『機界戦隊ゼンカイジャー』感想・第16話
◆第16カイ!「磁石シャクだぜもう限界!」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:香村純子)
カラフルでばったり介人たちと出くわしてしまい、変なポーズで固まるステイシーーーーーーーーーーーーーーー!!
ここ数話の『ゼンカイジャー』は、ステイシーだけで、3話分ぐらい面白くて凶器。
予告から期待させてくれた通り過ぎて、もう、ここだけで満足度が高かったです。
前回に続いてゲゲが街に放った脚がグンバツのジシャクワルドの能力により、金属を引き寄せる磁石体質になってしまう介人たち。磁石ワルドは棒磁石を両手の剣に、U字型磁石を兜の鍬形に見立てて鎧武者風味に落とし込んだのが秀逸なデザインで、体にくっついた看板や一斗缶やパソコンで動きの鈍いゼンカイジャーは鉄骨の雨に押し潰され……普通に強いぞ。
磁石ワルドが去った後に遅れてよほほいしてきた金(多分に話の都合でしょうが、調子に乗ってスカイダイブでやらかした件を反省しているようにも見えなくはなく)に助けられた介人たちが一度カラフルに戻ると、暖簾をくぐった途端に店内の金属物が宙を飛んで体に張り付き、
「お客さんすいません。ただいま磁石なもので……」
顔を上げた5人が目にしたものは、
「え?!」「おお?!」「あっ?!」「ええー!」「やや?」
「サトシです!」
パフェを前に固まるステイシーだった。
「「「「「え?」」」」」
「サトシです」
ひとまず場の空気に乗っかる介人たちだが、ヤツデがプラスチックのスプーンを取りに奥に引っ込んだ途端、互いにファイティングスタイル。
「まさか君達の根城だったとは」
「サトシくんだっけー。本当に偶然来たのか!?」
詰問口調になるジュランだが、店内の金属類がキカイノイドたちに次々とくっついていき、店を滅茶苦茶にしない為に外へ飛び出すと、大量の金属製品に追われながら毎度お馴染みになりつつある商店街を爆速全開する羽目に。
キカイノイドの方が磁石体質が強化されいく、という切り口で前回に続いて“エスカレートしていく面白さ”が手堅く盛り込まれ、一番体力の無いマジーヌ、自販機に押し潰され、リタイア。
この辺り容赦なくいけるのは着ぐるみキャラの利点でありますし、人間キャストに比べると露出差が付けやすいという作品の特性も、思い切りの良いところ。
「おいブルーン! おまえダンプなんだろ、なにトラックにびびってんだ!」
続けてブルーンがトラックと自動車に挟まれて溶鉱炉に沈みもといリタイアし、運動能力の優れた二人が生き残るが、そこに迫り来る、ワニ型宇宙船。
「さすがにやばいな……」
それを目にしたゾックスが呟く一方、比較的症状の軽い介人は、脇腹に貼り付けたセッちゃんのアドバイスにより、磁石ワルドの居場所を見つける為にステイシーに協力を求めるが勿論断られるも、食い下がって頭を下げる。
「みんなを助けられるなら、誰だって関係ない!」
どう考えても敵サイドに裏切れと言っているので無茶苦茶なのですが、介人の場合、本当に何も考えていないというよりは、“作戦行動中にカラフルでパフェとかつついているステイシーは今回の侵略活動とは無関係だし、これまでの言行から微妙な立場”である事を直感的に把握している節が無いでもなく、万事に出鱈目というよりも、出力機構は無茶苦茶だけど入力機能は物凄く精妙なのかもしれません(少なくとも、レトロ電波に引っかかる程度の繊細さは持っているわけで)。
まあ以前に書いたように、例えばゾックスが見た目ニンゲンでなければ(デカマスター的な例は過去作品でもあるわけで)、「ステイシーにさえ協力を求める介人」の姿に、種族差など関係ない物の見方をもっと強調できたとは思うのですが、ステイシーにしろゾックスにしろ「見た目同じニンゲンなので交渉の余地有り」感が出てしまっているのは、仕方ない部分とはいえ、作品としてはやや傷なのは残念。
「――おとなしく言う事聞いた方がいいんじゃない? 介人はヤツデの孫だ。介人の命を狙ってること、バラされたくないだろ」
当然、ノーを貫こうとするステイシーだが、カラフルの様子を窺ってヤツデへの対応を目にしていたゾックスが脅迫を行い、アウトローならではの立ち位置でこのゾックスの使い方は鮮やか。
追い込まれたステイシーはトジテンドパレスに報告に戻っていた磁石ワルドを爆発の聖地・イワコギ山へと誘導し、そこに待ち受けていたのは、介人とゾックス。
白金が並んで変身し、ツーカイの積極的な共闘理由としてフリントたちも巻き込まれてピンチ、を入れている(外さない)のが目配りが利いており、キャラクターの行動原理を大事にしている事で話の流れがスムーズになっているのが、安定して光る巧さです(案外これが出来ないわけで)。
更にそこへ、宇宙船から逃げ続けるジュランとガオーンが合流し、危うく下敷きにされかけた磁石ワルドが磁力を弱めた事で、反撃全開。
この局面でファイブマンの力って何……? と思ったら、学兄貴を憑依させて復讐の狂気……じゃなかった、理科の知識を引き出した白が、磁石は熱に弱いと分析。金がシンケンに、赤の恐竜ファイヤーで剣と爪に炎をエンチャントすると磁石ワルドへ襲いかかり、お笑い系の展開から一転、炎バトルは大変格好良く、トドメは白の一人フィニッシュバスターで大全壊。
……まあ前回、体育座りしている間にバトル終わりましたからね。
ダイ磁石ワルドに立ち向かう超力痛快王だが、磁石の反発力であっさりと地平の彼方へ吹き飛ばされ……世界に馴染むって、残酷(笑)
疲労困憊の赤黄と、戦線復帰の桃青が巨大化して変形合体しようとするが、これまた反発で合体不能に陥るも、ガオーンがその反発を利用する事を思いつくとジュランをレールガンの弾丸代わりに使う悪魔のような戦法でダイ磁石ワルドを攻撃し、追い詰められたダイ磁石ワルドは磁極を反転。
「…………なにこれ」
結果として磁石ワルドを中心に赤黄桃青がピタリとくっつき、今回の巨大戦が通常班だったのか特撮班だったのかはわかりませんが、中澤監督ぽい間合い(笑)
「今だ! トドメぜんかーい!」
赤黄桃青はその状態から各々の零距離必殺技を放つゼンカイジャーコバックで勝利を収め、核に電気に重力磁力!
「ゲゲ、おまえの作戦も失敗したようだな」
「ふん、ペットの分際で、あまり偉そうな口を聞かん事でアル」
トジテンドでは、それ見た事かと揃って厭味を言うイジルデとバラシタラだが……
「でも僕が手を出した事で、ボッコワウスの機嫌が直ったと思わない?」
「「むぅ??」」
「君達はこれからも、自分のやりたい事をためしてごらんよ。また僕が機嫌を取ってあげるからさ」
「「んぎぎ」」
余裕を見せるゲゲの方が、なんと一枚上手であった。
「ステイシー。君も、今は、黙っておいてあげるよ……ひひ、げっげっげ……ははははははは……はははははははははは! はははははは……!」
ステイシーにも釘を刺したゲゲは、いつもと調子の違う笑い声でパレスの中を舞い上がり、不気味な雰囲気を漂わせる黒鳥と、未だ謎に包まれた巨大機械の姿が、印象的に。
ここまで出番の少なかったゲゲが食わせ者の一面を見せ、現在の立ち位置を崩さないまま、ただの愉快犯にでも、秘めた悪意にでも、どちらにでも転がせるような広がりを持たせたのが、実に鮮やか。また、悪の組織の宿痾といえる“連敗へのエクスキューズ”として、いざとなったらゲゲがボッコワウスの機嫌を取ってくれる……事で現場指揮官の首に余裕が出来ると同時に首根っこを押さえられる事になる、のも見事なピースの使い方となりました。
一方、今のところただの置物状態の壁王様は、このまま無能ロードを突き進むのかどうか……。
ヤツデからサトシとの関係を聞かれた介人は、
「……えっと……前に喧嘩したんだよね。派手なヤツ。……でも、今度あいつが来たら、またカラフルサンデー、食べさせてやってよ。今度は俺のおごり」
と答え、両者の関係やステイシーの心情に関してはまだまだ含みを持たせつつ、つづく。