東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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豆腐じゃねぇ!

仮面ライダーアギト』感想・第23-24話

(※サブタイトルは存在しない為、筆者が勝手につけています。あしからずご了承下さい)
◆第23話「暴走する魂」◆ (監督:田崎竜太 脚本:井上敏樹

 「では、絹ごしを出して下さい」
 「えっ、うちにはありませんけど……」
 「わかりました。買ってきましょう!」

 ……なんだこの番組(笑)
 赤アギトに切りつけられた逃走した女ハチは、触角を片方失った影響からか無作為に人間をコンクリートの中に埋め込み始め、警察はG3-XかV1か、双方のテストとロールアウトを急ぎ迫られる。
 今日も階段を降りてくる北條さんの、V1システムが採用されてG3ユニットは解散ですよの挑発と
 「面白いお伽噺ね」
 「あなたの与太話よりはマシですよ」
 の切れ味鋭い応酬から、
 「北條さん……僕は負けません。必ず――貴方に勝ってみせます」
 どことなく他者に遠慮しがちな(上司の性格も輪を掛けていると思います!)氷川くんが正面切って北條さんに挑戦状を叩きつけるのに対して、北條さんがニヤリと笑うだけで去って行くのが格好いい。
 ……まあ北條さんの場合、なかなか言うようになりましたね、と氷川くんの成長と決意を認めたとかそーいうのではなく、肥大した自己愛と必要以上に溢れる自信に基づく傲慢が9割ぐらいなので、表向きは格好いいけど心情は多分いやらしいのですが!(笑)
 銀ピカのV1がハチ撃退に無断出撃してその性能を見せつける一方、G3-Xに組み込まれたアシストAI機能が、不器用な氷川くんと相性最悪である事が明らかになり……ただのギャグかと思われていたキャラ付けが、大変重要なタームとして4回転ジャンプを決めてくるアクロバット
 「無駄な、力……」
 G3-Xに適性の高い、新たな装着員として小沢が目をつけたのは、万年脱力男・津上翔一。
 さすがに意地になって歯を剥き出しにする氷川くんだが……勿論、氷川くんに、絹ごし豆腐を箸で掴むのはハードルが高すぎた。
 「ちょ、ちょっと待って下さい! 豆腐を取れないから私は彼より劣ってるというんですか?! 納得できません! だいち……なんですか豆腐なんて! こんなものは、スプーンですくえば、いい話だ」
 失職の窮地に陥った氷川くんは身も蓋もない事を言い出すと、「記憶喪失の人間に免許が取れる筈ない」と翔一の無免許運転疑惑を持ち出して勝ち誇るが……
 「甘いな……じゃーん」
 「こ、これは?!」
 記憶喪失でも免許は取れるのだった!
 無免許疑惑といえば、後の仮面ライダーキバこと紅渡(あの性格で教習所に通えるとは思えない)を思い出しますが、外部からの指摘を取り込んでオチに使ったような気配もありつつ、美杉家における約3分(3分!)、異常に面白い。
 そして、改めて見ると氷川くん(要潤)が一番、色々なタイプの芝居をする機会が多くて、それは急成長にも納得です。まあ、鶏が先か卵が先か、で、芝居の吸収力が高いので面白がって色々やらせるようになった、のかもですが。
 そしてコンペの当日……先行して華麗な銃撃を見せたV1北條に、挑発として銃口を向けられたG3-Xは突然コロナモードを発動すると、てめぇの残り少ない髪の毛を毟り取ってやろうかぁぁ?! と、V1を一方的に撲殺。
 アンノウン出現の急報を受けるとそのまま飛び出していき、新装備のガトリングユニットを手にすると、絹も木綿も関係ないぐらい、全員ぐずぐずの大豆成分に戻してやるぜーーーと、アギトとハチをまとめて銃撃。調子に乗って弾切れかと思われたが、予備の弾倉を装填すると、不用意に近付いてきたハチを圧倒的火力で爆殺し、とにかく攻撃力重視の設計思想に開発者の性格が出ます。
 スーツ自体が強化される事で、より強力な武装を保持・安定射撃できるようになったのでしょうが。グーが防がれたら、より強いグーで殴ろう、な小沢さんの方針に基づき、暴走を続けるG3-Xはアギトに銃口を向けて、つづく。

◆第24話「G3-Xに不備はない」◆ (監督:長石多可男 脚本:井上敏樹
 序盤の裏返しという意図もあったのか、理性を失ったG3-Xがアギトへ襲いかかり、互角の接近戦を披露。アギトを蜂の巣にしようとガトリングを構えるG3-Xに対し、アギトも低い姿勢で処刑キックの準備に入るが、G3-Xは不意にその場に倒れ、近付いてきたパトカーを見てアギトは逃走。
 氷川はそのまま病院に運ばれ、半ば朦朧としながらアンノウンと戦っているつもりだった……という氷川の証言に考え込む小沢は、恩師の元を訪れる。
 「前にも言ったように私は君が嫌いだ。だが、君の才能は認めざるをえない。完璧だよ……G3-Xは、素晴らしい。君が犯したミスはたった一つだ」
 「なんでしょう?」
 「氷川誠だったかな。彼を装着員に選んだ事だ」
 技術の蓄積などを考えれば、そもそも勝てる方が不自然なのではという立場だった高村教授が、天才・小沢澄子に負けましたー、とただのかませ犬にならず、小沢さんの懊悩と絡めて継続登場になったのは良かった点。
 一方、暴走の原因が自分にあると考える氷川は、小沢がシステムに欠陥があるとして責任を被る事を危惧すると、翔一くんに新たな装着員になってくれる事を嘆願。
 「……じゃあ、あれもしかして氷川さんだったんですか? なんて事するんです。何度も氷川さんのこと助けてあげたのに、いきなり襲いかかってくるなんて」
 「何を言ってるんです?」
 とぼけたやり取りを挟んで和らげていますが、前回にしろ今回にしろ、民間人をモンスター退治の最前線に立たせようとする小沢&氷川のネジの外れ方が酷い(笑)
 つまり、「G3-Xにならんか?」。
 既存のスカウト系ヒーロー作品のセルフパロディめいたものも感じますが、北條さんと小沢さんの間で相対的に常識人寄りに見える氷川くんの抱える英雄の狂気が炙り出され、それは単独で海難救助に向かうし、超常能力を真っ先に肯定するなと改めて納得。
 それでもさすがにスカウトを断る翔一くんの前で氷川くんがぶっ倒れていた頃、G3-Xシステムに不備を認めた小沢は、V1の装着員に氷川を推薦するという飛び道具を放っていた。
 会議が紛糾する中、床を透過させて標的を墜落死させる能力を持った緑色のアンノウンが出現(今作にしてはぱっと見で判断しにくいデザインですが、特殊能力や、部分的な尖り感からすると、カメレオンモチーフ……?)。
 主要メンバーが会議中に何故か出撃したG3トレーラーの中には、懸命の説得に折れた翔一とそれをサポートする氷川の姿があり、アギトの変身者がG3-Xを装着する、ややこしくもとんでもない展開。
 以前に触れたように『仮面ライダーアギト』には、空っぽの来訪神的性質を持つ津上翔一が人間性を獲得していく事により、“聖なるもの”から“俗なるもの”へとエネルギーが転換されていく構造が存在していると思うのですが、擬似的な聖性を持つ――「他界」の存在である――翔一くんが、“仮面を被る”事により俗→聖へと転換しようとする人の営みに組み込まれる事で、逆説的に神霊の属性を引きはがされて「現世」の存在に近付かされる事に。
 翔一はG3-Xとしてカメレオンアンノウンを轢いてイニシエーションを果たすと、迫り来るアンノウンに向けて銃を構え、つづく。
 なお、前回出番のなかった涼は、自宅のベッドで転がっていました。
 ……記憶より遙かに、出番格差。