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拳が多めの時もある

ウルトラマンコスモス』感想・第4-5話

◆第4話「落ちてきたロボット」◆ (監督/特技監督:原田昌樹 脚本:川上英幸)
 「誰か増える度に何かが起こる」
 真理ですね……。
 うららかな春の日、平穏なひとときを過ごすチームアイズは優雅なティータイムを楽しんでいたが、謎の飛行物体、地球へ。
 「落ちてきますー」
 「落ちてくる……?」
 のところで、天井を見上げながら総員が制服のジッパーを引き上げる(ドイガキはサスペンダーを引っ張り上げる)演出が、大変秀逸。
 地球に落下した金属製の巨大物体は、発見者となった3人の少年少女に対して「玩具のイゴマス」を名乗り、巨大宇宙人の落としたハイテク玩具であると判明。
 「イゴマス、もうすぐ電池切れ。もっとイゴマスと遊びたかったら、新しい電池と、取り替えて」
 気軽に電池を求めるイゴマスだが、イゴマスにとっての電力とは地球人の生命エネルギーだったのだ……! とかなったらどうしようかと身構えましたがそんな事はなく、3人組と友好を深めていくイゴマス。ところが背中に貼られていたステッカーの内容に気付くと突如として人型にトランスフォームし、実は“落ちてしまった”のではなく“廃棄処分されていた”事が明らかに。
 その事実に衝撃を受けたイゴマスは、持ち主の姿を求めて闇雲に動き出した事で周囲に被害を与え、緊急出動するリーダーとフブキだが、レーザーネットによる捕獲に失敗。
 やむなく攻撃指示が出されたところでコスモスに変身するムサシだが、落ち着けモードで受けに徹するのかと思いきや、唐突にしばいたるでこらモードへチェンジすると、ロボットが投げつけた観覧車のようなものを雑に弾き飛ばした事で子供たちをその下敷きにしかける大やらかし。
 ……原田監督らしい冒頭のコミカルな間合いに、咲き誇る桜の桃色を敢えて過度に強調したミニチュアで幻想的な雰囲気を強める見せ方は面白く、異星のロボットと地球の子供たちの交流というテーマも好みだったのですが、戦闘が始まって以降はやたらちぐはぐで、従来作とは違ったコスモスのスタイルを、巧く物語に落とし込めなかった感があります。
 バリアを張って子供たちを守ったイゴマスは、青に戻ったコスモスの大宇宙パワーによって小型化されると、新しい友達――3人組に拾われたところで電力が尽き、現在の地球のテクノロジーでは作り出せない電池を、いつか作ってみせると少年が誓う鉄板のオチ。
 一つの出会いが、新たな未来の可能性に繋がっていく、といった着地点も悪くなく、雰囲気と要素は好きな物が並んでいたのに、コスモスさんが突然ドタマにきちまった理由が不明瞭で、もやっとするエピソードになってしまいました。

◆第5話「螢の復讐」◆ (監督:市野龍一 脚本:川上英幸 特技監督:村石宏實)
 群馬県・螢が村で発生した怪事件の調査に向かったムサシとフブキは、不法投棄のゴミの山に取り憑いたカオスヘッダーと遭遇。開発で失われた螢かと思えば、正体は発光するネジという表現は面白く、無機物を融合し、熱エネルギーを吸収していくカオスヘッダーは、巨大な昆虫の怪獣として実体化してしまう。
 村を守ろうとするフブキは昆虫怪獣に無謀な戦いを挑むも吹き飛ばされ、ムサシはコスモスへと変身。第5話にして3回目の撃墜寸前だったリーダー機を救うも、癒やしの波動は無機物に通用せず、早くも致命的な弱点が発覚して施術に失敗!
 だったらてめぇに“脳震盪の向こう側”を見せてやるぜ、とリーゼントモードにチェンジしたコスモスは、日輪の力を借りて今必殺のコロナエンド! で、昆虫怪獣のエネルギー吸収能力を越える超高出力の光線技により、怪獣を木っ葉微塵に吹き飛ばすのであった。
 最後に、螢が村は少年時代に病弱だったフブキが静養の為に一時期を過ごしていた事が明らかにされるのですが……視聴者へ向けた明確な示唆はあるにしても、キャップが変にこの事実を隠した事で、現場でムサシとフブキの間に必要以上の齟齬が生じたり、いくら成長したとはいえ村人がフブキに気付くような描写が入れられなかったりといった問題が発生しており、全体的に、フブキの一方的な美しい思い出に見えてしまったのは、クライマックスにおいてあまり効果的でなかったように思えます。
 恐らく、螢の居なくなる大きな原因となったトンネルによって、隣町の病院に運ばれた経験がフブキ自身にあって、そこにある自然かそこに生きる人間の利便性か、といった対立と重なる、甘い郷愁と苦い現実の矛盾がフブキの中にあったのかなと思われるのですが、それをハッキリと掘り下げずに遠回しな表現に終始した結果、サブタイトルに冠した「螢」も紋切り型のアイコン以上のものにならず、全体的に見せ方が迂遠に過ぎた印象。
 螢が村の環境改善に向けた動きにフブキは思わず笑顔を見せ、口うるさい先輩への親近感がムサシの中で上昇し、これが隣接効果だ、と一人で悦に入るキャップは、そんな二人をコンビで登録しようとしていた。
 「「春風コンビ??」」
 ……2021年に見ると、ヒウラキャップの、喧嘩も大いに結構、あの二人はきっと良いコンビになるぞー、と勝手に決めつけて思い切り放り出し、変なコンビ名を付けて一人でニヤニヤしている姿が、若者に自分の青春時代を一方的に投影する「駄目な中年上司」の見本みたいになっているのですが、このまま進んで大丈夫なのでしょうか。
 後、これはシリーズのセオリーもあるようなので今作だけの問題ではないのですが、副官の女性を下の名前で呼び捨てなのも、色々どうかと思います。
 わかりやすさへの意識があるのでしょうし、一応フルネームは名乗るも基本的に男性は苗字・主人公&女性は下の名前で呼ばれるのが世界観みたいなものだという理屈もわかる事はわかるのですが、その割には前回はフブキからの「アヤノ」呼びへの抗議があったり、今回は“呼称として基本的に存在しない事になっている”ムサシの苗字をネタにしたりで、どうも中途半端。
 これなら、フルネームを基準に、各々の距離感で呼称を変えてくれた方が、個人的には受け入れやすいところ(その辺りの問題のカバーとして、役職呼びを組み込んでいるのはシリーズのアイデアですが)。
 ……おまけで、第1話から思っていたものの、ここまで書くタイミングが無かった完全な余談なのですが、チームアイズの制服、肩アーマー強め&だぶついた生地の為に、全体的に隊員が太めに見えるのは、これもまた、キャップの陰謀なのでありましょうか(笑)
 次回――お陰で太めキャラのポテンシャルが微妙に発揮できていない気がする(というか、キャップが縦にも横にも存在感がありすぎる)ドイガキ回。