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ウルトラマン80:ヴァルハラ

ウルトラマン80』感想・第49話

◆第49話「80最大のピンチ! 変身! 女ウルトラマン」◆ (監督:宮坂清彦 脚本:山浦弘靖
 深夜12時になると飛び交う正体不明の怪電波を調査するUGMは、それが怪獣の発しているものだと突き止める。当初、12体の怪獣が首都圏を取り囲んでいるかと思われたが、矢的と涼子の活躍により波長は2種類に大別される事が判明。
 2体の怪獣と、実際より数を多く見せかけてパニックを引き起こそうとする攪乱電波……と把握した時点で敵性宇宙人の関与を疑っても良さそうなのに、頭のいい怪獣扱いされるのが謎ですが、なにぶんキャップの判断なので、過去に同様の怪獣と戦った経験があるに違いありません!
 12体の怪獣?! → 詳細調査に向かう → トラブルを切り抜けて実際は2体だと判明
 なら、矢的と涼子の活躍もヒロイックになり、ドラマチックな展開になったと思うのですが……
 怪電波を調査 → トラブルに巻き込まれる → 12体の怪獣?! → いや2体だった
 と順序と圧縮がちぐはぐで、即座に却下される「12体の怪獣の脅威」がなんのサスペンスにも繋がらないのが、実に『80』。まだそこから電波攪乱の背後に侵略者の存在を見て「敵の作戦に乗せられているフリをして正体を突き止める」ならまた別のサスペンスに繋げられたのですが、「情報を秘匿したまま怪獣の一網打尽を狙う」という、怪獣が人類の通信を理解している前提の対応が色々と飛躍しすぎで、この後のトラブルを招く為だけに物語世界を構築する骨組みがひしゃげられていて残念。
 ……まあ、前回とはUGMの雰囲気がまるで違うので、「怪獣」が高度な知性を持つ前提のユニバースに移動してきた可能性もありますが。
 かくして秘密裏に怪獣対策を進めるUGMだが、自家製ラジオを弄っていた少年が偶然その電波をキャッチしてしまい、相談を受けて、ものすっごく雑に誤魔化す矢的。
 そして地球で過ごす内に思い入れを強める涼子は、どこかアンニュイな気分に浸っていた。
 「でも私たち……いずれはこの地球を出て行くのね。……この美しい星、素晴らしい人達の居る、この地球を」
 「仕方がない。それが我々の宿命なんだ。だからこそ、地球人が自力で戦える時が来るまで、僕か君のどちらかが、最後まで、戦って戦い続けなくては」
 なにその、この命尽き果てるまでみたいなノリ。
 学園の消滅後、ひたすらあやふやな「80が地球で戦う理由」(何回かおぼろげな再設定が試みられてはいるのですが、アイデンティティとして固定化されていないので、すぐに溶けてしまっており……)について「後進惑星を守るために命を懸けて戦うのがウルトラ族の宿命」なる概念が突如として発生して、だいぶ困惑。
 いや、もしかしたら、昭和《ウルトラ》シリーズとしては当然の前提だったのかもしれませんが、少なくとも『80』世界では影も形も見えなかった宿命――敢えて言えば幻覚ウルトラの父の「ウルトラマン80、おまえの勇気は死んだのか。肉体よりも早く、おまえの精神は、死に果てたのか。ウルトラマン80よ、立て! 立って戦え! おまえの勇気を、正義の矢として、悪を倒すのだ!」発言はありましたが――がいきなり空から降ってきて目が点になり、話数的に全体のまとめに入っているにしても無理がありすぎるのですが、ま、まあ、今回からそういうユニバースに来たのでしょうか……。
 あと、矢的猛/ウルトラマン80のヒーロー性は、「自らの意志」で地球の為に戦う事にあったと思うので(故に、それを成立させる背景が消滅してから迷走を余儀なくされていたわけで)、そこに「これはウルトラヤクザの宿命なんじゃ!」と入れてしまうと、これまで積み重ねてきたヒーロー性に多大な障害が発生してしまい、ここが今作のストライクゾーンだ! と投げ込んだボールが、よく見るとタワシだったみたいな印象。
 怪獣電波の発信源を特定したUGMはその調査に向かうが、矢的が露骨に誤魔化した事を怪しむ少年も「よーし、ひとつ探ってみるか!」と独自の調査を始め、発信源……ではなく、UGMの作戦司令室を盗み聞きしていた。
 ここまで一応、怪電波の調査や怪獣対策を練り、地球防衛の最前線に立つUGMの姿を比較的真面目に描いていたのですが、全て台無しにする暴挙で、どうしてそうなりましたか……。
 一応、歩哨とか立っている筈のUGM内部には、矢的と知り合いの少年を広報セラが招き入れた事が明らかになるのですが、ちょっと間の抜けたコメディリリーフの使い方としても、最悪の部類。
 UGMの卵を自認する少年は、盗み聞きした情報を元に怪獣が潜んでいる山に向かうと、ラジオをいじって出した電波に反応し、口が三つ縦に並んで大変気持ち悪い怪獣プラズマが地底から出現。
 それに呼応するように怪獣マイナズマも出現し、こちらはギョロ目が気持ち悪い。
 少年を逃がした矢的は負傷しながらも80に変身し、シリアス時空で活力を取り戻したチーフの援護攻撃を受けながら二体の怪獣に立ち向かうが合体攻撃を受けて大ピンチ。
 ナレーション「ウルトラマン80は意表を突かれた」
 が、ちょっと面白かったです(笑)
 増援部隊が砲火を浴びせるもざっくり撃墜され、バックルビームで反撃する80だが、負傷の影響もあって激しく消耗。
 地上では脱出したフジモリとイケダがダッシュで無事を確かめ合う割とどうでもいい一幕を挟み、果敢に二体の怪獣に挑む80だが、カラータイマーが点滅。地上車で駆け付けた涼子はその窮地に自ら変身しようとするが、怪獣にげしげし踏まれる80から制止を受ける。
 (いけない。君まで変身しては駄目だ)
 「どうして?!」
 (今僕がやられても、君が新しいウルトラの戦士として戦うことが出来る。万一二人ともやられたら、地球はおしまいだ。僕のことは構うな。いいか!)
 ……いや、どうせ健在の怪獣と戦わなければいけない以上、80が生きている内に二人で戦った方がまだ勝利の可能性が高まると思うのですが……体勢を立て直せば効果的な反撃が出来るアテもないのに、僕はここで死ぬから君は後で戦え、と主張する80がだいぶ意味不明な事に。
 道連れ前提や時間稼ぎに意味がある時なら有効なやり取りなわけですが、もしかして、いよいよの時はウルトラ自爆装置でも仕込まれているのか、80。


 (だがそれでもいい。僕は地球を守る為に、M78星雲からやってきた男だ。地球の為に戦って死んでいけるなら、それで本望だ。)
(第23話「SOS!! 宇宙アメーバの大侵略」)

 ただ思えば、かつて宇宙アメーバにより絶体絶命の危機に陥った際、80に変身する事を執拗に避けながら、地球人・矢的猛として美しく死にたい、という謎の暗黒面を噴出させていた前歴があるので、ここでも「勝利」とか「地球」とかは建前で、ウルトラ戦士として誇り高く死にたい(から邪魔をするな)と、名誉ある戦死を求めているとするならば、つまりこれは、ウルトラ戦士道(なお、第23話は山浦脚本で、『80』全体としてはともかく、今回がそれ以来の参加となる山浦さんの中のウルトラ戦士像は繋がっていたのかも)。
 「80、あなたって人は……」
 同族なので感極まった表情で涙ぐむ涼子の前で、げしげしと踏まれ続ける80。
 (地球を頼む、頼むぞ)
 「エイティーー!」
 だが、たとえウルトラ戦士道に反し、名誉ある死を奪うものだとしても80を見殺しに出来ない涼子は、80の方へ駆け寄ると「ユリアーン!」の叫び声で手首のブレスを光らせて変身。
 そんな状況で、
 「「あ」」
 「別のウルトラマンだ」
 とぼんやりと声を出す後輩ズの扱いの酷さ……。
 ユリアンの巨大化にかぶせて流れ出すイントロが今までになくはまっており、成る程、後期主題歌はユリアンのテーマであったのか! は目から鱗で、正体はちょっとどっしり体型のユリアンは、プラマイ怪獣にウルトラチョップを浴びせて80を救援。プラマイの光線技を受けて苦しむユリアンだが、その間になんとか立ち上がった80が、怪獣の背後から打点の高い飛び蹴りを決め、ここに並び立つ二人。
 女性ウルトラ戦士は前年の『ザ・ウルトラマン』に登場していたようですが、実写ではウルトラの母以来なのかと思われ、共に戦うのは当時かなりのインパクトだったのでしょうか……?
 80&ユリアンは、再び合体した怪獣にウルトラパワーで対抗し、これを撃破。
 次回予告からサブタイトルで内容の大半が語られるクライマックスでしたが、矢的は反省したラジオ少年を諭し、そして……
 「あの時どうして、僕の言った通りにしなかったんだ」
 戦力の逐次投入は愚かな判断だからです!
 涼子に対し、毎度あまり感じの良くないウルトラ説教を行う矢的だが、涙をこぼした涼子は突然「地球人に生まれたかった」と言い出すと脇目も振らずに走り去っていき、それを見送る矢的の瞳にも涙が……ウルトラの星、どれだけ殺伐としているの?! で、つづく。
 突如として「戦士の宿命」概念が放り込まれると「戦士としての死」よりも「地球人としての穏やかな生活」を求めるテーゼが浮上して急にウルトラ族の存在が生臭くなり、それなら地球人女性とイチャイチャしたくなるのもわからないでもないけれどそれでいいのか、と困惑するわけですが、そもそも今作、地球人の愚かしさも風刺的に織り交ぜながら、未来への希望を見出していこうとする作品世界だと受け止めていたので、「守るべき美しい理想郷としての地球」の出現にも大きな違和感があり、いったいここはどこのユニバースなのか。
 これはこれで、ある程度の時間をかけて描けばストーリーの軸にはなり得たと思うのですが、なにぶんあまりにも唐突で、幾ら一話完結性が強いにしても壊滅的に一貫性が無いのが、大変『80』でした。
 キャラクターを変える事で後期OPを戦闘シーンにはめてみせる、のは唸らされましたが、次回――予告は本編視聴後の楽しみにしたいと思います(笑)