東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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青春は特訓の嵐

高速戦隊ターボレンジャー』感想・第47-48話

◆第47話「SOS変身不能」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
 便利屋扱いに耐えかねて、ドラグラス、本当に転職。
 権力の座を取り戻した暴魔大帝ネオラゴーンは、ドラグラスの内部に封印されていたドラグラボーマを大復活させて自画自賛し、見た目は物凄いインパクトになりましたが、器の大きさは以前と似たり寄ったりの模様です(笑)
 マスクの都合か口が開きっぱなしなのがグロさに輪を掛けるネオラゴーンですが、『仮面ライダーBLACK』や『機動刑事ジバン』初期など、生物のディテールを強めたグロテスク系怪人への回帰が、この時期にあったりしたのでしょうか(歪な人体の持つ怪物性への意識というか)。
 「みんな、ごめんなさい! こんな時、何も助けてあげられないなんて……本当にどうしたらいいのか……妖精のくせに、何もわからないなんて……」
 シーロンが大妖精17で己の無力さにうちひしがれる一方、ターボレンジャーと同様に流れ暴魔パワーを失った流星と小夜子は、突然の大月ウルフに拾われていた!(まさかの『大鉄人17』繋がり)
 老怪僧、といった見た目の人物が、流れ暴魔・カシムを名乗って二人を落ち着けようとしていた頃、落ち込む力たちは、山口先生と出会う。
 「君達が何かやっている事は、薄々察しています。でも私はずっと、君達を信じてきました。でもね……そんな暗い顔見てると、やっぱり心配だわ。もうすぐ卒業……夢と希望に一番満ち溢れてなければいけない時に、いったいどうしたの?」
 炎くんは野球推薦が取れず、山形くんは最後の大会に惨敗し、浜くんは例の一件以来クラスの女子に口を聞いてもらえず、日野くんは就職活動に失敗し、森川さんは志望校に合格できませんでした!!
 ……なんて事は無いと思いたいですが、なまじ前作が学歴社会と受験戦争の生む歪みをテーマの一つとしていた『ライブマン』だけに、高速戦隊の卒業後の進路は気になってしまいます(笑)
 高校生戦隊としてはもう少しスポットがあってもという要素ではありますが、主要視聴者層との感覚的同調が難しいので、イベントから外されたという面はありそうでしょうか。
 言葉に詰まる5人だが、そこにドラグラボーマが強襲し、噛みつかれた山口先生は犬歯が伸びて怪奇吸血人間に。
 逃げ惑う5人には更に流星と小夜子が迫り、久々の生スピンキック。力とカシムは共に無益な戦いを止めようとするが、流星と小夜子はズルテンの攻撃に吹き飛ばされ、絶体絶命のその時、5人の危機に雄々しく飛び立ったシーロン決死の妖精ダイナマイトが炸裂!
 直撃を受けた暴魔獣の牙が吹き飛ぶと山口先生は正気に戻るが、力を失ったシーロンの羽が山口先生の体に入り込むと、どういうわけか山口先生が小妖精の姿になってしまう強烈な画(笑) 一方のシーロンは人間の少女の大きさになると、その姿が妖精パワーを失った力たちの目にも見えるように。
 「博士、いったいこれは」
 「シーロンは、もう、妖精ではなくなったんだ」
 「「「「ええ?!」」」」
 「翼を失った妖精は、人間の姿になる。だが、その姿では、もうこの世には生きていられないんだ」
 瀕死のシーロンが妖精サイズのままだと色々とドラマが作りにくい(のがデビルボーマの回でとことんわかった)ので人間大になってもらいました、以上のなにものでもない展開なのですが、その状態でシーロンが死ぬと、妖精化した山口先生まで死ぬという謎のトラップカードが発動。
 …………これってつまり、シーロンが死ぬと、羽の憑依した山口先生が「新たなシーロン(地球最後の妖精)」となり、“人間として死ぬ”という事ですか?!
 誕生日回の際に2万と9歳について言葉を濁していたシーロンですが、シーロンとしてのパワーと知識が妖精の羽の方に存在しているとなると、現シーロンは9歳の時に事故にあって妖精の羽に取り憑かれて(それ以上いけない)。
 「……そうか、シーロンは俺たちを信じてくれているんだ。信じてるからこそ、こんな命がけの行為で俺たちを救ってくれたんだ」
 息も絶え絶えのシーロンを励ます力は、パッシブスキル《エースのメンタル》を発動!
 「俺たちはその信頼に応えて、なんとしてもシーロンと山口先生を助けなければならないんだ!」
 ノーアウト満塁を切り抜けてこそエースの証明、と状況を前向きに捉え直す力だが、そこに大帝パワーで入れ歯をはめたドラボーマが再び襲いかかり、史上希に見る、一時撤退→復帰速度(笑)
 「おまえ達との戦いも、今日で最後かと思うと、感慨深いものがあるぜ、ってんだ」
 暴魔百族のコメディリリーフとして作品に貴重な愛嬌を振りまいてきたズルテンですが、縦横無尽の風見鶏ぶりが最終局面に至って憎らしさにきっちりと転換され、


「しかし、相手が悪い」
「ズルテンだけはどうしても信用できない!」

 ……ズルテンに関しては、きっちり始末しておくべきでしたね炎くん!
 懸命に逃げ回る5人とシーロンは、ウーラー軍団の集中砲火を浴び、派手な崖落ち。
 「力……」
 「なんだ?」
 「……力の手……あったかい……」
 力は弱り切ったシーロンの手を握りしめ、ぐいぐいと攻めてくるシーロン、改めて、キャストと衣装デザインは大変良かったと思います。
 「なかなか感動的なラストシーンだぜってんだ。2万年の恨み、華々しく晴らしてやるぜ!」
 変身不能の高速戦隊は更なる集中攻撃を浴び、シーロンを守ろうとして諸共に消し飛ぶ5人……かと思われたその時、立ちこめる煙が晴れると立っていたのは、シーロンを守り抜いたターボレンジャー
 ナレーション「シーロンを助けたいという、5人の熱き想いと、ターボレンジャーを信じる、シーロンの想いが通じた!」
 完全に割り切った奇跡となりましたが、そもそも流れ暴魔と戦い続けていたら変身パワーが尽きた、から強引だった上に、ターボレンジャーがエネルギーを失って後に復活するのも都合3回目なので、消耗したエネルギーが充電完了した、以上のものにならず。
 そこを劇的にする為にシーロンとの絆を強調してはみたものの、シーロン=必ずしも妖精パワーでは無い為、力技に物語としての説得力を生じさせるに至りませんでした。
 「シーロン、俺たちはもう、誰にも負けない」
 「「「「ああ!」」」」
 「シーロン、見ていてくれ……ターボレンジャーは不滅だ! 行くぞ!」
 この辺りの勢いと思い切りの良さは、シンプルな作劇への回帰傾向の強い『ターボレンジャー』らしくて嫌いではないのですが、もう少し説得力が欲しかったところです。
 特に、劇中の筋道の立て方にかなりこだわっていた前作『ライブマン』と、土壇場に追い詰められればられるほど力が引き出されるのがオーラパワーと劇中の理屈を設定した前々作『マスクマン』の後なので、悪目立ちしてしまいます(上述したように、今作の設計そのものに、それらへの反動の要素があるので、難しい問題ではあるのですが)。
 ……『マスクマン』は改めてちょっと反則スレスレの設定というか、死中に活ありメディテーションの心意気だと思うと、死に瀕して妖精パワーが復活するのも筋が通ってしまい、だいたいどんな局面も「オーラパワーを信じるんだ!」で、理屈が成立してしまうわけですが(それが作劇として面白かったのかどうかはまた別問題として)、やはり鍛え上げた筋肉は嘘をつかない。
 そんなわけでこれが、体育会系戦隊のスピリットだ! と復活したターボレンジャーは反撃の主題歌バトル。
 (余談ですが、後の高校生戦隊である『電磁戦隊メガレンジャー』が“理系戦隊”だったのは、時代の変遷も含めて面白いところ)
 5人は個人武器を振るってウーラー軍団を薙ぎ払い、ドラグラボーマをジャンピングGTクラッシュで一刀両断すると、それぞれが個人武器を構えながらのビクトリー!
 巨大戦は、飛び上がったドラボーマに空中でバトルボールを叩き込むと、スクリューパンチで追撃し、ブーメラン攻撃で反撃されると即座にターボロボを召喚してスーパーシフトし、ちょっと揺れたが、瞬殺。
 ターボレンジャーの復活と共にエネルギーを取り戻したシーロンは、山口妖精に懸命に呼びかける博士の下へ向かうと先生を元の姿に戻すが、結果として痴漢行為と誤解され、池に叩き落とされる博士であった。
 腰が引けて逃げようとしたのかもしれませんが、山口先生にまくし立てられた博士、物凄くスムーズに柵を乗り越えていて、なぜ自分から落ちにいきますか(笑)
 「ターボレンジャーは自らパワーを取り戻した。この俺たちに出来ない筈がない!」
 流星と小夜子は捲土重来を期し、それを気遣わしげに見つめる老流れ暴魔の手にするペンダントにはどんな意味が……? で、つづく。

◆第48話「流れ暴魔の秘密」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
 「貴様たちは、あの極限状態の中で変身した。貴様たちに出来て、俺たちに出来ぬわけがない!」
 大嵐の中、激しい風雨に打たれる流星と小夜子は、試練を、もっと試練を! と天に向けて叫びながら雷に打たれ、『マスクマン』を通り越して、若干『コンドールマン』ぽくなって参りました。
 老カシムも、風貌としては信頼と実績の東映駄メンターを彷彿とさせますし(笑)
 「流れ暴魔に……必ず、流れ暴魔に! 変身してみせるぞーーー!」
 流星と小夜子は一度は力に落雷の直撃から助けられるも、それを振り払って電撃爆破デスマッチに身を投じるが、そこへ姿を見せたカシムによって暴風雨が収められる。
 「変身してはならぬ。今のおまえ達の、その姿こそが、真の流れ暴魔なんじゃ」
 永遠の18歳が?!
 「なにを言うか。これでは戦えぬ」
 「流れ暴魔とは、戦う者にあらず! 本当は、この世に愛と、平和をもたらす者なんじゃ」
 遠い遠い昔――暴魔百族が人と妖精に戦を仕掛けた時代、暴魔の中でも凶悪無比と恐れられたキメンボーマは、戦いで傷つき倒れたところを美しい人間の娘(森下雅子さん二役)に救われ、恋に落ちる。やがて二人の間には子供が生まれ……
 「それが、流れ暴魔一族の始まりなんじゃ。流れ暴魔とは、人と、暴魔とを繋ぐ者なんじゃ。人と暴魔とが、仲良くする事。それこそが、キメンボーマと、美しい娘の願いだったんじゃ」
 半人半魔の流れ暴魔とは、二つの世界を支配する者ではなく、二つの世界の架け橋である、というのは今作これまで登場した数々の裏切り者の存在からも、納得のできる妥当な落としどころ。
 「黙れ……黙れ! 誰がそんな話を信じるものか!」
 だが、迫害の歴史をその身に背負う流星は、踏みにじってきた者たちを踏みにじる為の力に執着し、カモン落雷! スイッチON!
 「俺を……変身させてくれぇぇぇぇ!!」
 「そんなに変身したいか……よおし、変身させてやろう」
 その嘆願を聞き届けたのは天、ならぬ暴魔大帝、なのは大変いやらしい構成で、暴魔城から放たれた赤い海綿状物質に巻き付かれた流星は、暴魔獣ゴムゴムボーマへと望まぬ変貌。
 見た目としてはサンゴというかフジツボというか、イソダマリボーマとでもいったデザインですが、素体が貼り付く仕様が、ゴムっぽいといえばゴムっぽいといえない事もないでしょうか。
 流星光としての人格も理性も失い、哀れな獣と化したゴムゴム流星はターボレンジャーばかりか小夜子にも牙を向けるが、それでも懸命に流星光を取り戻そうとする小夜子をかばったカシムがペンダントから光を放つと元の姿に戻り、流星は小夜子としかと抱きしめ合う。
 直後、二人を大帝ビームが焼き尽くしたかと思われたが、結果的にそれが死中に活ありメディテーションを発動させ、ヤミマルとキリカが大復活!
 「……変身してしまったぁ……」
 「あのパワーに耐えるとは」


 「みんなどういうつもりなのかしら?!」
 「――特訓だ!」
 「「え?」」
 「これこそ若者達が、自ら己に課したトレーニングなんだ。自ら危険な状況に身をさらして、絶体絶命の中から、未知の力を引き出そうとしてるんだ!」
(『光戦隊マスクマン』第3話「未知への第一歩!」)

 ……完全に、これなのですが(笑)
 戦いを止めようとするカシムはヤミマルに蹴り落とされ、落下ダメージによって変貌したその正体は鬼面ボーマ。年老いた暴魔は、駆け寄ってきた力たちにペンダントの中身を見せ、小夜子こそが鬼面ボーマと人間の女性との間に生まれた実の娘である事を明かす。
 「小夜子を助けてやってくれ……流れ暴魔の、本当の心を、わからせてやってくれ……頼む」
 鬼面ボーマは消滅し、ペンダントの使用などで消耗していた様子はあったものの、トドメを刺したのがヤミマルになったけど、それでいいのでしょうか……。
 雪辱に燃えるヤミマルキリカは、ゴムゴムズルテン&ウーラー軍団を蹴散らしており、受け取ったペンダントを手に二人に真実を突きつける力。
 「キリカ! 俺たちの約束を忘れたのか?! 二人で世界を支配するという約束を!」
 父の言葉か、ヤミマルへの想いか……惑えるキリカの表情と、それを取り巻く世界の姿を美しく切り抜くのは実に長石監督で――
 「げっこうけーん!」
 千々に乱れるキリカは血の宿命を振り払うかのようにスローモーションでターボレンジャーを攻撃。
 こうなったら戦意喪失するまで殴ってから話し合う、とヤミマルキリカに反撃を決める高速戦隊だが、復帰したゴムゴムズルテンが乱入し、まあゴムゴムのまま死んだらそれはそれだな……と思われたズルテンは、一斉射撃を受けてゴムゴムが外れるとウーラーを巨大戦の生け贄に捧げて撤収(まだ仕事が残っているのか微妙なので、無様な死に方としてはここで退場しても良かった気もしますが……)。
 ラガーファイターのキックボールを跳ね返す巨大ゴムゴムウーラーだったが、ラガーは更にそれをトスからアタックで叩き返し、スクリューラガーキックでビクトリー!
 東映特撮名物:勝手にお墓を砂浜に建てた高速戦隊は、墓標代わりのカシムの杖に、流れ暴魔の心を小夜子に伝える事を誓い、それを遠くから見つめるキリカの想いや如何に、でつづく。