東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
旧ダイアリー保管用→ 〔ものかきの倉庫〕
特撮作品の感想は、順次こちらにHTML形式でまとめています→ 〔特撮感想まとめ部屋〕 (※移転しました)
HP→〔ものかきの荒野〕   Twitter→〔Twitter/gms02〕

負けたと思うまで人間は負けない

仮面ライダーアギト』感想・第21-22話

(※サブタイトルは存在しない為、筆者が勝手につけています。あしからずご了承下さい)
◆第21話「反転」◆ (監督:鈴村展弘 脚本:井上敏樹
 涼は謎の声に抗い、氷川くんは簀巻きにされた北條さんを救出し、小沢さんは残念そうだった。
 普通に酷いなこの人……。
 亜紀の念動攻撃を北條が目の当たりにした事で超能力の存在に信憑性が高まり、超能力の存在は人間にとってプラスなのかマイナスなのか、珍しく間に敵愾心を挟む事なく、氷川と北條が言葉をかわすのが、面白いシーン。
 「……私は、人間は善なるものだと、信じています。……意外ですか? 理由は簡単です。この私が、いい人間だからですよ」
 笑顔を浮かべた北條さんは自信たっぷりで断言し、基本的に、メンタルが、超合金。
 「…………はぁ」
 その背後に忍び寄る黒衣の女――亜紀だが、アンノウンから逃げ出したところで翔一と再会し、付き合っていたとか嘘八百、と告白。
 「一つ、忠告していいかしら」
 「はい?」
 「あなたは、記憶喪失のままでいたほうがいいわ。ずっと今のままで。記憶を取り戻した時、あなたは地獄を見る事になる」
 美杉教授のアドバイス以降、恐れを乗り越えた翔一くんが記憶を取り戻そうとする事がポジティブな行為として描かれていたのですが、ここでネガティブな要素が示唆される事で、その意味づけが“反転”。
 翔一の案内で、部屋にあがりこんでいた涼と再会した亜紀は一目散に逃げ出し、アンノウンに狩られる側から、人間を狩る側へと反転を経験した亜紀にとって、喪失を埋める為の復讐が死んだ男と繋がる行為だった筈が、死んだと思った男が生きていた時に、決して埋められない溝へと暗転してしまうのが痛切。
 もはや涼と寄り添う事は許されないと感じる亜紀(この辺り、元来の正気を感じさせます)は、涼の敵を排除し続ける事に己の存在異議を見出すと北條&氷川を襲撃し、自動車で顔面をはたかれる北條さん。
 もはや北條さんを護衛している節のある赤ジャガーが亜紀に襲いかかると涼がギルスへと変身するが、逃げ出した亜紀は女ジャッカルによってくびり殺されてしまい、そこに辿り着いた翔一がアギトへと変身。
 各キャラのスピーディな交錯は今作の魅力であり、処刑ソングに乗せて戦うアギトとギルス。腕のクローを伸ばしてヌンチャクのように扱う新技を見せたギルスはジャンピング踵落としで赤ジャガーを倒し、女ジャッカルに処刑キックを叩き込んだアギトは亜紀に駆け寄るが、既に絶命していた亜紀を地面に横たえる姿を、涼に目撃されてしまう。
 「亜紀……」
 アギトを犯人だと誤解した涼が絶叫と共にギルスとなってアギトに襲いかかり、通報を受けた氷川くんはG3として出動し、次回――痴情のもつれによる傷害沙汰に巻き込まれて、G3刑事、殉職?!
 アギトが亜紀に駆け寄る時に変身を解除していないのは物語の都合がだいぶ出ているものの、ここで錯誤からアギトとギルスが真剣勝負に突入するのは展開としては大変面白く、視聴者にとってのヒーローであるアギトが、涼/ギルスにとっての仇敵に反転したところで、つづく。

◆第22話「悲しい時は酒そして肉」◆ (監督:田崎竜太 脚本:井上敏樹
 とりあえず ギルスは撃っちゃう G3(笑)
 ライダー3人が一つの画面に収まるのは恐らく初な気がするのですが、第22話にして記念すべき勢揃いが、
 闇雲にアギトに襲いかかるギルス・アギトには好感度の蓄積があるのでとりあえずギルスを撃つG3・喧嘩を止めようとするアギト(なお三者とも事態をよく把握できていない)
 なのは、実に『アギト』真骨頂(笑)
 ギルスの踵落としで仮面を砕かれたG3の中身が露わになるもトレーラー組は相変わらず撤退撤退と叫ぶばかりで具体的な指示はなく、G3=氷川、と知ったアギトが猛然とギルスに連打を浴びせて逃走最優先した事で、なんとか二階級特進を免れる。
 取り残されたギルスは咆哮し、シートを被せて運ばれる死体が、ブレスレットの強調で間違いなく亜紀である事を示される描写が大変えげつなく、それを見つめる涼はアギトへと復讐の炎を燃やす……。
 完敗に落ち込む氷川くんに対し、「G3はいわばプロトタイプ」発言が飛び出し、僕は実験台だったんですか小沢さん?!
 氷川くんの尊い犠牲もとい貴重な実戦データにより、強化プロジェクトが進められるG3だが、その前に立ちはだかったのは、またもや北條透。
 G3-Xは、いつの間にやら北條が立案していたV1システムと次代の制式採用を巡って争う事になり、何度失敗してもくじけない精神力・多種多様な計画を実働段階まで持ち込む頭脳と行動力・自分自身を信じ抜く圧倒的な自己肯定力を兼ね備える北條さん、ある意味、昭和ヒーローのスペックなのでは(笑)
 一方、標的の背後に音もなく忍び寄るハチアンノウンが出現し、コンクリの壁の中に埋め込まれる犠牲者と、それを見て嘲笑を浮かべるハチの図が凶悪。
 小沢はV1システムの開発チームに名を連ねる、かつての恩師・高村(清水紘治さん!)の元を訪れると、凡俗が天才の私に歯向かおうなど愚かしいと理解できるでしょう(意訳)、とG3-Xの仕様書を見せつけようとするが、それを拒否される。
 「君は昔からそうだ。いつも人の上に立ってものをいう」
 「私はただ……!」
 ……あ、この人も、素なんだ(笑)
 思わぬところで根本的に北條さんと似た者同士なのでは? という疑惑の浮上した小沢さんは、美杉家に出戻りしていた翔一くんとキャンパスで出会い、強引に焼き肉屋へ。
 「俺、悲しいわけじゃないんです」
 「どういうこと?」
 「悲しいっていうより……なんかスカスカしてるんです」
 「生おかわり! ……スカスカ?」
 亜紀の死に落ち込む翔一くんは暗い表情でひたすら網に肉を載せ続け、恩師と思っていた教授に冷たくされて(嘘! 私ってゼミのアイドルじゃなかったの?!)と学生時代の記憶に修正を迫られる小沢さんは、ひたすら大ジョッキを空け続ける。 
 「亜紀さんが死んだ分だけ、世界が広くなって。その広くなった分だけ、スカスカしているような気がして」
 「……それで?」
 「椅子が一個余ってる、って感じなんです。亜紀さんが座ってた椅子なんですけど。でも……もう、そこには誰も座れなくて。だから寂しいんです」
 「生おかわり! 要するにぽっかりと穴が空いてるって感じね。で、どうするの? 君はどうやってその穴を埋めるつもり?」
 ちゃきちゃきとした小沢の反応に触れる内、翔一くんは少しずつでも肉を食べ始め、やがて次々と頬張り、それを見ながら、大ジョッキを飲み干し続ける小沢。
 「生おかわり!」
 長い会話シーンなのですが、小沢さんがビールの注文を繰り返す事で画面に無理なく動きが生まれると共に、それがちょっとした笑いと小沢のキャラの掘り下げになっているのが巧妙で、翔一くんとのやり取り含め、大変いい焼き肉シーン(笑)
 「……俺、頑張ります」
 「え?! なに?!」
 「俺が頑張って生きて、穴を埋めます!」
 「そうね。頑張りなさい」
 ようやく笑顔を浮かべた翔一くんは、亜紀の喪失を自らが“生きる”事で埋めようと肉を食べ続け、トレーラーに戻った小沢は、アルコールの力で脳細胞がトップギアだぜ!
 その間にもアンノウンによる不可能殺人は続き、標的の背後からエスカレーターを座って降りてくるハチーーー(笑)
 「急いだほうがいいでしょう。G3-Xと、V1システムの完成を。そして――どちらかがアンノウンを倒さなければならない」
 北條さん、色々と人格に難もありますが、こういう時、超真面目な顔をするのがズルい(笑)
 美杉家ではテンションの戻った翔一の指揮下で大掃除が行われていたが、ハチの気配にきゅぴーん出動。ハチが細剣を繰り出すのはデザインとあいまって格好良く、薙刀を取り出したアギトはカウンターでこれを撃破するが、もう一体、女性型のハチアンノウンの襲撃を受ける。
 一方、G3-Xの負荷シミュレーションを行っていた氷川は意識を失って倒れ……次回――不器用な分は弾幕でカバーだ!