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あまりにもはやすぎた恐怖の大王

ウルトラマン80』感想・第43話

◆第43話「ウルトラの星から飛んで来た女戦士」◆ (監督:湯浅憲明 脚本:水沢又三郎)
 (※脚本の水沢又三郎は、江連卓の別名義との事)
 冒頭から謎の円盤とそれを追跡する未知の戦闘機部隊のドッグファイトが描かれ、撃墜された円盤の元に向かったUGMは、生存者と思われる謎の少女を発見するが……矢的に迫る突然の投げ槍!
 襲撃者の正体は宇宙遊牧民ガラガラ星人であり、そろそろ終盤という事でか矢的はウルトラ知識の口を滑らせまくって城野隊員にツッコまれ、意識を取り戻すも記憶を失っていた少女(演じるのは、『科学戦隊ダイナマン』立花レイ役の印象が強い萩原佐代子さん!)は、キャップに「星涼子」の仮名を与えられてUGMに保護される事に。
 キャップ……それは昔どんな関係だった女の名前なんですか、キャップ。
 甲斐甲斐しく涼子の世話を焼く城野だが、お礼にとプレゼントされたブレスレットが仇になってガラガラ星人にさらわれてしまい、ヒロイン力が急加速。
 「ウルトラの星の使者、ユリアン王女、どうかな気分は」
 囚われの城野の前に現れたガラガラ星人のボスは、ブレスレットだけを目印にして城野=ユリアンと壮絶に誤解しており、萩原佐代子さんの出演もあって、同じ『ダイナマン』から「科学戦隊の司令官、山下博士はいただいた!」を思い出してなりません(笑)
 「ユリアン王女、ウルトラマン80は、どこに居る? どんな姿になっている?」
 えええ??
 「ウルトラマン80?」
 「おまえは、ウルトラマン80に会いに来た筈。奴は、どこで、何をしてるんだ?」
 ユリアン(城野)から情報を手に入れようと凄むガラガラボスですが、これまで80地球人モードの正体は侵略宇宙人業界の常識だったので、あまりの情報収集能力の低さに涙で前が見えません。
 だから、新しい星に着いたらまずはスペース酒場に行って情報を集めてってあれほど言ったでしょ?!
 一方、城野がさらわれた事を知った矢的は、後輩Bと涼子を連れてガラガラ星人のアジトに乗り込もうとするも迎撃を受けるが、爆発を避けた際のショックで涼子は「私はウルトラの星のユリアンよ!」と記憶を取り戻す。
 なお矢的先生は、「ウルトラの星から地球に来た時に、君はまだちっちゃな女の子だった」と供述しているのですが、人間への擬態にウルトラ族としての年齢や外見が反映されるのかとか、あなたウルトラの星を離れてどれぐらい経っているんだとか、そもそも矢的先生の女性観が……とか、色々と疑問がありすぎるので聞き流す事にしたいと思います。
 「矢的、ガラガラ星人はあなたを殺す為に地球にやってきたのよ」
 「なんだって、俺を?」
 「ええ。ウルトラの星を侵略しようとしたガルタン大王は、あたし達に反撃されて、王子を喪ったのよ。ガルタン大王はその復讐の為に、ウルトラマン80を殺そうとしているの」
 ツッコミどころが多すぎて貧血になりそうですが、だから、新しい星に着いたらまずはスペース酒場に行ってウルトラの星の戦力指数を確認してってあれほど言ったでしょ?!
 ろくな情報収集能力も持たない(が地球人にもバッチリ存在を知られている)宇宙遊牧民が、気軽に戦闘民族ウルトラ人に抗争を仕掛けないで下さい。
 そして、「王子を喪った復讐の為」と「ウルトラマン80を殺そうとしている」の間に物凄い飛躍があって何も繋がっていないのですが、よくわからないけど王女らしいユリアンと親しげだったりする80、実は母星に帰るとウルトラ貴族の一員だったりするのでしょうか(そうだとすると、悪の宇宙人ネットワークに動向が筒抜けなのも、重要人物であると監視されている可能性が急浮上し、バルタン星人の動物園作戦の意味もまた変わっては来ます)。
 それはそれとして、母星を襲撃したら返り討ちにあったので遊学中の身内を襲うぜ、の発想がせこすぎて、経緯全体の重量感を完膚なきまでに破壊し尽くしており、コミカル要素は後輩Bにまとめて最低限に留め、深刻な調子で盛り上げようとする展開とは裏腹に、敵が「これまでにない強敵」ならぬ「これまでにない身の程知らず」で、どうしてそうなりましたか。
 後輩Bを置き去りにして矢的と涼子はガラガラアジトに突入し(僕は人間のやり方でやるぞ、と棒高跳びの要領で防御策を飛び越える矢的ですが、気軽に同じ行動を促されていた後輩B、下手すると死んでたぞ……)、人質にされた城野と再会。
 だが、ガラガラ星人の不意打ちに気付いた城野が突然のスーパージャンプを見せると、矢的をかばって槍に刺されてしまう!
 「猛危ない!」
 「……エミ!」
 急に名前で呼び合う謎のハイテンションから、80としてガラガラ星人どもを皆殺しにしちゃって、と託された矢的は80に変身し、同じく巨大化したガルタン大王と激突。
 襟飾りやマント風のパーツに鞘から剣を引き抜くアクションなど、凝った造形が強敵感を醸し出し見映えはする大王ですが、やっている事は「宇宙のど田舎からやってきた勘違い小悪党」(せいぜい宇宙山賊の親玉)なので、大きな転機を窺わせるエピソードの敵としては、どういう視線を向ければいいのか困ります(笑)
 剣からのスパーク攻撃で80を追い詰めたかに見えた大王だが、死んだフリ戦法からの反撃で大事な剣を折られると、80必殺の飛び蹴りが顔面に炸裂。もんどりって地面に転がった所に必殺光線を叩き込まれ、復讐の念も虚しく、地球で塵と化すのであった。
 だがその残した傷跡は大きく……
 「ユリアン、城野隊員は?!」
 「あらゆる手を尽くしたけど、駄目だったわ」
 えええええ。
 とばっちりのとばっちりのとばっちりぐらいを受けて城野隊員の命の炎は燃え尽きようとしており、宇宙山賊程度の悪意で退場者が出るのがシニカルなリアリティともいえますが、フラグは立てまくっていたとはいえ、本当にこの敵のエピソードで良かったのか、と急な展開に目が白黒。
 薄々、矢的=80と気付いていた事を明かした城野は、地球の為に必要な80を守れた事を後悔していないと告げると、涼子にUGMの隊員になってくれるように頼み、絶命。
 「城野……君はよくやった」
 さすがのUGMも今回はシリアスなリアクションに徹して打ちひしがれるのですが、つい最近まで山の怪異と相撲を取ったり空飛ぶ宇宙怪鳥の背に乗った少年をぼうっと見上げていたりしてばかりだったので、急に人死にの出るユニバースに移動してきて、こちらのチューニングが追いつきません。
 スケジュールの都合など諸事情で降板が決定したのでせめて華々しい退場回を用意した、などもありそうで前後関係はわかりませんが、かくして城野隊員はコツコツ貯めてきたヒロイン力をバーストさせ、新ヒロイン登場の犠牲となったのであった!
 「エミ……約束するよ。地球の平和の為に、俺は力一杯戦っていくよ」
 「エミさん、あたしもあなたに約束します」
 その結果として、2クール目からずっと欠落していた矢的猛の行動理念が取り戻されるのが皮肉な副産物となりましたが、未来ある生徒達の存在に代わり、未来を閉ざされた者との約束で魂の熾火に薪をくべた矢的猛が完全に新生し、果たしてその戦いの行方や如何に。
 ……前回に続き今回も、色々とぶっ飛びすぎてちょっと面白い、の領域に突入したエピソードでありました(退場劇はさておき)。
 そしてお楽しみの前回の次回予告を視聴………………最初から最後まであらすじ喋ったゾ(笑)
 本編視聴後に見ると、あまりにあまりで大爆笑する「次回予告の新たな楽しみ方と面白さ」が生まれるレベルで、コメント欄で予告に関するアドバイスを下さったNさん、ありがとうございました!
 次回――酔っ払った職場の先輩とウルトラファイト