東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
旧ダイアリー保管用→ 〔ものかきの倉庫〕
特撮作品の感想は、順次こちらにHTML形式でまとめています→ 〔特撮感想まとめ部屋〕 (※移転しました)
HP→〔ものかきの荒野〕   Twitter→〔Twitter/gms02〕

世界の終わりの救世主

高速戦隊ターボレンジャー』感想・第28話

◆第28話「ロボ合体不能」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
 ヤミマルを襲う謎の襲撃者――その正体は、真紅の鎧に身を包んだ女(カラーリング的にはコロンさん)。
 「男の顔は履歴書。俺の顔に傷付けた奴は、許さないぜ。ふん!」
 キザを気取る不良番長、という2万年の間にキャラ作りをこじらせすぎた気がする流星は女にナイフを投げ返すと、それは木の幹に突き刺さる。
 「……ふっ、安心しな。女の顔を切るほど、俺は下衆な男じゃないぜ」
 殴り飛ばしたり、バイクで体当たりはするけどな!
 「……さすがは流星。いや、流れ暴魔ヤミマル。おまえこそ暴魔百族を背負って立つ男」
 「なんだと?!」
 「そういう宿命になっているの」
 「宿命……」
 思わせぶりな言葉と共に宙に舞い上がった女は流星に謎の光を注ぎ込み……闇の中で目を覚ます流星。
 果たして全ては夢の中の出来事だったのか? またまた番組挿入歌以外が流れる演出で、「夢の中へ」(女性カバー。今作放映の1989年4月に、斉藤由貴によるカバーがリリースされたようで、それでしょうか。ちなみに同年の映画『ゴジラvsビオランテ』劇中でも使われているとか)をバックに埠頭に佇む流星と、暗闇の中を出航していくフェリーとの対比がやたらダイナミックな映像になっており、レベルを上げ続けて二万年、とうとうクラスチェンジの可能性が見えてきた流星の、闇の中をひたすら進む新たな旅の始まりの暗示でありましょうか。
 ――「……さすがは流星。いや、流れ暴魔ヤミマル。おまえこそ暴魔百族を背負って立つ男」
 「それが俺の宿命だという。感じるぜ……新しい俺の時代の到来を!」
 啓示を受けた流星がすっかりその気になっている頃……
 「いったいお前達は、いつになったらターボレンジャーを倒すのだ!」
 ここしばらく、ポリネシアンショーとか女子高生のストーキングとかで満足していた大帝様が、9話ぶりの大噴火で幹部たちに連続ビンタを浴びせ、暴魔城にはただならぬ緊張感が走っていた。
 「拙者が! 今度こそ、このジンバが必ず」
 「聞き飽きたわいその言葉。もはや言葉はいらぬ! 身をもって示せ! ターボレンジャーを倒さぬ限り、生きて戻ってくる事は許さん!」
 「もはや、覚悟の上でござる」
 青白い光に照らされたラゴーン様は相変わらず迫力たっぷりで、鞘に付けていた鈴(どういうわけか前回と被る……)を一刀の元に切断すると闇の中で残心を取るジンバ、正攻法の剣士系で、立ち回りはホント格好いいんですがジンバ……。
 「ターボレンジャーを真っ二つに」
 シーロンと博士のちょっとおどけた一幕が入り、挿入歌に乗せて和気藹々と夜の街をパトロールするターボレンジャーの姿で緩急の緩を入れた後、先頭を走っていた力を切り裂き姿を現したのは、暗闇魔人剣・二刀流を解放したジンバの急流。
 「命いただく!」
 「いつものジンバとは違う!」
 凄まじい剣技で5人を追い詰めていくジンバだが、そこにターボレンジャーの経験値を狙うヤミマルが乱入。ジンバの攻撃を防いだヤミマルの体から謎の光が放たれると、それはジンバとターボレンジャーを吹き飛ばしたばかりか太宰邸のシーロンにまで影響を与え、床に倒れたシーロンは瞳孔が開いて重体に陥ってしまう。
 「なぜあの光がヤミマル如きに出たのだ。という事は、ヤミマルこそが」
 大帝ラゴーンは何やらその光に覚えがある様子を見せ、謎の女との出会いがただの夢ではないと感じたヤミマルは、レベルを上げ続けて2万年、遂にこの果てしなく長い男坂のてっぺんが見えてきたぜ……! と目を爛々と輝かせていた。
 一方、光を浴びたターボレンジャーは激しく消耗して治療中。
 「……悪魔のオーラ。妖精のパワーを一瞬にして打ち消してしまう、恐ろしい光だ」
 恐らくターボブレスを通して間接的にその影響を受けたシーロンが倒れた事で妖精パワーが消滅し、ターボレンジャーは変身不能に。急転直下の非常事態に動揺するメンバーだが、突如として治療装置が火を噴くと、ジンバからの挑戦状がモニタージャックにより届き…………ええと、勢いで噛み合ってますが、互いの因果関係はゼロですよね?(笑)
 と油断していたら、モニターに映るジンバの放った斬撃が、太宰邸の内部を切り裂く!
 「なんて奴だ! モニターを通して攻撃してくるなんて!」
 『怪奇大作戦』みたいな事をしてきた暗闇魔人剣・電波斬りによって大事なベースをズタズタに破壊され、怒りに燃える力。
 「おのれジンバぁ!」
 「待て! 君達は悪魔のオーラを浴びた! 変身も出来ないんだぞ!」
 「博士! 俺たちはこれまで、妖精の力に頼りすぎていたんです! でも今、自分の力で戦う時が来たんです」
 台詞そのものは格好いいのですが内容は根本からターボレンジャーの変身システムを否定しており……青春のパワーを信じるんだ!!
 「もうここも駄目か……急がねば」
 5人が闇雲に飛び出していった後、床の帽子とジャケットを見つめた博士は怪しげな事を呟き、生身の5人はジンバに立ち向かっていく。
 「必ず、俺たち自身の力で変身できる!」
 電池は無いけど精神力で自家発電できる! みたいな事を言い出した力がジンバの刃に倒れたかと思われたその時、死中に活ありメディテーションで赤へと変身し、とうとうオーラパワーに覚醒(笑)
 夏休み終了後の新展開が幕を開けるや否や、もはや別の戦隊へと新生を遂げつつあるターボレンジャー、この数分間、完全に勢いだけで進行していくのですが、それを成立させる為に幹部を退場させる事で釣り合いを取ろう、というウルトラCの力技。
 苦戦する赤を助けようと飛び出した残り4人も変身に成功し、明るいBGMでターボレンジャーのターンとなって連続攻撃が炸裂。ジンバは無惨に砕け散ると、博士と姫がなんだかんだとその死を悼む中、機会を窺っていたヤミマルによって巨大化させられ富士をバックに巨大ジンバが誕生する。
 抜けるような青空と、ヤミマル、巨大ジンバの対比が鮮やかで非常に良かっただけに、巨大戦が始まると(仕方ありませんが)屋内セットに切り替わってしまうのが残念でしたが、ターボロボと巨大ジンバは凄絶なチャンバラに突入。最強武器ターボカノンをしのいだジンバの攻撃がロボを切り裂くと、闇蜘蛛の力により放たれた蜘蛛糸がロボに絡みつき、合体システムに異常をきたしたターボロボは分離を余儀なくされ、ここでサブタイトルが回収。
 「ジンバが倒したのではないぞ。ジンバの体を借りて、このヤミマルがターボロボを倒したのだ!」
 すかさずヤミマルはマイクアピールで権利を主張し、なんとか個々のマシンに乗り込んだターボレンジャーだが、黒のマシンが完全に行動不能に。
 4人は、突然トラックに思い入れを発揮した大地をもぎ離すと、たぶん去年はライブマンがナパームの中を駆け抜けていた辺りを必死に逃走するが、いよいよ巨大ジンバに追い詰められたその時――!

 おぅおおー おぅおおー あーれこそはー

 大地が鳴動すると地面が盛り上がり、地中から姿を現したのは……

 おぅおおー おぅおおー だーいようせーーい わーんせぶん!!

 謎の巨大要塞ワンセブン(並べて比較するとだいぶ違うかもですが、登場した瞬間の印象が完全に『大鉄人17』の主役ロボット・ワンセブンのフォートレスモードすぎて)が出現すると巨大ジンバに砲撃を浴びせ、ひるむジンバに対して上半身を起こした形態で更なる砲火の特盛りを注ぎ込むと、ジンバ、大爆発(笑)
 戦力的には単独でターボレンジャーを追い詰め、ヤミマルパワーを注ぎ込まれてターボロボを合体不能に追い込み、最初からもっと本気を出しておけば(リスクのある必殺剣だったのかと推測されますが)……といった活躍ではあったのですが、相手が新兵器とはいえ、まさかの自動操縦(ないし博士の操縦)にやられて退場、となってしまいました。
 明らかに存在を持て余されていたので、その状況下ではせめて爪痕を残す退場劇とはなったものの、今更ですが、やはり同期の《メタルヒーロー》の主人公(ジバン)と名前が被りすぎていたのがいけなかったのか……。
 ナレーション「果たして、この巨城の正体はなにか」
 一号ロボが車メカという事でか、トレーラー系を離れた超重量級の要塞メカ・大妖精ワンセブンは造形も格好良くインパクトがあり、『戦闘メカ ザブングル』のアイアンギアーも思わせますが、系譜としては『宇宙刑事シャリバン』のグランドバースとか、『宇宙刑事シャイダー』の超次元戦闘母艦バビロスの流れでありましょうか。
 次回――
 「博士! シーロンは、シーロンは無事なんですか?!」
 「ああ、無事だ。ちょっと姿形は変わってしまったが、なんの問題もなく元気だよ」
 「……今どこに?!」
 「ここさ」
 「ははは、博士、こんな時に冗談言わないで下さいよ。だってそこは、このマシンのどうりょ……く……ろ……」
 (博士が覗き窓を開けると、複雑にパイプの繋がった装置の中に、シーロンの杖と羽の欠片が浮かんでいるのが見える)
 「シーロンはね、最後まで、君達と一緒に戦う事を選んだんだよ。君達は、そんなシーロンの想いに、応えなくてはならないんだ!」
 ……妖精パワー無しで変身できるようになったし……今回わざとらしくほのぼのシーンが挿入されたり……妙に杖が強調されていたり…………果たして、シーロンはこの退場フラグの嵐を乗りきる事ができるのか?!
 そして、暴魔百族には更なるリストラの暴風雨が吹き荒れて、ええええっ?!
 なお、前回の次回予告は、全部喋っていると見せかけて、最重要のポイント(謎の女と謎の巨城)を二つ隠す、という手法でした。