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狼、再び

牙狼GAROスペシャル』感想(前編)

◆『牙狼GAROスペシャル-白夜の魔獣-』◆ (監督:雨宮慶太 脚本:江良至)
 「ねえゴンザ、どうして男は魔戒騎士になると、優しくなくなるの? 笑わなくなるの?」
 「俺は不器用じゃないし、冷徹でもないぞ」
 「鋼牙様は、決して優しくないわけではございません。それに、笑顔の似合う魔戒騎士も、おられますよ」
 「うっそだー」
 TV本編(以下:本編)から約半年後に前後編で放映された『牙狼』特別編、冒頭から、ガラの悪いナンパ男が登場するのが、大変『牙狼』です。
 それに批判的なまなざしを向ける“筆を持った”少女だが、一触即発のその時、白いロングコートを翻した冴島鋼牙がヒーロー着地を決めるとナンパ男に「逃げろ」と促し、強引にナンパされていると思われた女の正体こそがホラーと判明して、目から両手が出てきて超怖い。
 「貴様等を狩るのが俺の仕事だ」
 いけすかないナンパ男でも人間を守るのが魔戒騎士の使命、と格好良く決めた直後にホラーの吐き出す粘着糸に引っかかる冴島鋼牙さん、苦手なものは、女性型のホラーです!
 なんとかそれを脱するも、本性を露わにした蜘蛛ホラーによってビルの外壁に貼り付けられ、更に自動車をぶつけられる鋼牙だが、それを防ぐと落下する自動車の屋根の上で、鎧召喚。
 《おうぉー おおおおおー おおおーおー おーおーおーーー!》
 黄金騎士のどアップに合わせてタイトルが入り、お! キャストに、山本匠馬さん(『仮面ライダーキバ』の若社長が好き)の名前が!
 ガロは斬ると分裂する蜘蛛ホラーを内部から焼き尽くし、掴みのアクションで如何にも“『牙狼』らしさ”が出せるのが、2クールのTVシリーズでそれを見事に積み上げてきた強みとして光ります。
 未だ残る微かなホラーの気配を感じた鋼牙は、筆の少女がホラーの血を浴びた物を所持している事に気付き、その正体がカンタイ(?)の地から鋼牙に会う為にやってきた魔戒法師の卵・リンであると知る。
 「阿門法師に頼まれた」と称する少女が、鋼牙と法師しか知らない話を知っていた事から屋敷に連れ帰り、さっそく友好度を上げていくゴンザ、得がたい人材です(笑)
 新生ザルバへの説明という形で阿門と鋼牙の父・大河について触れられ、術者としての実力を見せつけようと何やら魔法少女ノリで呪文を唱えるリンが、見事に制御に失敗してカオルの絵を傷付けてしまい、リンの一番大事な筆と、鋼牙の一番大事な絵が対比される手堅い進行。
 険悪になりかける鋼牙とリンであったが、事が阿門絡みという事でか鋼牙はリンによる阿門の霊体召喚の儀式を受け入れ、姿を見せた阿門は、死んだとばかり思われた邪美の肉体は魔界樹の幹に囚われており、その解放を鋼牙に依頼する。
 「鋼牙、バルチャスの続きは、ずっと先だ。決して、急いで来るではないぞ」
 邪美復活の望みを賭け、鋼牙がリンと共にカンタイの地から魔界の森を目指す一方、新生・東のギルド所属の魔戒騎士として人形ホラーを撃破した零も、カンタイの地で行われる儀式の護衛役として出張を命じられていた。
 本編で印象的だったゲストキャラの再登場に続き、健在の零! いきなりの馬! ビルの壁面を急降下! そして鋼牙はトレーニング、とこれが『牙狼』だ! を次から次へと詰め込んでくるサービス満点の作り。
 零がのんびりバイクの旅を楽しむ一方、鋼牙とリンは魔界高速道路を使ってカンタイの地のほど近くまで一気にショートカットし、本編では触れられなかった鋼牙母は、法師の修行を積んだ人物にして、鋼牙が2歳の時に病死していたと明らかに。同じく母親を失っているリンとの語らいの中で幼き日の邪美との出会いを思い返していた鋼だがは、カンタイの地に辿り着くや門番といざこざになり、意外と名刺代わりになりませんねその正装!
 「貴様、何者だ。俺の弟子に何をした?」
 「俺の邪魔をした」
 「……貴様……どうやら話をする事が嫌いらしいな」
 ……色々すみません。
 一応、事が事だけに気がせいているとか鋼牙的には色々あるのでしょうが、端から見ると若干「なに君? 俺の顔知らないの?」的な傍若無人な王子ムーヴに見ていて勝手に申し訳ない気持ちになる中、鋼牙は棒術を使う青年(演:山本匠馬)とぶつかり合い、肉体言語による語り合いを開始。多彩な武術と法術の組み合わせに苦戦を強いられるが魔界法師の老婆に仲裁され、血の気が多くて誇り高い青年は、リンの兄である翼と判明する。
 老婆の許可を得た鋼牙がリンの助力で森へ向かう一方、男女が山奥に死体を埋めようとした事がきっかけで開いたゲートから、ゼイラムホラーが大復活。一族のホラーを次々と復活させるとカンタイの地に手勢を差し向けるが、それを止めたのは零。
 「下がってな」
 気障に二刀を構える零だが、その攻撃よりも早くホラーの胸を背後から槍の穂先が貫き、零の見せ場を奪った翼が真紅の花びらを撒き散らしながら白夜の騎士へと変身。ホラーを蹴散らした翼は零とはガッチリ握手をかわし、魔戒騎士の世界でも、大切なのは紹介状!
 その頃、俺の顔が紹介状の男は魔界樹の元に辿り着くが、「頼む」一本槍の《交渉》判定に失敗し(頼んだだけでも凄いですが……)、「ならば、奪えばいい」という樹の言葉と共に姿を現したのは、なんと邪美の仇コダマ、とひたすらサービス満点。
 慇懃に一礼した後で口の端を持ち上げるのが格好いいコダマとのバトルになり、打撃を入れながら両眉をくいっと持ち上げるのが素敵。空中回転したコダマの姿は続いて零へと変わり、
 「ガロの称号が聞いて呆れるな」
 煽ってきた(笑)
 その姿は更に大河に変わる大サービスで、思い切って切りつけると悲鳴をあげたカオルが倒れ込み、駆け寄った鋼牙へチョークスリーパーからの回し蹴り!
 「それで強くなったつもりか?」
 更にバラ崎先生まで登場する特盛りぶりで、基本サービス重視のボーナストラックといった作りですが、ここまでやってくれると大満足。
 5人の幻影に迫られた鋼牙は、指輪のアドバイスを受けると剣を構え直し、バラード調のメインテーマに乗せて、自らの情念が生んだ幻像を切り伏せ、ぐっさり刺された幻の大河が、満足げな表情で成長した息子を抱きしめるような仕草をするのは、(鋼牙の願望でもあるわけですが)、グッと来る描写でした。
 カオルの土手っ腹も貫いて道を切り拓いた鋼牙は、魔界樹の内部へと突入。墨絵の中のような世界を邪実の元へと駆けるが防衛機構の攻撃を受け、馬を召喚するとモノクロームの世界を一気に駆け抜ける……と思ったら、落ちました(笑)
 外ではリンが魔界の邪気に群がられながらも必死に灯火を守る中、黄金騎士は掟破りの馬キックロケット加速により魔界樹の懐に飛び込もうとするもこれまた阻まれ、主を守る馬シールド。徒歩のまま巨大化したソードを振るう黄金騎士が邪美へと呼びかけると、その声は邪美を揺り動かすも、転生すべき魂として邪美を守ろうとする魔界樹(摂理の側の存在と思われます)の猛攻は続き、追い詰められるガロ。
 だがその時、記憶に無い筈の母?の言葉を思い出したガロは、、轟天とシンクロして100万馬力の超巨大剣を生じさせ、自ら投げたその刀身に乗って突撃し、《おうぉー おおおおおー おおおーおー おーおーおーーー!》
 邪美を解放するとお姫様抱っこを決めて無事に帰還。ひとまず邪美の問題は解決するが、カンタイの地で行われる儀式に向けて、水面下では底知れぬ邪悪が蠢いているのであった……。
 放映時はこの魔界樹戦が前編のクライマックスだったという事情もあるのでしょうが、馬召喚!→駄目! 馬ロケット!→駄目! 10万馬力!→駄目! 100万馬力!→遂に解放! は、一つ一つの画そのものは面白いものの、さすがに繰り返しすぎて勢いを削いでしまった印象で、個人的には2回目の挑戦ぐらいで決めてほしかったところです。
 本編は「父と子」の要素がフォーカスされていた分、今作では「母」の要素に光が当たるようで、その布石も入りましたが、後編でどうまとまっていくか楽しみです。