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遠い星から来たあいつ

ウルトラマン80』感想・最終話

 春爛漫の平和な九州・ミナミハラ市――ところが突如として発生した猛烈な寒波により街が瞬く間に氷に覆われていき、動物園のキリンや象も、ついさっきまで動き回っていたそのままの姿で氷の彫像と化してしまう……

◆第50話「あっ! キリンも象も氷になった!!」◆ (監督:満田かずほ 脚本:石堂淑朗

 最終回らしからぬ、として著名(?)なこのサブタイトル、今回配信で『80』を見るにあたり、一体どうしてこのサブタイトルになってしまったのか、そして如何なる内容なのかを自分の目で確認するのが目的の一つになっていたのですが、だいたい3クール目ぐらいまで見たところで、『80』ならこのサブタイトルはなにもおかしくないし、最終回でも普通という結論に到達(笑)
 それはそれとして、一体全体どういう意味合いなのかと思ったら……ナレーションさんの感想でした!!
 事あるごとのナレーションさんによる侵食が激しかった今作、最終回のサブタイトルとして、ふさわしいといえば、ふさわしいとはいえるのかも(笑)
 第48-49話は、チーフ助監督を務めていた宮坂監督でしたが、最終話だけメイン監督といっていい湯浅監督なのかな……と思っていたら、今作ではプロデューサーに名を連ねていた満田さんが登板し、冒頭、低い効果音とともに薄暗い通路を真剣な表情で歩いてくるキャップとチーフ、異常事態に気象班の意見を聞き「ひょっとすると……」のところでかかる深刻なBGM、と凄くオールドスタイルな見せ方。
 なお私は『ウルトラセブン』の満田演出が大好きだったので、こういった見せ方の方がすーっと入れてしまうのですが、BGM含めて、雰囲気がガラリと変わるので演出って恐ろしい(逆に言えば、『80』は意識的に違う路線を目指していたのであろう事が浮き彫りになりますが)。
 「果たしてこれまで怪獣を倒してきたのは、本当に我々だったろうか」
 軽い調子でふざけ合う後輩ズを一喝したキャップは、重々しく呟くと警戒態勢を指示、何やら意味ありげな視線を矢的へ向ける……。
 (キャップは、何かを心に決めているようだ。もしかしたら、ウルトラマン80の……)
 そして出現する、怪獣マーゴドン。
 UGMは総力をあげて九州へと出撃し、猛烈な冷気を吹き出す怪獣を発見して攻撃を開始するが、あらゆる攻撃エネルギーが吸収され、無効化されてしまう。キャップは危険を承知で怪獣の間近に機体を着陸させると至近距離からの攻撃を浴びせるが、それも通用せずにかろうじて離陸に成功すると、総員一時帰投して、改めて怪獣のデータを分析する事に。
 その結果、怪獣の正体は、様々な星の熱エネルギーを奪い凍らせてきた、凶悪な宇宙生物であると判明する。
 「我々は今まで色々な怪獣と戦ってきた。……しかし今度の奴こそ、最大で、最後のものだと思う。奴に勝てば、もうUGMは無敵だ」
 いきなり、ぶっ飛んだ事を言い出すキャップ(笑)
 なにぶん風貌と声がハードボイルドなので、「無敵」という単語とのギャップによる破壊力が強烈無比。
 「いやぁ、最悪の場合はウルトラマン80に」
 「そう、ウルトラマン80様におすがりして……」
 「ばかもん! もうウルトラマン80は現れない!」
 後輩Bとセラを一喝したキャップは矢的に視線を向け、急に色々と露骨。
 「……80の助けはいらない。断固として80の力を借りないで、怪獣をやっつける!」
 キャップの言いたい事も、物語としてやりたい事もわかるのですが、UGMの戦績を考えると、幾らなんでも夢物語すぎませんかキャップ……。
 かくしてキャップの号令一下、ウルトラマン80にUGMの無敵さを証明する為に対マーゴドンの作戦が練られ……出された結論は、熱エネルギーを発生させずに、物理で破壊だ!
 ビル解体の要領で、巨大な鉄球を怪獣に直接叩きつけてやる、と傍目にも無茶な作戦が敢行され、二体の戦闘機の間に鉄球を吊り下げながら、空中で加速・減速を繰り返して振り子のように鉄球に勢いを付ける高度な操縦技術を見せるUGMだが、氷のブレス攻撃を受けてチーフ機が撃墜され、作戦は敢えなく失敗。
 この窮地をモニターで確認し、外へ飛び出した矢的と涼子は変身しようとするが、その寸前、矢的の背に声をかけるキャップ。
 「これまで、ウルトラマン80には、随分助けられたな」
 80の活躍シーンが振り返られ、いい感じの戦闘シーンだけ抜粋されると、とても格好良く見えてきます(笑)
 「これまでのお礼を言うよ。――ウルトラマン80」
 「……やはり、知ってたんですね。僕がウルトラマン80である事を」
 ネガポジ反転で、ウルトラ強制送還のショックが表現された矢的は、しらばっくれるのを諦めて容疑を是認。
 「うん。私とイトウチーフは知ってしまった。といってもついこないだだが」
 キャップはだいぶ以前に気付いていたが「矢的猛」の意志を尊重して敢えて口にしていなかった……とした方が自然ではあるのですが、どういうわけかチーフがセットにされた上で「ついこないだ」の具体的内容には全く触れられない為に、必要以上に取って付けた風になってしまうのは、実に『80』。
 ……そういえば、第42話の感想で


 …………もしかすると、既に本物のキャップとチーフは別の星に連れ去られていて、今地球に居るのはUGMの内部崩壊を目論む敵性宇宙人の擬態なのでは。

 と書いたのですが、〔30話台ぐらいからキャップとチーフは敵性宇宙人と入れ替わっていた → “ついこないだ”本物のキャップとチーフが別のウルトラ戦士によってとある星で救出される → その際に色々あって地球に居るウルトラ戦士=矢的猛と知る事に → 秘密裏に地球に帰還したキャップとチーフが偽物を始末(第48話と第49話の間ぐらい)〕と考えると、筋が通るような通らないような(笑)
 「矢的……いや、ウルトラマン80。君には感謝している。……しかし、いつまでも宇宙人である君に、力を貸してもらう事に悔しさもある。地球はやっぱり、地球人の手で守らなければならん」
 「でも、広い意味では、地球人も宇宙人です。宇宙人同士、力を合わせて敵に向かうのは、当たり前じゃありませんか」
 まだウルトラの星に帰りたくないんです、とこの期に及んで強制送還回避の為の口裏合わせを頼み込もうとする矢的だが、キャップは涼子へと視線を向ける。
 「いや、君の方に事情がある事も知ってしまった。……ウルトラの星に戻らなければならんだろう?」
 やや強引に解釈すれば、矢的の状況を慮って、強制送還ルールを発動させる為に敢えて「正体を知っている」事を告げた……とも取れない事はないですが、「事情」という言葉や涼子への視線からすれば「80が帰国しなければならない事情がある事を知った」と捉える方が妥当であり……凄いぞ! 最終話にして、ここまで49話に渡って存在していた筈の基本設定を上書きする謎の事情が無から発生したぞ!!
 これまた第47話の感想で


 どうしても「地球(人)とウルトラマン」のテーマをやりたいなら、「80を母星に連れ帰りたいユリアン」と「地球を守る事にこだわる80」の対比にでもした方が、それに基づく矢的猛のアイデンティティを確立し直しつつ、ウルトラ族としてのしかるべき距離を取りながら地球人と歩んでいこうとする80の姿も描けて、収まりが良かったように思えるのですが……。

 と書いたのですが、いやまさか、そうだった事にされるとは、夢にも思いませんでした(笑)
 1年物の長丁場なので、話を進める上で現行の設定が上手く転がしにくくなり、途中で「こうした方が話がスムーズに繋がるのでは……」と思いつく事はままあるだろうとは思うのですが(視聴者が見ていて思うような事は、プロの作り手はだいたい考えているでしょうし)、とはいえこれまでの積み重ねを無かったことにも出来ない……と、徐々にスライドさせて修正を図るか、その設定で切り抜ける方法を考えそうなところを、まさかの、完・全・修・正。
 最終話だけ取り出すと80帰還の理由として綺麗に収まっているのですが、その為にユリアンが地球に来た理由から改変してしまう、『80』ここに極まれり、の時空を超えるカタストロフを引き起こし、ある意味で、実に『80』最終話にふさわしい内容(むしろ涼子登場のタイミングでは、死んだ城野隊員の遺志に応える為にも地球を守らねばならない、と新たな薪がくべられていた上に、涼子もそれに同意していたわけで……)。
 「それに、今度の戦いで君は傷ついてしまった。……もう、80に変身しないでくれ」
 前回の戦闘での負傷も理由に上乗せされ、ここに来て青首竜の頭突きが重くのしかかりますが、多分あれは、別のユニバースでの出来事です。
 二人の変身を止めたキャップは出撃し、九州の部隊と合流。再び鉄球作戦が開始されたその時、後輩A機墜落の危機を救ったのは、オーストラリアゾーンからやってきたハラダとタジマ!
 「キャップ、いいところでやってきたでしょう?」
 「ありがとう。ありがとう!」
 明らかにこの瞬間、別のユニバースとの次元の扉が開いていますが、ここの登場の仕方は格好良かったです。ハラダ&タジマの援護もありマーゴドンに鉄球が直撃すると粉々に砕け散る怪獣!!(これはこれで大変ツッコミどころの多い作戦なのですが、周辺で発生している事象があまりにあまりすぎて、それどころではなく)
 怪獣の撃破と共にミナミハラ市は春の暖かさを取り戻し、勝利の歓喜に湧きながら基地に戻った隊員たちを待っていたのは……
 「城野……城野エミ!」
 「ハイ、私ハ、UGM科学班が造ッタ、城野エミノアンドロイドデス」
 殉職した城野隊員と瓜二つの存在が、銀色のキラキラ衣装を着て機械音声でたどたどしく喋り、誰だその企画を実行した悪魔。
 「皆さんが、いつまでも亡くなった城野隊員を懐かしく思われているので、私とセラさんが、こっそり科学班に、造っていただいたんですよ」
 貴様等かぁ!!
 ノンちゃん時代を含めると、今作の超次元移動に最後までついてきた希少な存在であるユリ子が、最後の最後でとんでもない爆弾を放り込み、最終回オールキャストの都合でしょうが、世の中には洒落で済む事と済まない事があると思うわけで、生命の尊厳を貶める人類文明は、やはり消滅させるべきなのかもしれません。
 「……いよいよお別れだな、ウルトラマン80」
 キャップはその場で矢的猛の正体を告げる事で退路を完全に断ち、作戦司令室で行われる、ささやかなお別れパーティ。
 「これまで我々は、いつも80の助けを借りてきた。我々はいつも弱かった。それは、知らず知らずの内に、80に頼ろうとする気持ちが、みんなの心のどこかにあったからだろう。残念ながら私もそうだった。……しかし、私はある時決心した。自分たちの手で戦い抜かなければならないんだと」
 まとめに入ったキャップが《交渉》LV80を発動し、シリーズに通底するテーゼを持ち出す事で10年分以上の説得力を上乗せして説かれる、地球人の自立。
 「それは、ウルトラマン80が、怪獣との戦いで傷つき、更にウルトラの星に事情が出来て、星涼子隊員こと、このユリアンが、ウルトラマン80を呼びに来た事がわかってしまったからだ」
 そして、さらりと補強される、改変された過去と虚空から捏造されて一切説明されない「事情」。
 ガルタン大王の存在そのものが無かった事にされている勢いですが、ガルタン大王がやってこないと城野隊員の殉職も無かった事になってしまうので、このユニバースの城野隊員は、スノーアート事件の際に殉職しているのかもしれません(そしてユリ子が、気象班からUGM所属に)。
 ガルタン大王が地球に来たユニバースの方は多分、前回ラストでウルトラ説教が失敗して80とユリアンが訣別した結果、「本当にこの宇宙に要らないのは、ウルトラの星なのよ!」と暴走したユリアンがウルトラの星を消滅させるバッドエンドルートに入りました。
 謎の「事情」については恐らく、第30話前後~第48話辺りまで、敵性宇宙人に拉致されたキャップとチーフが現地のレジスタンスと共に悪の宇宙人帝国に立ち向かい、別のウルトラマンと協力して独裁政権を打ち倒す劇場版『ウルトラマンジーニアス外伝』的な物語が存在しており、別れ際に「そういえば、君の星に居るウルトラマンが留年寸前なので、一度、ウルトラの星に戻るように言ってくれないだろうか」とか頼まれたのでしょう。
 「今我々は怪獣に勝った。80の助けを借りないで、地球最後かもしれぬ、大怪獣をやっつけることが出来た」
 だいぶマーゴドンを盛りまくるキャップですが、なんだか、UGMと80の関係が、のび太ドラえもんになっています。
 これも、第1話の怪獣復活から順調に練度を積み重ねてきたUGMの到達点、としてならそれなりに納得が行ったのですが、なにぶんUGMが「途中で練度が第1話に戻る」「キャップが故障する(敵性宇宙人疑惑あり)」「チーフの脳が溶ける(敵性宇宙人疑惑あり)」など色々ありすぎたので、“理想のUGM”があまりにも嘘っぽくなってしまったのが残念。
 ……にしても、UGMを半壊させたといってもいい石堂さんがこの最終回の脚本も担当しており、途中参加という事もあるでしょうが、石堂さんとしてはその時その時のオーダーに応えていただけでUGMの一貫性に全く興味が無かったのだろうか、というのはなかなか複雑な気持ちにさせられます(石堂さんからすると逆に、これまでのオーダーと180度違う雰囲気を要求されて、困ったかもですが)。
 「これで我々は胸を張って、ウルトラマン80とユリアンに、さよならを言える。二人は今日限り、ウルトラの星に帰っていく」
 「……どうしてもそうしなければならないのか?」
 「ええ。我々二人は、一旦ウルトラの星に帰り、しばらく休養すると、また別の星に派遣されます」
 ここで何故かチーフが、別に居てもいいんじゃないか、と腰の据わらない水を向けると、矢的は矢的で派遣期間が決まっているような事を言い出して、実態は強制送還なのか本当に本社の都合なのか曖昧にされ、チーフの不自然な発言からはせめて明るい別れの為に打ち合わせ通りの茶番という解釈も出来なくもないですが……それはそれで一種の子離れを強制される80、という状況が発生してしまうので、ウルトラ派遣規約が改定されて強制送還ルールが緩和されたと捉えておく方が平和でしょうか。
 「私は、ほんの短い間でしたけれど、この美しい星、地球の事は、絶対に忘れません」
 涼子が別れの挨拶を述べると、感極まったユリ子が顔を伏せて泣き出すのが、実に送別会。
 「いろんな事がいっぱいありました。みんなの事は、いつまでも、忘れません」
 シリーズ過去作品(『マン』『セブン』『タロウ』辺り)のパッチワーク的な内容の最終回ながら、地球との別れが朗らかに描かれるのは特徴的といえそうですが、あまりにも送別会すぎて、涼子と矢的の言葉が社交辞令にしか聞こえなくなってしまったのは、良かったのか悪かったのか(笑)
 「今日の別れは永遠の別れでなく、また会う時までの仮の別れのつもりで居てほしい。本当は……本当は……ウルトラマン80にいつまでも居てほしかった」
 戦友との別れに涙をこらえたキャップは酒杯を飲み干し、超時空カタストロフが巻き起こった最終回、戦友なればこそ多少強引でも80を地球から送り出そうとする姿で、第1話に端を発する矢的との関係性が拾われたのは、キャップファンとして嬉しかったです。
 「……さよならは、終わりではなく、新しい思い出の始まりと言います。じゃあみんな、元気で!」
 完全に、転勤の送別会ノリで酒杯を明るく掲げてウルトラマンは地球を去る事となり、そして、矢的と涼子は地球最後の一日を楽しんで帰った!!
 ナレーション「ウルトラマン80の物語は、今終わろうとしている。だが、我々の為に、新しいウルトラマンがきっとやってくるに違いない。ウルトラの星が、いつまでも輝き続ける限り」
 ラストにクレジットともに流れるバラードはなかなか感動的で、送別会、地球デート、そして変身した80とユリアンが地球を飛び立って遠く輝くウルトラの星へと帰っていき、変身時の「エイティ!」の声で、おわり。
 終わってみると、変わり種のサブタイトルなど実に些細な事だった最終回ですが……ちょっと巻き戻りまして、お楽しみの前回の次回予告…………「UGM必死の攻撃に、遂に大怪獣マーゴドンは死滅した」。
 ええーーーーー!!(笑)
 送別会でユリ子が泣き崩れている映像もばっちり見せてしまい、凄い、最後まで凄かった80……!
 あと予告ナレーションによると「矢的と涼子は出撃を禁止された」事になっており、鉄球作戦その1の失敗後、どうして増援部隊に加わろうとせずに露骨に不自然に外に飛び出していったのかと思えば、作戦から外されるシーンがまるまるカットされていた模様。
 上述しましたが、UGMの成長を順調に描けていたらそれなりの説得力が生じたと思うのですが、飛躍に次ぐ飛躍で無理矢理になってしまったのは、残念なところでした。
 今回、初めての『ウルトラマン80』で何より驚いたのは、80=教師、というイメージを根底から覆す1クール目で学園が消滅でしたが、教師である事を忘れ、なんの説明もなくレギュラー隊員が交代し、物語半ばでメインライターが降板し……変遷の大変目まぐるしい作品でありました。
 私でも名前と存在ぐらいを知っていたユリアンが、実質1話のみの登場という点も驚きでしたが、擬態である星涼子も最終クールのみのキャラクターであり、その涼子の登場後、矢的猛が“ウルトラマンと地球人”というテーゼを改めて押し出す構造から着地を決めるのかと思いきや、物語をまとめる為に最終話にしてユリアンが地球に来た理由から改変されるのが、凄く『80』(笑)
 一応話は繋がっているようで、スタート地点から変更してしまったので繋がっていないという離れ業を、最終話でやってしまえるのは、ある意味でこれ以上なく『80』らしく、物凄い『80』濃度の最終回でした。
 後はお薦めいただいた『メビウス』「80」編を見て、その感想と共に軽くまとめを書こうかな、と思います。