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銀河を貫かない

地球戦隊ファイブマン』感想・第9-10話

◆第9話「登場ギンガマン」◆ (監督:東條昭平 脚本:曽田博久)
 その後の歴史を知っていると、衝撃的なサブタイトル(笑)
 ドルドラの指揮の下、銀河闘士ガガーギンが商店街でバイオテロを決行し、結構な数の被害者を出した後で、唾液を浴びると「たちまち腐り果てて死ぬ」とか恐ろしい事を言い出して戦慄しましたが、この後の展開を見ると、作戦をスムーズに進める為の誇大広告だった模様。
 執拗に市民を追い回す銀帝軍だが、それを妨げて突き刺さる複数の銃弾。
 「おのれ、何ものだ?!」
 「「「「「銀河戦隊・ギンガマン!」」」」」
 高いところでポーズを決めたのは、5人のエイリアンの、ニューヒーロー……?!
 「私たちは、宇宙の平和を守る、愛と正義の、エイリアンです」
 「宇宙の平和を乱す銀帝軍ゾーン、今日こそ許しませんぞ」
 5人のエイリアンはキレのいい動きでそれぞれ名乗ると、一斉にポーズを決めて力強く爆発を背負い、すっかり出遅れて、茂みの中から様子を窺うファイブマン(笑)
 「俺たちの真似なんかしやがって」
 「ホント、俺たちより派手だぜ」
 めらめらと嫉妬の炎を燃やすファイブマンの前で、ちょっとコミカルなBGMとSEで戦闘が始まり、銀河炸裂!!
 〔エイリアン=ゾーン=悪〕
 と凝り固まっているファイブマンは、特に協力するわけでもなく困惑しながらこれを見つめ、君たちは君たちで、それでいいのか。
 ……まあ、わざとらしすぎる台詞に、各担当色をマフラーで表現していたり(偽ライダーオマージュと思われます)、もう、すっごく露骨ではあるわけですが(笑)
 ギンガマンの猛攻にゾーンは一時撤退し、更に呼ばれる医療班が、ガスの被害にあった人々を治療。
 人々に喝采を持って迎えられるギンガマンだが、ファイブマンは、疑いの目しか向けていなかった。
 すっかり妬みと嫉みから猜疑心の塊みたいになってしまったファイブマンですが、台詞の上では「ゾーンのエイリアン」と言っているので、星川兄妹的には、ゾーン所属の異星人かそうでないかの分類があるのかもしれません。それが映像からは伝わってこず、ヒーローが言っているからそういうもの、で押し切るような形になってしまったのは残念。
 ギンガマンはすっかり商店街の人気者となってTV局の取材まで受け、あやかったぎんが団子の大ヒットを見て、作るならファイブ団子にしろよ?! と思わず飛び出す文矢と健だが、ギンガマンを信じる人々から非難囂々。
 「やめてよ! エイリアンはみんな悪いと決めつけるのは間違ってる!」
 「そうだそうだ! 姿形で判断しちゃなんねぇ! 俺たちはみんな、ハートで付き合ってるんだ!」
 人畜非道の復讐鬼どもめ! と言葉の刃がグサグサ突き刺さるが、突如として銭湯に乗り込んできたガガーギンが、ギンガマンと一番親しい少年をさらっていくと、ガガーギンの放つ閃光を浴びた人々は「メドー」「メドー」と大合唱を始め、少年を連れ去ったバルガイヤー内部で、ゾーンの手先であった正体を現すギンガマン
 「ここからが私たちの真の作戦なのよ」
 ガガーギンによるバイオテロギンガマンによる阻止 → マスコミの飛びつきそうな話題作り → 一番仲の良い少年をさらう → ギンガマンvsガガーギンの対決を煽る → 中継カメラを利用して全世界に洗脳フラッシュを放つ → ざっと10億人がゾーンの下僕だ!
 と人類のメディアを利用してドルドラは地球の実効支配をもくろみ、始まる茶番の決闘劇
 一方、まんまと蛾フラッシュを受けて戦闘不能に陥っていたファイブマン男衆は電気ショックによって回復し、いつでも捕虜を尋問する準備は整っています!
 ゾーンの目論見を見破ったファイブマンは、間一髪で全世界洗脳中継を阻止すると、救い出した少年の口から真実が明らかになり、形勢逆転。
 「さすがファイブマン! よくも見破ったわね!」
 凄いスピードで北極から来たなドルドラ(笑)
 「本当の戦士の姿を見せてやるぜ!」
 真のヒーローの主題歌バトルが中継され、現場からレポートを続ける突撃レポーター(演じるは、『爆走兄弟レッツ&ゴー』の星馬烈など、声優としての活躍も多い渕崎ゆり子さん)が大活躍。
 ギンガマンは次々と物言わぬ屍と化し、残った蛾闘士には、ブラザーズフォーメーションからのハイパーファイブキック! そして、ブラザーアタック!
 ゴルリン8号が召喚されると巨大蛾に空中からビーム攻撃を受けるファイブロボだが、カウンター気味に投げ飛ばしてからの超次元ソード。
 「正義の剣を、受けてみろ!」
 外した切っ先を投げつけてから手持ちの刀身を伸ばす二段攻撃で蛾を倒し、前作に続き、巨大戦のフィニッシュに一工夫が施されているのは、嬉しいところ(後続作品では『電磁戦隊メガレンジャー』が継承している要素といえます)。
 ドルドラの卑劣な作戦は水泡に帰し、ファイブマンが少年と握手を交わす姿が全世界に中継されて突撃レポーターの挨拶で締めとなり、予告からサブタイトルまで、掴みのインパクトは強烈だったギンガマンですが、終わってみると、どういうわけか突撃レポーター回。
 “悪の戦隊”のアイデアはともかく、普段、意図的に見ないフリをしている“報道”という要素を取り込む事でセルフパロディが行きすぎてやや露悪的な領域に足を突っ込んでしまっており、素直に楽しみにくい部分が出てしまったのですが、名もなき「レポーター」(役名)がやたらめったら台詞も出番も多くて暴れ回った結果、最終的に、戦隊パロディというよりも、劇場型犯罪だったり突撃リポーターだったりに対する社会風刺劇めいた内容に着地し、当時なにか、そういう流行や問題でもあったのでしょうか……(前年の宮崎事件の関連?)。
 次回――昔の男?!
 ところで、第2話ではアーサーに酷い言葉を投げつけた上に妹弟を危機に陥らせ、第7話では助けを求める通信とか罠に決まっていると切り捨て、これといって良いところのないまま、未だに単独メイン回のない健の扱いが割と酷いのですが、次男のメイン回はいつだ!

◆第10話「俺の血を吸え!」◆ (監督:東條昭平 脚本:井上敏樹
 サブタイトルは脚本家が付けているとは限りませんが、クレジットに「井上敏樹」と出ると、あ、やっぱり感があります(笑)
 星川兄妹が河川敷でバーべーキュー中、突然転がってくる、巨大な岩!!(笑)
 「ファイブマン! 食後には休息が必要なようだな!」
 なおこの岩については、この後全く触れられないのですが、多分、銀河闘士のパワー見せ。
 盾と鎖鉄球を構え、正統派の強そうな銀河闘士カブトギンは、大地を割り、ファイブラスターを弾き返す高い戦闘力を見せ、青兄さん、弟の落ちた亀裂に戦闘員を放り込まないで下さい。
 かくなる上は、と余裕を見せて高笑いするドルドラを直接殴りにいく黒だが、横合いから何者かに撃ち落とされ、そこに現れたのは、青いシャツに白いマントを羽織った、ちょっと怪傑な感じの人。
 「ドルドラは俺の獲物。――誰にも渡さん!」
 その正体は、ゾーンに最初に滅ぼされた第8銀河系ロマノ星王家の生き残り、レイ・ゾーバ(昔の男では無かった!)。
 前回のギンガマンへの対応とは打って変わって、打倒ゾーンの為に同志として手を組めるかもしれない、と考える星川兄妹だが、復讐の為にドルドラを付け狙うマント王子は自らをサイボーグ化しており、そのエネルギー源として人間の血を必要とするのだった!
 (もう少し凝った衣装でも良かったのでは……? と思うキャラなのですが、シンプルな衣装は、体内の機械部品を見せたい都合だったのでしょうか)
 「馬鹿な! 復讐の為には他人を傷付けてもいいというのか」
 「なんとでも言え。このレイ・ゾーバ、体を捨てた時……心も捨てた」
 「嘘だ! あんたは今でも愛している。滅ぼされた星を、妹を、両親を。だからこそドルドラに復讐しようとしてるんじゃないのか? あんたは心を捨てたわけじゃない!」
 情念の内に潜む二律背反を真っ正面から突きつける文矢だが、そこへドルドラが現れると、奴隷として生かされていた妹ララーを救いたければファイブマンと戦え、とゾーバをけしかける。
 「今日からおまえもあたしの操り人形。死ぬまでたっぷり可愛がってやる」
 サディスティックな表情を見せるドルドラだが、ゾーバはファイブマンではなく、偽の妹を攻撃。
 「ふん、これが銀河博士と言われたドルドラの策か! ララーは王家の血を引く、誇り高き女。本物のララーならば、捕まる前に、自害するはず!」
 見破った理由が戦国(笑)
 ここまでで最強クラスの銀河闘士を投入したにも拘わらず、いきなり殴られそうになる、滅ぼしたと思っていた星の生き残りに襲われる、基地に帰ったらその件で怒られる、偽物作戦があっさり見破られる、とビックリ顔を連発する羽目に陥るドルドラを、残念淵の向こう側でビリオンが手招きしています。
 復讐の銃弾をカブト闘士に防がれたサイボーグ王子は、反撃の鎖鉄球から文矢にかばわれるもエネルギーの消耗が激しく、血を求めて少女を襲おうとしたところを、文矢に止められる。
 「俺は、俺たちは、復讐の為だけに戦っているんじゃない。宇宙の命を守る為に、愛の為に戦っているんだ」
 「愛などいらぬ! 愛があるから、悲しみがあるのだ」
 文矢は、俺の血を吸え、とゾーバに促し、エネルギー補給の為に少し貰えばいいのかと思いきや「自らの命も捨てるというのか」と吸い尽くす気満々なのですが……ゾーンに最初に滅ぼされた星出身という話なので、最低でも20年以上、恐らくは数十年に渡ってドルドラを追っていたと思われ、とんだ銀河単位の連続殺人鬼なのでは(吸血剣士改造がここまで進んだのは、ここ数年の事かもしれませんが)。
 文矢の首筋にがぶりと行こうとする吸血王子だが、カブト闘士の攻撃で吹き飛ばされて再び乱戦に。安定して役立たずになりつつあるボディガードに代わって自ら武器を構えたドルドラが思わぬ強さを発揮するが、トドメを刺そうと踏み込んできたドルドラに組み付いたゾーバは、体内の自爆装置を作動させる。
 「一緒に地獄に行くのだ、ドルドラ!」
 ドルドラが本日5回目の顔芸を余儀なくされる一方、上官の危機に全く気付かずファイブマンを追い詰めていたカブト闘士だが、それを目にしたゾーバは、自らの復讐よりもファイブマンを守る事を選び、カブトムシに特攻するとダイビング自爆。決死の選択に救われたファイブマンは瀕死のカブト闘士にブラザーアタックを叩き込み、巨大戦では超次元ソードでのフィニッシュ時に、黒がセンターに。
 「正義の剣を、受けてみろ!」
 尊い犠牲により強敵カブト闘士を打ち破ったファイブマンは、東映特撮名物:勝手にお墓を見つめ、ゾーバに託されたものの重さを想う。
 「奴は俺たちに自分の希望を託したんだ。明日への希望を」
 割と気軽に霊魂がフワフワしている世界なのか、自爆スイッチを発動した死の間際に及んで、昔の心を取り戻したのだ、と語ったゾーバの魂は母星へと帰っていき……一応美しく落着するものの、どうにも漂う、この人との共闘は無理だったんじゃないかな感。
 ナレーション「戦えファイブマン。この世の命を守る為に!」
 戦隊史としては、『ジェットマン』前年に井上敏樹が、復讐の孕む狂気をストレートに描いたエピソードを書いていたのは、注目点でありましょうか。
 次回ようやく次男のターン。