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18話ぶりの力

仮面ライダー鎧武』感想・第26話

◆第26話「バロンのゲネシス変身!」◆ (監督:諸田敏 脚本:虚淵玄鋼屋ジン
 序盤、作品内容に対して妙に陽性なハイテンションで困惑したサブタイトルですが、ここに来て、考えるのが面倒くさくなってきた……みたいな直球路線になって、だいぶ迷走気味。もうちょっと、凝ってくれた方が好きなのですが。
 ピエールがクラックを発見して大胆にもその中に飛び込んでいた頃、パフェ屋の片付けを手伝っていた紘汰は近頃の挙動不審を怪しむ舞から詰問を受け……ちょっと悩んだと思ったら、追求されて10秒で口を割った。
 いや……え…………早すぎでは……隠し事に向かなそうな性格とかずっと悩んでいたとか色々あるにしても、物語としてはこここそ、もう少し時間を掛けるところだったのでは……。
 「……それって……いつの話?」
 裕也のインベス化を舞に白状した紘汰は、更に挙動不審になると肝心のタイミングだけは無理矢理誤魔化し、紘汰の隠し事に気付いていた舞が、紘汰のあからさまな嘘を見抜けなかったら随分と間の抜けた事になってしまいますが、舞が隠された真相に気付いたか否かについては現時点では濁される形に。
 舞は紘汰を詰るのではなく、その背負っていた重荷を気遣って心の傷に寄り添う事を選び、話したら話したで“都合のいい母性”を発動するしかなくなるのは、今ひとつ面白くない流れ(紘汰に対する舞の好意は一貫してほのめかされてはいるのですが、そこが掘り下げて示されるわけでもないですし、紘汰からの距離感はいいとこ妹分どころか、下手すると親戚の小学生レベルなので……)。
 「辛そうだね兄さん」
 「……いや。これは俺が背負うべき罪だ。逃げることは許されない。光実……特別な力や地位を持つ者には、果たさなければならない責務というものがある。それが、ノブレス・オブリージュというものだ」
 一方、母性不足の呉島家では、貴虎がすっごく悪い感じのユグドラシル上層部との通話を終え、貴虎の中にまだ残る迷いが見えると共に、貴虎が貴虎なりにミッチを猫かわいがりし、しかるべき時まで世界の裏面から遠ざけようとしていた理由は、この辺りまで来るとだいぶ納得できます。
 「その為には、自らの手を汚さなければならぬ事もある。おまえにもいずれその時が訪れよう。……覚悟を決める事だ」
 「…………覚悟」
 それはそれとして、呉島家の人間的には、選ばれた責務を果たす時が来るのが当たり前! と決めてかかっているのが、実に兄さんではありますが。
 紘汰が舞に打ち明けてしまった、インベスの真実とユグドラシルの暗躍、迫り来る世界の危機は、舞を拡声器にチーム鎧武とバロンのメンバーにも伝えられ、それはミッチも、視線だけで人を殺せそうな顔になります!!
 事の成り行きで口を割ってしまったのはまだ仕方ないとしても、そのことをミッチに連絡も謝罪もしていない、のは単純に最低だぞ紘汰……。
 舞は、ダンスイベントの場を利用して情報公開や! と紘汰以上にノーブレーキで突っ走ろうとし、今作が繰り返し描く“若さ”の象徴的行為といえますが、それがいまいち好感にコンバートされないのは、私のツボがそこに無いのだろうな、と。
 このままでは、大恥をかくにしろ一定の支持を得るにしろ、沢芽市の闇に蠢く問題の渦中に舞を巻き込んでしまう(下手をするとユグドラシルに消されかねない)……切羽詰まったミッチは、状況を有耶無耶にする為にその場に大量のインベスを召喚し、大パニックの中でビートライダーズへの信用は再びがた落ちに。
 市民からの誤解が続く事で、隠蔽工作の人身御供としてのビートライダーズの有用性が証明されていますが、手頃な駒が無かったらユグドラシル側からこの手の情報工作部隊を用意する算段もあったかなとは想像するところです。
 「紘汰さん……全部あなたのせいだ! もう何もかも滅茶苦茶だ! それもこれも、あなたが舞さんを巻き込むから! ……紘汰さん、舞さんを悲しませるあなたに、もうヒーローの資格なんてない!」
 手段と目的がごちゃ混ぜになり、自分を見失いつつあるミッチは紘汰に怒りをぶつけるが、そんなミッチに舞の平手打ちが炸裂。
 「どうしちゃったのよミッチ?! 紘汰なんて関係ないじゃない! 頭を冷やしなさい!」
 この一撃を、コツコツと積み重ねてきた可愛い後輩ポジション――掛け替えのない世界そのもの――の崩壊と受け止めたミッチは、瞳孔が開き加減になるとプロフェッサーに接触
 一方、赤ロードにコールド負けを喫した戒斗を切り捨てようとするプロフェッサーだが、それを説得した耀子は戒斗にゲネシスドライバーを預け、戒斗は着々と“放っておけない無鉄砲なアイツ”の座を固めようとしていた。
 「奴らが姑息なだけの弱者なら! 俺がこの手で淘汰するまでだ。おまえも力を手に入れた。ならば未来は、己の手で勝ち取ってみせろ」
 その光景をザックが目撃し、今までと立場が変わった二人が会話を交わすのは面白い絡みになりつつ、二人が並ぶと戒斗の衣装が以前のままである事が非常に目立つのですが、そこに戒斗の未練(或いは本心)を見るか、キャラのアイコン的都合を見るかは、ちょっと悩ましいところです。……いや、未練(或いは本心)と捉えた場合、あまりにダダ漏れすぎて、逆にもう少し隠すよね……みたいな気持ちになるので(笑)
 「ミッチ……舞のこと、すまなかったな」
 ミッチと紘汰は森へ向かい、このタイミングで、怒ってるみたいだから謝っておこうみたいな紘汰の後頭部にミッチならずともスイカガトリングを撃ち込みたくなりますが、考えてみると紘汰、接する悪い大人たちが次から次へと機密情報をベラベラ喋ってくれるので、他人に「情報を明かす」事の意味と重みを理解していない節もあり、一周回って、プロフェッサーの被害者な気もしてきました(蛇口が、「閉める」か「全開にする」の二択しかないというか……)。
 「……いえ、過ぎてしまった事です」
 それはそれとして、ミッチが笑顔を取り繕うとあからさまにホッとした表情になる紘汰、ミッチに甘えているにも拘わらず、ミッチを一人前の男として認めていない事には、そろそろ気付いてほしいものですが。
 紘汰はミッチに促されて陣羽織ピーチとなるとオーバーロードの声をキャッチし、その情報はミッチから耀子、そして戒斗に伝えられる。ミッチの作戦に従い、ピーチが鎧武の足止めをしている間に戒斗はプロレス友達と再会し、ゲネシスドライバーにレモン錠前を装着すると、やたら格好いい新たな変身ポーズでバナナレモンへと変身。……その組み合わせだと普通にデュークになりそうなのにバナナ固定なのはちょっと謎ですが、バロンvs赤ロードの第二ラウンドが開始される。
 一方、強キャラ・マリカの台詞で、なんとなく経験積んで強くなっている扱いを受けた鎧武は勝ち鬨を発動し、バトルはバトルで割り切った演出がされているのは毎度の事なのですが、異文明の存在を相手に「話せば分かる」を唱えている真っ最中に、相手から不意打ちしてきたとはいえ同じ人間相手に至近距離からDJ砲を普通にぶち込むのはすんなり飲み込みがたく、そこを飲み込みやすくする一手間が施されないまま、テーゼとバトルが正面から衝突しているのは、残念な作劇。
 DJ砲の直撃を受けたピーチは変身が解け、マリカにやられたフリをしていたミッチの所に戻った鎧武は、ミッチに促されてオーバーロードの元へ。レモンバロンはマンゴー以来となる強化の力で赤ロードと互角の戦いを演じていたが、そこに鎧武が乱入。緑ロードの指示で赤ロードが引き下がると、揉めに揉める鎧武とバロンは、肉体言語による話し合いすなわち殴り合いに突入するが、それを物陰から、暗い眼差しでミッチが見ていた。
 崩壊した世界を繋ぎ止める為、大切なものの為に手を汚すミッチの覚悟は、ねじれた悪意となって葛葉紘汰へと向けられ――アーマー転送中で無防備な鎧武の背中に突き刺さる龍玄の銃弾、でつづく。