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高速戦隊ターボレンジャー』感想・第49話

◆第49話「美しきキリカ」◆ (監督:蓑輪雅夫 脚本:曽田博久)
 東映特撮名物:勝手にお墓! を見つめるキリカがカシムの墓標に手を合わせようとして気配に気付き、背後を振り向くと砂浜の斜面の影にヤミマル、がストーカーみたいな描写になり、二人の心に生じ始めたズレを象徴。
 黙って立ち去るキリカの背をヤミマルもまた黙って見送り、勝手にお墓に赤文字でサブタイトルがかかる、凝った導入。
 一方、ネオラゴーンは108匹の暴魔勇者が封じられた暴魔界に繋がる大封印を解こうと画策し、ズルテンと一緒に大封印を探し回る役割で、赤ウーラー、出てきた。
 色違いの指揮官クラス、種族としてのフォーカス、割と面白かったメイン回(第11話)、と従来の戦闘員ポジションとは違ったアプローチが試みられるも、中盤以降はスポットが当たる事なく企画倒れに終わってしまったのが残念でしたが、最後の最後で、隊長の存在が拾われて良かったです(笑)
 ラキア親分の星座に異変が生じ、大封印が緩んでいる事に危機感を覚える高速戦隊では、「地球が、一向に綺麗にならないからです」と妖精からきつい駄目出し。
 すっかり忘れていた環境汚染ネタも再び取り上げられると共に、人の意識は変わってきているが、これまでの傷が深すぎて修復が間に合っていないのだ……とされ、これまでの戦いを無意味なものとしない意識も含め、現実を見据えた問題提起をしつつも、寓話としての希望を提示するのは、《スーパー戦隊》らしくて、好きなバランス。
 また、地球が自身の持つ自然のエネルギーを回復する時まで代わりに戦うのがターボレンジャーなのだ(地球に生きる一人一人の意識が変われば、ターボレンジャーは役目を終えられる――つまり、みんながヒーローになる)、と最終決戦を前に、ターボレンジャーの立ち位置を再構築。
 「世間もだいぶ賑やかになって、最後の戦いらしい雰囲気が出てきたぜ!」
 大封印の解放を阻止しようとズルテンを追うターボレンジャーだが、ヤミマルキリカに横槍を入れられ、カシムのペンダントを手に説得を試みる力だが、ヤミマルは頑なにそれを否定する。
 「俺は人と暴魔から受けた傷の痛みに耐えながら、2万年を生き延びてきたのだ! 2万年の痛み、もはや血で贖わねば消えんのさ!」
 「違う! 俺たちはみんな、仲良く生きていけるんだ!」
 「ははははは! 俺に人を愛せというのか! 暴魔を愛せというのか!」
 言葉の途中で背中を向ける事で徹底的な拒絶を現しつつ、振り向くと仮面モードになっているのは格好いい見せ方で、ヤミマルの怨念を最後まで軽く扱わないのは、嬉しいところ。
 ……もっとも、積もりに積もった2万と18年の怨念が重すぎてヤミマルの行く末に光の見せようが無くなってしまってはおり、このままでは、キリカが、お遍路の旅に出てしまう……!
 「俺の愛するのはただ一人……! 人と暴魔、二つの世界を支配する王国を気付き、黄金の椅子に座らせてやるぜ」
 キリカに向けて告げたヤミマルは、ワイルド時代からの相棒であった蜘蛛を変化させたヤミクモボーマにターボレンジャーを奇襲させ、戦闘開始。闇蜘蛛ボーマはヤミマルの分身的存在という事でか、銃・弓矢・斧・槍、と多彩な武器を器用に操り、体の模様が僧形を思わせるのは、大量の武器→武蔵坊弁慶のモチーフでしょうか。
 となるとヤミマルには源義経のイメージが入っていた可能性が出てきましたが、板東の土蜘蛛に始まったヤミマル、更に都落ちから東北政権に身を寄せた源義経を重ねたと考えると、中央政権(暴魔百族)に対する“まつろわぬ民”としてのイメージソースは一貫しているといえます。
 両陣営の激闘が続くその時、大地を割って暴魔界の妖気が地上に放出され、一同はまとめて吹き飛ばされて水落ち。力は負傷したキリカを助けて戦場を離脱し、その胸にカシムの想いを届けようと、繰り返し訴えかける。
 「君には人でありながら暴魔を、暴魔でありながら、人を愛した者たちの血が流れているんだ。憎しみを越えて、互いに愛し合う事の大切さを知った者たちの血が」
 今作はどうも、作品を通して敵対者への対応に腰が据わらない部分が目立つのが短所になっているのですが、融和を求め、憎しみの再生産を止めようとする者としてのヒーロー像は、80年代後半の曽田さんの中で、明確なテーマであったのかと思われます。
 「君はこの人たちが送り出した、この世に一番大切な事を伝える、この世で一番美しい存在。君自身が、二万年のメッセージなんだ!」
 「この私が……? この私が二万年のメッセージ?」
 力は、キリカそのものが憎しみの連鎖が断ち切られた象徴なのだ、と力強く告げ……元々キリカ(小夜子)、人間社会に馴染めずに居たところに「君は前世で俺の恋人だったのだ!」的に2万年前からの運命の王子を名乗る男に猛烈なアタックを受けて惹き付けられた部分があったので、「君はそもそも生まれた時から世界で唯一無二の存在だったんだ!」と投げ込まれた魔球《運命上書き!!》が、はからずもクリティカルヒット
 だがそこへ、人の赤い糸を邪魔する奴は馬に蹴られて死んでしまえと飛んでくるヤミマルスピンキック!
 キリカの迷いを断ち切ろうとペンダントごと力を刺し貫こうとするヤミマルだが、身を挺してキリカがそれを食い止め、予告の映像からぐさっと刺されてキリカ退場!? と思ったら、そのパターンはやらず、素手で受け止めるキリカ(随所で、“赤い血”を強調)。
 「キリカ……!」
 「ヤミマル…………ごめんなさい、ヤミマル! 私……私……!」
 2万年に渡り愛を与えられなかった男と、2万年前に愛を受け取っていた女に決定的なすれ違いが生じ、同じ流れ暴魔でありながら、ヤミマルとキリカの間に存在する2万年の隔たりが、届かない亀裂として大きく口を開くのが、互いにとって悲劇的。
 「……流れ暴魔ヤミマル! たとえ一人になろうとも戦うぞ!」
 「ヤミマル!」
 合流したターボレンジャーは、怒濤のGTクラッシュ2連撃で闇蜘蛛ボーマを撃破。巨大化した蜘蛛に対してキックオフの間もなく蜘蛛糸攻撃を受け、斧、銃、そして鎖鎌による攻撃を受けるが、掟破りのバトルボールダイレクトスローから鎖鎌を奪い取って反撃し、スクリューラガーキックでビクトリー!
 ヤミマルの挑戦を退け、カシムとの約束を果たしたターボレンジャーだが、大封印解放の危機は依然として続く。そして、袂を分かったヤミマルとキリカの運命は……。
 「俺は負けん! 流れ暴魔ヤミマル……たとえ一人になろうとも最後まで戦う!」