東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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暴魔は正義! 人間は悪!

高速戦隊ターボレンジャー』感想・第31-32話

◆第31話「女戦士キリカ」◆ (監督:東條昭平 脚本:曽田博久)
 「ふふふ、若いなヤミマル……お前はまだ若い」
 いつまで経っても土下座しながらスカウトが札束を積みに来ない事に焦れるヤミマルに対し、大帝様は老獪な余裕を見せて大物ぶるのですが、率直に、地球征服計画は頓挫寸前です!
 その頃、3年A組では学園祭のシンデレラ役を決める投票が行われており、圧倒的な支持を獲得するはるな軍曹、明らかに女子票を固めていてえぐい(笑)
 投票総数と光景を見るに、どうやら王子(力が準備万端)は男子の票、シンデレラは女子の票で選出する、戦争を回避する為に別の憎しみを生む手段が執られているようですが、そんなはるなに嫉妬の炎を燃やすクラスメイト――月影小夜子は、バレー部で、突然の! 殺人スパイク!!
 それを目撃して小夜子を気にかける力は、成り行きで誕生パーティに正体されるも何故か小夜子の両親から拒絶を受けるが、なんとその正体は妖怪人間。
 更に小夜子の体内からオマモリボーマが飛び出すと、夢で見た赤い鎧の女に似ている……と小夜子をストーキングしていた流星が窓から飛び込んできて、気を失った小夜子をさらっていく急展開。
 「2万年の間、君はこのオマモリボーマ達に守られていた」
 「そして、おまえが必要とされる時が近付いてきたのよ。私たち二人がこの18年間、おまえを、人間界で育ていた、というわけさ」
 小夜子は人間ではなく、2万と18歳の流れ暴魔だったのだ!!
 「俺こそが、君と赤い糸で結ばれた男なんだよ」
 「え? 君が?!」
 「俺たちはね……この世でたった二人きりの流れ暴魔なんだよ」
 暴魔百族に加われず、妖精の封印からもお目こぼしされた半端なはぐれ者(どうやら人間との混血……?)であった「流れ暴魔」が、希少な血統なごとくスライドし、なにやら貴種流離譚めいてきましたが、そこへ割って入る力たち。
 「月影さん駄目だ! そいつの言う事を聞いてはいけない!」
 「俺と君が世界を支配するんだ! 俺と君は、そういう宿命に結ばれているんだ! いいか、俺たちは人間を遙かに超えた、特別な存在なんだ!」
 一方、野望の階段に足をかけるヤミマルはパッションの趣くままに運命を熱く語り、「赤い糸」「たった二人きり」「世界を支配する」「そういう宿命」「特別な存在」と初対面の女子に力いっぱい世界征服を持ちかける前傾姿勢で……直接は知らないので推察になりますが、この辺り、80年代オカルトブームにおける「前世ブーム」や「戦士症候群」が下敷きになっていたりしそうでしょうか。
 「違う! 君は人間だ!! 暖かい、赤い血の流れた人間だ!」
 力は2年前に小夜子を見知った際の話を持ち出して、小夜子は本当は優しい心の持ち主であるとフォローされるのですが、〔暴魔は悪、人間は善なので、そちら側に居るべきだと主張する力〕〔そもそも流れ暴魔とは何かがまだわかっていない小夜子〕〔どちらかといえば暴魔百族に対して対抗意識を抱いていた筈が、人間に軸足を置く小夜子の説得の為に、人間以上の存在である事を主張し始める流星〕の3人が噛み合っていないので心を揺らす綱引きが効果的に成立しておらず、こういう時こそ、謎の説得力を持った妖精おじさんによる解説が必要なのでは!
 「見せてやるんだ。君がどれだけ美しく、どれだけ凄い存在か!」
 学校に馴染めずに居た小夜子に対して、人間は愚かな存在だとかき口説く流星ですが、小夜子の私生活を知っているわけではない筈なので完全にその場の勢いな上(実体験に基づくのかも、とは推測できますが)、小夜子が“人間でありたい”要素が劇中で特に描かれていないので力が掴む取っかかりは無いしで、小夜子を両側からそれぞれの世界に引っ張る二人の男、という構図がどうも巧く成立してくれません。
 お守り夫婦はターボレンジャーの一斉射撃を受けて非業の爆死を遂げ、やたらと流れ暴魔サイドに肩入れさせる演出の中、流星と小夜子は運命の逃避行に突入。
 Vターボバズーカで消し飛んだお守りボーマが、お守り夫婦の怨念を吸収して巨大化し、ラガーファイター発進。巨大戦の煽りで小夜子が崖から落ちそうになった時(ターボレンジャー側は小夜子を取り戻そうと行動している筈なのに、全く配慮せずに戦闘に巻き込んでしまうのは不可抗力とはいえちょっと残念な展開)、運命の赤い糸が流星と小夜子を結びつける!
 巨大お守りボーマはターボラガーに蹴り殺されるが、空中に投げ飛ばされたヤミマルと小夜子の流れ暴魔パワーが生死の狭間でバロムクロスし、どういうわけかスーパターボロボ誕生のくだりと被り気味ですが、どちらかというと今回のこれありきで前回の演出だったと考える方がしっくり来そうでしょうか。
 小夜子が真紅の鎧を纏った流れ暴魔キリカとして覚醒すると共に、ヤミマルもまた真紅の鎧を身につけた新たな姿へと変貌し……2021年現在に見ると、凄く、猛牛大王(『侍戦隊シンケンジャー』)。
 蜘蛛から牛へとクラスチェンジしたヤミマル、東映の伝統として赤い鎧は不吉なフラグですが、大丈夫か……?! デザイン的には野性味を押し出した初期バージョンの方が好きですが、今後、格好良く見えてくる事に期待。
 ヤミマルとキリカは手に手を取ったまま飛翔するとそのまま暴魔城へと突入していき、果たしてラゴーン様の運命や如何に?! で、つづく。

◆第32話「悪魔の大怪鳥!」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
 「流れ暴魔ヤミマル!」
 「流れ暴魔キリカ!」
 「「只今参上!!」」
 大帝ラゴーン、おまえの罪を、数えろ!!
 二人で一人のスーパーパワーを身につけたヤミマルとキリカは、赤い糸ラリアットでズルテンを一蹴すると、大帝の間へと突入。
 大帝様の口から、流れ暴魔=人間と暴魔との間の子、と明言されて流れ暴魔が純血の暴魔から軽んじられる理由が明らかになり、改めて全身を見ると、猛牛ヤミマルは大変『サムライトルーパー』(1988年放映で時代もドンピシャ)で、『マスクマン』の地底剣士アキラに続く、「美少年鎧もの」文脈の取り込みといったところでありましょうか……ヤミマルは美少年では無いけど。
 「流れ暴魔だからこそ出来る事もある」
 配色の関係で白塗りメイクの歌舞伎度が上がったヤミマルは、流れ暴魔の守護神である暴魔コウモリ・ドラグラス(コウモリなのかドラゴンなのか)を甦らせてみせると宣言。大帝様が、伝説の大怪鳥ドラグラスを復活させられた暁には暴魔百族に加えてやろうと約束したところでサブタイトルが入り……結局、鳥なの?
 一方、冬服にチェンジ(はるなは完全に新衣装に)した力たちは月影家を家捜しし、2年前に力が小夜子に贈ったサインボールを見つけて凄い勢いで二人の過去が生成されていくのですが、これは小夜子と人間世界の繋がりとして、前回にあった方が良かったような。
 ちなみに力より背の高い小夜子を演じる森下雅子さんは身長177cmで、前作でマゼンダを演じた来栖明子さん(174cm)より更に長身。
 流れ流れて2万と18歳レッドアーマーズは、鏡ボーマを覚醒させると暴魔コウモリ復活の為に学校を襲撃して生け贄を集め、もはや貴様はヒロインではない! と桃に思い切りスピンキックを叩き込む猛牛ヤミマルが、残酷すぎるリアル。
 鎧のテカテカ具合が気になるヤミマルは、仮面を装着するバトルモードを発動し、鏡の中に吸い込まれでしまった高速戦隊が目にしたのは、生け贄の儀式として、ステージで踊り狂うキリカ(笑)
 「踊れ! 踊れ! はははははは! はははははは!」
 キリカはウーラーと集めた生け贄を従えて鏡ボーマ内部の異世界を熱狂のダンスフロアへと変えており、やたらと尺を使ったダンスシーンに戸惑うのですが……この後、懐からこぼれ落ちたサインボールを手に(月影小夜子は本当はあんな子じゃない……)と説得の意を強くする力の様子を見るに、俺だけが魅力を知っていた地味なあの子が不良になってしまった! の象徴がディスコだったのでしょうか。
 洗脳呪術に懸命に抵抗する5人だが、手も足も出ないまま生け贄の生命力を吸い取った大怪鳥が遂に復活!
 「若さとは空恐ろしいものだ……ふふ、そうだ、その若さが、欲しかったのだ」
 暴魔百族に新たな活力を求める大帝様の言葉が、かつての太宰博士の「わかってるじゃないか君達は。その若さなんだよ」と対応するのは、おお、成る程。
 ヤミマルとキリカは大怪鳥の背にまたがり、サインボールを突きつけて人の心を取り戻させようとする力だが、小夜子は流れ暴魔キリカとして力を攻撃。
 「終わりだな……月影小夜子! 俺たちの青春は終わった! これは、これはおまえへの訣別のボールだ!」
 ハイ炎力さん早かった!!!(笑)
 台詞のテンションそのものは格好良かったのですが、人と魔の狭間で千々に乱れるヒロインと力が積極的に絡んでいくのかと思いきや、悪いのは暴魔の心だ! が発動して、青春終了(笑)
 まあ、前作と同パターンになるのは避けたかったのでしょうし、また後で拾い直される可能性はありますが、ひとまず投げつけられた渾身のファイヤー魔球が小夜子に直撃し、野球は地球の伝統武術。
 「やるわね、炎力」
 「流れ暴魔キリカ! ヤミマル! 許さん!」
 デッドボールを受けたキリカが取り落とした剣によって鏡が砕けると、さらわれた人々は鏡の中から解放され、生け贄を用いて大怪鳥は復活させたいが大量殺戮はやりにくい、といったジレンマが目に見えるところではあり(寿命は減っていそうな気はしてなりませんが……)。
 両陣営は主題歌バトルに突入し、大帝様から公認ライセンスが降りたのか、ヤミマルがウーラーを召喚(ウーラー隊長は、このまま居なかった事にされないか心配)。キリカが桃を痛め付けるシーンに合わせて「愛を知らない 哀しい暴魔」の部分が流れる事で、OPの歌詞が前半戦とはまた違った意味を持って聞こえるのは、実に秀逸。
 『ターボレンジャー』名物《さっきまで幹部に苦戦していた筈なのに気がつくと追い詰めていた怪人との戦いに全員が合流》が発動し、鏡ボーマは連続キックからのGTクラッシュでビクトリーされ、もう一つの名物《話の流れも爆発の規模も個人必殺技で倒したとしか見えない演出がされるが念入りに合体武器でトドメを刺す》の方は発動しませんでした。
 キリカが謎の扇風機で鏡ボーマを巨大化して、引き続き幹部クラスは誰でも巨大化可能路線となり、今回はターボロボが出撃。鏡ボーマの中に収まったドラグラスのミサイル攻撃を受けるとラガーファイターを召喚し、スーパーシフトによりトーテムポールもといスーパーターボロボが大地に立つと、完成した次の瞬間、なんの風情もなく秒殺(笑)
 見るからに動けないので仕方がありませんが、もはや合体シークエンスが必殺技のモーションとなっており、《おうぉー おおおおおー おおおーおー おーおーおーーー!》。
 「ターボレンジャー! 戦いはこれからだ!」
 ヤミマルとキリカは暴魔コウモリの背に乗って飛び去り、
 ナレーション「一つの青春は終わり、若さと若さが激突する、新たな青春の戦いが始まったのだ」
 と新展開突入が告げられて、つづく。
 キリカ登場の布石こそあったものの(あった割に、というか)小夜子周りはかなりの急展開でしたが、本放送時は今回から放映日時が変更になったとの事で、新ロボ登場と派手な退場劇に加えて、なるべく興味を引く形で新展開を! とこの数話に詰め込む事情などがあったのかもしれません。
 次回――ストレートに妖怪が出てきて、一息のエピソードとしては面白そうなアイデア