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ふたりはド繋がり

仮面ライダー鎧武』感想・第25話

◆第25話「グリドン・ブラーボ 最強タッグ」◆ (監督:石田秀範 脚本:虚淵玄鋼屋ジン
 冒頭からいきなり、市街の広場に思い切りチャックが開いて次々とインベスが現れ、先日の大騒ぎは、いったいなんだったのか……。
 物語の流れとしては、鎧武の活躍によりこの状況でもユグドラシルは街を焼き払えなくなったよ! という意図なのかもしれませんが、ユグドラシル側の反応は全く描かれないまま、当然のようにこの後も平然と日常が進行していくので、そもそも何をあんなにパニックに陥っていたのかすら疑問になり、ただでさえ強引極まりなかった先日の展開を、完全な茶番と認めてしまう事に。
 そしてそこが茶番になると、物語における「その一件を経て“自らの道”を見出しつつある紘汰=象徴としての勝ち鬨アームズ」の意味性まで薄くなってしまうわけで、構成と描写がさすがに雑すぎます。
 すっかり共に戦う仲間状態のザックは、なんだか微妙な雰囲気の紘汰とミッチの間にまあまあと割って入るなど大活躍で、その光景に物陰で爪を噛む城乃内は、かつてのチームメンバーが舞らと楽しくやっている姿にも大ショック。
 周囲を利用して巧いこと幅を利かせる筈が気がつけばメインストリームから取り残され……まあ城乃内、社会人としては一番真っ当な道を歩みつつはあるわけですが(笑)
 日課のインベス狩りを終え、〔ミッション:オーバーロードとお話してみよう!〕をめげずに継続中の紘汰は、森で戒斗と遭遇。
 「奴らが人間を助けるとでも? ありえないな」
 「なんでだよ?!」
 「オーバーロードは圧倒的に強い。俺は戦ってそれを確かめた」
 「……戦ったって……」
 俺がいきなり吊されたのおまえのせいかよ?!
 友好的に接すれば相手が同じテーブルに着いてくれると決めてかかっている紘汰に対し、まずは力を見せなければ交渉の入り口にも立てない、と返す戒斗の方がここでは理に適っているのですが、とにかく、交渉の人材としては双方とも、中間点がありません(笑)
 それはそれとして、紘汰がすっかり「話せばわかる」論者になっているのは少々違和感があるのですが……以前にも少し触れましたが、戒斗なりミッチなり貴虎なりが、「紘汰の持つ幾つかの顔のネガになっている」というよりも、その時々の状況に応じて紘汰が「戒斗のネガ」であったり「ミッチのネガ」であったり「貴虎のネガ」であったりになっているので、物語の中心に居る紘汰が一番、物語の都合で動いているように見えてしまうのは、今作の抱える大きな問題点。
 そういった“周囲の状況に振り回される主人公”を面白く見られるかどうか、というのが今作のポイントの一つとは思いますが、その点では佐野岳さん演じる紘汰の持つ“気っ風のいい江戸っ子感”と噛み合っていないものはずっと感じていて、ここでも設計段階での擦り合わせのミスがあったのでは、とは邪推してしまうところ(佐野さんの芝居が悪いわけではなく、脚本の狙いと、主人公に求められたオーダーの間のズレがヒビから溝になって埋まらない感じといいましょうか)。
 一方、ネットアイドルに一杯食わされ追跡調査を行うプロフェッサー組の前に当の本人がご登場。
 「DJサガラ、君はいったい、何者なんだ?」
 「――俺はただの観客だ。だから、あんた達だけが一方的に有利になる試合運びは、気にくわない。ついつい、不利な方に声援を送りたくなる」
 120%、最低な感じで、試合を面白くする為には審判の買収ぐらい当然でしょ、みたいな事を言い出したDJは、でもユグドラシルの敵なわけではないから、代わりに情報をサービスしようと言い出し、謎の事情通が好きなタイミングでベラベラ喋る、というおよそ情報開示の手段としては下策中の下策ですが、どうしてそうなりましたか。
 地球とヘルヘイムの森は有史以来たびたび接触を繰り返しており、世界各地の神話伝承にその痕跡を留めている、とヘルヘイム神話仮説を唱えるプロフェッサーは、神話伝承の中に様々な形で姿を見せる力の象徴――禁断の果実が森にはあるのでは、と問いかけ、DJはそれを肯定。
 「奪い合い、勝ち残った一人だけが、それを、掴み取る事になる」
 何度か触れられてきた「森が誰を選ぶのか」の意味が明らかとなり、だいぶSF入っていたここ数話から一転、それはそれとして相撲で決着をつけよう! と大きな揺り戻しが入ってライダーバトルのフレームに戻り、スケール感としてはこのぐらいが話を転がすのに適切なのだろうと思う一方、SF的な要素が物語の主筋に食い込んでくるのは《平成ライダー》でも珍しい印象で未知のワクワクがあっただけに、個人的にはだいぶ残念。
 好き放題やったDJが姿を消した頃、城乃内はピエールから外人部隊式トレーニングを受けている真っ最中で、予告から予想されましたが、スーパー石田アワー(苦手)で、勢いで女装を強いられる城乃内。
 「ああそうだよ、俺はにせもんだよ! そんなこと……俺が一番、よくわかってんだよ!」
 ピンクのライトに照らされて青春の慟哭が響き渡り……まあ、演出サイドからすると、これを真っ向からそのまま撮るのは、それはそれで難しいという判断もあったのかもしれません。
 ケーキ屋を飛び出した城乃内はパフェ屋で紘汰と出会い、初瀬の名前が出るとさすがの紘汰も言葉を濁すのですが、どちらかというと、初瀬の最期を話した上でドライバーの所持について一考を迫る方が紘汰らしい気がして(城乃内は信じず、そこにピエール乱入でもスムーズに話は繋がりますし)、城乃内に対しては平気で秘密を持てる(そしてユグドラシルの危険性について語る素振りも見せない)紘汰は、城乃内の事は本当にどうでもいいのだな感がますます強くなります。
 勿論、主人公だからといって誰とでも密接に関わろうとしなくても良いのですが、この後、突然の悩み語りも壁を相手に喋っている感じで、まあ少なくとも紘汰の立場とここしばらくの物言いからすれば、ドライバー所持者である城乃内には対インベスに関して協力を求める方が自然であり、ピエールの身内だから城乃内も話を聞かないと思っているのかもですが、そうすると現在の紘汰の行動理念である「話せばわかる」と真っ向から衝突をしてしまう玉突き事故。
 色々と話の都合が見えすぎるやり取りの場にピエールがやってくると、パフェ屋の中で変身する迷惑行為から女性店員にはたかれ、鎧武vsブラーボの箸休めバトルから、野良インベスとの乱戦へ突入。
 両者の後を追い、飛行インベスの集団が迫っているのに気付いた城乃内は、物陰から飛び出すと女装のまま格好良く変身を決め、ジャンプ一番カバーリング(これはまさに“出会った順番”の問題なのですが、第2話から主人公の女装変身をぶち込んできた『超光戦士シャンゼリオン』を通過していた為、個人的に女装変身そのもののインパクトは弱めに)。
 鎧武は勝ち鬨を発動するとインベスを全部撃墜して格好良く決めるが、なんだか生まれた師弟の絆で、ピエールと城乃内はとっくにその場を立ち去っているのであった。
 「あなたもどうやら一皮剥けたようね。ちょっとだけ認めてあげてもよろしくてよ……坊や」
 「鳳蓮さん……」
 ユグドラシルサイドで物語の核心に迫る情報が明らかになる一方、城乃内サイドは終始コミカルに描かれてギャップで緩急をつける構成なのですが、単純に、城乃内サイドのエピソードがまるで面白くなく、城乃内は嫌いではないだけに、この無味無臭な内容が非常に残念(完全にサブタイトル詐欺ですし)。
 楽しくやっていそうな紘汰には紘汰なりの悩みがあるらしい、と知った城乃内が、インベスゲームに関するピエールの誤解を解こうと口添えして、事件の裏を探ったピエールがクラックを発見……の流れだけは悪くなかったので、師弟ストーリーとしての面白さが多少なりともあれば良かったのですが。