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仮面ライダーアギト』感想・第25-26話

(※サブタイトルは存在しない為、筆者が勝手につけています。あしからずご了承下さい)
◆第25話「真円と人の間」◆ (監督:長石多可男 脚本:井上敏樹
 ノコギリ刃の剣を取りだしたアンノウンに対して、翔一くんの纏ったG3-D(脱力の)X(極)が特殊警棒を用いての格闘アクションは格好良く、更に連続パンチからの回し蹴り。トドメにガトリング砲が火を噴いて初陣を飾るが、その姿を、新たなアンノウンが見つめていた……。
 脱力Xの圧勝に言葉を失う氷川だが……もしかして、氷川くんをオペレーターに置くのが支援スキルが発動するベストな配置だったの?!
 アンノウンを撃破するも査問に掛けられる氷川だが、むしろ据わった目でG3-Xの優秀性を述べる一方、高村教授はV1開発を放棄し、北條は謎の装着者・津上翔一に関心を抱く。
 「それにしても興味がありますね……貴女が目を付けたという津上翔一なる人物。果たしてどんな人間なのか……」
 「身長2m、体重150kg、岩をも砕く肉体と、コンピュータの頭脳を持った男よ」
 すらすらと真顔で答える小沢と、さすがにそれは無い……よね? と北條さんの無言のリアクションが素晴らしい(笑)
 前回に続き、「こっちに来てー」と海辺で手を振る謎の女の夢を見ていた翔一は、誕生会の余興をやらねばならない、とこぼす太一に手品を勧めると、氷川らの前で手品を披露。そんな美杉家に迫る北條……も翔一のペースに巻き込まれて手品にチャレンジする事になり、タネを見抜くと一発で成功させる器用ぶり。
 性格がねじくれ曲がっている分(本人的には極めて真っ直ぐなのですが……)、時々、北條さんが出来る男である事を見せてくれるのは、今作のいいバランスだと思います。
 再び氷川と北條の配置転換が行われ、総務課が裏で怒り狂い、どうやら河野刑事は厄介な案件を押しつけられているらしいのがわかってきた頃、小沢はまたも高村教授の下へ。
 「今、彼に話していたところだがね、G3-Xを装着できる人間なんて滅多にいない。何故ならあれは、完璧すぎるからだ」
 高村が触れていた装着員の問題とは、そもそも装着できる人間の方が希少、という点であり、高村は小沢に、システムを修正する意志はないのか、と問う。
 「手を加える? G3-Xは完璧です」
 「それが欠点なんだよ!」
 完璧すぎるAIシステムゆえに、それと協調するには装着員は大げさに言えば無我の境地に居なければならず、いわば、(劇中でそういう表現はされませんが) 本来、神の“擬(もど)き”である筈のシステムが、“神に近付きすぎた”事で、常人には扱えないものとなってしまっている事を、高村は指摘。
 「君は完璧なものを造り、それに満足してしまっている。しかし、G3-Xは人間の為のものだ。君は人間の事を考えるのを、忘れている」
 今作におけるG3システムとは、“仮面を被る”に集約される「変身」によって、装着者が俗→聖へと転換される呪物といえるわけですが(そういう意味で、氷川くんや北條さんはシャーマンの役割を担っている)、その呪物そのものが“聖なるもの”になってしまった時、そこに人間が入る余地がなくなってしまい――故に、“神の乗り物”としての性質を持った翔一くんだけが対応できる――、高みのみを見るが故にそれに気付けなかった小沢に、高村は制御チップを渡す。
 「それを使えばG3-XのAIレベルは落ちる。だが、人のものとなるだろう。……それをどう使うかは、君の自由だ」
 俗から聖、そして聖から俗へのモチーフがG3においても持ち込まれ、今作の基底を流れる「神から人へ」を再確認。……あと、G3とは何か? を掘り下げていて気付いたのですが、“G3が存在する”為には、G3が擬く対象、神霊の属性を宿らせる際の大元が必要であり、今作は『クウガ』世界と(部分的に)繋がっていなくてはいけなかったのだな、と。
 後これは大変こじつけですが、マッドサイエンティストの気がある小沢さんが、神に等しきものを作り出してそこになんの疑問を感じていない姿は、自らのエゴでジャスティスモンスター・ジャンパーソンを世界に解き放った三枝かおると、やはりどことなく通じるものを感じます。
 その頃、再び翔一の元を訪れた北條は、手品を見せられていた。
 「言った筈です。手品を見に来たわけではありません」
 「あ。北條さん、タネがわからないから誤魔化そうっていうんですか。がっかりだな~。氷川さんより頭がいいと思ってたのに」
 煽る為とはいえ、酷い(笑)
 「……貸して下さい」
 まんまと競争心に火を付けられた北條さんは、ロープマジックに挑戦するが、敢えなく失敗。
 「どうです? わからないでしょう……」
 ギャラリー(真魚&太一)の視線も受けた北條さんは上着を脱ぐと本気モードとなり、沈思黙考して目を閉じると明鏡止水の領域に入っていくが……忘れられかけていたアンノウンが活動を再開。翔一くんはきゅぴーんし、北條に入った電話連絡は太一に切られ、ソファに脱ぎ捨てられた北條の背広を翔一くんがハンガーに掛けるごく自然な流れにより、北條の手の届かないところで電話が切断されるのが、大変エレガント!
 アギトは処刑ソングに乗ってエイっぽいアンノウンを轢くが、コンクリート透過スローを受けて大きく吹き飛ばされたところに、急遽呼び出しを受けた氷川が装着したG3-B(無骨の)X(極)が到着。
 高村教授の開発した制御チップによりAIレベルの下がった新生G3-Xは氷川と見事に同調し、氷川くんは氷川くんで、翔一と同じ戦法(飛ぶアンノウンの足首を掴んで叩き落とす)を用いているのが、自分と違うタイプの人間からの学習として、氷川くんの頭が多少柔らかくなっているのを見せて面白い部分。
 無骨のXはガトリング砲でアンノウンを撃砕し、G3、まさかの3連勝!
 一方、誤解から復讐に燃えるギルスの猛攻を受けたアギトは、川へと転落。
 変身の解けた翔一は水中を漂いながら、再びあの夢を目にし……
 (姉さん! 姉さん……姉さん!)
 同時刻、美杉家のリビングでカッと目を見開いた北條は、切断したロープを元に戻す事に成功する。
 「やった……繋がった……!」
 切れた糸は一本に繋がり……翔一の意識は死の世界(水中)から再び浮上し……個人的に、『アギト』で好きなシーンベスト3の一つ(笑)
 いやだってここ、「繋がる」と思いませんよ……恐るべき、井上マジック。
 「…………そうか……俺は…………俺は…………そうだ……思い出したぞ、全てを」
 川から上がり、笑顔の翔一くんで、つづく。
 ……ところで、結局実現しなかったわけですが、北條さんの“人格”と、G3-Xはすこぶる相性が良かった気がしてならず、もし北條さんがG3-X(調整前)を装着していたら、「こ、これが“神のコード”……?!」と何かに覚醒して、警視庁の一つぐらい壊滅させていたかもしれません。
 そして、死闘の末に行動不能に陥ったG3-Xのアーマーを引きはがすと、その中に装着員の存在は影も形も見つからず……
 「ば、馬鹿な……北條さんは何処に?!」
 「……あいつは、G3-Xに“なって”しまったのね……」
 で、エンド。

◆第26話「津上翔一とは誰か」◆ (監督:石田秀範 脚本:井上敏樹
 ifルートはさておいて、G3-Xの装着員は再び氷川くんに決定し、北條さんも北條さんですが、改めて見るとこの上層部、一度痛い目に遭ってほしくなります(笑)
 翔一くんは豪華な夕食の合間にさらっと少年時代の記憶を語ると美杉家から姿を消し、船上の人になると、とある大学へ。
 「この人が……津上翔一」
 その写真立てに写っていた人物は――沢木哲也。
 涼はカラスアンノウン2号に襲われていたマンションの2人組を助け、「キノさんと会う約束がある」と外出した男は、沢木によって力の覚醒を早められる――。
 全編通して、画面に色フィルターを掛け、小刻みにカットを割り、手持ちカメラによる揺れを入れ、意図的に不安定な映像が続くのですが、個人的には、ちょっとやり過ぎ(目が痛い)。
 東京に戻って沢木邸を訪れていた翔一は、沢木との面会直前にまたも窓から現場へ飛び出し、カラスアンノウンと衝突。
 「何者なんだお前達は! 目的はなんなんだ!」
 初めてアンノウンにその理由を問いながら、翔一はアギトに変身し、赤フォームから更にベルトのスイッチを押す事で、唐突に赤金青の3色フォームへと変身。……一応前回、“記憶を取り戻す”という大きな変化は起こっているのですが、フォーム強化としては、割り切りすぎた唐突(笑)
 剣と薙刀、二つの武器を同時に振るう3色アギトはカラス3号を撃退するが2号は逃亡し、家に帰ったら窓が全開なんですけど?! と椅子に座る沢木が思い出すのは、叩きつけるような雨の中、ビルから飛び降りを図った女――雪菜と、その手を何とか掴んだ自らの姿。
 「お願い、離して……」
 だが沢木は、雪菜の懇願に応えるかのように手を離し、落ちていく女……で、多くの謎が錯綜し、つづく。