東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
旧ダイアリー保管用→ 〔ものかきの倉庫〕
特撮作品の感想は、順次こちらにHTML形式でまとめています→ 〔特撮感想まとめ部屋〕 (※移転しました)
HP→〔ものかきの荒野〕   Twitter→〔Twitter/gms02〕

早めの鎧武

 メロン&バロンを土曜日ぐらいに見たい予定につき。あと『キラメイ』追いつかなくては……!

仮面ライダー鎧武』感想・第19-20話

◆第19話「贈られた秘密兵器」◆ (監督:石田秀範 脚本:虚淵玄/毛利亘宏)
 「戦闘には慣れていなくてね。加減を間違えてしまった。お願いだ。もう一度だけ変身して」
 紘汰の前に現れた仮面ライダーレモンは、鎧武をあっさり変身解除に持ち込むと再度の変身を要求し、自・由。
 「葛葉!」
 そこに駆け付けた戒斗が友情ダッシュからバロンに変身するが瞬殺され、満足したレモンは一時撤収すると、その変身者はプロフェッサー。独特のブレス位置と声音だけで誰だか一発でわかるなどプロフェッサーはかなりいい味を出しており、要所要所のキャストの良さは光るところです。
 「さては私に手の内を見せたくないのかな?」
 「……そんな。買い被りすぎですわ」
 「まあいいさ。腹に一物抱えているのは誰しも一緒。……楽しい職場だよね」
 プロフェッサーから未知数のライダーの一人に数え上げられた耀子は、必ずしもプロフェッサーの信奉者というわけではなさそうな一面を覗かせ、『獣拳戦隊ゲキレンジャー』の理央様サイドというか、“物語を動かす”事の縛りが強い紘汰サイドよりも、組み立ての自由度の高いユグドラシル側の方が人間関係の面白みが出ているのは悩ましい面がありますが、その点では、両者を繋ぐ位置に入ったミッチのポジションは好材料であり。
 前回の合同ダンスイベントの終了後、ビートライダーズの評判は底を脱した一方で多くのチームが解散を表明し、残っているのは本当にダンスが好きなチームだけ! という事にされ(いっけん綺麗に始末を付けているのですが、解散したチームを十把一絡げに「別にダンスが本当に好きなわけではなかった」扱いするのは、もはや終わった要素とはいえ少々もやっとする部分)、すっかり爽やかになったザックは、チーム鎧武の溜まり場で和気藹々。
 一方、チームバロンを離れ、ユグドラシルの秘密を探り出そうとする戒斗の単独行動を危ぶむ紘汰は同行を申し入れ、森の側からクラックを通って潜入すれば警備はたぶん手薄だ! とすさまじく杜撰な作戦に戒斗が自信満々なのですが、森側のテントはともかく、どう考えてもユグドラシル社内側の出入り口って、最重要警備ポイントだと思うのですが(そうでなくても、研究員がほぼ常駐していると想像は付きそうなものですが……)。
 この手のザルの穴は諸作にありますが、なまじ作品テーマの比喩を直結させる形で〔大企業(大人)vs民間人(子供)〕という構図を取ってしまったが為に、「大人が子供を甘く見ている」以上に「子供が大人を雑に見積もりすぎている」のが悪目立ちしてしまい、“子供が賢明に絞った知恵を上回ってくる大人の嫌らしさ”が表現できていないのは、残念な点。
 それが、子供サイドへの好感の持ちにくさにも繋がっているのですが、悪い事に話の都合で大人サイド(ユグドラシル)がその雑な見積もりに付き合ってしまうので、やりたい構図と劇中のリアリティラインが噛み合わない状況も多々。
 ……なにしろ、実は真っ正面からの方が潜入しやすい!!
 紘汰が総長の死の真相を知る事を恐れるミッチは、正面ルートについて教えないどころか、紘汰と戒斗の目論見をスパイとして貴虎に伝え、新兵器チューリップビークルを操る黒影軍団が森で両者を待ち伏せ
 「この森は我々のテリトリーだ。好きにはさせない」
 二脚歩行メカにまたがる黒影部隊に一蹴された鎧武とバロンは、クラック作成ビームからの強制排出を受けて市内に放り出され、ここで一番気にするべきはクラックの任意作成機能だと思うのですが、二人揃って完全スルー(笑)
 「おまえたちがやる気になってくれて、俺は楽しいぜ」
 悔しがる二人を見下ろす位置にDJサガラが姿を現し、言動から迸るプロフェッサーばりのダメな感じ。
 「DJサガラ……なんの用だ?!
 「なんの用だはないだろ? おまえたちを助けに来たのに」
 「信用できるか」
 「いや、信用していい」
 駄目でしょ。
 「前にも俺を助けてくれた。それに……これをくれたのも、あの人だ」
 だから、駄目でしょ。
 独房の鍵をくれたのはまあともかく(その時も、「おまえが俺を楽しませてくれるなら」とか言っていたわけですが……)、つい最近、戦極ドライバーの真実について激怒していたばかりなのに、どうして、胡散臭いアイテムをくれる人をあっさり信用してしまうのか(笑)
 どうしても必要な力の為に、リスクを承知で手を伸ばしてしまう、という状況設定は古今に山ほどあるわけですが(そしてそこに物語それぞれのドラマが生まれる)、そこを、雑な信頼関係の成立からリスクについて考えない、ですっ飛ばしてしまうのは、どうにもいただけません。
 作品として、「敢えて、切羽詰まった状況でのやむを得ない選択に追い込むのではなく、個々の欲求に基づき力に手を伸ばした結果、少しずつズレた歯車が止まらなくなってしまう」みたいな狙いはあるのかな……と思えますが、Aをやらない代わりに代入したB、があまりに雑で、Aと釣り合いが取れていない為に、物語の納得度が著しく下がってしまう事に。
 上述したユグドラシルの問題とも繋がるのですが、「死の恐怖を覚えた、のに、知人を囮に使う」「超大企業、なのに、警備がゆるゆる」「初瀬の喪失を物語の転換点の象徴にした、のに、中身人間への攻撃が雑」「もう騙されないぞ宣言をした、のに、明らかに胡散臭い奴を信用する」と、一つ一つはそこまで致命的な要素でもない(ゆえにフォローも可能な範囲)ながら、強調して設置した直後に力強く踏み抜くので、自爆のダメージがいちいち大きい。
 DJは、自分はユグドラシルの手先ではなく、森が選ぶ者をずっと見守っているだけだと称してへらへら笑うと、紘汰にチェリービークルを渡して姿を消し、戒斗は時間を置かずに再突入を宣言。
 「俺がなんの準備もなく動くと思うか」
 ……思います。
 「さっきは不意を突かれただけ。あっちの戦力がわかれば戦いようがある。仕掛けは既にしてある」
 「ほんとかな~。なんか不安だなー」
 「なに?」
 紘汰は軽口の通じにくい戒斗にスイカ錠前をレンタルすると二人で森へ再突撃し、待ち構えていたシド&黒影部隊にチェリービークルで逆襲。先の戒斗の台詞から考えるに、途中で投げるワイヤーみたいな罠を仕込んだ場所へ誘導した、というニュアンスだったのかと思われますが、鎧武&チェリービークルが大暴れし過ぎて全く存在感が出ず、かといって「贈られた秘密兵器」が目立たない選択肢も無かったでしょうから、あれこれちぐはぐな事に。
 バロンは完全に癖になりつつある「ここは俺に任せろ!」を発動して鎧武を先に行かせると、シグルドと激突。
 「おまえらの隠し事が弱みなら、ユグドラシルは強者ではない!」
 「なんだと?」
 「俺はおまえらを支配者の座から引きずり下ろす!」
 それだと、パーフェクト強者には従うつもりに聞こえなくもないバロンは大玉スイカを着込むとグレートスイカバーでシグルドを突き刺して退け、強いなスイカ……。
 それをモニターしていたプロフェッサーは戒斗に興味を持ち、後日、この映像を主任に見せつけて「貴虎、君の盗まれたスイカが大活躍じゃないか」「あんたが盗まれたせいでこっち大迷惑してるんだけどなぁ」「ス・イ・カ~! 俺は見守るぜスイカの活躍!」と囲まれる未来予想図に、ストレスがマッハの主任は、自ら出撃。
 「俺はあの時の俺とは違う!」
 何故か森の中を彷徨っていた紘汰はメロンと接触すると、メロンの割り切りと、悪意を作り出すユグドラシルを許さない、とレモン鎧武へ変身。
 「全ては人類の為の尊い犠牲だ!」
 「あんたにそんな事を決める権利があんのか!」
 メロン(ユグドラシル)の独善を糾弾する鎧武はレモン陣羽織でも完敗を喫するが、貴虎は敢えて変身を解除。
 「だったら教えてやろう。本当の意味での、理由なき悪意を。おまえに、その勇気があるのならば」
 「……勇気? 勇気ってどういう事だ?」
 貴虎は紘汰に、森の真実を教えてやると告げ…………うーん……ミッチに教える事には納得が行ったのですが、ここで面倒くさくなってきて紘汰にも教える、のは、心変わりが早すぎる印象。
 まあ、兄さんとしても、一種の濡れ衣で一方的に罵声を浴びせられるのは気分の良いものではなく、小事を切り捨てる事への罪悪感も0ではない、という事なのかもしれませんが……どうもこの辺り、兄さん自身は美味しい立ち位置なのですが、兄さんにエクスキューズを与える為に「ユグドラシルがブレる」という本末転倒めいた事にはなっている気がします。
 一方、クラックを通ってユグドラシル社内に入り込んだのも束の間、怒りのシドの追撃を受ける戒斗だがプロフェッサーがそれを止め、段々とシドにとってもストレスの溜まる職場になってきましたが、楽しそうなのはプロフェッサーとDJだけだ! で、つづく。

◆第20話「世界のおわり はじまる侵略」◆ (監督:諸田敏 脚本:虚淵玄
 引率の貴虎にぶつぶつ文句を言う紘汰は、「黙ってついてこい」と言われると急に態度を軟化させてリーダーの事を知らないかと問いかけ、当初の目的を思い出した代わりに当面の目標を忘れている気がするのですが、初瀬インベス追跡の時といい、君はすぐに戒斗の足止め行為を忘却の森に捨てていくな!
 まあ紘汰からすると「あいつは俺が心配するような男じゃないぜ!」みたいな気持ちなのかもしれませんが、見ている側としては、「もうちょっと心配してやれ」と思います。
 その戒斗はプロフェッサー(なおクレジットでレモンライダーは「仮面ライダーデューク」と判明し、つまりレモン公爵)に見下ろされ、貴虎→紘汰、プロフェッサー→戒斗、の形で交互に諸々の説明をされていく事に。
 「ここは地球とは別の惑星なのか、時間軸の異なる平行世界なのか。正確なところは、我々にもわからない」
 「それを解明する為に結成されたのが我々ユグドラシルだ。あまりにも組織が巨大になりすぎて、今では多国籍企業という体裁を装っているがね。実態はあくまで、研究機関なんだよ」
 むしろ、秘密グループが本体だった、という衝撃の種明かし(笑)
 そのユグドラシルが沢芽市に目を付けたのは、地球上でクラック出現頻度が最も高い為であり、ユグドラシル社内に維持されたクラックが、鎮守の木に開いたものである事を知る戒斗。
 「そうやって貴様等が踏みにじってきたものを! 考えた事はあんのか」
 戒斗は思わずプロフェッサーの胸ぐらを掴んで激高し、ここは戒斗の青臭い部分が格好良い方面に出て良かったところ。
 「君のそういう判断、とてもいいね」
 「貴様に俺の何がわかる!!」
 「……その言葉、そっくり返そう。我々を憎むよりも先に君にはまず、ユグドラシルの真意を理解してもらいたい」
 一方、貴虎に連れられた紘汰が見たのは、巨大な都市の廃墟(ミッチと同じものと思われますが、実際の映像より、ミッチのリアクションの方が衝撃度が強かったり)。そしてそこに居た人々は、森の果実を食べてインベス化した事を伝えられる。
 「我々がインベスと呼んでいる怪生物……あれはかつて、この世界に住んでいた動物たちの成れの果てだ。その中には、この街を作った文明人も含まれる」
 ヘルヘイムの森、及びその植物とはいわば、異世界からの外来種
 「言った筈だ。これは、理由の無い悪意だと」
 「俺たちの地球も……滅ぶのか」
 専門家の予測によれば、クラックからの侵食により地球がヘルヘイムの森に覆い尽くされるまで、猶予はあと10年……街ではナックルがインベスと戦い、龍玄も量産型黒影と共にクラックを封鎖し、悪化する街の状況が差し挟まれる。
 (これでいいんだ。真実は全て隠しておけば、みんなの笑顔を守り通せる)
 そして紘汰は、生活の後が僅かに残る廃墟の中で愕然と腰を落とす。
 「世界を救う責任を、誰よりも公平に果たせるのは我々だけだ」
 「……おかしいだろ……こんな時こそ人間って一つになるんじゃないのか?! みんな滅びるってわかったら、お互いに争っている場合じゃないだろ!」
 「……つくづくおまえは、人の悪性というものを知らんようだな」
 これまでも色々とあったのでしょうが、貴虎兄さんはとうとうと、ユグドラシルの技術は国家レベルの争いを生むものであり、その独占は世界の支配に繋がるものである事を説明し、ようやく、一つの非常時に対する大人と子供の視点の相違と、考えの衝突が劇的になり、繰り返しの感想になってしまいますが、もっと早くここに辿り着いても良かったような。
 正直、隠された真実を前提としたユグドラシル側と、それを知らない紘汰サイドの対立が、面白さよりもストレスの多い構造だった上に、1クール目が“丁寧な前振り”とは言いがたい内容だったので、「衝撃の真実」的なひっくり返しが、あまり上手く機能していない印象。
 “世界に対する認識の変化を主観ベースで描いていく”点は一貫しているので、それがどこかでカチッとはまってくれるのは期待したいところでありますが。
 「問題は、そのユグドラシルの未来を背負うのが誰なのか」
 長いエスカレーターに乗るシドと耀子は互いに牽制中。
 「誰が禁断の果実を掴むのかで全てが決まる。ゲネシスドライバーならそれに手が届く」
 「あなたにもその資格があるってわけ?」
 「俺だけじゃない。あんたもだろ? 湊耀子」
 「さあ……なんのことだか」
 紘汰は真実を隠し続ける姿勢に疑義を抱くが、真実を公開してもパニックと絶望を巻き起こすだけでむしろ人類絶滅の危険性を広げるだけだ、と貴虎は重ねて指摘。
 「彼らの平穏な日々を奪うのが、おまえの考える正義なのか?」
 「……そんな……」
 「侵略の恐怖に立ち向かう役目は、立ち向かう力を備えた者達だけが担えばいい」
 単純に発声の都合だったのか意図的な演技だったのかやや微妙ですが、「だけ」を強調するのが、良くも悪くも貴虎らしくあります。
 そこに現れる更なるインベス軍団に変身するメロンだが、インベスの真実を知った紘汰は、変身を躊躇。
 「躊躇うな! 果実を食って理性を失えば、もう死体と同じだ! こいつらはもう、ヘルヘイムの種を運ぶインベスでしかない!」
 攻撃を受けて変身する紘汰だが思い切りを失って逃げ惑うばかりとなり、簡単に割り切れるものではないとした上で、ここで元人間のインベスとの戦いに戸惑う姿を強調するならば、中身人間のドリアンや黒影を思い切り殴り飛ばせる線引きにはやはり首をかしげるのですが、「自分が正義だと信じている時に、悪と認識している者には幾らでも力を振るえる」というのを意図して描いているのだとしたら、どうにも露悪的に過ぎると思いますし、人間性に対する皮肉としては痛烈でありますが、主人公にやらせる事でもないよな、と。
 一方、ぼくらと一緒に世界を守ろうよ、とわざとらしく手を差し出したプロフェッサーに対して、戒斗は決然とそれを拒否。
 「そもそも、何故この世界を守る必要がある」
 「ほう」
 プロフェッサーの、目を丸く剥く演技は好き(笑)
 「戦うことを忘れた者に、生きる資格なんてない。むしろ、侵略は絶好のチャンスだ。力のある者と、弱い者がはっきりとわかる。ヘルヘイムと戦って、生き延びた者だけが――未来を掴めばいい」
 久々に戒斗の異世界転生者スイッチが入ってしまうのですが、あなた15分ぐらい前に、「そうやって貴様等が踏みにじってきたものを! 考えた事はあんのか」とか憤ってませんでしたっけ……。
 「成る程、おまえはそういう奴か」
 「ようやくわかったわ。プロフェッサーがあなたを見出した理由が」
 「君ならそう答えるとおもっていたよ。期待通りだ。駆紋戒斗くん。改めて歓迎しよう。我らが同志よ。……これからは我々と共に、野望の道を、歩もうじゃないか」
 真・ユグドラクローバーの結成だ!!
 「……貴様等は何を企んでる?!」
 部屋に入ってきたシドと耀子にも笑顔で囲まれ、いざ全方位から肯定されると、ちょっと動揺する戒斗、でつづく。
 ユグドラシルの隠してきた森の秘密が紘汰と戒斗にも明かされ、人倫とは無関係な植物に似た侵略システムと、その存在が人間社会に否応なく及ぼす影響への言及、はSF的視点で割と好きなのですが、今度は一気にスケール感が大きくなって、ライダーバトルに落とし込めるのかがちょっと心配になってきます(笑)
 紘汰と戒斗は早くも振り落とされつつあるのですが、このビッグウェーブに振り落とされるわけにはいかない! と虚飾で保たれた世界なんてぶっ壊せ発言でスカイダイブを決めた戒斗は、自分の言動に責任が取れるのか。
 一方の紘汰は、このまま兄さんのロジックに飲み込まれてしまうと格好が付かないので、主人公としてどんなカウンターを放つのか期待されるところでしたが、プロフェッサーを始めとした新たな「悪」が設定されつつある感があり、“理由のある悪”と戦っている内に行き詰まりが見えた結果、“倫理的な邪悪”が登場して、それ以前のテーゼがあやふやになってしまう作劇の不安が漂いますが……果たしてどうなる。