでしょうか。
 見た目ガラ悪いわ、涼は殺すわ、女子高生さらうわ、で割と困った人でしたが、理性的な対応が出来る、子供の怪我を治す、元妻との思い出を大事にしている、と“あかつき号事件によって人生を歪められた被害者”としての描写が徹底していて、あかつき号事件の関係者は、善とか悪というよりも、善悪の尺度さえ狂う世界に放り込まれてしまった人達、というのが見えてくる事に。
 一方、薙刀を持ち出すもカニの装甲に苦戦していたアギトは、バイクの力に訴えると久々に捻りバイクからの薙刀特攻で撃破し、なんというか、質量攻撃に身も蓋もない作品です。
 相良の死に涙をこぼす真魚の前に現れる沢木、でつづく。

◆第32話「みんなの居場所、私の居場所」◆ (監督:長石多可男 脚本:井上敏樹
 「悲しみはこれからも続く。それを終わらせるには、お前の力が必要だ」
 「…………誰?」
 「お前達を――救う者だ」
 宗教の人みたいになってきた沢木さんは今日も涼の死体を引っ張り出し、真魚ちゃんに蘇生を依頼。ここで気がつきましたが、前回から着ている真魚ちゃんの服の柄が蝶(魂の象徴)なのは、狙ったところでありましょうか。
 「この世には、アギトなるものが必要なのだ」
 すっかり宗教の人みたいになってきた沢木さんの顔面インパクトに押し切られ、涼の死体にかざした真魚の手からまばゆい光が放たれるが……その成果はわからぬまま真魚は死体安置所を逃げ出し、翔一くんと再会。
 翔一に心情を説明し、マンションに戻った真魚だが、相良が死亡したと聞いた眼鏡の女・関谷は家出。相良と入れ替わるように前回から登場した同世代の少年・真島から詳しく話を聞こうとする真魚だが、涼と似た症状に襲われ、気絶してしまう……。
 一方その頃、氷川くんは小沢さんに、女子高生の心理について問いかけていた。
 「とにかく優しく接してあげないと。ガラス細工を扱うみたいにね。その年頃に受けた傷は尾を引くもんなんだから」
 ……人選ミスかと思いきや、意外と真っ当な回答でした。
 「ガラス細工、ですか……」
 ……聞いた方は、目と口をあんぐりと開けて、なんか駄目そうな反応でした。
 マンションを出た関谷は、たびたび名前の出ていた「木野さん」の家を訪れるが返事はなく、頼ろうとして訪れた行く先々で、仲間達が変死していく久々のホラー展開。
 美杉家の面々&合流した氷川くんはそれぞれの思い込みを胸に真魚ちゃんを説得しようとしてインターホンの向こう側にあっという間にカオスが発生し、それぞれ真剣な筈なのにどこからでも笑いのカオスが生じるのが凄い切れ味(笑) 率直に、後代のシリーズ作品はこのカオス感を模倣しようとしてしばしば失敗していると思っているのですが、これを成立せしめているのは、井上敏樹の腕だな、と(笑いの生み方に対する、こちらの好みと慣れの影響もあるでしょうが)。
 翔一くんと真魚ちゃんは観覧車で話し合いの場を持ち、カメラの位置を考えるとこれ、一人芝居と一人芝居を繋げているのでしょうか。ちょっと実験的な手法で青春映画のような味付けが加えられ、おじさんが真魚ちゃんを好きすぎる一幕を挟んで、真魚ちゃんの彷徨は終了。
 ここ数話は「真魚ちゃん編」といった感じで、涼は死にっぱなし、警察サイドは極力登場せず、今作の魅力である仮面ライダー同士の錯綜が控え目で物足りない部分がありましたが、その代わりに真魚ちゃんを絡めながらあかつき号関係者側のドラマにより踏み込む事に。
 誰もが自分の「居場所」を探している事に気付き、美杉家へ戻る事を選んだ真魚は、真島にそれを伝えにマンションに向かうと、そこに戻ってきていた関谷が、突如として豹変。
 「ヒトでないものは、滅べばいい」
 不気味なライトを当てられ、男の声を発する関谷に続き、シャチアンノウンが姿を見せたところで翔一くんがきゅぴーんしてアギトに変身。真魚と真島を逃がすアギトだが、シャチの力は正面からの殴り合いでアギトを上回り、アギト完敗。
 追い詰められる真魚と真島だが、そこに現れたのは、女のピンチに駆け付けると戦闘力のアップする男・葦原涼。
 「変身!」
 格好良くダッシュ変身した涼がシャチに躍りかかったところで、つづく。
 ただでさえ出番が少なめなのに、一般人超能力者にぼこぼこにされたり、川を流れたり、挙げ句の果てに心停止したりで、この一ヶ月ほど散々な扱いだった涼が遂に復活。基本的に不幸属性な分、ここぞの見せ場は格好良く演出される傾向がありますが、地面に大の字に転がっているアギトに代わり、この危機を乗り越える事は出来るのか?!