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Good lack! Good lack! Good lack! in the fight!

仮面ライダー鎧武』感想・第31-32話

◆第31話「禁断の果実のゆくえ」◆ (監督:田崎竜太 脚本:虚淵玄
 今回の、一番面白かった台詞。
 「ふん、やはり力に溺れるタイプだったか。ま、初めて戦った時から、わかってはいたが」
 ええーーーーー(笑)
 やたら勝ち誇る戒斗が変な面白さに足を一歩踏み込んでいた頃、地球人類にチャレンジ権のある禁断の果実を、校長先生が横取りしていた事をDJが暴露。
 「たった一人の、愛する者を救う為だけに、70億の人類に滅びろと」
 「彼女には、それだけの価値がある」
 やたら理性的でどうする事かと思われた校長先生には個人の強烈な執着がある事が明かされるが、よりにもよってDJにフェアネスを説かれると、禁断の果実(の部分的な力?)を鍵の形に変え、それを受け取って姿を消すDJ。
 今回も好き勝手に出入りしては都合良く情報を撒き散らしていくDJですが、ヘルヘイムの森の侵略とは、生物種に対する一種の天命と位置づけられたところで、その天命と立ち向かう人類に対して事あるごとに干渉してきては口を挟むサガラの言行が、ことごとく面白くないのは、今作の大変辛いところ。
 率直に、どうしてここまで酷いキャラクターを作ってしまったのか、首を捻ります。
 メロンとシグルドの前に現れた緑ロードが両者の攻撃を受けて降参を宣言する一方、クラックを通って沢芽市に乗り込んだ赤ロードは、火球をばらまいて街を破壊の渦に巻き込み、警察まで出動。
 「弱い、弱すぎる。その程度の力でなぜ生きている?! 有象無象が数ばかりを増やしおって。このような世界、俺は認めぬ」
 赤ロードの大暴れに対して市長から抗議電話を受けたプロフェッサーは、マスターインテリジェントシステムを発動し、沢芽市全域の通信網を掌握。市民の耳と口を塞いだ上で、大量の黒影部隊が出撃するとオーバーロード捕獲作戦を開始する。
 「さあオーバーロード、禁断の果実の在処を聞き出した後は、指の先まで解剖してあげるよ」
 正直、数だけで押し潰せると考えるのはプロフェッサーにしてはだいぶ見立てが甘いと思うのですが、貴虎という重石を取り除いた結果、連鎖的にユグドラシルというダムが崩壊しつつあると見ると、皮肉な状況であります。
 「うわはははははは! 敗北した弱者を潰す。それこそが勝利者の権利。強さの証。この俺が求める全てだ!」
 赤ロードの圧倒的暴力を前に鎧武とバロンも変身解除に追い込まれるが、力を振り回し暴虐の限りを尽くす赤ロード(これがハカイダーと被ったのは、虚淵さん的には完全に後ろ弾でしょうか……)の姿に、手を取り合う事の不可能な“敵”を見た紘汰は、再び立ち上がると勝ち鬨を発動(なお戒斗は、崩れた瓦礫の位置関係でベルトに手が届かず難儀中)。
 「きっと向こう側の世界にも未来があった! なのにあの森に負けちまったのは! おまえのような奴が居たからだ!」
 前々回に明かされた、フェムシンム文明の経緯を受ける形で、W幟で赤ロードの攻撃を受け止めながらの叫びは格好良かったです。
 「この力は、戦えない人達を守るために!」
 勝ち鬨パワーで優位に戦いを進める鎧武だったが、プロフェッサーの指示を受けたピーチの一矢が横から直撃。オーバーロード捕獲の為に邪魔な鎧武から排除せよと命令するプロフェッサーは、「葛葉をうまく戦力として利用すればいいのに……」と戒斗から鼻で笑われる始末で、大変残念なお知らせですが、これは間違いなくハカイダー後遺症ですね……(※参考資料:『キカイダー01』)。
 乱戦中の衝撃で、ようやくベルトに手が届いた戒斗は戦線復帰するとまずは紘汰を回収。鎧武のアジトへと運び込むとすぐに外へ戻ろうとするが、そのコートの裾を紘汰の手が掴む。
 「戒斗……おまえが求めてる……強さってなんだ?」
 「……なに?」
 ここはBGMも良く、劇的な見せ方に。
 「弱者は、強者の餌食になるしかない。だからこそ、力が必要だ。どんな強い敵にも牙を剥けるだけの力が!」
 「おまえ……!」
 「……葛葉、おまえももっと強くなれ。それがおまえの務めだ」
 自分なりの筋を通したいなら、力を持つしかない……再び気を失った紘汰に戒斗は言葉を叩きつけ、先にベルトに手を伸ばしてじたばたしている際に、赤ロードに立ち向かう紘汰の言葉を真剣に聞いていたので、これは戒斗なりの、紘汰へのエールという面はありそうでしょうか……邪魔者以上の、一廉の男と認めたというか。
 「……俺も行くぜ。――戒斗」
 「覚悟を決めろ」
 同行を申し出るザックは格好いいのですが、今の今まで、外の騒ぎに気付かなかったのだろうか、とはちょっと。
 その頃、降参を申し出た緑ロードから禁断の果実の元へ案内する、と申し出を受けたシドは校長先生の元に誘導され、お宝を前に目が眩んだといったところなのでありましょうが、腕力に慢心するほどの戦績でもないのに随分あっさりと転がされてしまい……雑。
 弱者の運命を食い物にしてきたシドが、他者の手の平で転がされる皮肉な構図の意図はわかるのですが、悪意と要領で世の中を渡ってきたと思われるシドがあまりにも簡単に緑ロードの思惑に乗ってしまい、罠に決まってるでしょと同道しないミッチが賢いというよりも、もはや別人レベルで迂闊な事に。
 校長先生とご対面したシドは、そろそろ退場が近付いているからか、シグルド史上、最もタメを効かせて格好良く変身するが、校長先生はすさまじい念動力を振るい、シグルドを寄せ付けずに圧倒。
 「大人しく去れ。さすれば命までは奪うまい」
 「ふっざけん、なぁ! もう二度と、誰の言いなりにもならねぇ! 誰にも、なめた口は効かせねぇ!」
 神の力にこだわるシドの野心は、飄々として悪びれない態度の裏側に抱えた劣等感であると明らかになる中、エネルギーの奔流を受け続けたシグルドのドライバーが砕け散り、変身解除。
 「俺は……! 俺は! 人間を越えるんだぁぁぁぁぁ!!」
 「ふん……自らの愚かしさに命まで捧げたか。よろしい。それが貴様の覚悟なら……その過ち、死をもって贖え」
 それでもなお前進し続けるシドであったが、校長の力の前に呆気なく吹き飛ばされると、岩壁の間に挟まってぷちっと潰され……処刑台に送られる一押しが雑だったのは非常に残念でしたが、悪党としては大変いい最期でした。
 最後の最後で内面のコンプレックスが吐露されましたが、キャラクターそれぞれの主義主張を描く(が故に“理由”を作ってしまいがちな今作において)利己的な悪を貫いてくれたのが立ち位置として良く、特に序盤は、存在感のある芝居で作品を助けてくれたといえるキャラクターでありました。
 「……シド」
 この光景を見つめる事しかできなかった貴虎の前には、トレードマークの帽子だけが転がって哀愁を漂わせ……沢芽市では捕獲部隊が赤ロードの前に壊滅しかけていたが、そこに駆け付ける戒斗とザックーーー!!
 「あんた達には任せておけねぇなぁ!!」
 これまで「ユグドラシルには街の平和を任せておけない」というニュアンスで用いられていた言葉が「ここは俺たちに任せろ!」のニュアンスをともなって劇的な変化をする、というのは好きな台詞の使い方で、戒斗と並んでダブル変身を決めるザック、大丈夫かザック! 次で死なないかザック?!
 次回――強いぞ赤ロード、そして、またもDJアワー。

◆第32話「最強の力! 極アームズ!」◆ (監督:石田秀範 脚本:虚淵玄
 連戦に次ぐ連戦でそれなりにダメージを負っていた赤ロードを華麗な連携で追い詰めていくバナナとクルミだが、チャンスとばかりに残る黒影部隊を投入したプロフェッサーの横槍で生まれた隙に赤ロードは撤収し……プロフェッサーのハカイダー後遺症が深刻です。
 赤ロードは赤ロードで、格好良く瞬間退場したと思ったら森までは戻れなかったようで、マントを翻して笑いながら下水道を走っており、何故か、怪人二十面相ノリだった。
 通信網が遮断され、街の機能はマヒ状態。市民が息を潜めて見つめる中、インベスを狩りながらオーバーロードを探し回るユグドラシルだが、赤ロードは森の侵食地点を発見した事で、ヘルヘイム果実を食べてその肉体を増強していく(戒斗がこの可能性を指摘し、前回今回とやけに知性の存在をアピール)。
 一方、意識を取り戻した紘汰と、紘汰を看病していた舞の前にはDJが姿を見せ、正直、もはやDJの登場シーンは、あーはいはい、と氷点下の心持ちで見ています。
 「あんた、俺をからかってそんなに楽しいか」
 ハイ! めっちゃ愉しいので、サービスでHPを回復してくれました!
 「おまえは世界を救いたい。その力は、オーバーロードだけが持っている。だったら答は一つだよ。おまえがオーバーロードになればいいんだよ」
 胡散臭さを隠さなくなったDJは、なんかまた、行動の方針をまるまる教示。
 「森の試練を乗り越えて、黄金の果実を勝ち取る。ただ一人だけの支配者となり君臨する。その時おまえは、全ての世界を制するんだ。救うも滅ぼすも、おまえの好きにすればいい」
 DJ独演会の間、色々な光を当てて画面上の変化をアピールし、役者さんも熱演といっていいとは思うのですが……DJがベラベラ喋りながら「おじさんは君を愉しい見世物だと思っているんだ!」とAm○zonギフト券ならぬ魔法の道具を紘汰にプレゼントしてくれるのも都合3回目となり、単純に飽きました。
 これは週1話で見るのと週2話で見ているのでは感覚の違ってくる部分もあるでしょうが……それにしてもどうかと思いますし、「覚悟」を問えば、自発的に「選択」したように見えるでしょ? というやり口も、DJの行動にしろ劇作にしろ二重の意味でだいぶ悪質。
 特に、前回ザックとシドの行動について「覚悟」という言葉を持ち出したのは、今回の紘汰もあくまで自らの意志による「覚悟」の行動であってDJにいいようにそそのかされているわけではありません、と視聴者の印象を誘導する為だったのは、個人的にはかなり印象の悪い見せ方です(一応、その「覚悟」の先にあるのは「闘争」や「死」である、と暗示はしていますが……基本的に「覚悟」って、使う側の「覚悟」をこそ問われる地雷ワードだと思うので……)。
 「ただの親切じゃないっていうのは事実だ。俺はあくまでも、俺の都合で動いている」
 舞から、紘汰を言いくるめようとしていると指摘を受けたDJがおもむろにフルーツキーを取り出した頃、ミッチとお友達になった緑ロードは沢芽市への侵攻を開始しようとしていた。校長ロードの所持する禁断の果実を奪い取り、キラキラした文明を手に入れる事を目論む緑ロードは、ユグドラシルが過去に固定化していたクラックをゲートとして利用し、インベス軍団を引き連れて沢芽市へ。
 「……なんてことだ」
 ユグドラシルタワー内部に怒濤の勢いで森の侵攻が始まり、素で困っている感じのデュークは、事態の収拾を投げ出すと配下と沢芽市を見捨ててロケット噴射で大脱出し……完全に、ハカイダー化の後遺症です。
 デュークがロケットに乗って永遠にアデューする(偽装工作の可能性も0ではありませんが)絵そのものは面白かったのですが、この局面で70年代アニメみたいなノリを突っ込まれると、受け止め方に困って笑いづらいわけですが……。
 上司には一目散に逃走され、真の実力とやらを見せない内にすっかりやられキャラになっているピーチは、インベスに袋叩きにされていたところをバロンとナックルに助けられ、更にそこに派手な飛び蹴りをきめて参上したのは……城乃内!
 「――パティシエ、舐めんなよ。こんな時の為に、鍛え直されてきたんだよ、俺は。――変身」
 下手すると劇中初ではないかというソロで変身を決め、やたら格好いいのですが、大丈夫か城乃内! 今回の内に死ぬんじゃないか城乃内!
 つい最近、上司を追い落として派閥を牛耳った筈が、直属の上司が急場から逃げ出し、なんかよくわからない事になっているなー……と色々と疲れてきたマリカだが、更にピエールも飛び蹴りで参戦。
 「ノンギャラで戦うなんてアマチュアの極み。ただ負けたくないってだけの幼稚なポリシー。でもそれはそれで、見守ってあげたくなっちゃうのよねぇ」
 城乃内の成長を認めて話を聞き、クラックとヘルヘイムの森について知った事で紘汰たちの我武者羅な行動にも一定の理解を示すようになった……という事なのでしょうが、ピエールに関しては、その時その時の話の都合で動かされてきた負債が大きすぎて、素直に格好良くは受け止めにくいのが率直なところ。
 ドリアンも戦列に加わり、バロンは円陣を組んで互いの死角をカバーしながらの迎撃を指示。
 (駆紋戒斗……この男の言葉で、皆が一つにまとまっている)
 うーん……まあ、元チームバロンのリーダーでありますし、乱世でこそ輝くというか土壇場でカリスマ性を発揮するタイプという事なのでしょうが、貴虎兄さんが急に紘汰を持ち上げるのと同様(シーンとしては完全に対比)、耀子が急に戒斗を持ち上げるのは、どうにも無理の出る感じに。
 「あんたは戦極凌馬の後を追いかけると思ったが」
 ロケットだったからね……。
 「誰の未来を見届けるべきか、これでようやくわかったわ」
 5人のアーマードライダーは円陣を組みながら群がるインベスを次々と撃退していき、異世界からの凶暴な侵略者! 沢芽市最大の危機に手を組むライダー達! と字面は盛り上がるのですが、何もない広場にインベスがわらわら群がってくる理由が全く用意されていないので、ただただ映像の都合でしかなく、もう少しどうにか出来なかったのか……(シチュエーションそのものは悪くないだけに、凄い勿体なさ)。
 おのおの疲弊を強いられながらも雑魚インベス軍団を掃討する5人だったが、地下から爆炎が噴き上がると、両肩から角を生やした赤ロードが捲土重来。
 「さあ、まとめて引導を渡してやる。ふふははは」
 一方、ひたすら逆光を浴び続けるDJは、校長ロードから受け取った鍵を、紘汰の前にちらつかせていた。
 「紘汰を……利用して、何がしたいの?!」
 「どう転ぶかわからない奴に、一番大きな力を預けたいだけだ。おまえというジョーカーが、このゲームをますますスリリングに盛り上げてくれるだろう」
 ここまで誘導しておいて、「どう転ぶかわかわらない」も何もないものですが、折り返し地点を過ぎてようやく幾つかの歯車が噛み合ってきて見所も出てきた一方、DJの存在(というか使い方)がそれら全て帳消しにしかねないレベルの深傷になっており、ナイフが突き刺さった腹から出血多量どころか内臓がこぼれている感じ。
 紘汰はそれでも力を求める事を選んでキーへと手を伸ばし、DJ圧力を越えて自らキーを掴み取る描写で「試練」のニュアンスも加えているのですが、せめてHP回復はキーを入手後のサービスにしておかないと、そもそも、表向きの試練を与えている方が掴ませる気満々だしな……が強調されるだけでどうにも締まりません。
 「無力……あまりに無力!」
 赤ロードの方は、5ライダーの必殺攻撃を軽々と弾き返す圧倒的戦闘力を見せ、「強い……」「勝てないのか」みたいな台詞で5人が順々にアピールするのと、ダッシュしてくる紘汰の足を交互に描いて待望のヒーロー参上を盛り立てようとするのですが、“路線変更により突然現れた超時空の黄金戦士がなんの前触れもなくお気に入りの主人公に強化装備を提供してくれてエイリアンどもに圧勝だ!”を彷彿とさせる強化展開の為に、少し前まで夢の共闘の体裁だった5人のライダーが、みんなまとめて引き立て役として蹴り落とされるのは、率直に地獄絵図。
 これが「必ずあいつは戻ってくる!」的なリーダー的存在やチームヒーローだったら話はまた違いますが、そういうわけではないですし。
 紘汰が一気の勝ち鬨変身からフルーツキーを起動すると、次々に開いたクラックからてんこ盛りのフルーツが降ってきて…………えええ。
 ノーマル → 陣羽織 → 勝ち鬨、と装飾を盛る流れから一転、スマートでスッキリとした白銀の鎧(胴にフルーツ柄)の新フォームが発動し、ゴテゴテしがちな全部乗せフォームを逆にシンプルにまとめる、という狙いだったかとは思うのですがが、どうしてイメージカラー(青+オレンジ)まで変えてしまったのか。
 お陰で斬月の進化形っぽいですし、ベースを活かしつつ正統進化させていった勝ち鬨が格好良かっただけに(そこで限界に達してしまったのかもですが)、違和感が大きくてテンション上がらない……とか考えている内に、全てのフルーツ武器を使いこなす鎧武極にフルーツバスケットされた赤ロードは爆死。
 「これが俺の……新しい力」
 で、つづく。