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20年ぶりの『仮面ライダーアギト』

 そんなわけで、ちょっと遅くなってしまいましたが、『仮面ライダーアギト』感想開始です!
 本放送時に視聴しているので大まかな筋は覚えているのですが、今回の配信を機に初めて見るという方もおられるかもしれませんし、私自身も細かい部分は覚えていないので、基本的に先の内容には触れない形で進めようと思います。ただ、キャラクターに対する把握などはどうしても書き方に出ると思いますので、先の展開を想起できる可能性が生じる事は、あらかじめご了承下さい。
 またそれにともないまして、配信『アギト』視聴中におきましては、現行『アギト』未配信部分の内容につきましてはコメント欄で触れるのを避けていただければ幸いです。

仮面ライダーアギト』感想・第1-2話

(※サブタイトルは存在しない為、筆者が勝手につけています。あしからずご了承下さい)
◆第1話「目覚めろ、居候」◆ (監督:田崎竜太 脚本:井上敏樹
 氷川くんのモミアゲが凄い。
 そして、佐伯家のリビングにおける、氷川と北條のやり取りが、破壊力高い。
 番組序盤、キャリアの浅い役者さん同士を絡ませる事で事故が発生するのはままありますが、20年前も強烈でしたが、20年後もやはりここは強烈で、この後、要潤さんが役者として成功していくとは失礼ながらホント思いませんでした……。
 物語は、台風の影響で謎のオブジェが海岸に漂着するところから始まり、漂着したオブジェは超古代のオーパーツとして調査が進められる。街では木のうろに詰め込まれた不可解な死体が発見され、最初に登場する“仮面ライダー”が、強化スーツ装着型のG3なのは、前作『クウガ』との明確な違いの表現として良かったなと。
 玩具としては当時、装着変身シリーズ(素体人間にアーマーを被せる系のアクションフィギュア)を展開していたので、それとの関連付けがあったのかな、とは思われますが。
 続けて、城北大学・美杉ゼミの教授に本を届けるにこやかな青年・津上翔一と、同大学の水泳部に所属する金髪青年・葦原涼が印象的に擦れ違い、主要キャラが、真ん中分け黒髪ストレート・ふんわか茶髪肩ロン毛・金髪ツンツン頭、とぱっと見でわかりやすいのは大変素晴らしい(笑)
 オーパーツのダイヤル式キーの一つが解かれた時、翔一と涼の体に異変が起こり、そしてサラリーマンを襲う豹頭の怪人。1話でざっくり3名が猟奇殺人の犠牲になるのは『クウガ』からの流れといった感じですが、容疑者を追う内に豹頭の怪人に襲われる氷川から連絡を受け、G3システムが出動!
 「きたきたきた! いよいよ出番だ!」
 Gトレーラーが出動して氷川くんが中でスーツを着せられ、第1話の売りだったのか、走行中のトラック内部での着替えシーンから、専用バイクでの出撃シーンはかなり力の入った映像。
 今見ると、『クウガ』的なリアリズムの継承と、ヒーロー作品らしい外連味の間でせめぎ合っている感が強いですが、その中間地点の象徴こそがG3、という面もありそうでしょうか。……かつて90年代前半の《メタルヒーロー》が、一度は傑作『ウインスペクター』を生み出しながらもやがて袋小路に陥ってしまった、ヒーローとリアリティの狭間に再び降り立ったというか(『クウガ』の場合は、ヒーロー物がヒーロー物として現代に成立する為の新たな立脚点を突き詰めていった作品なので、方法論が違う印象……『アギト』が考えているのは「割合」で、『クウガ』が考えていたのは「組成」とでもいいましょうか)。
 田崎監督×井上敏樹の見ていたものはわかりませんが、白倉Pにとって《平成ライダー》がまだ明確なシリーズとして成立する以前の時期は、《メタルヒーロー》枠の新番組、の意識がかなり強かったそうなので(実際この後数年の《平成ライダー》のバラエティ性は、明らかに《メタルヒーロー》的)、90年代《メタルヒーロー》の影を追っていた面はあるのかもしれません。
 闇夜を走る豹怪人と、サイレン鳴らしてそれを追うG3の姿が微妙に2020年の挑戦しつつ、倉庫街に豹怪人を追い詰めたと思われたG3だが、頼みの近代兵器が全く通用せず、あっという間に大ピンチ。
 凄い勢いで「二階級特進」の5文字がG3の周囲をちらつき駆け巡るその時、腰のベルトを白く輝かせた新たな怪人が姿を見せて格闘で豹怪人を上回ると、頭部の角ががちゃっと開き、放たれた飛び蹴りの直撃を受けた豹怪人は大爆発。
 キックでなにかエネルギーを打ち込むとなにか爆発、は完全に『クウガ』の踏襲――意図的なシンクロ――でしょうが、構えを取ると地面に黄金の紋章が浮かび上がるのは大変格好良く、やられ役だったG3/氷川くんが、一連の戦いの目撃者として機能するのは、井上敏樹らしい構成。
 物陰からは一連の戦いを黄色マフラーの豹と青色マフラーの豹が見つめており、無言で歩み去って行く金色の怪人……なにもかも謎だらけのまま、つづく。

◆第2話「光る腹」◆ (監督:田崎竜太 脚本:井上敏樹
 「何者なんだ、あいつは……」
 つ、辻斬り、ですかね……。
 立ち去る金色の影、呟くG3……今回から通常OPとなり、主題歌は今でも大好きなのですが、映像は改めて物凄い面白くなさ。当時の協賛企画(確か番組名義のチームでレースに出場したりもしていた筈)の関係か、サーキットで思い切りバイクを走らせる! のですが、特撮ヒーロー物のOPで、ヒーローが延々とサーキットを走っていても、別になにも面白くならなかったという……(笑)
 G3の戦闘記録にまともな映像が残っていなかった事から、上層部の査問を受ける氷川だが、豹の怪人、そして謎の金色の存在を重ねて主張。
 「以前未確認と戦っていた、第4号に似ていました」
 つ、繋がっているの?!
 “警察組織の作り出した強化スーツ”として『クウガ』からの明白な飛躍を示すG3サイドから、「未確認生命体」「第4号」といった前作の主要キーワードが飛び出してだいぶ困惑しますが、謎の怪人につけられた「アンノウン」という、何か示しているようで何も示していない呼称の苦し紛れ感も含めて、大きな話題を呼んだ前作の続編を望む声と、続編はやりたくない気持ちとの様々な力学のせめぎ合いは感じられるところ。
 「氷川誠。香川県警から対策班にスカウトされたと聞いた時は、素朴な人間だろうと思いましたが……とんだ食わせ者でしたね」
 「……なんのことです?」
 氷川くんが出てくるのをわざわざ階段で待っていた北條は、無用の長物と化していた対策班の解散を防ぐために、未知の怪物に遭遇したと作り話をでっちあげたのでは、と指摘。
 「……聞きましたよ。北條透といえば、本庁きっての若手エリートだって。でも意外と暇なんですね。そんなことを言う為に私を待っているなんて。失礼します」
 にっこり笑った氷川くんは厭味を北條の顔面に投げ返し、前回はどうなる事かと思った二人ですが、エリートと言われた瞬間に頬の緩む北條さん含め、両者の基本背景を説明しつつ関係性を鮮やかに表現して、ここは大変いいやり取りでした(笑)
 氷川と対策班は殺された佐伯妻の遺した写真の謎を追い、忍び込んだ黄豹と青豹が触れたオーパーツの解錠が急速に進んでいく一方、美杉家では教授の姪っ子の真魚が超能力者である事が暗示される。自称超能力が学生の思い込みであるを事をわからせる為に、トランプの図柄を当てさせようとする光景をドアの隙間から目にした真魚が、次々とそれに正解する、のは非常に印象的な見せ方。
 ここは20年前にかなりインパクトがあって今でも覚えていたのですが、物語のミステリアスな雰囲気をぐぐっと加速させてきます。
 「わかったかな? 自分に、特別な力があるなんて思わないことだ。そんなものは、だいたいは、偶然か、思い込みということだ」
 そして一般人サンプルとして一緒にトランプ当てに挑戦するも完全に外し、横に並んで難しい顔している翔一くんが凄くいい味(笑)
 今のところ成り行きは不明ですが、記憶喪失で美杉家に厄介になっているらしい翔一くん……記憶喪失について「別にいまのところ不都合ないしね」(他人の家に居候している今の状況が不都合では……?)とあっけらかんと笑う爽やかだが少しズレた好青年ぶり、家庭菜園の達人、料理上手だが誉めると同じ食材を続ける、つまらない駄洒落が玉に瑕、と基本的な人間性が細かい笑いを交えてテンポ良く詰め込まれ、冴えている時の井上敏樹の得意技ではありますが、同時にそれらを絶妙に愛嬌として演じてみせる賀集利樹さんの達者さが非常に光ります。
 このパイロット版、一歩間違えると、ただただよくわからないまま終わってしまった可能性もあったと思うのですが、陰惨な描写も続く一方、翔一くんの色々な意味で底抜けの明るさが物語のアクセント&推進力として機能しており、ここに賀集利樹さんを見出せたのは大変良いキャスティングであったなと(ルックスの関係で、“光の涼村暁”ぽくもありますが(笑))
 街では新たな猟奇殺人が発生し、前回の事件との関連性を疑う北條は、被害者の姉をガード。一方、対策班は謎の写真が撮影された場所を探し、事件の謎に迫る両者が場面転換を繰り返しながらテンポ良く交錯していくのは巧み。
 土地開発によって既に失われた風景と、事件直前の日付……あり得ない奇妙な光景が写真の謎を増す中、青豹怪人が出現すると、家庭菜園の翔一と病室で昏睡状態が続く涼の体にまたも異変が起こり、お腹の辺りがぺかーっと光り輝いた翔一は、真魚の声も聞こえない様子でバイクで走り出してしまう(追いかける自転車真魚ちゃんの可愛げがポイント高い)。
 一方、北條刑事は青豹怪人により木のうろに突っ込まれて敢えない最期を遂げそうになっていたが、そこにG3が駆け付け、バイクで轢いたーーー!!
 東映ヒーローのイニシエーションを果たしたG3は、今回は高速震動ブレードを装着して青豹に立ち向かうが、背後から黄豹が出現して2対1で今回も大ピンチ。
 前回今回と真打ち登場の引き立て役にされるG3ですが、“警察の作り出したメカニカルライダー”という掴みのインパクトに加え、その立ち位置と役割が、様々な面でクウガ』と『アギト』の“接点”であると同時に“分岐点”になっていて(例えば、G3がやられかけたところに金色の怪人が現れる事で、主人公そのものの橋渡しを行っている)、外部オペレーターの存在でダメージが伝えやすいやられ役としての有能さも含めて、よく考えられたキャラクター。
 …………まあ、現状の戦力不足は如何ともしがたいですが、地下倉庫に廃棄される前に、手柄を立てられるといいですね……。
 再び、「二階級特進」の5文字が矢のように駆け巡ったその時、バイクで走ってきた翔一がポーズを取るとその腰に光り輝くベルトが生じ……今回なにが一番凄いって、ベルトの発する光が眩しすぎて、誰が戦っているのかわからない!だと思います(笑)
 豹怪人と戦う翔一は、どこかぼんやりとした表情のまま『クウガ』オマージュと思われる打撃からの段階的変身により、金色の怪人に変貌。
 「アギト……」
 黄豹怪人が頭上の輪っかから槍を取り出すと、金色の怪人――アギトはベルトのバックルから薙刀を取り出し、体色が青色に。フォームチェンジ要素は継承しつつも思い切ってこだわらない見せ方で、いわゆる処刑ソングに乗せてアギトは薙刀による猛攻を浴びせ、黄豹を撃破。
 G3はG3でなんとか青豹怪人にグレネードランチャーを撃ち込むも格好良くダブル撃破! とは全くいかず、青豹怪人はアギトの紋章キックで大爆発。
 EDをなくして本編の尺に回し、代わりに便宜上のEDテーマが本編クライマックスに流れる構成なのですが、唯一所属のハッキリしたG3を除くと、善玉も悪玉も全てが謎だらけ、主人公らしきアギトに関してもどんな意志があるのか全く不明の状況で、挿入歌に乗せて格好良く怪人を倒すから多分ヒーロー、と処刑ソングによってアギトのヒーロー性を強引かつ強烈に印象づけしており、それは、処刑ソングと呼ばれるわけだな、と(笑)
 「おまえは……いったい……?!」
 恐る恐る職務質問しようとするG3に、いきなり殴りかかる重要参考人アギト?! アギト・フォー・ジャスティス!で、つづく(……いや、今見ると、このパイロット版のアギトに近い過去ヒーロー、『特捜ロボ ジャンパーソン』第1話のジャンパーソンなのではという(笑))。