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やっつけるんだ ズババババーン

仮面ライダー鎧武』感想・第15-16話

◆第15話「ベルトを開発した男」◆ (監督:諸田敏 脚本:虚淵玄
 「私は戦極凌馬。君たちが使った戦極ドライバーの、設計者だ」
 「え? ……じゃ、『花道・オンステージ』って」
 「『ナイトオブスピアー』ってのは」
 「――私の趣味だ。いいだろう?」
 ようやく自らフルネームを名乗ってくれたプロフェッサー凌馬は屈託のない笑みを浮かべ、こんな状況でなければ面白いやりとりだったのですが、前回ラストで初瀬リタイアの衝撃を強調した直後だっただけに、今聞くことそれ? と全く笑えないシーンになってしまい、その後シリアスに怒りをぶつけるのも、とってつけたような流れに。
 紘汰と戒斗は、プロフェッサーの傍らに控えていたミニスカハイヒールのお姉さんに蹴り飛ばされ、プロフェッサーはとうとうと研究について説明を始め、その間に紘汰とアイコンタクトを取った戒斗はトランプマジックを披露し、二人の友情ゲージはいつの間にか伊予柑レベルだ!
 だが、投げトランプを用いた友情の不意打ちはミニスカお姉さんのボールペンにあっさり阻止され、友情の儚さを味わいながら、またも足蹴にされる二人。
 「引き続き、協力をお願いしたいんだ」
 量産型ドライバーの完成によりユグドラシルから依頼されたプロジェクトは終えたプロフェッサー前髪だが、より強力で全能なる神の力に至る為、更なる研究への独自プランを二人に提案。
 「君達にとっても、魅力的な話ではないかな?」
 「虫のいい話だな」
 一方メロン兄さんは、役目を終えたモルモットは屑籠へ……ではなく保護すべき対象である、と述べて、大事の前に小事を切り捨てられる精神がある一面、庇護できる範囲の人命は庇護しようとする一線が描かれて、同じ穴の狢の中の色分けと温度差がより明確に。
 「選択肢など与えるものか」
 まあ兄さんは兄さんで、庇護する側と庇護される側=支配するものと支配されるものの間に厳然たる隔たりを見ていて、衆愚を優秀な人間が導くのが正しいと考えているガチガチの選良主義者なのですが、そこをネズミにも五分の魂がある――黙って庇護されるのを喜ぶとは限らない――と突くのがDJとなっていて、ユグドラシル側の方が基本的にキャラ相互の関係性とそれによって生じる陰影がハッキリしていて面白いのは、なかなか悩ましいところです。
 「ユグドラシルは研究だけが目当てで、この街を守るつもりがない。だから……俺がこの街のみんなをインベスから守る。必要なのはその為の力だ。ただ強くなればいいってわけじゃない」
 貴虎が良くも悪くも精神的貴族として独善に陥っているとすると、紘汰は“俺がヒーロー”という視野の狭い正義感に酔っているといえるのですが、その「視野の狭さ」のネガティブな描き方が、個人的な「リアリティはあるのかもしれないが、見ていてあまり楽しくはない」のツボに直撃気味で、もう少しこの、一方的な思い込みによる断定傾向をポジティブないしふわっと見せてくれても良かったかなと。
 独房に入り込んできたDJは、紘汰の発言を面白がると、独房の鍵と新たなロックシード、そして謎のパーツを置いていく。
 「おまえが俺を楽しませてくれるなら、俺もまた、おまえを見守ってやろう」
 ……い、や、だ。
 「ヘルヘイムの森が誰を選ぶか、まだ決まったわけじゃないからなぁ」
 思わせぶりに聞かせてくるDJが去った後、紘汰はミッチに助け出されると伊予柑パワーで戒斗も忘れずに拾い、友情ゲージが、めきめきと上昇。3人はプロフェッサーの部屋へ侵入するとドライバーその他を奪い取り、「返してもらうぜ」というか、ほぼ強盗です。
 奇跡的なタイミングで鎧武リーダーの変貌シーンが映し出されていたモニターをミッチが慌てて遮った拍子に警報が発動し、慌てて逃げ出す3人の姿は、今度こそばっちり監視カメラに捉えられ、とうとうミッチの姿を確認する兄さん。黒影部隊に襲われるとミッチとは別行動になり、再びここは俺に任せて先に行けムーヴを決める戒斗との友情パワーは、今や文旦レベルだ!
 地下のクラックから森を経由して逃走を図る紘汰だが、その前に立ちはだかったのは、錠前ディーラーのシド。
 「もう二度と! 俺たちはおまえに騙されたりしない!」
 「この期に及んでで戦極ドライバーなんて取り返して、いったい何をしようってんだい」
 「無責任なお前達に変わって、俺が沢芽市をインベスから守る!」
 「大人には大人の事情ってもんがある。下手に引っかき回されちゃ困るんだが」
 上述した要素とも繋がりますが、紘汰の青臭さを“子供の理想”として描き、大の前に小を切り捨て“居直る大人”と衝突させるビターテイストは、個人的な好みからはちょっと外れてしまっていて、それは私が、“ままならない現実を突破して理想に近付こうとする大人”を描く事にヒーロー性を見がちだからなのかな、と。
 その点では恐らく、「理想を抱えた紘汰」が、それを捨てないまま“大人”のステージに上がる事で、(複数の意味で)“世界を変えていく”のが今作の道筋なのかとも思えますが、そこまでの道のりがどうにもこうにも長く、今作がやりたい事に一番ピタッとくるスタイルは「小中学生ぐらいを主人公にした青春ジュブナイル」であるような気はします。
 それだと、視野の狭い正義感を物語を前に進める原動力として肯定的に扱い、“悪い大人”を戯画的に描きつつ、最終的にそうでばかりは無かった世界を知る“苦み”を「成長」要素としてまぶしても成立しやすかったかなと思うのですが、現状『鎧武』に私が感じるもやもやはこの、ジャンル違い感によるものが大きいかもしれません。
 勿論、ヒーロー物という枠組みの中で「青春ジュブナイル」を出来ないのか? といえば、それはそんな事は無いと思うのですが、キャストの都合などシリーズの蓄積からはズレがありますし、今作の諸所に見られる設計段階での摺り合わせの失敗と含めて、ベストパフォーマンスを出せるのかといえば相性の良くなさに直撃している印象。
 (この辺り、今作序盤に取り込まれていた「ホビーアニメの文法」も影響を与えているといえます)
 それはそれとしてシドの芝居は画面を引き締めてくれて、OPでナレーションが名前を呼んでくれた仮面ライダーチェリーもといシグルドへと変身。
 両者の戦いは森へと舞台を移し、いちいちエア帽子のツバに触れる仕草が特徴的なシグルドのホーミングアローに追い詰められた鎧武は追いかけてきたバナナのバイクに助けられ、もはや二人の熱い友情はバンペイユ!(数話前なら確実にそのまま走り去っていた)
 「段々思い出したぞ……ビートライダーズは正義!」
 「ユグドラシルは悪。そして俺達に戦えって」


「バナーナ!」 「ミカン!」
「花道!!」

 ナレーション「ダンスとは、正義と友情のエネルギーを現し、ユグドラシルとは、地球の平和を乱す、悪をいう。超人バナナ・ミカンは、花道クロスで変身するのだ」
 …………すみません、ちょっとした発作です。
 「ここからは俺たちのステージだ!」
 から、2人がかりでバイクで轢こうとする、のが凄く『鎧武』です。
 「なめるなよ。俺たちはいつだって本気だった!」
 「全てあんたの嘘に踊らされながら身につけた力だ。思い知れ!」
 二人が一人のバロローム、友情のバンペイユパワーによるダブルバイクアタックでシグルドを吹き飛ばした鎧武とバロンはそのまま逃走を図り、その背に向けられたシグルドのチャージショットは、桃アーマーが阻止。
 「あの2人はもうしばらく泳がせろって、プロフェッサー凌馬からの命令よ」
 瞳孔開き気味のミニスカお姉さんはプロフェッサーへの狂信的忠誠ぶりが一発で飲み込め、早口・勝手に喋る・モルモットの感情とかどうでもいい、と実に我が道を行くプロフェッサーのマッドサイエンティストぶりと合わせて悪役サイドのキャラが立ってきたのは好材料ですが、二倍速ぐらいでここまで来てくれれば、が正直(笑)
 一方、単身で逃走中のミッチの前には、ジェットバイク黒影部隊が現れ、監視カメラ越しに兄が見ているとも知らずミッチは龍玄に変身。ここまで長かったな兄さん! でつづく。

◆第16話「新アームズ!ジンバーレモン誕生!」◆ (監督:金田治 脚本:虚淵玄
 (光実……おまえが)
 龍玄、そして鎧武とバロンはなんとかジェットバイク部隊を振り切って逃走に成功し、『スター・ウォーズ』といえば、まんま『スター・ウォーズ』ですが、ジェットバイク部隊との追走劇は、アクションの変化球として割と面白かったです。
 その頃、他チームにインベスゲームの中止を持ちかけるも交渉が不備に終わった舞は、赤帽ジャイアン軍団がインベスを使って銀行強盗をしているのを目撃。それをたしなめるとインベスをけしかけられてしまうが、舞の危機を救ったのは、突然そこに現れた正義の緑インベス!(笑)
 ……今作ここまでで、一番ヒーローぽいシーンだったのではという気さえしますが(さすがにきっと言い過ぎ)、特にヤクザキックで赤インベスを海に蹴り落とすシーンは、あのインベスが格好良く見えるレベル。
 それを操っていたのはチームバロンの腰巾着で、こすっからい小悪党の腰巾着まで格好良く見えてしまう、物語のマジックが発動し、森から帰還した戒斗により、ロックシードの不正改造を用いて、多くのビートライダーズが完全に無法者集団と化している事が説明される。
 一方兄さんは、うちの光実は変身シーンも知性に溢れているな……見たまえこの凜々しさと可憐さの同居した佇まい! と弟の映像を鬼のようにリピートしていた……わけではなく、胸ぐら掴んでシドを糾弾していたが、ドライバーはどこかの誰かのスイカみたいに紛失したんでーす、としらを切られた上に、「ていうか主任、大事な弟の面倒見てないの~?」と煽られ、職場にまともな同僚がいない事に気付き始めていた。
 「……そうか。貴様はそういう腹づもりだったのか」
 「喧嘩はその辺にしておいて、今後の対策を考えないかい?」
 タチの悪いプロフェッサーがモニターにどアップで現れ、シドに鎧武とバロンの追跡を命じた貴虎は帰宅したミッチを待ち受けると、直接対決。ミッチは入手したデータを公開する事でユグドラシルを告発する決意を語るが……。
 「おまえが求めているのは正義ではない。兄である俺に挑戦する事で、一人前の大人になれると思い込んでいるだけの事だ。そうだろう?」
 「……僕は」
 「光実、おまえは、守られる側の人間であると思っていたが、そうであってほしいと願っていた俺のエゴが、この目を曇らせていたようだ」
 ここの兄さんは、自分の考え違いの認め方も含めて、超格好良かったです!
 「……怒ってないの?」
 「……おまえは、守られた未来を手に入れるよりも、今という時代で戦う事を選んだ。俺と同じだ。結局のところ――おまえは呉島の血を継いだ男。……この、貴虎の弟という事だ」
 ところから、何故ブラコン爆弾を破裂させて自分でオチを付けますか(笑)
 まあ、「○○の息子」と言うには、呉島父が出てきていない、というやむを得ない事情はあるのですが。また、庇護する側と庇護される側を明確に線引きする貴虎がミッチを認めるのはその「血」ゆえである、と貴虎の精神的貴族性に基づく血統の根拠化、ややねじれてしまった選良主義が補強されてもいます。
 「光実……おまえに全ての真相を教えてやる」
 その頃、アジトに戻った紘汰はDJから貰ったレモン錠前が使えない事に悪戦苦闘しており、シドに向けて「俺たちはおまえに騙されたりしない!」と啖呵を切った次の回でDJに全力で踊らされているのが目も当てられない(ここがコミカルに演出されているのは、それから目を逸らす意図もありそう)のですが、後の『エグゼイド』や『ビルド』でもこの手の事故は発生していたので、作品によってパターンに変化はありますが「悪役サイドと繋がった変身ギミック」と「強化に次ぐ強化展開」は、割と本気で相性の悪さを感じます。
 舞から話を聞いて赤帽のアジトに乗り込んだ紘汰は「おまえらは、見た目は人間のままでも、やってる事は化け物と変わらない!」と衝突するが、既に赤帽にはシドの仕込みが回っており、マンゴー錠前から赤獅子インベスが出現。鎧武を一方的に追い詰める赤獅子だったが、錠前が制御不能になると暴走を始め、赤帽軍団を蹴散らして街へ。
 なんとかそれを食い止めようとするも赤獅子のパワーに苦戦一方の鎧武だが、ベルトのパーツが吹っ飛んだ事でDJから渡されたアタッチメントの使用法に気付き、レモン錠前をロックオン。陣羽織風の追加装甲をまとった……て、ああそれでジンバー(笑)
 と深く納得しましたが、ユグドラクローバー同様に弓を手にした新たな姿へと変身し、ソードとしても使える描写になっていますが、ここに来て、やたら弓推し。
 一方、兄に連れられてヘルヘイムの森に入ったミッチは、そこで見た何かに愕然と目を見開いていた。
 「……わかったか。これが、ヘルヘイムの森の正体だ」
 「……まさか……そんな……」
 「……これでもまだ、俺が間違ってると思うのか?」
 ショックのあまり両膝をついたミッチは言葉もなく首を左右に振り、まともに呼吸も出来ない、といったここの芝居が迫真で大変良かったですが、メタ的には、何を見たつもりで演じて下さい、と言われるとここまで出来たのか、ちょっと気になります(笑)
 「光実、ユグドラシルに加われ。おまえの戦うべき、本当の戦場へと導いてやる」
 貴虎は弟へと手を伸ばし、果たしてミッチが目にしたものはなにか? 画面には映さないままがミステリー要素の引きとして効き(それを成立させたミッチの演技は重ねて良かった)、割と蚊帳の外の鎧武は、柑橘アロースペシャルで赤獅子インベスを撃破。
 シドは物陰からそれを確認し、パフェ屋の店長が“まっとうな大人”として描かれ、モブダンサーは退院し、状況は急転しつつも表向きは一段落して、つづく。
 ……ここ数話の今作のもやもやするところとして、会社としてのやり口には問題が多々あり、独善的な悪人要素がまぶされているとはいえ、メロン兄さんの立ち位置的に純粋悪というわけでもなさそうなユグドラシルに対して、紘汰と戒斗がひたすら「ユグドラシルが悪!」と断言していくのが微妙に居心地が悪い、というのがあったのですが、ようやくその、「事情がある」事が暗示されたのが、一つスッキリ。
 勿論その事情が「納得がいく」ものかは別の話になりますし(市民目線では間違いなく悪の組織)、基本的にこの、主要人物にとって「見える世界しか見えない」のが今作の描き方であり(裏を返せば、貴虎兄さんにとって見えていないものの象徴がミッチ問題だったのでしょう)、「君は世界の為に死んでね」と言われた時に「死ねるか!」と抗うのが人の性というものでしょうが(これも逆に、納得できたら死ねてしまうのが貴虎兄さんなのかなと)、それら引っくるめた上で、個人的にはもう少し早めに「ユグドラシル側の事情」を暗示してくれた方が、見やすかったように思います。
 これがメロン兄さんが居なければバリバリ悪の組織スタイルでも良かったのですが、メロン兄さんが露骨に“なるべく一線を守りつつ大義の為に手を血に染める事を厭わない”タイプなので、メロン兄さんをユグドラシルに置くのなら、視聴者にも、紘汰サイドと兄さんサイドの行動理念の衝突を見せる作りの方が良かったのではないか(逆にその方が、紘汰なりの一生懸命がわかりやすくなって、好感が持ちやすかった気がしないでもなく)……と考えるとやはり、1クール目が前振りとして長すぎた、に集約されてしまうのですが(笑)
 合わせて、どうにも無理が出がちだった「貴虎はミッチがアーマードライダーどころかビートライダーズの一員である事も知らない」件も解消され、この二つのスッキリが効いて、ここまでの今作の中では割と面白かったです。
 ミッチ-貴虎問題は、物語がここまで進んでくると、貴虎は“これまで目を逸らしてきたミッチの一面”を受け止め、ミッチもまた“新たな世界へ足を踏み入れる”構図が、「二つの“世界”の衝突」という今作で繰り返されるモチーフである事が見えてくるのですが(今回はそこに「融和」の要素が付け加えられている)、今作全体の傾向としてここでも、仕込みが長く理が勝ちすぎているなと。
 また、紘汰らサイドのキャラがいずれも20前後ながら精神的中学生と描かれているのに対して、逆にせいぜい20代後半ぐらいに見える貴虎に「仕事にかまけて子供の事をよく見ていないが一方的な愛情を押しつける親」として40~50代のパーソナリティを与えるのは寓意にしてもちょっと無理が出てしまった感。
 そして理が勝ちすぎているという点で、ビートライダーズという要素を退場させるにおいて、ダンスチーム→力に溺れた無法者集団へと転落させ、その過程で舞のダンスへの情熱を散々に引き裂き、それに激怒した紘汰の「おまえらは、見た目は人間のままでも、やってる事は化け物と変わらない!」をより劇的にしようと線が引かれているのですが、そもそも「ダンスに青春を燃やすビートライダーズ」が劇中にほぼ存在しない幻想的概念なので、1クール分の前振りがジャンプ台として機能しておらず初期のボタンの掛け違いが引き続き響きます。
 あれこれ気になるところはありますが、全体の構図は私にとって少し見やすくなってきたので、この流れの先へ巧く転がってくれるといいのですが……次回、桃のライダー、光臨!