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サンデー・モーニング・フィーバー

仮面ライダー鎧武』感想・第17-18話

◆第17話「桃のライダー、マリカ光臨!」◆ (監督:金田治 脚本:虚淵玄
 「光真、おまえを身内として贔屓するつもりはない。ユグドラシルの一員となる 為の採用試験を受けてもらう にふさわしい実力を、証明してもらう必要がある」
 今回から関係者の口にする「ユグドラシル」が会社名ではなく秘密のサークル名みたいな扱いになっていて、ちょっと困惑します(笑)
 「なあミッチ……おまえには、守りたいものってあるか?」
 「守りたいもの?」
 「ああ。誰にもわかってもらえなくても、それでも戦う理由になる、大切ものとか、さ」
 ここ数話は、物語構造のシフトにともなって紘汰のヒーロー性の強化をかなり意識しているようで、そこは悪くはないのですが、初動からこのぐらい素直で良かったのでは感はどうしても。
 「…………紘汰さんや、舞さんと、笑顔で楽しく過ごせる時間。それだけはいつまでも変わらずにあってほしいです。……たとえ僕が……どんなに変わっていたとしても」
 【ミッション:鎧武からドライバーを奪還せよ!】を受託したミッチは、正体を隠しながらユグドラシルの一員として、ピエール&城乃内と接触。更に紘汰の姉を人質にドライバーとの交換を要求するが、紘汰姉に変装していた足技のおねえさんこと湊耀子が、紘汰がドライバーを手放す前に嘘でしたーと正体を明かしてしまい、よくわからない事に(一応、実は……の種明かしと繋がっているといえば繋がっているのですが、違和感が後で綺麗に解消されるというより、その場の雑な展開に見えてしまうのが困りもの)。
 本物の紘汰姉は、福引きの特賞の名目でケーキ屋の食べ放題を堪能しており、一般市民を実際に誘拐するリスクを冒さずに手の内にある事だけを示して脅迫材料にするのは周到な手段ではあるのですが、これまで市民の安全など気に懸けた事のないピエールが、店内で客に危害を及ぼすのはもっての他、とギャグにして作戦破綻は、あまりにも酷い。
 ピエールは基本、今作にとって最大限に都合のいい駒なので初期設定を除く描写の一貫性は全くないのですが(ドライバー回収を優先されないのはあまりにご都合ですし、市民からインベス騒動と無関係だと思われているようなのは物凄く不自然ですし)、そういった実質劇中の時間の枠外に居るキャラクターで、物語のダイナミズムそのものとして泥沼に足を踏み入れていく真っ最中のミッチの懊悩をドブに投げ捨ててしまうのは、目を覆う他ありません。
 後は力技で奪い取るまで、と変身したドリアンに対して紘汰は容赦なく陣羽織を発動し、ここからはレモンのステージ。
 ドリアンボンバーを貫く柑橘アローの直撃を受けたブラーボは、立体駐車場の5階ぐらいから勢いよく垂直落下すると地上の車に激突してアスファルトの地面に転がり、景気良く吹っ飛んでいく映像は迫力がありましたし、バトル上の勢いではあるのですが、初瀬インベス戦であれだけ苦悶していた割に、前回インベスを粉々に吹き飛ばした必殺攻撃を至近距離からライダーに浴びせる紘汰はもしかして、アーマードライダーは何をしても死なないと思っているのでしょうか。
 ままやらかす落とし穴ではありますし、例えば近作『ゼロワン』でも中盤引っかかるポイントの一つになったりしましたが、物語の焦点が「初瀬の死と紘汰の苦悩」にある時期だけにそこは気を遣って欲しかったですし、アクションの派手さ優先でそこに気を遣えないなら、そもそも、そういう物語にしてはいけないのでは、とさえ思います。
 紘汰が「ユグドラシルの代わりに街のみんなは俺が守る!」と言えば言うほど、「中身人間のアーマードライダーに思い切り必殺技をぶちこめる精神性」と分裂を引き起こしていくのが現状の大変困ったところですが、そういう物語をやるのならば、なし崩しにせずに、攻撃を躊躇する(そして目的の為にそれを乗り越える)エピソードをしっかり入れて欲しいな、と。
 基本的に紘汰、“正気”寄りの主人公なので、そういった葛藤の不足が目立ってしまう部分はあるのですが、紘汰に足りないのは「街のみんなを守る為ならアーマードライダーに必殺技をぶち込めそう」な“狂気”(笑)
 ……ま、足りていいものかどうかは別の問題であり、現状、そちらへ踏み込もうとしているのがミッチ、という事になりそうですが。
 ドリアンが戦線離脱し、大人になりたければ自分の手を汚してみせろ、とミッチを焚き付ける湊耀子は、満面の笑みでピーチ邪面を召喚。サブタイトルに名前がねじ込まれた仮面ライダーマリカへと変身し、鎧武とのパルクール射撃アクションなどは見せ場として良かったですが、桃のデザインはさすがにどう動いても格好良くは見えず……。
 あと、過去に桃モチーフのライダーが存在した(しかも主人公だった)という恐ろしい事実により、インパクト勝負にもなりきれないのがちょっと辛い。
 拮抗する両者の戦いの背後で踏み絵を迫られるミッチは、遂に龍玄に変身すると、その銃口を向けた先は――マリカ。
 「戦極凌馬に伝えろ。紘汰さんは、僕が守る」
 2対1となったマリカは何事かに納得した素振りを見せると姿を消し、プロフェッサーは主任に、レモンアタッチメントの性能実験の為に葛葉紘汰を泳がせてほしいとミッチに指示した、と説明。だがそれは、作戦の途中で湊がドライバー奪取に消極的な事に気付いたミッチとの口裏合わせであり、状況を利用したミッチはプロフェッサーの懐へと入り込んでいく……。
 「君……兄上より頭が切れるんじゃないか?」
 「使い方次第で、きっとあなたの野心の切り札に出来ますよ、僕は」
 かくしてミッチは、プロフェッサーの指示下(相変わらず、言いくるめられ体質の兄さん……)の形で、ビートライダーズ内部に潜り込んだスパイ、の立場を獲得。
 「良かった……これでまた……みんなと一緒に居られる。舞さん、紘汰さん……この笑顔を見ていられるなら、僕は……どんな事だって出来る」
 “誰にもわかってもらえなくても、それでも戦う理由になる、大切もの”の為、周囲のあらゆるものを利用しようとするミッチはひたすら陰に入っていき、ミッチに関してはホント、誰だこんな風に育ててしまったの……。
 あと、「仮面ライダーになっていた」事とセットで「ビートライダーズでダンスとかしていた事」まで兄さんが受け入れた事になっているのですが、それは戦いなの兄さん?!
 次回――さよならダンス?

◆第18話「さらばビートライダーズ」◆ (監督:石田秀範 脚本:虚淵玄/毛利亘宏)
 「しょせん、ダンスなんて力を示す為の手段の一つ」
 無から湧き出した紘汰との友情パワーも大概でしたが……今までで最高に何を言っているかわからないよ戒斗!!
 舞は、合同ダンスイベントを開く事で抗争の終了を宣言しよう、と各チームに持ちかけ、「ダンスをしたかったから争ってたんでしょ?!」といつの間にか本末転倒に陥っていた事を劇中人物から指摘させて話の整合性を取りつつ、人々を守ろうとする鎧武の戦いとその訴えを重ねる事で、“誰にもわかってもらえてなくでも大切なものの為に戦う姿”として描く……が、大きな障害が一つ。
 「そうか、全て俺のせいか」
 そもそも抗争に火を付けたバロンとは踊りたくない、と戒斗が総スカンを喰らい、舞と紘汰に怒鳴り込まれた戒斗は、イベントへの参加を拒絶(なんかここの、強者は嫉妬を受けるのが世の常とは考えていたけど、そこまで普通に嫌われているとは思っていなかったっぽい戒斗の反応が妙な笑いを誘います)。
 ダンス=力を素直に翻訳すると、戒斗にとっての「力」=「チヤホヤされたい」になるわけですが、アイドル?! アイドルなの?!
 確かにアイドルになれば、ユグドラシルを倒せる可能性はあるかもしれないけど…………!!(アイドル万能理論)
 「いくらおまえでもそんな言い方は無いだろ!」
 「……意外だな。おまえもそんなにダンスが踊りたいなんて」
 「俺はビートライダーズの汚名をそのままにしたくないだけだ」
 君も、ダンスは割とどうでもいいのか(笑)
 ……まあ紘汰の場合はそれこそ、ダンスは手段であって目的ではなく、チーム鎧武という“場”への思い入れなのでしょうが、この温度差は結局、クライマックスのまとまりの悪さの一因になる事に。
 この後一応、紘汰の台詞などで、戒斗は戒斗なりに多分ダンスに思い入れがあったりするのだけれども自分の非を素直に認められない格好つけなので、「おまえらだけで好きにやればいいじゃん」を戒斗語で表現すると苦し紛れにあんな感じになるのでは的なフォローが入るのですが、そもそも無理の大きかったダンス×インベスゲームに始末を付けつつ戒斗ロジックと接続しようとした結果、リアルに意味のわからない発言になってしまいました(笑)
 メンバーの「俺……ダンスがしたいです」発言を聞いた戒斗は、腰巾着に量産型ドライバーを託す(余ってましたっけ……?)と、チーム脱退を宣言。
 「俺は俺の戦いを始める。その為に辞めたまでだ」
 残ったバロンメンバーの参加申請を受けて始まる合同ダンスイベントだが、観客はほんのわずか。更にピエールが嫌がらせに姿を見せるともはや手下の城乃内にインベスを放たせ、会場が混乱に陥る中、俺たちのステージを守る為に紘汰は変身。
 更にチームバロンの元腰巾着ことザックが、突然やたら格好良く格闘系のアーマードライダー胡桃に変身し、メインではないゆえの思い切った格闘仕様が、むしろ量産型前提だった黒影などより面白いデザインでちょっと困ります(笑)
 「俺はチームバロンのリーダー、ザック。アーマードライダー、ザックルだ!」
 上手いこと言ったザックルは巨大な両の拳でインベスを殴りつけ、ダンス要素をフィーチャーして抗争終了を宣言する筈が、チームバロンの新リーダーは結局変身してダンスの機会を与えられないので、敵が外部とはいえ「ステージを守る為には戦う力が必要」という元の木阿弥になってしまっているのですが、DJが中継するその姿は、態度を保留していた各ビートライダーズのダンス魂に火を付ける。
 会場に揃った各ダンスチームは、城乃内の更なる嫌がらせにもくじけず指でリズムを取って踊り始め、持ち込んだ設定に始末を付ける為に正面からダンス要素を取り上げて埋葬しようという姿勢そのものは嫌いではないのですが、なにぶんこれまでの物語におけるダンス要素の扱いが雑極まりないものだったので、一つの集約としては特に面白いものにはならず。
 あと、劇中番組上の演出ではあるのですが、画面にコメント流すやつが現実で好きではなく、演出として凄くうるさい形で持ち込んだのもマイナス(今回は、ピエール×城乃内の絡みもクドく、面倒くさい石田)。
 そうこうしている内に城乃内はチームメンバーに捕まってステージ上に持ち上げられ、なんの前振りもなくバロンが乱入し、一斉に踊る大量のダンサーというシチュエーションそのものは独特で面白いものの、ではそれがバトルに連動するのかといえば、敵はとっくに勝負付けの済んだドリアンなので、盛り上がり皆無なのが辛い。
 いっけん、ダンス要素としっかり決着を付けようとする誠実な劇作のようで、結局、ダンス要素とヒーローフィクションとしての見せ場は乖離したまま放り投げられる残念な決着で、典型的な、あちら立てればこちらが立たず。
 案の定、ドリアンはレモンに一方的に蹂躙され、バナナはあれだけ格好つけておいて、何しにきたの……? と思ったら、クルミと一緒に残ったドラゴンインベスと戦っており、終わってみると、いざステージに上がってみるとノリノリで踊りだす城乃内が一番面白かった、みたいな事に。
 「おまえはもっと強くなる」
 戒斗はザックに激励の言葉を残して去って行き、さらばビートライダーズ!!
 ところが皆の元に戻ろうとした紘汰の前には、謎のライダー――というかどう聞いてもプロフェッサーが現れて、次回、久方ぶりのメロンのターン。