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この地球が好きさ 心許した友

仮面ライダー鎧武』感想・第28話

◆第28話「裏切りの斬月」◆ (監督:柴崎貴行 脚本:虚淵玄鋼屋ジン
 珍しくアバンが前回あらすじナレーションだけで終わって、提供カットも無いまま本編に突入すると紘汰は結局オーバーロードを逃しており、貴虎兄さんの格好いい「行け葛葉! おまえは奴を追え!」台無し案件なのは、引きの作劇の難しいところであり。
 葛葉家の家計が今危ない! という一幕から、葛葉姉はパート勤務……? という衝撃の事実が判明するのですが、そういうポジションにしても相変わらずお姉さんの器が大きすぎて、もはや別の作品世界から来た異邦人状態。
 それにしても、時折、思い出したように“生活感”を挟み込んでくる今作ですが、その割には姉弟二人暮らしの家庭で仕事を持っている姉に夕食の支度を任せきりの紘汰という、入れた生活感を粉微塵に破壊する描写に全く無頓着なのは何故なのか。
 序盤に、「仕事を見つかるまでは俺が夕飯を作るぜ姉ちゃん!」→大災害→料理禁止令、でもやっておけば、紘汰の愛嬌と好感度にも繋がったと思うのですが。
 バイトの面接に向かう途中、市民を襲うインベスを目撃した紘汰は背後からダッシュパンチ! 更にバック宙回避を見せ、その勢いで飛び回し蹴りを入れようとしたところでカットが割れたのは……失敗した?
 鎧武が久方ぶりにパインを発動して雑魚インベスを成敗するも履歴書を台無しにしていた頃、貴虎はオーバーロードの存在を重役会議の議題に上げるも、微妙に薄い反応に戸惑っていた
 「……どうした、凌馬? おまえなら、喜びそうな発見だと思うが」
 ……なんだかんだ、友達だと思ってるんだな……(笑)
 「これは我々に、初めて与えられた絶望以外の選択肢だ。試してみる価値は大いにある」
 地球のヘルヘイム化を受け入れ、人類60億を犠牲にするプロジェクトアークの本格始動までに状況を改善できるかも、と皆を鼓舞しようとする貴虎だが盛り上がりは大変薄く、渾身のギャグを披露するも滑った、みたいな空気で辛い……。
 赤ロードは校長室でお仕置きを受け、森を彷徨っていた戒斗の前に姿を見せるミッチ。
 「貴様は敵だ。貴様のような卑劣なだけの弱者を、俺は決して認めない! ……今日のところは見逃してやる。さっさと尻尾を巻いて逃げるがいい」
 紘汰への銃撃について喋る気はない、と口封じの意味が無い事を伝えた戒斗はミッチを面罵し、新装備を手に入れたので大変強気です! ……いや、戒斗なら、装備に関係なく強気か……と思ったら何故か腰に巻いているドライバーが元に戻っているのですが、この後の展開を見ると、現場のミス?
 「本当に大した男だ」
 兄さんは、決して諦めない男だと紘汰を褒めそやすのですが、潰れかけた→DJ情報→立ち直った、という経緯なのでどうしてもスッキリと受け止めづらい上に、「紘汰が自力で立ち直って新たな希望を掴み取った」と貴虎が思い込んでいる事により、重要情報の出所を全く確認しない迂闊すぎる状況が素通しになっており、いくらなんでも兄さんの攻略難度が低すぎます(笑)
 (紘汰さんに関わるとみんなおかしくなってしまう。あの人は……危険だ)
 まあ、世界における情報の重要度が紘汰時空だけ著しくおかしくなるので、確かに危険人物。
 レールに乗る事を強いられる人生に息苦しさを感じ藻掻いていたミッチが、周囲の人間がレールの通りに動く事を期待するいびつな心理をのぞかせ、主任-シド、ミッチ-耀子の組み合わせで、オーバーロード探しに出陣。
 だがそれは貴虎にとって希望の始まりではなく終わりの始まりとなり、いよいよ牙を剥くチーム・プロフェッサー。
 「おや? どうしたんだい貴虎? そんなに慌てて」
 提供バイクカットを挟み、シグルドとピーチの攻撃を受けたメロンの前に立ったプロフェッサーが、変身ポーズを初披露。
 「馬鹿な……どうして」
 「残念だ。ホントに残念だよ貴虎。君となら共に理想を目指せると思ったのに」
 「……その為の戦極ドライバーだろ! 俺とおまえで作り上げた、人類を救う為の! ……りょうまーーーー!!」
 さしものメロンも3対1の騙し討ちを受けて劣勢に追い込まれ、貴虎とプロフェッサー、二人の理想の違いが「戦極ドライバー」(=ベルト、《平成ライダー》の最重要ギミック)に集約されての、血を吐くような貴虎の叫びは大変良かったです。
 「――君は、私の理解者ではなかった」
 レモンアローが直撃し、ドライバーを失って地面を転がる貴虎。
 「友よ、名残惜しいがお別れの時だ」
 生身でシグルドの攻撃を受け、崖っぷちに追い詰められた貴虎が目にしたのは、裏切り者たちの背後に立つミッチの姿。
 「いいか! 葛葉紘汰と共に、おまえが人類を救うんだ! 頼んだぞ! 光実!!」
 愛する弟に希望を託した貴虎は真っ逆さまに崖から転落していき……兄さぁぁぁぁぁぁん!!
 紘汰とがっちり握手した時点で、不穏な気配しかしませんでしたが、私は次回から、何をモチベーションに『鎧武』を見ればいいのでしょうか(笑)
 「この高さなら助からないでしょう」
 ……でも兄さん、昭和ヒーロー属性だしな。
 「奇跡的に無事だったとしても、ドライバーが無ければヘルヘイムの環境下では、生き残れない」
 ……でも兄さん、昭和ヒーロー属性だしな。
 一応プロフェッサーが「無事な場合」に言及するのが、視聴者の期待にも応えてくれて面白いですが、貴虎から後事を託された筈のミッチは残された戦極ドライバーを手に取り……これは成る程。
 兄さんはこれで完全退場させるには勿体ない(というか、貴虎ほどのキャラを完全退場させるなら、もっと派手な舞台がふさわしい)ので、生存・再登場に期待したいですが、お薦めは記憶を失ってゴミ捨て場に転がっていたところを舞に拾われるです!!
 ユグドラシル内部の激震など知らず、思い切り正面からユグドラシルを訪問した紘汰(とにかく、木を見て森を見ない性格)だが、「貴虎」の名は社員名簿になく……というか、アポも無しにやってきて苗字も役職も知らずに「貴虎」と会いたいと告げる見た目学生とか、仮に名簿に名前があっても門前払いだと思うわけで、ちょっと解釈に困るシーン(笑)
 首を捻りながらもパフェ屋でバイトを始めた紘汰は、しれっと客席に座る戒斗から嫌がらせを受け、人類の運命はともかくバイト探しだ! とか、オーバーロードを懸命に探しているけど喫茶店で一服だ! という“生活感”は重ねて今作の意図するところではあるのでしょうが、どうも見せ方が雑(間でスイッチを切り替えるシーンが無い)なのも含めて、登場人物の心理の動きを受け止めにくい一因になってしまっています。
 尺の都合でカットされたりなどもあるのでしょうが、例えばここも、森から戻ってきた戒斗がふっとパフェ屋に入ってしまうシーンを掘り下げる事でキャラとしての奥行きが出たりするのに、そういった描写が基本的に欠けているのは物語として勿体ない点。
 フルーツの配達に向かう紘汰だがそれは新生ユグドラクローバーの罠で、誘い込まれた倉庫の中に現れたメロンに問答無用で攻撃を受ける事に。だがそこに、陰謀の匂いを嗅ぎつけていた戒斗(店内で耳にした住所に聞き覚えがあったのかと思われますが、特に説明はされず)が現れると、テーマ曲と共に一斗缶を投げつける!
 戒斗はテーマ曲が格好いいのが結構得をしていると思うのですが、一斗缶を、二回、投げつけました!
 「なんでだよ……なんで戦うんだよ」
 今回はちゃんと貰ったドライバーを巻いていた戒斗はレモンバロンに変身し、状況に混乱する紘汰は勝ち鬨するとメロンとバロンの間に割って入るが、被ると貴虎の声になる機能は実装されていなかったメロンは、インベスを召喚すると逃走。
 100%純然たる障害物でしかない雑魚インベス戦では挿入歌を流してみても盛り上がりようがなく、いくら連続ドラマ展開にしても、〔通りすがりに野良インベス退治→斬月vsチームP(今回のクライマックス)→お邪魔インベスの掃除〕というバトルの配分は、あまりにもいびつ。
 バトルエンタメの要素は当然排除しないが、かといって物語がその為に構成されていないので、物語の盛り上がりとバトルの盛り上がりが全く同調しないのは、大変残念なところです(例えば前回も「紘汰と貴虎の握手」というエピソードの盛り上がりどころがあるのに、前後のアクションは共に邪魔が入って水入りの為、バトルと連動して物語が締まらない)。
 個人的にはその有機的連動をこそ意識して組み立ててほしい(それをやってこそのヒーローフィクションだと思う)のですが、コメント欄でヘイスタックさんが指摘されていたように、『ブレイド』前半に見られたような失敗を、そのまま再現してしまっている感じ。
 「貴様は他人を信じすぎている! 最後に頼れるのは自分の力だけだ!」
 「違う……! 人はわかりあえるはずだ! 俺も、仲間たちもそうやって今までやってきたんだ!
 鎧武とバロンは雑魚インベスを軽く掃除し、戒斗の主張に反駁する紘汰ですが、ダンスチーム要素を実質的に消滅させた今作で急に「仲間たち」を持ち出すのがピンと来ませんし、「人はわかりあえる」の積み重ねもこれといって見当たらず(舞が言うならまだわかるのですが……)、唐突に月並みな綺麗事を言い出した感がどうしても強くなってしまいます。
 「そんな甘い考えで、オーバーロードとも向き合うつもりなのか。どうせ貴様は、痛い目を見なきゃわからん奴だ」
 「待てよ戒斗!」
 「せいぜい仲間に寝首を掻かれんようにな」
 それとなく忠告すると戒斗は去って行き、前回今回と凄く優しい(笑)
 一連の成り行きを物陰で確認したメロンが変身解除をすると中身ミッチと明らかになり、運命のすれ違いを「ベルト」「変身」という《仮面ライダー》を象徴する要素に集約させたのは、良い見せ方でした(どこまで意識していたのかはわかりませんが、《平成ライダー》初期における井上敏樹作品テイストでもあり)。
 「悪く思わないでくれよー、貴虎。禁断の果実を手に入れるのは……一人しか居ないんだ」
 一方ユグドラシルでは、決定的な一打を放ったプロデューサが廊下を歩きながら嘯いていたがそこに鳴り響く警報。
 破壊されたクラック制御ルームに駆け込んだプロフェッサーが目にしたのは、重傷を負いドライバーを失ってもなお、人類を救うという一念で遂にはヘルヘイムの森を屈服させた、復讐の超人・ダークロード貴虎!! ……だったらどうしようかと思ったのですが、シドでした。
 「そう……ヘルヘイムの森に選ばれるのは、奪い合い、勝ち残った独りだけ。つまり……俺にも資格はあるわけだぁ! はは!」
 貴虎という重石が外れた事は、元より欲得で繋がっていたチームPの内部崩壊をも招き、新生ユグドラクローバー、早くも解散!
 「じゃあな。ここからは正々堂々と出し抜かせてもらうぜ!」
 本人たちは、「乗せられている」のではなく「乗っている」と主張するのでしょうが、あっちもこっちも完全にDJサガラの思惑通りに事は進み、実況生配信の視聴者数がうなぎ登りでウハウハです!!
 「おのれぇ……」
 制御装置が破壊された事により、ユグドラシルが唯一管理下に置いていたクラックが塞がりゆく中、シドは森の中へと姿を消し、プロフェッサーが本格的にぐぬぬ、な感じでつづく。
 シドに関しては、幾ら外道働きを繰り返していたにしても、さすがに紘汰サイドには始末させにくい以上、殺されやすそうなポジションへのスライドは予想の範疇でありましたが、果たしてここから何話生き延びられるのか、いい最期を期待したいです。
 次回――戒斗さん、ウィンクを飛ばす(だ、誰に……?!)