東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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SURPRISEすぎるベルト

 放映当時は、立ち上がりにあまりノれなかったのと、ハイペースなギミックの投入についていけずに早々に脱落してしまった『ドライブ』ですが(確認したら第4話まで)、その後のあれやこれやで、ハイペースなギミックの投入にだいぶ耐性もついたので、この機会に改めて見てみたいと思います。感想は簡易気味を予定。
 ……とか考えていたら、初回はチェックする基本要素が多くて程々の長さになってしまい、いきなり皮算用が狂ったのですが、ひとまず、第1話の感想をば。

仮面ライダードライブ』感想・第1話

◆第1話「俺の時間はなぜ止まったのか」◆ (監督:田崎竜太 脚本:三条陸
 ある日突然、人間の思考速度や意識は正常なまま、肉体の動きだけが極度に遅くなる、という謎の現象が世界各地で発生する。
 「いわゆる、グローバルフリーズの勃発だった」
 ――あの日、俺の時間も止まった。
 ――あの日は俺の……心の破滅の日でもあった。
 同時に、正体不明の怪物たちが人類を襲撃するが、そんな混乱を救ったのは、謎のミニカー軍団?

 ――その時、俺はまだ知らなかった。凍り付く時間の中でただ一人、世界を救う為に、立ち上がった戦士が居た事を。

 それから半年……警視庁・特殊状況下事件捜査課、通称:特状課に所属する青年刑事・泊進ノ介は、グローバルフリーズの夜、自らの銃弾が原因で同僚を失ったトラウマを引きずり、考える事を放棄して抜け殻のような日々を送っていた。
 どのぐらい考える事を止めたかというと、明らかに規格のおかしいど派手な真っ赤な車を公用車として割り当てられても、平然と乗り回しているぐらい。
 グローバルフリーズ時の異常事態は「重加速現象」、一般には通称「どんより」として認知されており…………あ、片岡鶴太郎さんがやや苦手な事を、今、思い出しました(笑)
 サボりを決め込もうとして同僚の詩島霧子に折檻を受けた進ノ介は、どんより下で発生したと思われる連続殺人未遂事件の捜査に加わる事になるも、やる気皆無で車内の座席に寝そべるが、そこに響き渡る謎の声。
 「そろそろ、戦士になる決心をして、走り出してくれないかい?」
 進ノ介、逃げて。
 以前にも何度か悪魔のスカウトを行っているらしい謎の声は、自分に都合のいいように手を回して進ノ介は特状課に異動させ、この見るからにおかしいマシンを与えた事を説明。
 「君は超人だ。ただエンジンのかけ方を、忘れているだけだ」
 ……言い回しと声(クリス・ペプラー!)は格好いいのですが、やっている事と発言内容は、120%東映駄メンター。
 コプーとジョーカーと古賀博士と道士カクと烏丸所長とその他大勢が輪になって踊る中、車内を探り、声の出所を発見する進ノ介だが、見つけだした謎のベルト、強・制・装・着。
 「残念だったね。私はベルトだ」
 そして、強・制・発・進。
 東映特撮成分の煮込みすぎた焦げ跡、みたいで、このベルトだけ時空を超越した面白さで困ります。
 現場で赤く染まった被害者の手を見た進ノ介の中で止まっていた時間が動き出し、進ノ介がネクタイを締め直した回数をチェックしている霧子さん……。
 どんより下でも行動可能な容疑者を発見する進ノ介だが、容疑者は謎の怪人ナンバー029(おにく)へと変貌。ベルトの助けにより、腰にミニカーを身につける事でどんより下でも動けるようになる進ノ介だが、敵の増援の前に行く手を阻まれてしまう。
 (駄目だ……また救えねぇ!)
 だがその時、ど派手な車で駆け付けた霧子が、進ノ介同様にミニカーの効力でどんより下でも自由に動くと、超人的な身体能力を見せて、進ノ介を援護。
 「何してるんですか泊さん! エンジンかかったんでしょ? だったら戦って! 彼と一緒に!」
 何やら訳知りらしい霧子が指し示したのは、進ノ介の腰に巻き付いたままの、強制ベルト。
 「おいベルト!」
 「呼び捨ては失礼だね」
 「じゃ、ベルトさんよぉ! 俺はどうすればいい?!」
 この、いっそベルトに人格を与えて、音声も相棒も胡散臭い支援者も戦場のアドバイザーも全て任せてしまえというアイデアは、好きです(笑)
 「変身したまえ」
 「変身?」
 「他人の運転は、嫌なんだろ? 君自身、乗りこなすんだ」
 ベルトさんはシフトブレスを召喚し、今作はベルトとブレスの二重仕様。変身用のガジェットを、ベルト以外の装備品に接続して用いるのは、《平成ライダー》シリーズでも初でしょうか。
 「君は過去、大切なものを失った。だが今なら、救える。私と仲間たちが居いれば、この重加速の中でも、誰よりも速く動ける。……それが、戦士ドライブだ!」
 「だったら……今、この場から走り出して、あの人を、救えるなら! もう、考えるのはやめた! ――変身!」
 進ノ介は赤いシフトカーをブレスに装着し、胸部にたすき掛けにタイヤを填めた、ドライブ:タイプスピードが誕生。
 「なんだ貴様は?」
 「……悪いが俺も知らない。これから初乗りだ。怪物ども。ひとっ走り付き合えよ」
 腰を落とした姿勢で啖呵を切るのに合わせて主題歌が流れ出し、元々、バトル=主題歌を外すところから始めていた《平成ライダー》において、第1話からの主題歌バトルは相当珍しい印象ですが、ストレートなヒーロー性を強く打ち出した変身の成り行きに続いて、良し悪しとは別の前作との差別化、今作はこういう路線で行きます! を明示してきて、個人的にはやはりこういうのが好き。
 ドライブはタイヤスライディングキックから、超スピードのドライブ流星拳を怪物に叩き込み(これは、言われる前にやっておこう、的なアクセルトライアル(『W』)のセルフオマージュでありましょうか)、シフトカーをチェンジする事で、タイヤこうかーん。
 日輪タイヤで炎のキックを放ち、スパイクタイヤでトゲを飛ばし、シャドータイヤで手裏剣を投げ、初回から4種類の形態を見せる大盤振る舞い……放映当時はこの時点で少し戸惑った覚えがあるのですが、フォームチェンジのラッシュにもだいぶ慣れてきたので、今回は割と普通に受け止められました(笑)
 まあこれは、半年見てきた『鎧武』の戦闘がいまいち盛り上がれなかったのでその反動もあるとは思いますが、作品としても、多彩な能力を操る縦横無尽のハイスピードヒーロー、を強く押し出す形に。
 ……ただし、後ろから抱きついてトゲ付きタイヤで削り殺すなど、戦法はエグかった。
 増援の二体を倒したドライブは、残ったおにく怪人を4つのタイヤで押し潰し、弱火でこんがり炒めてから手錠……の代わりに高速乱反射キックでデリート執行し、必殺キックもエグかった。
 「救えた……」
 「ああ、君の力だ」
 ……まあ、それはそれとして、容疑者の確保をミリも考慮しないのは、東映刑事ヒーローのDNA。
 戦い終わった進ノ介は、霧子によって警察署の地下に連れて行かれ、そこには秘密のガレージが。進ノ介の行動を細かくチェックして付きまとっていた霧子はベルトさんのエージェントだったのかと合点する進ノ介ですが、ストーカーの手腕に目を付けられてエージェントにスカウトされた可能性もあるので気をつけて!
 一方、数字だけになったおにくは、ハートなる赤いコートの男の元に辿り着き……謎の怪人は何者なのか? 霧子は進ノ介の過去を知っているのか? そして何故、進ノ介はドライブに選ばれた超人なのか? 色々な謎を孕みつつ、つづく。
 放映当時に比べると色々と耐性が付いて、初回から矢継ぎ早のフォームチェンジを思ったよりすんなり楽しめましたが、一方で放映当時同様に気になったのは、重加速現象に対する警察サイドのリアクション。
 捜査一課の刑事は重加速現象そのものを「信じない」とか言い出すし、特状課のメンバーは謎の怪人について「ネットの世界じゃ常識さ」とステレオタイプな「ネットに真実が!」論法でかえって胡散臭くするしで、グローバルフリーズという明らかに大事件が世界規模(少なくとも東アジア地域)で起こった筈なのに、それに対する劇中世界の一般的認識、世界観を構成する巨大なハッタリの存在を、劇中人物の言行で補強するのではなく、むしろ曖昧にしてしまうのは、非常によろしくなかったと思います。
 捜査一課の刑事は、頭の固い変わり者、という設定なのかもしれませんが……むしろ捜査一課に置いておいていいのか不安になりますし、一般市民の用いているアプリなど、基本の土台を固める方に集中した方が良かったのではないかな、と。
 ……まあ、この後の大森P作品を見ていると、世界観のディテールがふわふわしたまま進むのは、作り方の癖なのか、という気もしてきますが。