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「冒険は命令されてするもんじゃない」

『機界戦隊ゼンカイジャー』感想・第4話

◆第4カイ!「ブルブルでっかいおっせかい!」◆ (監督:田崎竜太 脚本:香村純子)
 「感じるぞぉ……ボクシングの世界の力ぁ!」
 なにそれ(笑)
 早くも当面、これだけで笑いが取れる飛び道具が生まれていますが、閉じるギアからの世界の解放をイジルデに伝えた掃除係――青いキカイノイドが口止めとして抹殺されそうになる一方、街ではボクシングワルドの能力により、脳裏にゴングが鳴り響いた人々が、次々とボクサーとして覚醒していた(笑)
 駄菓子カフェの常連客が、指輪交換寸前の新郎新婦が、サイン会中のアイドルが、次々とボクシングローブをはめて拳を振り回し、新郎新婦がキレッキレの動きでファイトし始めたり、アイドルがサイン会に来たファンと戦う展開と映像で十分以上に面白かったので、加工付きのストップモーション出崎統……?)はやや過剰になった気はしましたが……逆にそうしないと、人が人を殴る映像が生々しくなりすぎる的な配慮もあったでしょうか。
 なお、駄菓子カフェの常連スーさん役は、スーツアクターとして数々の戦士を演じてきた喜多川2tomさん。スーさんとのやり取りにより、赤黄桃がすっかり店に馴染んでいる事と、愛玩動物扱いとはいえ、老人を真剣に気遣う黄の印象が良くなったのは、鮮やかなポイントでした。
 介人をノックアウトしたスーさんを追って外に出た一同が目にしたのは、街のあちこちに出現したファイトクラブと、ウェディングドレス姿の新婦が新郎の左脇腹にボディを叩き込み、左右のコンビネーションでガードを崩してから、下がった顎に強烈な右アッパーを叩き込む光景であった(新婦さんは今回の陰のMVP)。
 「これどういう状況……?」
 揃って困惑していると、そこへやたら物々しくボクシングワルドが姿を見せ、リングとゴングの一体化した顔のデザインがなかなか秀逸。また、怪人の登場時と、この後の撤収時に、教会のチャペルとボクシングのゴングが掛けられているのは、冴えた演出。
 「貴様等の世界を、ボクシングトピアのルールに変えてやったボクシング!」
 仕掛けられた花火みたいに真っ赤に燃え上がっていく修羅の世界ボクシングトピア……怒りの介人たちは、戦闘員に追われる青いキカイノイドの騒動に巻き込まれながらも変身し、ボクシングワルドはその姿に驚愕。
 「なに? 貴様等ゼンカイジャーだったのか?!」
 「おまえ何も知らないな!」
 「命令さえ遂行すれば、余計な事は知らなくていい。それが我らのぼくしーんぐ!」
 戦いが始まるが、逃走中に戦隊ギアを目にした青が乱入して次々と疑問を投げかけ、ボクシングワルドに連れ去られそうになった青を助けたゼンカイジャーは、ひとまず撤収。
 「俺は介人。君は?」
 「え?」
 「君の名前は?」
 「名前……私は、ブルーンと申します」
 知識や名前、といった要素が全て、クライマックスへ向けて伸びる綺麗な一本の線になっているのは、実に香村脚本らしい構成ですが、それはそれとして、質問はすぐに、拷問に変わるんだぜ?
 「おまえ、イジルデ様、って言ってたよな?」
 「裏切って逃げたとか、そういうあれ?」
 「いえ、裏切ったつもりはないのですが……」
 「じゃあトジテンドの手先って事か?」
 返答次第では即刻銃殺ですね!
 「私、掃除しかさせてもらえなかったので、手先といえるかどうか……」
 生真面目に答えるブルーンだが、詰問そっちのけでアース-45世界の風物に次々と興味を示し、いちいち説明してくれる介人、ぶっ飛び気味の暴走系な割に嫌な感じにならないのは、この付き合いの良さゆえかもしれません(笑)
 「そんな事より、こっちの質問に答えろ」
 軌道修正しようとするこの戦隊の良心だが、そこにスーさんが現れると青に襲いかかり、イジルデの命令によりボクシングワルドが解き放った野獣たちの挑戦を逃れて、図書館に隠れる介人たち。
 「私、知りたい事があると止まらなくなるたちでして……」
 旺盛な好奇心にブルブルするあまり、庶民のままでは知ることの出来ない知識や技術を求めてトジテンドに押しかけ、イジルデの下で掃除係をしてきた過去を語るブルーンは、知識の宝庫である図書館の書物に心を奪われるが、再び挑戦者たちの追撃を受け、場所移動。
 地下に潜んで改めて尋問が行われ、基本、一続きの長い説明シーンなのですが、ドタバタ逃走劇を挟んで笑いどころと場面移動の緩急を付けながら、ブルーンのキャラクターを掘り下げていく構成が、実に鮮やか。
 トジルギア、平行世界支配計画、不具合と部分的融合……と、そういえば介人たちは把握していなかったトジテンド側の目的や事情がしっかりと共有され、ミステリには、誰もが目にしていながら認識していない「実は○○が犯人だった」という古典的な心理トリックがありますが、人格を認められていない掃除係の口から重要情報がもたらされるのが、スムーズかつトジテンドの支配体制の闇を炙り出して、全力全開の切れ味。
 「それで俺たちはこの世界に!」
 「不具合さまさまだなぁ」
 事情を把握すると共に、キノコと氷ワルドの撃破と世界の解放が紐付けされたところでまたも襲撃を受け、地上に逃げ出す介人たちだが、イジルデ率いる本体と挟み撃ちに遭ってしまう。
 「待っていたぞ、掃除係」
 「今度こそスクラップ、ボクシング!」
 ブルーンに隠れるように告げ、イジルデに力強く向き直る介人。
 「俺、絶対あいつら倒すから。……勝手によその世界閉じ込めて、勝手によその世界使って、俺たちの世界に酷い事させて、世界ってそういうもんじゃねぇから!」
 これまでは降りかかる火の粉だったトジテンドの、具体的な悪行を知った上で改めて打倒を宣言し、「俺たちの世界に酷い事して」ではなく「俺たちの世界に酷い事させて」で、勝手に閉じ込められて利用される他の世界の為にも怒っているのが、実に劇的に介人のヒーロー像を示してお見事!
 そして……
 「全員まとめてスクラップだ!」
 「イジルデ様! ……いえ、イジルデ! あなたは私に、何も教えてくれませんでした。でも私は……今日学びました! これまで私が、どんなに狭い世界に居たかという事を! 知る事で、世界は広がるという事を!」
 「掃除係が偉そうな事を」
 「お別れに……私が教えてあげます! 私の名前はブルーンです!!」
 知識を与えず、個を圧殺しようとする支配者に向けて、ブルーンが訣別と共に自らの個の証明を叩きつけるのも気持ち良く決まり、そんな彼らの“個”を認める者こそが、五色田介人、といえそうでしょうか。
 また、前回は他者との出会い、今回は知るという事(どちらも日常で誰もが出来る事でもあり)で、「新しく広がる世界」という要素が繋げられており、スカウト後半の二人で、『ゼンカイジャー』のテーマを明確に押し出してきたのも、お見事。
 その目指すものはいわば、世界と世界の出会い(比喩でもあり劇中の実際でもあり)を幸福なものにする事であり、介人にとっての「世界ってそういうもんじゃねぇから!」が、両親の影響で平行世界の存在を信じ続けていた青年らしいモットーとなって、ゼンカイジャーの真ん中に立つヒーローの姿が、きっちり確立。第1話冒頭でキカイノイドに率先して握手を求めていたのも、ただの好奇心でも何も考えていないのでもなく、介人なりの信念に基づいた行動であったとなり、巧い。
 同時に、トジテンドとは如何なる悪なのか、も明確になり、立ち上がり4話でここまで納めてきたのが脱帽ですが、《スーパー戦隊》メインライター3作目にして、香村さんが完全に、更に一つ上のステージに昇った感。
 「介人さん、私も一緒に戦わせて下さい。私はこの世界で、あなたのもとで、もっと学びたくなったのです!」
 ガトリングを受け取ったブルーンは、射殺も暴発も無しで30バーンを発動し、
 「轟轟パワー! ゼンカイブルーン!」
 により遂に――


「五人揃って!」
「「「「「機界戦隊・ゼンカイジャー!!」」」」」

 5人揃った初戦が洗脳市民相手の戦闘となったゼンカイジャーは、魔法のインターバルで市民をバトルから遠ざけると、今回も爆発バトルを挟み、ツルハシ振るってブルーンは次々と戦闘員を薙ぎ倒す。
 「おお、凄いパワーです! 介人さん、轟轟パワーってなんでしょう?」
 恐竜とか百獣とか魔法と比べるとだいぶ謎ですよね……。
 「轟轟戦隊ボウケンジャーをイメージしたパワーってことチュン!」
 つまり……自己肯定力ですね!!
 ボクシングワルドのロケットグローブに対し、まさかの上半身分離したブルーンは、そのまま怪人の懐へ飛び込むと、地球クリーン作戦もとい轟轟轢殺ナックルを叩き込み、ここまでのところバトルスタイルは一番好み。
 基本的にどのキャラも、当然というか変身前の方が愛嬌のある顔立ちのデザインですが、ブルーンに関しては、昭和のガリ勉みたいな顔から変身すると正統派の重戦士顔になるのが格好良く、ビジュアル的には一番気に入りました。
 ゼンカイザーは17バーンを発動し、五星戦隊ダイレンジャーの力で長い獲物を使っての総攻撃から、史上初、5人がかりのゼンカイフィニッシュバスターにより、乾ききったリングサイドの暗い残酷な淵にノックアウト!
 巨大ボクシング怪獣が誕生すると世界にリングが出現し、段々慣れてきたゼンカイオー赤黄だがパンチに苦戦。ブルーンが巨大ダンプに変形すると「邪魔なリングは、お片付けです!」とリングを破壊するが、巨大セコンド怪獣が助けに入ってダンプを攻撃し、マジーヌがドラゴンへと変身する。
 ボクシングのリングを背景にゼンカイオー桃青が誕生し、変身バンクが勢いの産物めいてきて数ヶ月後には「なんでこの背景なんだっけ……?」となりそうなのが若干の不安を誘いますが、挿入歌をバックにラウンド2開始。
 セコンド怪獣に苦戦するゼンカイオー桃青は、掟破りの電流デスマッチ魔法でルールを変えてダメージを与えると、桃赤と黄青に入れ替わってのラッシュ攻撃でセコンドを爆殺。再び赤黄と桃青に戻ると轟轟ツルハシストラッシュを炸裂させ、二身合体のスピーディな組み替えが面白く、新機軸の押し出しとしても充実した巨大戦となりました。
 ボクシング怪獣は真っ白に燃え尽き、解放されるボクシングトピア。
 「セカイゼンカイ! オールオッケー!」
 お掃除係としての腕を見せたブルーンは、スーさんが大暴れした駄菓子屋を綺麗に片付けると、戦隊ギアは、別世界を閉じ込めてはいない事について確認。
 「平行世界で活躍した、スーパー戦隊をモチーフに作っただけっチュン。そんな酷いこと、功博士と美都子博士はしないチュン」
 え……うん……鳥はこう主張していますが、その点に関しては、ちょっと保留しておきたいと思います。
 「イサオと……ミツコ……?」
 10年前から行方不明になっている介人の両親の名前に、首をひねるブルーン。
 「以前イジルデの研究所に、そんな名前の人が居たと聞いたような気がしまして……」
 以前・そんな・聞いた・ような・気が、と凄まじくあやふやながら、第2話で露骨に怪しかったイジルデの態度が早速拾われ、果たして介人両親の行方や如何に……? で、つづく。
 受け手に楽しく想像を膨らませる情報を提示しつつ、一つのカードが開くと次の伏せたカードがまた生まれ……というのは香村さんの得意とするところなので、両親とキカイトピアの関係が、どう展開していくか楽しみですが、次回――寿司。
 ……寿司といえばカレー、カレーといえばゴーオンゴールド、ゴーオンゴールドといえば合体萌え、という事ですね?!(何が)
 朴訥なインテリと見せて、戦闘員の抹殺を「掃除」と称する殺意の高さを見せた青、声を務める佐藤拓也さん(マスク先輩!)が結構好きというのもありますが、変身後の格好良さが光り、今のところゼンカイメンバーでは、赤と青が割と好き。遂に5人揃ったところで、今後の化学反応がどうなっていくかは大変楽しみです(黄は割と流されるままに馴染みつつある感じですが(笑))。