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人形の塔

仮面ライダー鎧武』感想・第39話

◆第39話「決死のタワー突入作戦!」◆ (監督:山口恭平 脚本:虚淵玄
 「な、なんだよ! この……黙ってる奴だけが格好悪いみたいな流れは」
 紘汰たちが、プロフェッサーの誘いに乗ってタワー突入を決断していた頃、舞さんに白いワンピースを着せてニヤニヤしているミッチーーー! ミッチーーー!
 兄さんはミッチをそんな子に育てた覚えはありません!
 ……真面目な話としては、舞に対するミッチの身勝手な理想の押しつけ――都合のいい人形としての彼女を象徴しているのでありましょうが(古典的な、塔の中の姫君モチーフでもあり)、象徴としてのビジュアルに引っ張られすぎてミッチの趣味にしては何者かの精神干渉の気配が濃く…………つまり兄さん?! シャドー兄さん人格の影響なの?!
 ユグドラシルは呉島の男をそんな風に育てた覚えはありません!
 人類文明存亡の危機にそれぞれの秘密が明らかになっていく中、後戻りの出来ない道へと踏み込む事で轟轟パワーに目覚めたミッチは、今はまだ舞さんに理解されない自分さえも肯定してみせるが、舞の横に浮かび上がるシャドー貴虎。
 「彼女がおまえを許すことなどない。おまえは誰にも理解されない」
 「うるさい!」
 「未来永劫――誰にもな」
 ミッチの肩に手を置きながら、片方の眉だけ持ち上げて囁きかけるシャドー兄さんが超楽しそうで、キャラクターとしての貴虎の出番を確保しつつ、ちょっと違うトーンの芝居をやらせた上で、なおかつその存在がミッチが必死に押し込めようとする自身の葛藤・不安・本音といったものを投影しているのは、大変良いアイデアでした。
 ミッチが自分にレールを押しつける兄を憎みつつ、どこかでそんな兄に憧れ甘えていた部分が、兄の不在により膨れ上がるのは辛いですが、兄さんに必要なのはミッチ(とミッチが好きなもの)を認めてあげる事だったし、紘汰に必要なのは、たまにはミッチを甘えさせてあげる事だったのかなと(むしろ紘汰がミッチに甘えていたのがこの二人の関係の困ったところであり、ミッチはミッチで紘汰に存在しない理想像を投影していたのがタチが悪い)。
 一方、プロフェッサーを加えた紘汰一行は沢芽市の封鎖線を越え、既に自衛隊が、沢芽市の封鎖よりも、安全地帯の防衛を優先している事を知る。
 衝突に次ぐ衝突で世界が次々と拡大していくのは今作の特徴的な構造で、遂に沢芽市の外へと飛び出して崩壊しつつある全世界と繋がるスケール感は今作ならではの意欲的な仕掛けといえますが、エピソード単位のヒーローバトルとそれが巧く噛み合わなかったのは、惜しまれるところです。
 スケールの拡大とヒーローバトルが両立しえずにどちらかを選ぶものだとするならば、後者を優先してくれた方が好みであり、そこは残念ながら、今作の方針と合わなかった部分。
 今作と対照的に、敢えて世界にミニマムな境界線を設定した上で、“街のヒーロー”としてヒーローバトル重視のスタイルを貫いたのが『仮面ライダーW』といえますが、“箱庭(風都)と地球の記憶”を結んだ『W』、“箱庭(学園)と宇宙”を結んだ『フォーゼ』と並べた時に、今作における“箱庭(沢芽市)”は異界(ヘルヘイムの森)の侵食を受けており、最初からその境界線が破壊されるものとして設定されている(登場人物の持つ境界線も次々と破壊されていく構造である)のは、それぞれの作品に設定されたミクロとマクロの関係の中で面白い点。
 ちなみに『W』は箱庭の内部の人間で物語が進み、『フォーゼ』は箱庭の外側から来た弦太朗がトリックスター(二つの異なる世界を媒介し、ある社会の秩序を破壊する事で世界の在り方を変える者)の機能を果たす点で対照的な構造なのですが、今作においてはDJサガラがトリックスター的役割といえるでしょうか。
 『W』以降、《平成ライダー》の再構築が行われる中で、それと並行して“ヒーローと世界の境界をどこに置くのか”といった命題が、この時期の作品には存在していたのかもしれません。
 「全世界のクラックが開いたのは、オーバーロードが原因で、それは人類から、ミサイル攻撃を受けたせいだから、つまり、ユグドラシルタワーが陥落したせい……ぜんぶ私のせいだ! あっはははははは!」
 台詞に合わせて動き回りながら、全キャラと絡んでくれるプロフェッサー(笑)
 「早くなんとかしないと」
 「ユグドラシルタワーを奪還すれば、事態を収拾できると? ……それはちょっと見通しが甘いんじゃないかなー」
 「なんだと?!」
 ……え、いくら紘汰さんでも、タワーを取り戻したら事態を収拾できるとは思ってませんでしたよね?!
 とりあえず、さらわれた人々を救い出すのが目的で、そこまで計画的な行動では全く無かったと思うのですが……そ、そのつもりだったの?!
 話の流れで紘汰に余計なデッドボールがぶつけられた気がする中、バリケードをどけて先を急ぐ一行だがインベス大軍団に道を阻まれ、ブラーボとグリドンが《ここは任せて先に行け》を発動。
 「なんか、格好つけちゃったけど、マジでやばくないですか、俺ら?」
 「ここが根性の見せ所よ坊や。気合入れていくわよー!」
 「了解!」
 二人は数に勝る敵に果敢に立ち向かい……まあ、スイカの一つぐらい置いていってもらっても良かった気はします!(笑)
 ヘルヘイムの森では、緑ロードの物言いに不審を抱くミッチが校長先生に舞を預け、なんだか舞のほだしパワーが炸裂しそうな気配が濃厚に漂いますが、どうにも舞には思い入れを持ちきれずじまい……戒斗と絡むとお互い対等にやり合っている感じが悪くないのですが、紘汰と同じフレームに入ると急に“立てる女”になってしまうのが、ピンと来なかったというか。
 秘密トンネルの入り口に辿り着くも、ピエールと城乃内を待とうとする紘汰をプロフェッサーが挑発し、胸ぐら掴んだ紘汰を止めた戒斗は「こいつの言い分は間違ってない」と言いながらもプロフェッサーを殴り飛ばし、ここに来て、目的の為に前を向いて行動しながらもけじめはきっちり付ける戒斗の方が格好良くなっているのですが……。
 「これからは無駄口叩く前に、殴られる覚悟をしておけ」
 トンネルに入り込む一行だが、内部に仕掛けられていたスイカセキュリティシステムが発動し、今度はバロン・マリカ・ナックルが《ここは任せて先に行け》を発動。バロンはナックルにスイカをレンタルし、持ってたよスイカ
 多くの仲間達の協力の元、紘汰とプロフェッサーはいよいよタワーの地下に辿り着き……市外まで車でけっこう走っていた様子を考えると、市内のタワーまでトンネル内部をどれぐらい歩いていたのか計算がちょっと怖いですが、体力はヘルヘイム果実から無尽蔵です!
 ところがタワー入り口には緑ロードが警報フルーツを仕掛けており、玄武ロードが再登場。
 「ふふふふ! そんなものは効かぬわ!」
 ……どうもこの、突然ノリで喋りだす下級オーバーロードに慣れません(笑)
 「設計者自ら特別にチューニングしたゲネシスドライバーの性能、見せてあげようじゃないか」
 傍観を決め込むかと思われたプロフェッサーもデュークで助勢し、自ら戦闘技術は無いと称するPレモンが何故強いかは、ドライバーが高性能だからと自己申告。ホログラム攻撃による攪乱からレモンシュートでダメージを与えるとトドメを鎧武に譲り、鎧武は勝ち鬨から更に極を発動するとフルーツ盛り合わせセットで玄武を撃破し、デュークは後方からそのデータを収集する。
 「やはり凄まじい力だ……この性能、なんとしても解析しなくては」
 あくまで自らの目的の為に他者を利用しようとするプロフェッサーの暗躍は続き、次回――紘汰に新しい友達が誕生?